〜若年層ほど、接客における従業員の過度な負担を懸念。シニア層は「店員」への期待値が高め〜

全国の18~79歳の男女1,000人「接客サービスに関する調査」

ネオマーケティング

マーケティング支援事業を提供する株式会社ネオマーケティング(所在地:東京都渋谷区)は、一般社団法人社会調査支援機構チキラボ(東京都、代表理事・荻上チキ)と、2025年10月17日(金)~2025年10月24日(金)の8日間、全国の18~79歳男女を対象に「接客サービス」をテーマにインターネットリサーチを実施いたしました。

<調査背景>

多様性を尊重する価値観が広がっている昨今、接客サービスのあり方も変化しつつあります。かつての「おもてなし」は一律の理想像として語られがちでしたが、現場では感情労働の負荷やカスタマーハラスメントなど、サービス提供者側の「働きづらさ」も顕在化しています。さらに人権意識の高まりから販売元企業の倫理性を重視する購買行動も現れています。

そこで今回は、全国の18歳以上の男女を対象に、丁寧な接客への期待や、店員の見た目・振る舞いに対する許容度、カスハラ的行動の自己認識、商品の倫理性や社会問題が購買行動に与える影響などを幅広く聴取。

その結果から、多様な背景をもつ人々が共に暮らす社会において「労働者の人権を侵害しないサービスの境界線とはどのようなものか。」という実態を、年代差に注目して明らかにしました。

是非今後のマーケティング活動の一資料としてご活用ください。

【調査概要】

調査の方法:インターネットリサーチ

調査の対象:全国の18~79歳の男女

有効回答数:1,000名 

調査実施日:2025年10月17日(金)~2025年10月24日(金)

Topix(主題)◆「接客サービスに関する調査」主な質問と回答

スーパー・コンビニ・小売店等で接客を受ける際に必要だと思う対応

店員に「クレーム対応の際に冷静に対応」「顧客の怒りを受け止めつつ穏やかに返答」といった、場を荒立てない振る舞いを求める割合が、60〜70代のシニア層は他の年代よりも高く、若年層(18~29歳)とはそれぞれ12.1〜12.5ポイント・30.4〜34.5ポイントもの開きがあった。店員に対し、客側のイライラや不安な気持ちに寄り添って欲しい、という期待がシニア層はより強いことがうかがえる。

接客サービスに対する気持ち

シニア層(特に70代)では、様々な接客サービスに対し「“お客様との良好な関係を築くため”に必要である」という立場が目立った。いわば、昔ながらの商店街のように“人対人”で気さくにかかわってくれる店員像を、今も求める人が多いのかもしれない。一方、若年〜中年層では「店舗や企業のイメージ向上のため」「職業人としての責任だから」といった、仕事として求められる役割・ルールの一つとして位置づける回答に分散していた。

これに対し若年層(18~29歳)は、他の年代よりも「従業員に過度な負担をかけている」ことを理由に接客サービスを「不要」と考える傾向があり、特に「雑談や世間話まで笑顔で応じる」「顧客の怒りを受け止めつつ穏やかに返答する」といった感情面の対応に対して、シニア層とのギャップが大きくなっていた。若い世代ほど、店員も一人の生活者であり、過剰な笑顔や我慢を当然視すべきではないという感覚が強いようだ。

詳細結果

✓儀礼的・自己犠牲的なおもてなしは求めていないものの、シニア層はクレーム時の対応への期待値が高い。

スーパーやコンビニ、小売店等で接客を受ける際、以下の対応をどの程度必要だと思うかをお聞きしました。

「クレーム対応の際に冷静に対応」「顧客の怒りを受け止めつつ穏やかに返答」といった、場を荒立てない振る舞いは年代を問わず約70~90%(※1)が「必要」と捉えていることが明らかに。しかし、この2項目について最も肯定的な立場(「必要」と回答した割合)で比較すると、特に60〜70代のシニア層は他の年代よりも高く、若年層(18~29歳)とはそれぞれ12.1〜12.5ポイント・30.4〜34.5ポイントもの開きがありました。店員に対し、客側のイライラや不安な気持ちに寄り添って欲しい、という期待がシニア層はより強いことがうかがえます。

