<管理職の業務内容の実態>ベテラン管理職の60.2%が「プレーヤー業務7割以上」

管理職意識調査(役割・悩み編)

ALL DIFFERENT株式会社

累計20,000社450万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および「人と組織の未来創り🄬」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所🄬は、2025年5月20日~7月17日の期間で、管理職531名を対象に「管理職意識調査」を行いました。本リリースでは、回答者のうち課長クラス以上の管理職の役割や悩みに焦点を当てた結果を公表します。

背景

近年、企業を取り巻く環境が急速に変化する中、管理職に求められる役割も多様化・高度化していると言われています。負担・責任と報酬・権限が見合わないと感じる人が増えており、管理職は必ずしも誰もが目指したい役職ではなくなってきているのかもしれません。しかし、管理職は現場と経営層をつなぎ、組織の中核を担う非常に重要な役職です。組織全体のパフォーマンスを高めるには、メンバーをけん引する管理職の存在が必要不可欠です。本リリースでは、管理職がどのような役割認識を持ち、どのような悩みを抱えているか実態をまとめました。

調査結果の詳細

1.管理職の最大の悩みは「部下の育成」、半数以上が回答。「悩みなし」の管理職はいない

まず初めに、課長クラス以上の管理職(以下「管理職」と記載)は、管理職としてどのような悩みを抱えているか質問しました。結果、「特になし」と回答した管理職はおらず、全ての管理職が何かしらの悩みを抱えていることがわかりました。


最大の悩みは「部下の育成」で、51.0%と半数以上が回答。次に「部門の成果」が34.7%、「方針・戦略の浸透」が32.5%と続きました(図1)。

次に、管理職のうち、1~3年目の課長クラスを「新任管理職」、4年目以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と3つのステージに分類し、ステージ別に違いがあるか見ていきます。

新任管理職

1~3年目の課長クラス

ベテラン管理職

4年目以上の課長クラス

幹部候補

部長クラス

2.新任管理職は「部下の育成」「マネジメント知識の不足」に悩み、ベテラン管理職は「コミュニケーション」、幹部候補は「方針・戦略の浸透」「方針・戦略の実行」に悩む割合が高い

図1の質問を、前述の3つのステージに分けて比較すると、それぞれ半数以上が「部下の育成」と回答し、ステージに関係なく最大の悩みであることがわかりました。次に、ステージごとに上位の回答を見ていきます。

まず、新任管理職では、「部下の育成」(52.2%)の次に、「自分のマネジメント知識の不足」(42.6%)、「部門の成果」(36.0%)と続きました。「自分のマネジメント知識の不足」は、他ステージより17ポイント以上高い割合になりました。

ベテラン管理職では「部下の育成」(50.4%)の次に、「部下とのコミュニケーション」(35.8%)、「部門の成果」(33.3%)が続きました。「部下とのコミュニケーション」「上司や経営層とのコミュニケーション」は他ステージよりも高くなりました。

幹部候補では「部下の育成」(50.0%)の次に、「方針・戦略の浸透」(44.9%)、「部門の成果」(34.7%)と続きました。「方針・戦略の浸透」は、他ステージより17ポイント以上高い割合になりました。


ステージが低いほど、部下育成や知識不足に悩みを抱えており、ベテラン管理職になると上司・経営層・部下等、周囲とのコミュニケーションに悩み、幹部候補になると方針や戦略の浸透・実行に対して悩む傾向が大幅に高まることがわかりました(図2)。

3.管理職として認識している役割、新任・ベテランは「方針の伝達」、幹部候補は「事業計画・部門戦略の構築」が高い割合に

管理職が抱える悩みの実態が明らかになりました。では、管理職本人は自身について、どのような役割を発揮すべきと考えているのでしょうか。管理職として認識している自身の役割について、結果をステージ別に比較しました。

新任管理職は「会社や部門方針を、部下に正しく伝達すること」(65.4%)が最大となり、次に「部下の目標を設定し、共有すること」(64.7%)、「部下の業務状況を把握すること」(60.3%)と続きました。「部下の目標を設定し、共有すること」は、他ステージより13ポイント以上高い割合となりました。

ベテラン管理職は「会社や部門方針を、部下に正しく伝達すること」(67.5%)が最大となり、「会社の方針を正しく理解すること」(56.1%)、「部下の業務状況を把握すること」(55.3%)と続きました。

