臨床組織科学(COS)と心理的安全性──Edmondson理論を文化から構造条件へ再配置する

心理的安全性を単なる文化や雰囲気ではなく、Field Gradient TheoryやLoop Conversion Designが機能する構造条件として捉える。

ドロア

COSはEdmondsonの心理的安全性理論を、Field Gradient TheoryとLoop Conversion Designが機能するためのenabling conditionとして再配置する。

複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)は、代表取締役・山中真琴を筆頭著者とする論文『Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations』を国際学術誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションで公開しました。


本論文に関する英語ニュースリリースはEurekAlert!で配信され、COS全体の問題提起は海外科学ニュースサイトPhys.orgでも紹介されています。本リリースでは、心理的安全性を、文化的スローガンではなく構造的介入が機能する条件として整理します。


本リリースは、5月7日から6月5日にかけて配信する臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)解説シリーズの一部です。今回は、Edmondsonの心理的安全性理論とCOSの位置関係を取り上げ、COSが既存理論とどのように接続し、どこを拡張し、どのような検証可能な問いを提示するのかを整理します。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ Edmondsonの心理的安全性理論が確立したもの

Amy C. Edmondsonの心理的安全性研究は、チームにおいて対人的リスクを取れる状態が、学習行動、問題共有、率直な発言、失敗からの学習を支えることを示しました。心理的安全性は、現代の組織開発、人的資本経営、1on1、チーム学習、アジャイル組織、イノベーション組織において、最も広く参照される概念の一つです。


COSは、この洞察を強く継承します。組織内でネガティブ情報が共有された時、それが責任追及や防衛反応を生むのか、それとも共有された問題として扱われるのかは、組織のアトラクター状態を観察する重要な指標です。心理的安全性は、COSにおいても組織変革の周辺概念ではなく、中核的な構造条件です。

■ COSが拡張する点:心理的安全性を「文化的成果」から「構造条件」へ

多くの現場では、心理的安全性は「よい文化」「話しやすい雰囲気」「上司の受容的態度」として扱われがちです。COSはこの見方を否定しませんが、さらに一歩進めて、心理的安全性を組織アトラクターの遷移を可能にする構造条件として位置づけます。


つまり、心理的安全性は、変革が成功した後に自然に生まれる文化的成果ではなく、Field Gradient TheoryやLoop Conversion Designが機能するために、Neural Base Designによって先に整えられるべき基盤条件です。信頼、確認応答、感謝共有、身体的チェックイン、3Good1Moreなどの反復的実践が、心理的安全性を「雰囲気」ではなく「相互作用の再生産構造」として支えます。

心理的安全性をCOSの構造的介入アーキテクチャに再配置した概念図。Edmondson理論を基盤に、心理的安全性をField Gradient TheoryおよびLoop Conversion Designが機能するためのenabling condition(機能条件)として位置づける。

■ COSにおける心理的安全性の観察指標

COSでは、心理的安全性を抽象的な空気としてではなく、観察可能な相互作用パターンとして扱います。たとえば、以下のような指標が重要です。

観察対象

COSにおける意味

ネガティブ情報の開示への反応

失敗・問題・悪い知らせが、防衛ではなく共有問題として扱われるか

発言分布

階層や役職にかかわらず、声が分散しているか

確認応答

メッセージ受信後の確認や応答予定が自発的に行われるか

3Good1Moreの定着

肯定的観察と発展的観察が構造的に組み合わされているか

これらは、心理的安全性を「測定済みの効果」として断定するためのものではなく、COSが今後の実証研究に向けて提示する候補的な観察対象です。

■ COSが主張しないこと

COSは、心理的安全性を単純に「設計すれば必ず作れる」と主張するものではありません。人間関係、権力距離、過去の組織経験、経営者の態度、評価制度など、心理的安全性には多くの条件が関わります。COSが主張するのは、心理的安全性を文化論だけに委ねるのではなく、相互作用構造・フィードバック構造・組織リズムの観点から扱うことで、より検証可能な介入仮説を作れるという点です。

■ 代表・山中真琴コメント

心理的安全性は、日本企業でも広く知られる言葉になりました。ただ、現場では『大事なのは分かるが、どうやって組織に埋め込むのか』という問いが残り続けています。


COSは、心理的安全性をスローガンや文化目標としてではなく、組織変革が起きるための構造条件として扱います。これはEdmondson教授の研究を置き換えるものではなく、実装の側から再配置する試みです。今後、この再配置が妥当かどうかは、独立した研究と実践の中で検証されるべきだと考えています。

■ 本リリースの位置づけ:Conceptual Analysisとしての理論整理

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果検証を完了したと主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。


したがって、本シリーズで扱う既存理論との接続も、「COSが既存理論を置き換える」という主張ではありません。COSは、心理的安全性、組織ルーチン、複雑適応系、場の理論、サイバネティクス、行動科学、実装科学などの既存知見を、構造的介入という観点から再配置し、検証可能な研究プログラムとして提示するものです。

■ 次回予告

明日5月20日10時に「臨床組織科学(COS)と組織ルーチン理論──Feldman & Pentland理論とemergence bridgeの接続」を配信します。個人の習慣化がどのように組織ルーチンの再生産条件へ接続されるのかを、emergence bridgeの観点から整理します。

■ 掲載誌について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroRは、複雑系科学と神経科学を基盤に、組織の「見えない相互作用構造」を観察し、設計する研究実践ファームです。臨床組織科学(COS)を理論的支柱とし、高度専門BPO(財務・HR・PM)、組織開発、ウェルビーイング、DX支援を統合的に提供しています。BPO契約を通じて組織内部に継続的に関与する「臨床的」スタンスにより、研究と実践を分離せず、現場から理論を生み、理論を現場へ返す循環を重視しています。
DroRでは、代表取締役・山中真琴を中心に、組織実践・社会実装・対外発信と、論文執筆・理論構築・研究開発を往復させることで、研究と実践を分離しない体制を構築しています。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:複雑系科学×神経科学を基盤とした組織OSの設計・実装
    - 高度専門BPO:財務・HR・PMなど企業の核となる業務の伴走・代替
    - 組織開発/ウェルビーイング:MVV・文化醸成・1on1設計・コーチング
    - DX支援/補助金・認証支援:IT導入補助金、レジリエンス認証 他

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、FAQ、研究倫理、検証可能命題を整理した公式情報ページを順次公開予定です。公開後、本リリースおよび関連リリースの関連リンク欄に追記し、PR TIMES上の解説シリーズとDroR公式サイト上の正典ページを接続していきます。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

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株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

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会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月