一方で、「過度に丁寧な敬語」「雑談や世間話まで笑顔で応じること」は賛否が分かれ、「深いお辞儀」や「自身の直接のミスではないのに過度な謝罪や謙遜をする」といった儀礼的・自己犠牲的なおもてなしは約70〜80%(※2)が「不要」と見なされています。

※1「絶対に必要」「どちらかといえば必要」の合算

※2「不要だと思う」「どちらかといえば不要」の合算

✓若年層ほど、接客における従業員の過度な負担を懸念。

前掲した設問【スーパー・コンビニ・小売店等で接客を受ける際に必要だと思う対応】にてそれぞれの対応を「絶対に必要」「どちらかといえば必要」もしくは「不要だと思う」「どちらかといえば不要」と回答した人に対し、その理由をお聞きしました。

シニア層(特に70代)では、必要と答えた理由に「お客様との良好な関係を築くため」が目立ちます。いわば、昔ながらの商店街のように“人対人”で気さくにかかわってくれる店員像を、今も求める人が多いのかもしれません。一方、若年〜中年層では「店舗や企業のイメージ向上のため」「職業人としての責任だから」といった、仕事として求められる役割・ルールの一つとして位置づける回答に分散していました。

これに対して不要派の理由では、若年層(18~29歳)ほど「従業員に過度な負担をかけているから」を選ぶ割合が多く、特に「雑談や世間話まで笑顔で応じる」「顧客の怒りを受け止めつつ穏やかに返答する」といった感情面の対応に対して、シニア層とのギャップが大きくなっています。若い世代ほど、店員も一人の生活者であり、過剰な笑顔や我慢を当然視すべきではないという感覚が強いようです。

✓サービス料金にはどの年代も消極的な反応だが、最も許容可能性が高いのは若年層。

スーパーやコンビニ、小売店等で、以下のような接客サービスが受けられるとしたら、サービス料金としていくらまでなら許容できるかをお聞きしました。

全体としては「接客のために追加料金までは払いたくない」という意識が根強いことがわかりました。特に「笑顔や穏やかな態度での接客」「安心感や信頼感を与えてくれる接客」は、有料サービスというより「それくらいは通常サービスとして当然」という前提で受け止められているようです。

一方で注目なのは、全項目において「サービス料金・チップは払いたくない」割合が18~29歳で最も低く、追加料金への許容度が高い点。SNSネイティブで、オンラインで情報を取りやすい世代だからこそ、最後の一押しとなる対面での丁寧な説明や、気持ちに寄り添う対応の“付加価値”を認めている可能性があります。

✓髪色、ピアスは年代問わず概ね抵抗なし。椅子に座ってのレジ打ちに抵抗感を抱く割合は年代によって32.7ポイントもの開きあり。

スーパーやコンビニ、小売店等で以下の接客を受けたり、以下のような店員を見かけたりした場合、どの程度抵抗感を覚えるかをお聞きしました。

多くの項目で、年代が下がるほど「全く抵抗はない」の割合が段階的に高くなっており、例えば「椅子に座ってレジ打ちをする店員」では18~29歳で50.0%に対し、70代では17.3%と32.7ポイントもの開きが見られます。

一方で、「名札に本名ではない名前が入っていたり、そもそも名札がない」「カスタマーハラスメントの注意喚起をするポスター」といった迷惑行為の抑止策は、いずれの年代でも肯定的な回答が約60~80%を占めました。これらは従業員を守る取り組みとして広く受け入れられているようです。

外見の自由についても若年層を中心に比較的寛容ですが、「タトゥーを入れている」だけは別枠で、18〜29歳以外ではネガティブな反応が上回っています。18~29歳の「全く抵抗はない」が28.7%で最も高い一方、60代・70代では「かなり抵抗がある」が40%前後で最多となるなど、世代間の価値観ギャップが残っていました。

✓若年層は多様性を受け入れやすい一方、自身の振る舞いにも寛容な傾向。

接客される場面で、これまで店員に対して行なったことがあるものをお聞きしました。

いずれの行動についても「まったく行なったことがない」が約80〜90%を占めており、少なくとも自己申告ベースでは、日常的にカスハラ的な行為を繰り返す人はごく少数にとどまっていることが分かります。