幹部候補は、「会社の事業計画に対し、部門の戦略を構築すること」(74.5%)が最大となり、他ステージより22ポイント以上高い割合になりました。次に、「会社や部門方針を、部下に正しく伝達すること」(69.4%)、「構築した部門の戦略を、計画に落とし込むこと」(65.3%)が続きました。


これより、新任管理職・ベテラン管理職は、会社や部門方針を伝達することを役割として認識している人が多いことがわかりました。その割合は、ステージが上がるほど高まることもわかりました。一方、幹部候補になると、会社や部門方針を伝達すること以上に、事業計画や部門戦略を構築することに対して、役割認識を持つ割合が高いことも明らかとなりました(図3)。

※全体の結果は、「参考資料①」をご参照ください。

4.管理職の業務内容、新任は半数以上、ベテランは6割以上が「プレーヤー業務寄り」。幹部候補は半数以上が「マネジメント業務寄り」

管理職の業務内容の実態を調査するために、マネジメント業務とプレーヤー業務のうち、プレーヤー業務に費やしている時間の割合はどの程度か、0%から100%の10段階で質問してみました。

プレーヤー業務の割合が0~30%台と回答した群を、マネジメント業務の割合が多いタイプ(以下、「マネジメント業務寄り」と記載)、プレーヤー業務の割合が40~60%台と回答した群を、プレーヤー業務とマネジメント業務の割合が約半分のタイプ(以下、「中間タイプ」と記載)、プレーヤー業務の割合が70~100%と回答した群をプレーヤー業務の割合が多いタイプ(以下、「プレーヤー業務寄り」と記載)と3つに分類しました。

マネジメント業務寄り

プレーヤー業務の割合0~30%台*、マネジメント業務の割合が多いタイプ

中間タイプ

プレーヤー業務の割合40~60%台*、プレーヤー業務とマネジメント業務の割合が約半分のタイプ

プレーヤー業務寄り

プレーヤー業務割合70~100%*、プレーヤー業務の割合が多いタイプ

*「マネジメント業務とプレーヤー業務のうち、プレーヤー業務に費やしているご自身の時間の割合はどの程度ですか」という質問に対し、全てプレーヤー業務を100%、全てマネジメント業務を0%とし、10段階で回答。

結果をステージ別に分析したところ、新任管理職は「マネジメント業務寄り」の割合が18.4%、「中間タイプ」は28.7%、「プレーヤー業務寄り」は52.9%となりました。

ベテラン管理職は、「マネジメント業務寄り」の割合が15.4%、「中間タイプ」は24.4%、「プレーヤー業務寄り」は60.2%となりました。「プレーヤー業務寄り」は新任管理職よりも高い割合となりました。


幹部候補は、「マネジメント業務寄り」の割合が51.0%と半数以上で、「中間タイプ」は19.4%、「プレーヤー業務寄り」は29.6%となりました(図4)。

5.プレーヤー業務寄りの管理職は「プレーヤー業務の移管」「プレーヤーとしての成果」に課題を感じる割合が高く、マネジメント業務寄りの管理職は「部門業務の進捗」の割合が高い

ここからは、管理職としての悩みや役割認識を、業務内容のタイプ別(「プレーヤー業務寄り」/「マネジメント業務寄り」)で比較します。まずは、管理職としての悩みを業務内容のタイプ別に見ていきます。

プレーヤー業務寄り」の管理職の悩みの1位は「部下の育成」(49.7%)で、「部門の成果」(36.0%)、「部下とのコミュニケーション」(31.4%)と続きました。「マネジメント業務寄り」と比較すると、「プレーヤー業務の移管」「プレーヤーとしての業務の成果」に悩みを抱える割合が高いことも特徴です。

一方、「マネジメント業務寄り」の管理職は、「部下の育成」が52.1%と半数以上が回答し、「プレーヤー業務寄り」の管理職よりも高くなりました。続いて、「方針・戦略の浸透」が38.3%、「部門の成果」が34.0%と続きました。「部門の業務の進捗」は、「プレーヤー業務寄り」よりも10.4ポイント高くなりました(図5)。

※全体の結果は、「参考資料②」をご参照ください。

6.マネジメント業務寄りの管理職は、自身の役割と認識している領域が広く、特に「方針を正しく伝達すること」に対して役割意識が高い

最後に、管理職として認識している役割を、業務内容のタイプ別(「プレーヤー業務寄り」/「マネジメント業務寄り」)で比較しました。結果、ほとんどの項目において「マネジメント業務寄り」は、「プレーヤー業務寄り」より、その項目の内容を役割として認識している割合が高くなりましたが、「部下の業務状況を把握すること」は「プレーヤー業務寄り」の回答割合の方が15.3ポイント高くなりました。


