臨床組織科学(COS)における神経科学の位置づけ:Kandel・Damasioを説明の補助線として読む

神経可塑性と身体標識仮説を、神経測定ではなく、習慣形成・身体的気づき・動機持続を説明する補助線として再配置する。

ドロア

COSは、Kandelの神経可塑性とDamasioの身体標識仮説を、構造的介入を支えるneuroscience-informed explanatory layerとして再配置する。

複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合した臨床組織科学を基盤に、組織の見えない構造を科学的に設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)は、代表取締役・山中真琴を筆頭著者とする論文『Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations』を国際学術誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションで公開しました。

2026年10月更新:論文(2026年4月30日掲載)と表現をそろえるため、一部を修正しました。

本論文に関する英語ニュースリリースはEurekAlert!で配信され、COS全体の問題提起は海外科学ニュースサイトPhys.orgでも紹介されています(Phys.orgでの紹介は取材記事や外部評価を意味するものではありません)。本リリースでは、KandelとDamasioの知見を、神経測定ではなく神経科学を説明層として読む補助線として整理します。


本リリースは、5月7日から6月5日にかけて配信する臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)解説シリーズの一部です。今回は、Kandelの神経可塑性、Damasioの身体標識仮説とCOSを取り上げます。#5で明確にした「COSは神経測定・神経刺激を行わない」という境界を前提に、神経科学の知見をどのように理論的補助線として読むのかを整理します。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ COSにおける神経科学の役割

COSは神経科学の知見を、組織介入を説明する補助線として参照します。これは、社員の脳活動を測定することでも、神経状態を操作することでもありません。COSは、脳波、fMRI、神経刺激、薬理学的介入を用いません。


COSにおける神経科学は、行動の自己持続性、習慣形成、身体的気づき、信頼形成、動機持続を説明するための理論的枠組みです。神経科学は、組織現象を神経へ還元するためではなく、行動実践の設計と整合させるためのcoherence layer(整合層)として機能します。

■ Kandelの神経可塑性と習慣形成

Kandelの神経可塑性研究は、反復された経験や行動が神経接続の変化に関わることを示しました。COSはこの洞察を、組織変革における習慣形成の重要性を説明するために用います。


一度の研修、一度の方針発表、一度の1on1設計だけでは、行動は自己持続的になりにくい。新しい相互作用パターンを日次・週次・月次の組織リズムに埋め込み、反復することで、個人レベルの行動がより自動化され、相互作用レベルへ持ち込まれやすくなります。

KandelとDamasioの神経科学的知見をCOSのneuroscience-informed explanatory layerへ接続した概念図。神経可塑性と身体標識仮説を、神経測定・神経刺激ではなく、習慣形成、身体的気づき、動機持続を説明する補助線として再配置する。

■ Damasioの身体標識仮説と身体的チェックイン

Damasioは、身体状態の信号が意思決定や判断に関わるとする身体標識仮説を提唱しました。COSはこの視座を、Neural Base Designの身体的気づき軸(Somatic Awareness Axis)に接続します。


組織では、ストレス、違和感、緊張、疲労、関係性の不調が、言語化される前に身体状態として現れることがあります。構造化された身体的チェックインは、こうした状態を早期に認識し、集合的センスメイキングの資源として扱うための実践です。

■ COSが神経科学から継承するもの、主張しないこと

観点

COSでの使い方

COSが主張しないこと

神経可塑性

反復的行動が自己持続性を持つ理由の説明

組織内で神経変化を直接測定したとは主張しない

身体標識仮説

身体的チェックインの理論的補助線

身体状態だけで意思決定を説明するとは主張しない

社会的絆形成

感謝共有や信頼形成の補助説明

特定の神経物質変化を組織内で測定したとは主張しない

報酬予測

予測可能な組織リズムの動機持続を説明

神経報酬を操作するとは主張しない


■ 倫理的境界

COSが介入するのは、神経プロセスそのものではなく、神経プロセスが展開される行動的・社会的条件です。相互作用構造、フィードバック・アーキテクチャ、習慣化された実践、組織リズムが介入対象です。


この区別は、COSの倫理的健全性にとって不可欠です。

■ 代表・山中真琴コメント

神経科学という言葉を使う以上、誤解のリスクは避けられません。だからこそ、COSは神経測定も神経刺激もしないという点を、繰り返し明確にしています。


私たちが扱うのは、組織の中で繰り返される行動実践と相互作用構造です。神経科学は、その設計がなぜ意味を持つのかを説明するための補助線であり、社員の脳を操作する技術ではありません。

■ 本リリースの位置づけ:Conceptual Analysisとしての理論整理

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果が実証済みであると主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。


したがって、本シリーズで扱う既存理論との接続も、「COSが既存理論を置き換える」という主張ではありません。COSは、心理的安全性、組織ルーチン、複雑適応系、場の理論、サイバネティクス、行動科学、実装科学などの既存知見を、構造的介入という観点から再配置し、検証可能な研究プログラムとして提示するものです。

■ 次回予告

本日6月3日15時に「臨床組織科学(COS)とFredrickson理論──3Good1Moreは褒める技法ではない」を配信します。3Good1Moreの理論的補助線として、ポジティブ感情と認知的拡張の関係を整理します。

■ 掲載誌について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroR(ドロア)は、臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)に基づいて、成長企業の組織開発・組織変革を伴走支援する研究実践ファームです(東京・恵比寿)。会議・役割・意思決定・情報の流れなど、日々の行動を生み出している組織の構造を現場で観察し、手を入れる場所を絞って、変化が日常に残るまで伴走します(組織ディープテック)。財務経理・補助金などの実務を担う高度専門BPOも提供しています。COSの理論は査読論文(Frontiers in Psychology, 2026)として公表しています。
DroRは、売上や人数が拡大し、意思決定・役割・情報の流れが複雑になり始めた成長企業の組織課題を、研究に基づいて伴走支援しています。施策を替えても同じ問題が繰り返される組織に向いており、まず数週間〜2ヶ月の観察フェーズから始めることもできます(本格的な伴走は6ヶ月以上が目安)。短期の研修だけで即時の成果を求める場合や、意思決定者が関与できない場合には、別の支援形態をご提案しています。初回相談は無料です。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:臨床組織科学(COS)に基づく組織開発・組織変革の伴走支援
    - 高度専門BPO:財務経理・補助金、SNS運用、マーケティングPM
    - M&A・PMI支援
    - 研究・公開:臨床組織科学研究会(事務局)、人的資本開示の年次調査DOCI、働く人の心理学・組織研究ナビ(research.dror.co.jp)

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、研究倫理などを整理した公式情報ページを、DroR公式サイトで公開しています(https://dror.co.jp/lab/cos)。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

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株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

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会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月