一方で注目されるのが18〜29歳の若年層で、「少し行なったことがある」「頻繁に行なっている」を合わせた割合が、全項目において年代別最多となっていました。前掲した設問【「不要だと思う」「どちらかといえば不要」だと思う理由】【スーパー・コンビニ・小売店等の接客/対応に対する抵抗感】では、若年層は店員の見た目や接客に寛容であり、従業員への過度な負担にも敏感な傾向が見られましたが、その一方で、自ら不満を強く表明したり、線引きを越えた振る舞いに出る割合も相対的に高いというねじれが見られます。

日頃は他者の多様性を受け入れつつ、「ここから先は許せない」というラインを越えたときには感情を強くぶつけやすい世代とも考えられそうです。

✓70代は商品の背景にある生産環境や倫理性も重視。国産へのこだわりは意見が二分。

買い物する際、以下のような商品の性質・要素をどの程度重視するかをお聞きしました。

多くの生活者にとって、価格や商品の機能だけでなく、「自分や家族の安全が脅かされないか」も、商品選びでは外せない要素であることがうかがえます。「健康を害する成分・物質がないか」「アレルギー成分・物質がないか」といった、自分や家族に直接不利益が生じる可能性のある要素は、いずれの年代でも40%以上が重視していました。

多くの項目においてシニア層の重視度が高くなっていましたが、最もそれが際立ったのが70代。「フェアトレード認証があるか」「適正な労働環境(児童労働・強制労働がない、適正な賃金など)をもつ会社の商品かどうか」「戦争・紛争に加担している国や会社の商品かどうか」「自然環境や動物福祉への配慮がなされた商品かどうか」「うなぎなど絶滅のおそれがある食べ物ではないか」では他の年代と10ポイント以上の差が生じていました。70代は特に、価格や機能だけでなく、背景にある生産環境や倫理性も含めて商品を選ぶ姿勢が強いと言えます。

「日本産かどうか」については、若年〜中年層でも重視派とそうでない層がはっきりと分かれており、物価高の中で“絶対に国産にこだわる”というよりも、内容や価格とのバランスで柔軟に判断する人が増えている可能性も考えられそうです。

✓CMタレントの炎上・CM表現での炎上だけでは、不買にはつながりにくい。

購入したいと思った商品やサービスに、以下それぞれの情報が加わった場合、購入意欲がどう変わるかをお聞きしました。

商品や企業に何らかの問題が見つかった場合でも、「気にはなるが購入はやめないと思う」「そもそも気にしない」といった回答がどの項目でも一定数あり、必ずしも不買に直結していない様子がうかがえます。特に若年層(18~29歳)ではその傾向が強く、「社会的に問題視されているかどうか」よりも、「自分にとってその商品が良いかどうか」を優先している姿が見えてきました。

前掲した設問【買い物する際に重視する商品の性質・要素】で、若年層(18~29歳)は他の年代よりも、原材料や倫理性など商品の背景要素を重く見ていない傾向がありましたが、その「気にはなるが、最終判断は自分基準」というスタンスがここでも一貫していると言えます。

また、「CMに起用したタレントにスキャンダルが発覚した」「CMの表現が差別的であると問題視された」場合でも、購入を控える人は多数派とは言えず、SNS上では大きく炎上するテーマであっても、生活者全体の購買行動に与える影響は限定的である可能性がありそうです。

とはいえ、企業としては、ネガティブなイメージを助長するリスクではあります。短期的に大きな影響はないとしても、中長期的な顧客との関係性を重要視するなら、炎上対策はより重要な取り組みであると言えるでしょう。

共同調査先 一般社団法人社会調査支援機構チキラボ コメント

 今回の調査から浮かび上がったのは、消費行動・場面で、「人権・倫理をさほど重視しない」傾向にあるのは中高齢層よりも若年層という結果である。

「店員との良好な関係」を希望し、客の感情をケアする接客を高齢者は若年層より求める傾向にある。対して、若年層の方が、「店員」の自由な振る舞いにも許容的で、感情的なケアは店員の労働負担になるという配慮も見える。

この結果をどのように解釈したら良いか。すでに接客の現場は多様な年齢・ジェンダー・外国ルーツを持つ人々などで担われている現実がある。このようななかで、「丁寧な接客」が当たり前と思っているのは中・高齢層だけであり、若年層にとっては、「丁寧な接客」はもはや当たり前ではない、という接客文化の変化を単に反映しているのかもしれない。あるいは好意的に解釈すれば、人権教育や共生社会に向けた様々な取り組み・啓発が若年層ほど行き届いている結果とみることも可能かもしれない。

