【新刊】研究情報誌『流通情報』の特集は「地域ブランドの現在地と展望」~”地域”を通じて、ブランド価値を創り、育てるための戦略と課題を多角的に分析~
公益財団法人流通経済研究所(東京都千代田区、理事長:加藤弘貴)は、『流通情報』2025年7月号を発刊しました。特集「地域ブランドの現在地と展望」では6編の論文を掲載しています。

最新号の特集は「地域ブランドの現在地と展望」。「地域ブランド」が注目を集めています。各地で特産品のブランド化に取り組み、農産物や加工食品が地域の魅力を発信する重要な手段となってきました。ブランドの確立には、「品質向上」、「認知度向上」、「販路拡大」といった多面的な取り組みが必要で、成功事例には明確な戦略があります。
特集「地域ブランドの現在地と展望」では、特に食のブランド化の取り組みや、消費者調査を通じて、地域ブランドの課題と可能性、ブランド価値の創出と持続可能な展開のヒントを探ります。
URL:https://www.dei.or.jp/information/info01
◆「地域ブランドの現在地と展望」のポイント
○地域政策の転換とブランド形成の結びつき
地域ブランディングの実務における今日的課題を5つ提示
○ブランド米3品種の分析
コシヒカリなどのブランド米を通じて「地域」の価値が購買行動やブランド評価にどう影響するか?
○千葉市の「食のブランド『千』」戦略
プレミアム感のある生産地「千葉市」の確立に向けて立ち上げた地域食ブランド「千」のねらい
○群馬県カリカリ梅のブランド戦略
消費者の日常利用シーン(オケージョン)に着目したカリカリ梅の戦略事例を紹介
○デジタル活用によるプロモーション
地域ブランドの認知拡大と体験価値提供に不可欠な、SNSなどのデジタルマーケティング手法
○誰のためのブランドか?~ブランドを「作る」だけでなく「育て続ける」姿勢が本質
地域ブランド立ち上げ・運営に携わった著者の視点:文化・住民共感・継続の重要性
◆「地域ブランドの現在地と展望」の論文レポート概要
■論文レポート① 地域ブランド研究の系譜と今日的実務課題
― 大阪公立大学 経営学研究科 教授 小林 哲
地域ブランド研究の学術的系譜を整理した。国内で主に研究対象となってきた「地域産品ブランディング」と、欧米を中心に展開されてきた「地域空間ブランディング」という2つの潮流を明確に分類し、それぞれの理論的背景と発展経緯を丁寧に比較した。その上で、両者を接合した「統合地域ブランディング」という枠組みを提示し、理論と実務を架橋する新たなアプローチの必要性を論じた。地域団体商標制度やJAPANブランド育成支援事業など、制度的背景にも言及しながら、日本の地域政策の転換と地域ブランディングの関係性を構造的に捉え、基盤的かつ指針となっている。

■論文レポート② “地域”はブランド価値にいかなる影響を及ぼすのか―ブランド米における研究-
― 新潟大学 社会連携推進機構 地域協働部門 准教授 勝見 一生
「新潟県産コシヒカリ」「北海道産ゆめぴりか」「山形県産つや姫」という3種のブランド米を対象に、ブランド価値における「地域」の重要性を実証的に分析した。生産者や自治体だけではなく、流通事業者や報道機関などの“ 第三の主体” = BIT(Brand Incubation Third-party)を含む「三者によるブランド価値の協創」という視点を導入し、ブランドが社会的に育まれる過程を描いた。さらに、地理的表示保護制度(GI)をはじめとする地域産品の制度的担保や、その土地ならではの自然・歴史・文化的文脈がブランド価値の核心にあることを確認する。成熟したブランド(コシヒカリ)と成長過程にあるブランド(ゆめぴりか・つや姫)を比較することで、ブランドライフサイクルと地域の戦略的選択の関係にも踏み込んでいる。

