臨床組織科学(COS)が機能しない条件──境界条件と3つの組織状況

経営層の継続コミットメント不足、権力距離の高さ、急性危機状態など、COSが機能しにくい条件を明示する。

ドロア

臨床組織科学(COS)が機能しにくい境界条件を整理。経営層の継続コミットメント不足、高い権力距離、急性危機状態という3つの組織状況から、COSの適用可能性と倫理的実装条件を明示する。

複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合した臨床組織科学を基盤に、組織の見えない構造を科学的に設計する研究実践ファーム、株式会社DroR(本社:東京都渋谷区、代表取締役:山中真琴)は、代表取締役・山中真琴を筆頭著者とする論文『Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations』を国際学術誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションで公開しました。

2026年10月更新:論文(2026年4月30日掲載)と表現をそろえるため、一部を修正しました。


本論文に関する英語ニュースリリースはEurekAlert!で配信され、COS全体の問題提起は海外科学ニュースサイトPhys.orgでも紹介されています(Phys.orgでの紹介は取材記事や外部評価を意味するものではありません)。本リリースでは、COSが機能しにくい境界条件を、万能理論化を避けるための実装上の前提として整理します。


本リリースは、5月7日から6月5日にかけて配信する臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)解説シリーズの一部です。今回は、COSが機能しにくい境界条件を取り上げ、COSが既存理論とどのように接続し、どこを拡張し、どのような検証可能な問いを提示するのかを整理します。

■ 臨床組織科学(COS)の固定定義

臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)は、複雑系科学・神経科学・組織心理学・行動科学を統合し、組織の安定状態を能動的に再生産する相互作用構造を理論化し、その構造に介入するためのフレームワークです。COSは、組織変革を「個人の行動変容」ではなく「組織アトラクターの遷移」として捉え、中核技法として Field Gradient Theory、Loop Conversion Design、Neural Base Design を提示します。個人の習慣化と組織レベルの変化をつなぐ概念として、emergence bridge(創発の橋)を提案しています。

■ 境界条件を明示する理由

COSは、あらゆる組織に万能に適用できるメソッドではありません。複雑な組織に対する構造的介入である以上、機能しやすい条件と、機能しにくい条件があります。


境界条件を明示することは、COSの弱さではありません。むしろ、理論を検証可能にし、倫理的に実装するための必要条件です。自社メソッドが機能しない可能性を明示しない理論は、実務家にとっても研究者にとっても危険です。

■ 境界条件1:経営層が持続的な構造変化にコミットしていない組織

COSは、短期的な研修や単発のワークショップではなく、日次・週次・月次の組織リズムを通じて相互作用構造を変えることを目指します。そのため、数週間で成果を求める組織や、経営層が継続的な関与を持たない組織では、アトラクター遷移に至る可能性は低くなります。


Neural Base Designは、反復と継続を前提とします。Field Gradient TheoryやLoop Conversion Designも、基盤層が整っていない状態では逆効果になりえます。

■ 境界条件2:権力距離が極端に高い組織

階層的権威が極端に強く、上位者への異議申し立てが不適切と見なされる組織では、2-on-1 configurationや発言分布の変化が、構造的な影響の勾配ではなく、脅威や強制として知覚される可能性があります。


論文は、このような組織では、Neural Base Designによる準備を行っても、2-on-1 configurationが強制として受け取られる可能性があるとしています。権力距離が強い組織では、Field Gradient Theoryの導入は慎重であるべきです。

■ 境界条件3:急性危機状態にある組織

資金繰り危機、重大事故、法的リスク、急激な人員流出、経営混乱など、急性危機状態にある組織では、COSが必要とする注意資源や関係的余裕が確保されない場合があります。


危機時には、まず危機対応、意思決定、被害最小化、法務・財務・労務上の安定化が優先されます。COSは、危機対応そのものを置き換えるものではありません。危機が一定程度安定し、組織が継続的なリズムを取り戻せる状態になってから、構造的介入を検討する方が適切です。

COSのBoundary Conditions(境界条件)を整理した概念図。経営層の継続コミットメント不足、高い権力距離、急性危機状態では、構造的介入が組織アトラクター遷移へ接続されにくい可能性がある。COSは、導入前に適用可能性を評価し、延期、基盤整備、慎重導入を含む倫理的な実装判断を必要とする。

■ 境界条件の整理

境界条件

起こりうる問題

COS上の対応

経営層の継続コミットメントがない

組織リズムが定着しない

導入前に時間軸と関与条件を確認

権力距離が極端に高い

2対1構造が圧力として知覚される

Neural Base Designを優先し、上層技法を急がない

急性危機状態

 注意資源・関係的余裕が不足する

危機対応を優先し、COS導入を延期する


■ 境界条件は研究アジェンダでもある

どのような組織でCOSが機能しやすく、どのような組織で機能しにくいのかは、今後の重要な研究課題です。文化差、業種、組織規模、経営層の関与、既存の心理的安全性、組織風土、権力距離などが、COSの効果にどのように影響するかは、独立した検証が必要です。

