AI時代、なぜ企業で「判断」が課題になったのか(組織行動科学®)

980社(大手約8割・中堅約2割)の82%で判断経験が減少した背景にある、環境変化と仕事構造の変化を公開

組織行動科学®︎

働き方改革、効率化、標準化、SFA、プロセス管理、IT化。

企業が良かれと思って進めてきた改善の結果、事実を確かめながら考える仕事の価値が、短期的な効率としては見えにくくなり、前例どおりに進める仕事の進め方が強まりました。さらに、問題解決思考や各種フレームワークを学んでも使いにくい土台が現場で広がり、AI時代にその限界が表面化した背景を、33.8万人・980社の実践と分析、そして組織行動科学®・経験学習の理論から整理したレポートを公開します。


組織行動科学®を提供するリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑智康)は、33.8万人・980社の実践と分析をもとに、そもそも、なぜ今、企業で「判断」が課題になったのかを整理したレポートを公開しました。

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今回お伝えしたいのは、単に「これからは判断が大事です」ということではありません。本当にお伝えしたいのは、なぜ多くの企業で、判断が必要な時代になったにもかかわらず、現場では判断経験が減る方向に進んできたのか、その背景です。

公開済みの分析では、33.8万人・980社の分析から、企業の82%で判断経験が減少していることが確認されています。また、本分析対象980社の構成は、大手企業が約8割、中堅企業が約2割です。つまり、今回の話は、一部の企業だけで起きている特別な問題ではありません。多くの企業で共通して起きている、環境の変化と仕事の変化として見る必要があります。

もともと、事実確認が必要な仕事はあった

まず大事なのは、生成AIが出てくる前から、企業には「事実確認が必要な仕事」があったということです。たとえば、

  • 顧客ごとに事情が違う

  • 案件ごとに制約が違う

  • 現場ごとに条件が違う

  • 関係者ごとに見ていることが違う

こうした仕事では、ただ前例を知っているだけでは足りません。

  • 「今回は何が違うのか」

  • 「何を確かめる必要があるのか」

  • 「何を優先するべきか」

を、その都度見ていく必要があります。つまり、判断が必要な仕事は、AIが出る前からずっと存在していたのです。

では、なぜその判断が減っていったのか

ここが今回の一番大事な点です。

事実確認が必要な判断は、もともと簡単ではありません。なぜなら、それは

  • うまくいくかどうかを事前に言い切りにくい

  • 時間がかかる

  • 人によって質がぶれやすい

  • 結果も一定しにくい

という性質を持っているからです。

企業から見ると、こうした判断を全社員に広く求めることは、簡単ではありません。なぜなら、

  • 品質のばらつきが出やすい

  • 失敗のリスクが高まる

  • 教える負荷が大きい

  • 処理スピードが落ちやすい

からです。

そのため企業は、現場を守り、品質を安定させ、仕事を速く、再現しやすくするために、

  • 働き方改革

  • 効率化

  • 標準化

  • マニュアル化

  • SFA

  • プロセス管理

  • IT化

を進めてきました。

これ自体は、間違ったことではありません。むしろ、良かれと思って進められた合理的な改善でした。

前例やルールは悪いものではない

ここで誤解してはいけないのは、前例やルールそのものが悪いわけではないということです。

決められたルール、標準手順、既存の前例は、過去の誰かが、

  • 事実を確かめ

  • 比べ

  • 判断し

  • 試し

  • 結果を見て積み上げた

その結果としてできあがったものです。

だからこそ、それがあることで、今の社員は安心して仕事を進めることができます。品質も安定しやすくなります。再現性も高まります。つまり、前例やルールは、過去の判断の蓄積であり、組織にとって大切な資産です。

ただし、それが整うほど、今の人は判断しなくて済むようになる

しかし、ここに別の変化が起きます。

前例やルールがよく整っている職場では、今の担当者は、

  • 「今回は何が違うのか」

  • 「相手は実際に何を求めているのか」

  • 「どの条件を確認しなければいけないのか」

を、自分で見なくても、ある程度仕事が進められるようになります。つまり、事実確認を起点にして考える必要が減るのです。

すると何が起きるか。

相手や現場をよく見るよりも、

  • 自分に与えられた役割

  • 自分のタスク

  • 自分の評価

  • 自分の効率

  • 自分の責任範囲

を中心に仕事を考えやすくなります。これは、単に「確認不足」になるという話ではありません。もっと深いところで、仕事の主語が、相手や現実から、自分へ寄りやすくなるということです。

「役立ちたい」という気持ちも、自分中心になりやすい

社員の中には、本来「誰かの役に立ちたい」と思っている方々が、組織のライフサイクルに応じて5%から20%います。これは自然なことです。

しかし、相手を見て、事実を確かめて、相手にとって何が本当に必要かを考える経験が減ると、その気持ちは相手基準で働きにくくなります。

そうすると、「相手に役立ちたい」は、いつのまにか

  • 自分が役立ったと思いたい

  • 自分の役割を果たしたい

  • 自分の責任範囲の中で貢献したい

  • 自分なりに良いことをしたい

という、自分を主語にした形に寄りやすくなります。

これは、意欲がないからではありません。むしろ逆で、役立ちたいという気持ちはあるのに、相手を主語にして判断する経験が減ったために、その気持ちの使われ方が変わっていくのです。