■論文レポート③ 千葉市食のブランド「千(せん)」の取り組み事例について―千葉市の食を千年先へ―
― 千葉市 経済農政局農政部農政課流通支援班 主査 佐古 典子
千葉市が展開する食のブランド「千(せん)」を事例に、複数の地域資源を包括的に捉えるブランド戦略の可能性を示した。千葉市は都市型農業と加工業が混在する稀有な地域であり、「特定品目に依存しない団体戦型のブランディング」を全国でも先陣を切って模索してきた。「千」は、その象徴的な取り組みであり、多品目・多業種の事業者をゆるやかに束ねる“コンセプト型ブランド”として、地域内外の共感を獲得しようとしている。従来の「○○産○○」という品目主義を脱し、地域の食文化全体を統合的に伝える戦略は、今後の都市圏ブランドの一つのモデルとなりうる。

■論文レポート④ 地域ブランドのプロモーション事例に関する一考察
― 昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員/株式会社ルノア 代表取締役 前田 益司郎
地域ブランドのプロモーションにおけるデジタルマーケティングの活用を論じた。Google広告やSNS広告、リターゲティングや動画広告など、オンライン広告の主要手法を整理しつつ、実務において求められる「誰に、何を、どう伝え、どの行動を期待するのか」という設計の重要性を説いている。さらに、コロナ禍を契機とした情報接触経路の変化やスマートフォンの普及を背景に、地方自治体や観光協会においても「広告のパーソナライズ化」「データに基づく効果検証」が求められていることを具体的に提示している。プロモーションのDX化という視点から、地域ブランドの新たな展開可能性を照らし出している。

■論文レポート⑤ 消費者のオケージョンに着目した地域ブランディング―群馬県のカリカリ梅のブランディング事例の紹介―
― (公財)流通経済研究所 研究員 梅村 幸子
群馬県のカリカリ梅のブランディングを取り上げ、「消費者の使用場面(オケージョン)」に着目した戦略の有効性を実証的に示した。受験生やビジネスパーソンが感じる「緊張」「集中」といった心理的状態と、カリカリ梅の食感や味覚との結びつきに注目し、「リフレッシュ食品」としての再定義を試みた。加えて、合格祈願や縁起物といったストーリーを付加することで、商品と感情の結びつきを強化し、従来とは異なる需要層を開拓するプロモーションを展開している。地域資源の“使い方”を見直すことで、価値の再創出が可能になるという点で、他の地域にも応用可能な示唆に富んだ事例である。

■論文レポート⑥ 全国各地で実施されている「地域ブランド」の傾向と課題
― (公財)流通経済研究所 上席研究員 吉間 めぐみ
地域ブランドの実務支援に携わった経験をもとに、各地のブランド事例を「モノ・サービスのブランド」と「まちづくりのブランド」に分類し、それぞれの特徴と陥りやすい課題を整理した。「ブランドの目的見失いがち傾向」「消費者ニーズとの乖離」「ブランド構築とPR の混同」「将来的運営主体の不在」「内外へのメッセージ不整合」など、実務現場で頻出する問題に言及しつつ、実例を交えながら対応の方向性を論じている。特に近年は、単品ではなく地域全体のコンセプトを掲げる「団体戦型ブランド」への転換が各地で進んでおり、その傾向と背景を読み解いた。

◆『流通情報』2025年7月号の詳細
特集 「地域ブランドの現在地と展望」
視点 「フィールド実験重視の流れ」
――(公財)流通経済研究所 客員研究員/中央大学 商学部 教授 寺本 高
新刊紹介 石原 武政「小売業近代化への胎動」
―(公財)流通経済研究所 理事/専修大学 商学部 教授 渡辺 達朗
発行日:2025年7月7日(月)
詳しくはこちら:https://www.dei.or.jp/information/info01
◆研究情報誌 『流通情報』
『流通情報』は、流通活動・マーケティングに関連する重要なテーマに焦点を当てた会員向けの研究情報誌です。
食品業界、小売業、卸売業、物流業などの流通業や研究者・学生など、多岐にわたる分野の関係者に向けて、当研究所の研究員による報告など、他では得られない独自のコンテンツを提供しています。

■発行頻度:隔月刊(年6号刊行)
■購読特典:電子版利用
※2017年1月以降のコンテンツ読み放題
※利用しやすいPDFダウンロード形式
■コンテンツ詳細:
https://www.dei.or.jp/information/info01
■購読お申し込み:
https://www.dei.or.jp/information/info_log.php
■定期購読料:33,000円
(本体30,000円+消費税3,000円)
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像