<カスハラに関する弁護士調査>弁護士の半数以上がカスハラ被害を経験、新たな法規制に賛同
顧客からの悪質なクレームや威圧的な言動などによって、従業員の就業環境が害される「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が問題視されています。東京都が今年度中に、カスハラ防止条例の制定に向けて、議論を本格化させています。また、厚生労働省は、パワハラ防止を義務付けた労働施策総合推進法を改正して、カスハラについても従業員の保護を企業側に義務付ける方向で検討を進めています。
弁護士ドットコム(東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO 元榮 太一郎)は、登録弁護士を対象に、カスハラ対策について調査を行いました。その結果、弁護士の半数以上が新たな法規制が「必要」と回答しています。また、自身がカスハラ被害を経験したという弁護士も半数以上にのぼりました。
■ 調査概要
調査機関:プロフェッショナルテック総研(弁護士ドットコム株式会社内)
調査方法:弁護士ドットコム®弁護士会員を対象にアンケートを実施
調査対象:弁護士ドットコム®の弁護士会員299名
調査期間:2024年6月9日〜15日
【結果サマリ】
東京都のカスハラ対策への意見 |
弁護士の半数以上が期待 |
有効なカスハラの対策方法 |
「法的手段をとる」が最多 |
過去3年間のカスハラの相談数 |
弁護士の約半数が過去3年間カスハラの相談数が「増えている」と回答 |
カスハラの相談内容 |
「加害者への対応(法的措置を含まない)」が77.1%と最多 |
弁護士に対するカスハラの状況 |
半数以上の弁護士がカスハラを経験 |
■東京都のカスハラ対策について、半数以上の弁護士が「期待できる」と回答
東京都のカスハラ防止条例制定の動きについて尋ねたところ、カスハラ防止や抑止に「期待できる」「一定程度は期待できる」が55.6%と半数超となりました。一方で、「あまり期待できない」「期待できない」が20.8%となりました。
期待する人からは、「条例の存在により抑止や毅然とした対応ができる」「罰則はなくても、顧客からの過剰なクレームやセクハラまがいの発言を防止する効果は多少なりとも期待できる」など、企業が顧客対応する際の後ろ盾になるという指摘がありました。
期待しない人からは、「カスハラを行う顧客が東京都の条例を意識するとは思えない」「強制力がないため抑止力にならなそう」「既に各事業者が取り組みを行っており、ガイドライン作成などが大きな効果を生むとは考えにくい」など、問題解決につながるのか懐疑的な声が聞かれました。
■企業へのカスハラ対策の義務付けは、弁護士の5割が「必要」、2割弱から不要論も
企業に対して、パワハラやセクハラ対策などと同様に、カスハラ防止対策について義務付けが必要かを尋ねたところ、「必要」が19.1%、「どちらかといえば必要」が32.8%と、約半数にのぼりました。「どちらともいえない」が31.4%、「どちらかといえば不要」が10.4%、「不要」が6.4%となりました。
自由回答では、「努力義務では企業はあまり本腰を入れない」「安全配慮義務の具体化になる。労災認定にもつながる」など、労働者を守るために対応強化を求める声がありました。
一方で、「行為主体が使用者の管理外の者である」「セクハラ・パワハラと異なり、対社外の問題のため、義務付けることまでは必要ではない」「顧客の行為が問題であって使用者にその防止を義務付けるのはやり過ぎ」など、企業への責任の押し付けではないかと懸念する声もありました。
■カスハラ対策は「悪質な客に対して、企業が実際に法的手段をとる」が65.6%と最多
カスハラをなくすために何が必要かを複数回答可とした上で尋ねたところ、「悪質な客に対して、企業が実際に法的手段をとる」が65.6%と最も多く、次いで「悪質な客に対して、警察がきちんと対応する」が58.9%と、顧客に対して厳しい対応を求める声が多くありました。
■弁護士の4割以上はカスハラ相談に対応
実際に顧問先の企業などから、カスハラについての法律相談を受ける機会があるかを尋ねたところ、「よくある」が5.7%、「たまにある」が38.1%と4割超となりました。
■カスハラ相談は「加害者への対応(法的措置を含まない)」が77.1%と最多
カスハラの相談が「ある」と回答した人に、その内容を複数回答可とした上で尋ねたところ、「加害者への対応(法的措置を含まない)」が77.1%と最多となったほか、「加害者への対応(損害賠償請求や刑事告訴など、法的措置を含む)」が47.3%、「被害に遭った従業員への対応」が31.3%、「社内のカスハラ防止体制の整備」が19.8%などとなりました。
弁護士への相談は、被害者への対応や対策よりも、理不尽な要求をしてくる加害者への対応で、法的措置を含まないものが多いことがわかりました。
特に印象に残っている相談について自由回答では、「顧問先の結婚式場で、新婦の母が太って見えるので、写真を取り直すよう要求された」「釣り銭の渡し方が悪いと謝罪文の提出を求められた」「不当な支払いだと約10年前のカード利用明細の返金を求められた」など、ごく最近の接客や対応についての理不尽な要求だけでなく、過去に遡って言いがかりをつけるなどの迷惑行為もありました。
■弁護士の約半数が過去3年間の相談数が「増えている」と回答
カスハラの相談が「ある」と回答した人に、この3年間で、カスハラの相談は増えているか尋ねたところ、ほぼ同率ですが「変わらない」が52.7%とやや上回りました。「減っている」という回答はありませんでした。
■半数以上の弁護士が、依頼者などからのカスハラを経験
依頼者や相談者から、カスハラだと感じる言動・行動を受けたことがあるかを尋ねたところ、「よくある」が7.0%、「たまにある」が48.8%と、5割超がカスハラ被害に遭った経験があることがわかりました。
■カスハラの内容最多は「暴言を吐く」
依頼者や相談者からのカスハラ経験者に、その内容について複数回答可とした上で尋ねたところ、「暴言を吐く」が68.9%と最も多く、次いで「些細なミスで過度な対応(費用の減額など)を要求する」が51.5%、「面談などで長時間拘束する」が34.7%、「口コミサイトやSNSに誹謗中傷を投稿する」が27.5%、「不当な懲戒請求」が19.8%などとなりました。
自由回答では、「思い通りにならない相談結果に逆上し、机を叩いて立ち上がり、渡した名刺を破り捨てられた」「一方的に解約して減額を要求してきたり、費用を支払わない」「委任契約書に明記されていないことを「約束したはず」と言い張ってきかない」などの経験をしている人がいました。
一方で、「カスタマーハラスメント禁止条項を作成して、サインしていただけない方の依頼は基本的にお断りしている」と、しっかりと事前に対策して相談に臨んでいる人もいました。
◆弁護士ドットコム株式会社について:https://www.bengo4.com/corporate/
本社:東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル
設立日:2005年7月4日
資本金:464百万円(2024年3月末現在)
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 元榮 太一郎
上場市場:東京証券取引所グロース市場
事業内容:「プロフェッショナル・テックで、次の常識をつくる。」をミッションとして、人々と専門家をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム®️」「税理士ドットコム®️」「BUSINESS LAWYERS®️」、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン®️」を提供
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