「新入社員意識調査2023」の分析結果を発表
Z世代・新入社員にとって「個の尊重」はますます重要に〜 世代間ギャップを超えて協働するには「共通目的/セルフリーダーシップ」が鍵~
【エグゼクティブサマリ】
●働きたい職場の特徴は「お互いに助け合う」(66.4%)がトップ。「お互いに個性を尊重する」(50.7%)が10年前と比較し21.8ポイントUPし過去最高、「アットホーム」(37.3%)は過去最低
●働くうえで大切にしたいことは「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」(48.5%)がトップ。「任された仕事を確実に進めること」(38.9%)が過去最高、「何事も率先して真剣に取り組むこと」(13.8%)が過去最低
●上司に期待することは「相手の意見や考え方に耳を傾けること」(49.5%)がトップ。「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(49.1%)が過去最高、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」(17.5%)が過去最低
●仕事をするうえで重視したいことトップ2は「成長」(28.8%)と「貢献」(26.7%) 。「競争」(2.4%)は昨年に続き最下位
●得意なスタンスのトップ2は「協働」(25.9%) と「相手基準」(24.9%)。苦手意識のあるスタンスのトップ2は「試行」(28%)と「自発」(26.6%)
●新入社員時代に身に着けたい力のトップは「社会人としての基本行動」(38.9%)、最下位は「会社の理念や価値観に沿った行動」(0.9%)
1. 調査担当のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス開発部 トレーニング開発グループ 研究員 武石 美有紀
近年、企業の抱える悩みとして、若手層の「早期離職」「メンタル不調」「成長鈍化」などがよく聞かれます。どんな企業でも育成が難しくなっている現状がある中で、どのようにすれば新入社員にいきいきと活躍してもらえるでしょうか。
新入社員の近年の特徴として、「どのような特徴を持つ職場で働きたいか」においては、「お互いに助けあう」職場や「お互いに個性を尊重する」職場を望む割合が増え、一方で「アットホーム」な職場を望む割合は減少しています。また、上司に求めるコミュニケーションとしては、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」を求め、「厳しい指導」や「仕事に情熱を持って取り組む」リーダーシップは、求められにくくなっています。
今回の調査結果を総合的に見ると、新入社員の中で「個」への意識が、ますます高まる傾向が見えてきました。働きたい職場、上司に求めることの項目を筆頭に、「お互い」や「個性」、「一人ひとり」など、「個」を意識させるワードを含んだ選択率が上昇し、一方で、価値観を一体化していくことを連想するような項目の選択率は下降しています。
このような特徴を持つ新入社員とともに協働していくポイントは、「共通目的」と「セルフリーダーシップ」です。前者は、トップダウンで一方的に降りてくるものではなく、双方向でのやり取りの中で、共に意味付けをしていくものです。協働者の間で意味付けされた共通の目的を置くことによって、多様な「個」が持つ“違い”は、物事をよりよくする一つの観点になり、プラスの要素に転換します。後者は、自分自身に対して発揮するリーダーシップを指します。VUCA環境下でも「個」を生かし活躍するため、若手層に自分起点で動くことで、よりよい状況を自らつくっていく力を身に着けてもらうことが重要となります。
多様性を持つ「個」を生かすということは、難度の高いことです。しかし、不確実なビジネス環境下で、事業・組織の持続的成長を促すキーとも言えます。そのきっかけは、新入社員と育成担当者の間でも、自分が所属するチームの中でも、誰もが身近なところで作ることができます。育成方法も正解がない時代の中で、ぜひ共に、新人若手育成をより良くしていく方法を見つけていければ幸いです。
2. 調査の結果
【調査1 働くうえでの意識】
●働きたい職場の特徴は「お互いに個性を尊重する」(50.7%)が10年前と比較し21.8ポイントUPし過去最高、「アットホーム」(37.3%) は過去最低(調査1-図表1)
・働きたい職場の特徴は、「お互いに助けあう」が昨年に続きトップ(66.4%)。
・「お互いに個性を尊重する」は10年前から21.8ポイントUPし、過去最高の50.7%。2010年調査開始以来で最
多い回答率となった。
・「アットホーム」(37.3%)、「活気がある」(25.3%)、「お互いに鍛えあう」(11.4%)は過去最低。
⇒「お互いに助けあう」「お互いに個性を尊重する」は、他の選択肢よりも選択率が高い結果となっている。「個」が守られた中で、互いに協力しあうような繋がりを求めている傾向がある。個性を尊重することで能力を伸ばす教育方針の影響や、SNSの発展により自己表現が強化されることにより、自己への意識が高まっていると考えられる。
「アットホーム」「皆がひとつの目標を共有している」の若手世代でも受け入れられそうな項目も近年選択率が減少傾向である。背景として、個性を持つことが当たり前の時代で育っているため、組織のカラーに自分が合わせていくという発想自体が薄くなっている可能性が高い。大学時代がコロナ対策期間だったため、就活もオンライン中心の世代でもあり、職場というもののイメージがつきにくいということも考えられる。
調査1-図表1 働きたい職場の特徴
Q:あなたはどのような特徴を持つ職場で働きたいですか?