つまり、企業は悪いことをしたのではない

ここまでをまとめると、こうなります。

企業は、判断を軽視したわけではありません。また、現場から考える力を奪おうとしたわけでもありません。むしろ、

  • 現場を守るため

  • 品質を安定させるため

  • 再現性を高めるため

  • 速く処理するため

に、合理的な改善を進めてきたのです。

ただ、その結果として、

  • 迷いながら考える

  • 複数案を比べる

  • どの事実を見るかを考える

  • 理由を言葉にする

  • 結果から学ぶ

という過程が、仕事の中から少しずつ減っていきました。つまり、良かれと思って進めた合理化が、判断経験を減らす方向にも働いたのです。

その結果、前例どおりに進める仕事の進め方が強くなった

こうして強まったのが、前例適用を中心に進める仕事の進め方です。ここでも大事なのは、前例を使うこと自体が問題なのではない、ということです。問題なのは、本来は状況を見て考える必要がある仕事まで、前例どおりに進めることが合理的だとされやすくなったことです。

そうなると、社員は

  • 正しく進めること

  • 決められたやり方を守ること

  • 前と同じように処理すること

には慣れます。しかし、

  • 今回は何が違うのかを見ること

  • 相手の状況を確かめること

  • 条件差を踏まえて変えること

の経験は積みにくくなります。その結果として、

  • 上司への確認が増える

  • 熟練者に判断が集中する

  • 任せても途中で止まりやすい

  • 理由が残らない

  • 担当者によって対応がばらつく

といったことが起きやすくなります。

33.8万人・980社の分析で見えているのは、単に「判断経験が減っている」という数字だけではありません。判断経験が仕事の中に設計されていないと、組織全体の処理能力そのものが弱くなるということです。

さらに問題を大きくしたのが、「学んでも使えない」という状態

ここで、人材育成の問題が重なります。

多くの企業では、問題解決思考、各種フレームワーク、成功事例、原則原理などを学ばせることで、考える力や判断力を高めようとしてきました。これは自然なことです。むしろ、企業として当然の取り組みです。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

それは、こうした知識の多くが、

「知れば使える知識」ではなく、「経験を通じて初めて使える知識」

だということです。

問題解決思考やフレームワークは、覚えれば終わるマニュアルではありません。本来は、

  • 現場で何が違うのかに気づき

  • どの事実を確認すべきかを考え

  • 選択肢を比べ

  • なぜそう考えたのかを言葉にし

  • 結果を見て基準を更新する

この過程を通じて、初めて使えるようになります。

なのに、現場にはそれを使う土台がない

ところが、前例どおりに進める仕事の進め方が強くなると、そもそも

  • 事実を確認する必要がない

  • 違いを見なくても進められる

  • 判断理由を残さなくても回る

  • 結果から基準を更新しなくても仕事が終わる

という状態になりやすくなります。

つまり、研修で知識を身につけても、それを使うための土台が仕事の中にないのです。

すると何が起きるか。

  • フレームは「考えるための材料」ではなく「正解」になる

  • ケースは「比較するための材料」ではなく「模範解答」になる

  • 原則は「判断の指針」ではなく「守るルール」になる

結果として、

  • 理解は増える

  • 言葉は知っている

  • 説明はできる

のに、

  • 現場では使えない

  • 行動が変わらない

  • 同じような結論が繰り返される

という状態が起きます。これは、本人が怠けているからではありません。

知識の性質と、それを使う仕事の条件が合っていないからです。

組織行動科学®で見ると、原因は個人ではなく環境にある

この問題を、「もっと頑張ればよい」「もっと考えればよい」「能力の高い人を採ればよい」と考えると、本質を外します。

組織行動科学®の考え方では、組織で働く人の思考や行動は、個人だけで決まるのではありません。事業環境、歴史、これまでの経験、仕事の設計、評価のされ方によって、何が起こり、何が続くかが大きく変わります。つまり、