回答割合の差が大きかったものを比較すると、「経営層や他部門との調整を行うこと」は20.6ポイント、「会社や部門方針を、部下に正しく伝達すること」は19.6ポイント、「マネジメント業務寄り」の方が高い割合となりました(図6)。

※全体の結果は、「参考資料③」をご参照ください。

                       

まとめ

本調査結果より、管理職の最大の悩みが「部下の育成」であることが明らかとなり、人材育成への課題意識が高いことがわかりました。悩みを管理職のステージ別に比較すると、新任管理職はマネジメント知識不足、ベテラン管理職は周囲とのコミュニケーション、幹部候補は方針・戦略の浸透・実行に対して悩みを抱える傾向にあることがわかりました。ステージが上がるにつれて組織全体への影響力が求められる立場となるため、特に周囲を巻き込みながら方針を伝えていくことに対する難しさに直面する機会が増えます。そうした経験を重ねる中で管理職個人の課題から、組織全体の課題へと意識が移り変わっていることがわかります。

管理職としての役割をどのように認識しているかステージ別に比較したところ、新任管理職・ベテラン管理職は「会社や部門方針を正しく伝達すること」を重視する結果となり、幹部候補よりも現場との橋渡し役としての意識が強いことが推察できます。幹部候補は「会社や部門方針を正しく伝達すること」だけでなく、「部門の戦略構築・計画への落とし込み」を重視していることがわかり、戦略的思考や実行力が評価されるポジションとして、より上位視点で組織を動かす役割が求められていると認識していることが読み取れました。

管理職を業務内容から「プレーヤー業務寄り」「マネジメント業務寄り」のタイプに分類し、悩みや役割認識を比較したところ、新任管理職・ベテラン管理職は、半数以上が「プレーヤー業務寄り」でした。特に、ベテラン管理職は、6割が「プレーヤー業務寄り」となり、新任管理職よりも高い割合になった点が特徴的です。このことから、組織の人員不足、業務分担の不均衡など、マネジメント業務に専念する上で、様々な障壁が背景にあることがうかがえます。また、ベテラン管理職は、新任管理職に比べてマネジメント経験が多く、マネジメントの効率が上がっている分、プレーヤー業務に注力していることも考えられるでしょう。一方、幹部候補の半数以上が「マネジメント業務寄り」で、プレーヤー業務から離れている管理職が多いことがわかりました。

業務タイプ別に悩みや役割認識を分析すると、「プレーヤー業務寄り」は「部下の育成」や「部下とのコミュニケーション」「プレーヤー業務の移管」に課題意識があり、「マネジメント業務寄り」は「方針・戦略の伝達・浸透・実行」に対する課題意識があることもわかりました。

考察「管理職がプレーヤー業務から脱却できない理由とは」

本調査の結果、ベテラン管理職の約6割がプレーヤー業務寄りであること、また「新任管理職」「ベテラン管理職」「幹部候補」の各ステージにおいて、最大の悩みが「部下育成」であることが明らかとなりました。

管理職自身がプレーヤー業務に多くの時間を割いている状況では、部下育成に十分に取り組むことが難しくなります。多忙な管理職はプレーヤー業務とマネジメント業務のバランスを感覚的に捉えており、具体的な時間配分については認識していない場合が多いと考えられます。部下育成の時間を創出するためには、まずは予定表などを活用して業務の比率を定量的に把握し、目指すべき比率を検討することが有効です。

プレーヤー業務の比率が過度に高い場合には、現在担っている業務を「他者に委譲可能な業務」と「自身しか対応できない業務」に分類し、業務移管計画を策定したうえでメンバーへの委譲を進めることが求められます。ただし、ベテラン管理職の約6割がプレーヤー業務寄りであることは、管理職が自身の業務の多くを「自身でしか対応できない業務」に分類している可能性を示唆しています。そのような場合には「職位・権限」「スキル」「業務量(メンバーの工数管理の観点から管理職が巻き取っている業務)」の3つの視点から、「自身しか対応できない業務」を整理し、まずは「業務量」の視点から管理職が担っている業務の削減方法を検討することが必要です。

メンバーの工数に余裕があれば業務の移管が可能となるため、メンバーが現在担っている業務や業務プロセスを可視化し、廃止可能な業務や、回数・時間の削減が可能な工程がないかを確認し、工数のスリム化を図ることが欠かせません。加えて、属人化している業務の標準化を推進し、チームで分担できる体制へ移行を進めることも、持続可能な組織運営に向けて大切です。