(最大3つまでの複数選択/pt=ポイント)
※「昨年との比較」「5年間の比較」「10年間の比較」のポイント数は四捨五入して表示。調査1では以下同じ
※「調査開始以来」とは、最初に調査を開始した2010年以来。調査1では以下同じ
●働くうえで大切にしたいことは「任された仕事を確実に進めること」(38.9%)が過去最高、「何事も率先して真剣に取り組むこと」(13.8%)が過去最低(調査1-図表2)
・働くうえで大切にしたいことは、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が昨年に続きトップ(48.5%)。
・「任された仕事を確実に進めること」(38.9%)、「新しい発想や行動で、職場に刺激を与えること」(13.8%)が過去最高。
・「何事も率先して真剣に取り組むこと」(13.8%)が過去最低。
⇒「自律」を苦手とする若手層の特徴を反映している結果となった。社会の流れとして、消費者へのパワーシフトや教育の変化などにより、自発的に行動していく経験が積みにくい。さらに、学生時代の数年をコロナ対策のさなかに過ごしていた世代でもあるため、行動による成功体験も積み切れていない傾向もある。一方で、「任された仕事」に対する意識は高い結果となった。この背景として、失敗への不安や恐怖が強い故、堅実に仕事を進めたい意識が強まっていることが考えられる。
調査1-図表2 働くうえで大切にしたいこと
Q:あなたが社会人として働いていくうえで大切にしたいことは何ですか?
(最大3つまでの複数選択/pt=ポイント)
●上司に期待することは「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(49.1%)が過去最高、 「言うべきことは言い、厳しく指導すること」(17.5%)が過去最低(調査1-図表3)
・上司に期待することは、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が昨年に続きトップ(49.5%)。
・「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が10年前から16.3ポイントUPし、49.1 %で過去最高。
・「仕事に情熱を持って取り組むこと」(19.6%)が過去最低。また、「言うべきことは言い、厳しく指導する
と」が10年前と比較し20.6ポイントDOWNし、17.5%で過去最低。
⇒昨年に引き続き、上司に対しても、個性を尊重するコミュニケーションを求めている。社会全体のハラスメント意識の強まりなどにより、厳しく叱られる経験も減少し、厳しいフィードバックへの苦手意識がさらに高まっている。新入社員は、相手に心を許すまで一定の距離を置く傾向もあるため、“情熱”という強いワードが入る項目の選択率が下がった可能性が高い。
調査1-図表3 上司に期待すること
Q:あなたが上司に期待することは何ですか?〈最大3つまでの複数選択/pt=ポイント〉
【調査2 仕事観】
● 仕事をするうえで重視したいことトップ2は「成長」(28.8%)と「貢献」(26.7%)。「競争」(2.4%)は昨年に続き最下位(調査2-図表1)
・仕事をするうえで重視したいことは、「成長」(28.8%)と「貢献」(26.7%)がトップ2。
・「競争」(2.4%)は昨年に続き最下位。
⇒この結果は、新入社員が物事の意味や価値を重視する傾向にあるため、「競争で1位になる」などの外発的動機付けよりも、「成長実感」や「貢献実感」のような内発的動機付け*要素を必要としていることが背景にあると考えられる。意味や価値を重視する背景としては、サービスやキャリアなどの選択肢が増加し、よりマッチするものを“選べる”時代になったことがある。さらに、古いやり方や価値観に限界を感じ、より人生の充実や社会貢献につながる価値観を重視するようになっていることが考えられる。
*内発的動機付け:内面に沸き起こった興味・関心や意欲に動機づけられている状態のこと
調査2-図表1 仕事をするうえで重視したいこと
Q:あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?