  • 前例で動くこと

  • 事実確認を省きやすくなること

  • 学んだ知識を使えないこと

も、本人だけの問題ではなく、そのような行動が起きやすい環境と仕事構造の中で繰り返されてきた結果として理解する必要があります。

経験学習の観点でも、知識を与えるだけでは足りない

経験学習の観点から見ても、知識を与えることと、判断できるようになることは同じではありません。

AI時代に必要な「判断できる人材」とは、単に知識が多い人でも、答えを早く出せる人でもありません。必要なのは、

  • 事実を確認する力

  • 構造で捉える力

  • 優先順位を決める力

  • 価値やリスクを見極める力

  • 判断理由を共有する力

  • 振り返って更新する力

です。

つまり、経験学習とは、ただ経験することではありません。

事実確認 → 比較 → 判断 → 言語化 → 更新

が起きて初めて、経験が学びになります。だから、知識を増やすだけでは足りません。その知識が、判断として使われる経験の流れの中に置かれていなければならないのです。

そこに生成AIが入ってきた

そして、ここに生成AIが入ってきました。生成AIは、

  • 知識を調べること

  • 情報を整理すること

  • 既存事例を参照すること

  • 定型的な処理を進めること

に強みを持ちます。つまり、前例・知識・手順で進めやすい仕事ほど、AIと相性がよいのです。すると、人に残る仕事は相対的に、

  • 顧客差が大きい

  • 案件差が大きい

  • 現場差が大きい

  • 制約差が大きい

といった、条件差のある仕事に偏っていきます。

つまり今、企業で起きているのは、判断が急に必要になったのではありません。もともとあった判断が、AIや標準化によって周辺の処理仕事が減ったことで、見えやすくなり、より重要になったのです。ところが、その判断を育てる仕事の土台と、学んだ知識を判断として使う基盤は、すでに弱くなっていました。ここに、今の育成課題の本質があります。

だから今、企業が見直すべきこと

したがって、今企業に必要なのは、「もっと主体的に考えろ」と言うことではありません。

まず確認すべきなのは、

  • どの仕事で判断が発生しているのか

  • どこで相手を見る必要があるのか

  • どこで事実確認が必要なのか

  • なぜそこが前例どおりの処理に置き換わってきたのか

  • 学ばせている知識が、本当に現場で使える条件を持っているのか

です。そのうえで、

  • 判断対象

  • 判断条件

  • 判断基準

  • 判断分担

  • 経験設計

  • 振り返り設計

を見直し、判断が日々の仕事の中に残るように、仕事そのものを設計し直す必要があります。

必要なのは、個人教育を増やすことだけではありません。相手を主語にした判断が起きる仕事の土台と、学んだ知識が判断として機能する基盤を取り戻すことです。

まとめ

そもそも、なぜ企業で「判断」が課題になったのか。

それは、判断が昔は不要だったからではありません。昔から、事実確認が必要な仕事は存在していました。ただし、それは不確実で、負荷が高く、全社員に広く担わせるには難しい仕事でもありました。だから企業は、良かれと思って、働き方改革、効率化、標準化、SFA、プロセス管理、IT化を進めてきました。その結果、前例どおりに進める仕事の進め方が強まり、事実確認を起点にした判断の価値は、短期的な効率としては見えにくくなりました。

さらに、前例やルールは、過去の誰かの判断の蓄積であるがゆえに、今の社員を安心させ、業務を安定させる一方で、相手を見て判断する経験を減らしやすくもしました。その結果、仕事の主語は相手や現実ではなく、自分へ寄りやすくなり、「役立ちたい」という思いも、相手基準ではなく自分基準で使われやすくなりました。

加えて、問題解決思考や各種フレームワークのような知識を学ばせても、それを使うための事実確認・比較・判断・言語化・更新の基盤が仕事の中になければ、理解は増えても判断は増えません。

33.8万人・980社の分析で見えているのは、企業の82%で判断経験が減っているという事実だけではありません。
判断経験が設計されていない仕事では、

  • 上司への確認集中

  • 対応のばらつき

  • 熟練者依存

  • 任せにくさ

が起きやすく、組織の処理能力そのものが制約されるということです。

組織行動科学®の観点では、これは個人の意欲や能力の問題ではなく、事業環境・歴史・経験の中で形成された仕事構造の問題です。そして、経験学習の観点では、知識を増やすことだけではなく、その知識が事実確認・比較・判断・更新の流れの中で使われることが必要です。

そこへ生成AIが入り、前例・知識・手順で進めやすい仕事がさらに代替されるようになったため、人に残る仕事ほど判断が必要になった一方で、その判断を育てる構造と、知識を判断として使う基盤の弱さが同時に表面化したのです。

だから今、企業が見直すべきなのは、単なる人員数でも、知識教育の量でもありません。

  • どの仕事に、どの種類の判断が残っているのか

  • その判断を、前例どおりの処理だけで済ませず、相手を見て、事実確認・比較・理由の言語化・振り返り更新を伴う経験として残せているのか

  • さらに、学ばせている知識が、その判断の中で本当に使われる基盤を持っているのか。

ここを見直すことが、AI時代における組織の対応能力を高める出発点になります。

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リクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑智康)は「より善くを目的に」を掲げ、33.8万人の働く人のデータに基づいた 組織行動科学® を基盤に、7つの研究機関が980社を支援している企業です。

組織行動科学®は組織で働く私達の思考と行動が「なぜ起こり」「なぜ続くのか」を事業環境と経験から解明し、より善く再現する手段です。

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本社所在地
東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
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090-4183-2525
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甲畑智康
上場
未上場
資本金
-
設立
2020年10月