一方で、企業における管理職評価が短期的な成果創出に偏っている場合、管理職が上述のような取り組みを進めることは困難です。企業としては、部下育成や組織全体での成果創出に資する取り組みが正当に評価される制度設計となっているか、改めて確認することが望まれます。

ALL DIFFERENT株式会社
ブランディング統括グループ コンテンツ開発担当
木下 桃子(きのした・ももこ)

早稲田大学大学院修了後、ALL DIFFERENT(旧トーマツ イノベーション/ラーニングエージェンシー)に入社。コンサルタントおよび研修講師として、サービスの企画・開発、講師育成、中堅企業から大手企業に至るまでの人材育成支援に従事。研修の企画・提案から実施に至るまで、幅広い領域で実績を有する。

研修講師として、管理職向けプログラムを中心に多数登壇。OJT指導者向け研修や女性活躍推進に関連するプログラムなども含め、年間100回を超える研修を実施している。

現在は、管理職育成を目的としたコンテンツ開発をサービス企画・開発チームのリーダーとして、主導。

調査概要

調査対象者

当社が提供する管理職向け研修の受講者

調査時期

2025年5月20日~7月17日

調査方法

Web・マークシート記入式でのアンケート調査

サンプル数

531名

属性

(1)業種

農業,林業 4人(0.8%)

建設業 46人(8.7%)

製造業 120人(22.6%)

電気・ガス・熱供給・水道業 4人(0.8%)

情報通信業  103人(19.4%)

運輸業,郵便業 9人(1.7%)

卸売業,小売業 58人(10.9%)

金融業,保険業 22人(4.1%)

不動産業,物品賃貸業 18人(3.4%)

学術研究,専門・技術サービス業 17人(3.2%)

生活関連サービス業,娯楽業 8人(1.5%)

教育,学習支援業 1人(0.2%)

医療,福祉 4人(0.8%)

複合サービス事業 3人(0.6%)

サービス業(他に分類されないもの) 78人(14.7%)

その他 36人(6.8%)

(2)企業規模

50人以下 40人(7.5%)

51~100人 72人(13.6%)

101~300人 230人(43.3%)

301~1,000人 125人(23.5%)

1,001~5,000人 61人(11.5%)

5,001人以上 2人(0.4%)

わからない  1人(0.2%)

*本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「管理職意識調査(役割・悩み編)」】と明記ください

*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています

*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます

ラーニングイノベーション総合研究所

「人と組織の未来創り®」に関する様々な調査・研究活動を行っている当社研究機関。データに基づいた組織開発に関する解決策を提供。

ALL DIFFERENT株式会社

ALL DIFFERENT株式会社

組織開発・人材育成支援を手掛けるコンサルティング企業。
人材育成から、人事制度の構築、経営計画の策定、人材採用までの組織開発・人材育成の全領域を一貫して支援。

《沿革》
2006年 トーマツイノベーション株式会社として人材育成事業を開始し、業界初や特許取得のサービスを多数開発・提供
2019年 株式会社ラーニングエージェンシーとして、デロイトトーマツグループから独立
2024年 ALL DIFFERENT株式会社へ社名変更

代表取締役社長 眞﨑 大輔
本社所在地   〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町 ITOCiA(イトシア)オフィスタワー 15F(受付)・17F・18F
支社      中部支社、関西支社
人員数     328人(2025年4月1日時点)
事業      組織開発支援・人材育成支援、各種コンテンツ開発・提供、ラーニングイノベーション総合研究所による各種調査研究の実施
サービス    定額制集合研修「Biz CAMPUS Basic」/ライブオンライン研修「Biz CAMPUS Live」/ビジネススキル学習アプリ「Mobile Knowledge」/ビジネススキル診断テスト「Biz SCORE Basic」/IT技術習得支援サービス「IT CAMPUS」/デジタルスキル習得支援サービス「DX CAMPUS」/管理職アセスメント「Discover HR」「Competency Survey for Managers」/人事制度構築支援サービス「Empower HR」
経営計画策定支援サービス「Empower COMPASS」/転職支援サービス「Biz JOURNEY」ほか
URL       https://www.all-different.co.jp/corporate

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会社概要

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業種
サービス業
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03-5222-5111
代表者名
眞﨑 大輔
上場
未上場
資本金
-
設立
2006年02月