当てはまるものに最大2つまでチェックを入れてください。
(n=1,520/2つまで複数選択)
●得意なスタンスのトップ2は「協働」(25.9%) と「相手基準」(24.9%)。苦手意識のあるスタンスのトップ2は「試行」(28%)と「自発」(26.6%)(調査2-図表2・3)
・得意なスタンスは、「協働」(25.9%)と「相手基準」(24.9%)がトップ2。
・苦手意識のあるスタンスは、「試行」(28%)と「自発」(26.6%)がトップ2。
調査2-図表2 得意なスタンス
Q:「得意だな」「強みとしてさらに活かしたい」と思うスタンスにチェックを入れてください。
(n=831/複数選択)
調査2-図表3 苦手意識のあるスタンス
Q:「不安・苦手意識があるけど大事だな」「意識的に取り組みたい」と思うスタンスにチェックを入れてください。
(n=831/複数選択)
※選択肢のスタンスは、弊社新入社員 研修「F-BT」内で扱う、ビジネスパーソン に求められる6つのスタンス
●新入社員時代に身につけるべきことのトップは「社会人としての基本行動」(38.9%)、最下位は「会社の理念や価値観に沿った行動」(0.9%)(調査2-図表4)
・新入社員時代に身につけるべきことは、「社会人としての基本行動」(38.9%)が1位。
・「会社の理念や価値観に沿った行動」(0.9%)が最下位。
⇒新入社員時代にスタンスやマナーよりも、報告・連絡・相談、PDCAなどの基礎行動を身につけるべきことと答えた割合が最も高かった。これは、How Toのような具体的インプットの方が、仕事に直接的に役立ち、効率的だと思っている傾向の現れだと推測する。「会社の理念や価値観に沿った行動」の組織適応への選択率は1%を切る結果となった。「個」の意識が高まる中、組織への帰属意識・欲求自体が低下している可能性が考えられる。
調査2-図表4 身につけるべきこと
Q:新入社員時代に身につけるべきことの中で、特に重要だとあなたが考えるものを1つ選んでください。
(n=1520/単一選択)
●就職先での勤続意向は「現在の会社で勤め続けることにこだわらない・どちらかと言えばこだわらない」(57.4%)が「定年まで現在の会社で勤めたい・どちらかと言えば勤めたい」(33.2%)を上回る(調査2-図表5)
調査2-図表5 就職先での勤続意向
Q:あなたの考えにより近いのは、A・Bのどちらですか。(n=509、単一選択)
3.調査概要
新入社員意識調査2023 調査1
調査日: 2023年3~4月
対象者:弊社の公開型新入社員導入研修「8つの基本行動」の受講者509名
平均年齢:22.5歳
最終学歴:大卒以上82.9%
300名未満企業比率:67.0%
調査目的:今年の新入社員の意識・特徴を把握する
調査方法:質問紙調査
質問形式:期待や不安などに関する5つの質問について、選択肢のうち、あてはまるものを最大3つ
まで選択する
管理職・雇用・就職先での勤続意向などに関する質問について、リッカート式で選択する
新入社員意識調査2023 調査2
調査日:2023年2~4月
対象者:弊社のインハウス型新入社員導入研修およびWEB学習プログラム(学習管理システム利用)
の受講者1,840名
300名未満企業比率 : 8.1%
調査目的:今年の新入社員の意識・特徴を把握する
調査方法:インターネット調査
質問形式:仕事をするうえで重視するキーワードについて、選択肢のうち、あてはまるものを最大
2つまで選択する
得意なスタンスについて、あてはまるものを1つ、苦手意識のあるスタンスについて、
あてはまるものを複数選択する
リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp
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