臨床組織科学(COS)とStacey複雑性思考──組織変革は設計ではなく遷移確率を高める介入

トップダウン制御の限界を踏まえ、COSを結果を決定する方法ではなく、望ましい相互作用が起こる確率を高める理論として整理。

ドロア

COSはStaceyの複雑性思考を、principled probabilismとして再配置し、組織変革を線形制御ではなく確率的なアトラクター遷移として捉える。

複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合した臨床組織科学を基盤に、組織の見えない構造を科学的に設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)は、代表取締役・山中真琴を筆頭著者とする論文『Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations』を国際学術誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションで公開しました。

2026年10月更新:論文(2026年4月30日掲載)と表現をそろえるため、一部を修正しました。


本論文に関する英語ニュースリリースはEurekAlert!で配信され、COS全体の問題提起は海外科学ニュースサイトPhys.orgでも紹介されています(Phys.orgでの紹介は取材記事や外部評価を意味するものではありません)。本リリースでは、Staceyの複雑性思考とCOSのprincipled probabilismを整理します。


本リリースは、5月7日から6月5日にかけて配信する臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)解説シリーズの一部です。今回は、Staceyの複雑性思考とCOSのprincipled probabilismを取り上げ、COSが既存理論とどのように接続し、どこを拡張し、どのような検証可能な問いを提示するのかを整理します。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ Staceyが示したトップダウン制御の限界

Ralph Staceyの複雑性思考は、組織をトップダウンに完全制御できる対象としてではなく、相互作用の中で創発的に変化する複雑な社会的プロセスとして捉えます。組織では、経営者の意図、制度、会議、感情、権力、過去の経験、非公式な関係性が絡み合い、結果は事前に完全には決定できません。


COSは、創発的な変化の方向や内容は事前に特定できないという、Staceyのこの認識を受け止めます。COSは、組織を望ましい状態へ機械的にengineerできるとは主張しません。むしろ、組織が複雑適応系である以上、介入は結果を決定するものではなく、特定の遷移が起こる確率を高める条件設計であると捉えます。

■ COSのprincipled probabilism

COSの立場は、principled probabilism(原理に基づく確率主義)と表現できます。これは、「結果は完全には制御できないが、構造メカニズムを理解し、条件を設計することで、望ましい創発が起こる確率を高めることはできる」という立場です。


この立場は、過剰な管理主義とも、何もしない相対主義とも異なります。COSは、組織変革を完全に予測・制御できるとは言いません。しかし、組織の安定状態を再生産する相互作用構造を観察し、Neural Base Design、Field Gradient Theory、Loop Conversion Designを通じて、アトラクター遷移の条件を設計することは可能だと考えます。

Staceyの複雑性思考をCOSのprincipled probabilism(原理に基づく確率主義)へ接続した概念図。組織変革を予測・制御可能な線形プロセスではなく、構造的介入によって望ましいアトラクター遷移の確率を高める非線形プロセスとして捉える。

■ Staceyとの接続が重要な理由

COSがStaceyと接続する理由は、組織変革の語りがしばしば過剰に決定論的になるからです。「このメソッドを導入すれば変わる」「この研修をすれば心理的安全性が生まれる」「この制度を入れれば文化が変わる」といった表現は、複雑な組織の現実を単純化しすぎる危険があります。


COSは、構造的介入の技法を提示しながらも、結果の完全な決定を主張しません。むしろ、失敗条件、境界条件、検証可能命題を明示することで、複雑性に対して誠実な理論であり続けることを目指します。

■ COSがStaceyから継承するもの、拡張するもの

観点

Staceyの複雑性思考

COSの拡張

組織観

トップダウン制御できない創発的プロセス

複雑適応系としての組織アトラクター

介入観

結果を事前に決定できない

遷移確率を高める構造条件を設計する

実践上の含意

管理幻想への警戒

技法・順序・失敗条件を明示する

検証課題

創発の観察

どの条件が遷移確率を高めるか

■ 代表・山中真琴コメント

COSで最も大切にしていることの一つは、組織を変えられると簡単に言い切らないことです。組織は複雑で、関係性の中で動いていて、結果を完全に決めることはできません。


それでも、何もできないわけではありません。構造を観察し、条件を整え、変化が起きる確率を高めることはできる。この慎重さと実践性の両方を持つことが、COSの臨床的姿勢だと考えています。

■ 本リリースの位置づけ:Conceptual Analysisとしての理論整理

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果が実証済みであると主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。


したがって、本シリーズで扱う既存理論との接続も、「COSが既存理論を置き換える」という主張ではありません。COSは、心理的安全性、組織ルーチン、複雑適応系、場の理論、サイバネティクス、行動科学、実装科学などの既存知見を、構造的介入という観点から再配置し、検証可能な研究プログラムとして提示するものです。

■ 次回予告

明日5月26日10時に「臨床組織科学(COS)とサイバネティクス──Wiener・Meadowsから見るフィードバック循環構造」を配信します。Loop Conversion Designの理論基盤を詳述します。

■ 掲載誌について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroR(ドロア)は、臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)に基づいて、成長企業の組織開発・組織変革を伴走支援する研究実践ファームです(東京・恵比寿)。会議・役割・意思決定・情報の流れなど、日々の行動を生み出している組織の構造を現場で観察し、手を入れる場所を絞って、変化が日常に残るまで伴走します(組織ディープテック)。財務経理・補助金などの実務を担う高度専門BPOも提供しています。COSの理論は査読論文(Frontiers in Psychology, 2026)として公表しています。
DroRは、売上や人数が拡大し、意思決定・役割・情報の流れが複雑になり始めた成長企業の組織課題を、研究に基づいて伴走支援しています。施策を替えても同じ問題が繰り返される組織に向いており、まず数週間〜2ヶ月の観察フェーズから始めることもできます(本格的な伴走は6ヶ月以上が目安)。短期の研修だけで即時の成果を求める場合や、意思決定者が関与できない場合には、別の支援形態をご提案しています。初回相談は無料です。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:臨床組織科学(COS)に基づく組織開発・組織変革の伴走支援
    - 高度専門BPO:財務経理・補助金、SNS運用、マーケティングPM
    - M&A・PMI支援
    - 研究・公開:臨床組織科学研究会(事務局)、人的資本開示の年次調査DOCI、働く人の心理学・組織研究ナビ(research.dror.co.jp)

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、研究倫理などを整理した公式情報ページを、DroR公式サイトで公開しています(https://dror.co.jp/lab/cos)。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

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株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

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会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月