しかし、他の調査項目も含めて全体を眺めてみると、残念ながら若者の人権意識の高さが要因となって得られた結果である、とは言い難い。たとえば、店員に対する理不尽な行為の実行経験率は、若年層の方が高かった。「店員」と「客」という役割関係を踏み越える、あるいは過剰に「客」の優位性を前提としてしまう振る舞いが見られたのである。

全体としては、いわゆる「カスハラ」にあたる行為を行ったことのある人は少ないが、経験者は若年層に偏る傾向にあった。店舗外で店員を待ち伏せしたり、店舗から出てきた店員の後をつけたりといった、ストーキング行為にあたる行為をとってしまう若年層もいる。「丁寧な接客」は店員の労働負担になるという理解はあっても、店員の人権に対する本質的な理解はともなっていない可能性がある。

接客場面だけでなく商品・サービス購入場面における倫理観や人権意識も調査した。商品・サービスを購入するときに、商品・サービスそのものや、それを生産・販売する企業等に、倫理上の問題があったとき、どのくらいの人が「購入をやめる」という選択をするのかを調査したところ、若年層ほど、「気にはなるが購入する」あるいは「そもそも気にしない」という割合が高かった。こうした回答傾向からも、接客も含めた消費という場面全体を通して、若者は人権や倫理といった要素をさほど重視しない傾向がみてとれる。

消費行動・場面における若年層の人権や倫理への無頓着さは、年を重ねればある程度解消していく面もあるだろう。しかし近年、SNSを中心に、反ジェンダー、反移民等のキャンペーンが行われ、へイトスピーチが横行してしまっている状況もある。たとえば、都心のコンビニで会計時に「トラブル」にあったという某出版社の編集者が、その原因を店舗に外国人店員しかいなかったことに求め、「炎上」するということがあった。また、先の東京都議選、参院選での参政党のような反外国人政策を強く訴える政党の躍進で、SNS上でも反外国人発信やヘイトスピーチが溢れかえっている。人権・倫理の無頓着さを助長しかねない情報環境に若年層はさらされやすいという特徴もある。

今回、消費行動・場面における人権・倫理をさほど重視しない傾向が、若年層ほど目立つことがわかった。これが単なる世代の問題なのか、特殊な情報環境との関係、あるいはそれ以外の何らかの要因が関係しているのかは、今後、明らかにすべき課題である。当然ながら、人権・倫理の無頓着さが若年層全体の本質的な特徴というわけではない。若年層をそうした態度に傾ける要因を探求することも、今後の課題である。

この調査で使用した調査サービスはコチラ

ネットリサーチ:https://corp.neo-m.jp/service/research/quantitation/netresearch-domestic/

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<例>「生活者を中心にしたマーケティング支援事業を提供する株式会社ネオマーケティングが実施した調査結果によると……」

https://corp.neo-m.jp/report/collaborative-research/life_007_customerservice

「ネオマーケティング」

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「一般社団法人社会調査支援機構チキラボ」

URL:https://www.sra-chiki-lab.com/

2021年設立。社会的な議論が必要なトピックスについて実態調査を行い発信。私たちの暮らす環境や構造がもたらす問題を明らかにした上で、解決課題に持続的に取り組む。これまでに手がけたプロジェクトは「ストーカー規制法改正のためのつきまとい実態調査」、「『宗教2世』当事者1,131人への実態調査」、「芸能・メディア分野におけるハラスメントや圧力問題についての実態調査」、「2025年東京都議選・参院選 有権者の政治意識 継続調査」など。代表理事の荻上チキはTBSラジオ「荻上チキ・Session」のパーソナリティを務め、日々ニュース解説を行っている。

・・・本件に関するお問い合わせ先・・・

ネオマーケティング広報事務局 担当:今泉

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会社概要

株式会社ネオマーケティング

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業種
サービス業
本社所在地
東京都渋谷区南平台町16-25 養命酒ビル
電話番号
03-6328-2880
代表者名
橋本 光伸
上場
東証スタンダード
資本金
8574万円
設立
2000年10月