■ 代表・山中真琴コメント

COSを実践する上で、最も避けたいのは、どんな組織にも効く万能メソッドのように扱われることです。組織は複雑で、文脈があります。機能しにくい条件を明示することは、誠実な実践のために必要です。


特に、心理的安全性がない状態で強い構造的介入を入れることは危険です。COSは、急がず、基盤を見て、境界条件を確認しながら進めるべき理論だと考えています。

■ 本リリースの位置づけ:Conceptual Analysisとしての理論整理

本論文は、Conceptual Analysis(概念分析)として発表された理論提唱論文です。COSの各技法は、現時点で効果が実証済みであると主張するものではありません。既存の分散した科学的知見を統合し、組織変革を構造的介入の問題として捉え直すための理論枠組みと、今後検証・反証されるべき命題を提示するものです。


したがって、本シリーズで扱う既存理論との接続も、「COSが既存理論を置き換える」という主張ではありません。COSは、心理的安全性、組織ルーチン、複雑適応系、場の理論、サイバネティクス、行動科学、実装科学などの既存知見を、構造的介入という観点から再配置し、検証可能な研究プログラムとして提示するものです。

■ 次回予告

本日6月5日15時に「臨床組織科学(COS)を独立検証に開く──30本連続リリースの総括と研究プログラムへの招待」を配信します。

■ 掲載誌について

本論文は、心理学分野の国際査読誌『Frontiers in Psychology』Organizational Psychologyセクションに掲載されました。同誌は心理学・認知科学・組織心理学などの研究を扱うオープンアクセス学術誌であり、本論文はConceptual Analysis(概念分析)として公開されています。

■ 論文情報

  • タイトル: Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations

  • 和題: 臨床組織科学:複雑組織における構造的介入のための統合的フレームワーク

  • 著者: Makoto Yamanaka, Masaya Nakamori (両名とも株式会社DroR所属)

  • 掲載誌: Frontiers in Psychology, Section: Organizational Psychology, Volume 17 (2026)

  • 論文種別: Conceptual Analysis(概念分析)

  • DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1827324

  • 公開日: 2026年4月30日

  • 査読: 編集者および査読者による国際的な査読プロセスを経て採択

  • ライセンス: Creative Commons Attribution License (CC BY) ※オープンアクセス

  • 掲載URL: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1827324

■ 株式会社DroRについて

株式会社DroR(ドロア)は、臨床組織科学(Clinical Organizational Science, COS)に基づいて、成長企業の組織開発・組織変革を伴走支援する研究実践ファームです(東京・恵比寿)。会議・役割・意思決定・情報の流れなど、日々の行動を生み出している組織の構造を現場で観察し、手を入れる場所を絞って、変化が日常に残るまで伴走します(組織ディープテック)。財務経理・補助金などの実務を担う高度専門BPOも提供しています。COSの理論は査読論文(Frontiers in Psychology, 2026)として公表しています。
DroRは、売上や人数が拡大し、意思決定・役割・情報の流れが複雑になり始めた成長企業の組織課題を、研究に基づいて伴走支援しています。施策を替えても同じ問題が繰り返される組織に向いており、まず数週間〜2ヶ月の観察フェーズから始めることもできます(本格的な伴走は6ヶ月以上が目安)。短期の研修だけで即時の成果を求める場合や、意思決定者が関与できない場合には、別の支援形態をご提案しています。初回相談は無料です。

  • 会社名: 株式会社DroR(ドロア)

  • 所在地: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル8F

  • 代表: 代表取締役 山中真琴

  • 設立: 2023年8月

  • 資本金: 10,000,000円

  • 事業内容:
    - 組織ディープテック:臨床組織科学(COS)に基づく組織開発・組織変革の伴走支援
    - 高度専門BPO:財務経理・補助金、SNS運用、マーケティングPM
    - M&A・PMI支援
    - 研究・公開:臨床組織科学研究会(事務局)、人的資本開示の年次調査DOCI、働く人の心理学・組織研究ナビ(research.dror.co.jp)

  • 認証: 国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)、経済産業省 IT導入支援事業者

  • パートナー: 株式会社マネーフォワード

  • コーポレートサイト: https://dror.co.jp

■ 公式情報ページについて

株式会社DroRでは、臨床組織科学(COS)の定義、論文情報、用語集、研究倫理などを整理した公式情報ページを、DroR公式サイトで公開しています(https://dror.co.jp/lab/cos)。
本シリーズは、単発の論文掲載告知ではなく、COSの中核概念、既存理論との位置関係、国内組織論との接続、境界条件、独立検証への招待を段階的に公開する解説シリーズとして設計されています。

■ 関連リンク

■ 本件に関するお問い合わせ

株式会社DroR 広報担当
Email: press@dror.co.jp

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会社概要

URL
https://dror.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿西2丁目4番8号 ウィンド恵比寿ビル8F
電話番号
-
代表者名
山中真琴
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年08月