みなさんこんにちは、ログリー株式会社の野中と申します。

社長直下のFintech事業は2名体制で運営しています

2016年よりログリーに入社し、ブランド広告主向けのアカウントプランナー、営業企画を担当後、社長直下でFintech領域の事業責任者として全国のローンを一括検索できるサービス「uP.」を運営しています。

本記事では、uP.の誕生背景から、参入を検討している金融サービス仲介業領域での今後の展望をお話してまいります。

uP.とは

uP.とは、全国の金融機関のカードローンやフリーローンの情報を集約し、ローン商品をかんたんに検索・比較できるサービスです。2021年1月にサービスリリースいたしました。

uP.サービスサイト

Fintech領域に参入した理由

スマートフォンの普及による生活環境の変化や機会学習やクラウドコンピューティングといった技術の進歩により、大量のデータ蓄積や処理、分析が可能になったことから、日本では2010年代以降、Fintechサービスは大きく発展してきました。

このようなFintechサービスの発展を受けて、決済や与信に関わる資金決済法の改正などの法改正が進められています。また、法改正後は、法律上実現が難しかったFintechサービスの登場が期待されています。

今後ますます発展していくであろうFintech領域で、ログリーが取り組んできたデータ解析や最適化技術を活かしたサービス展開を予定しています。

資産形成と金融商品選びの課題

老後資金2,000万円問題で話題になったように、若いうちから長期的な資産形成を行うことが推奨されています。「資産形成」と一言でいっても、具体的に何をすれば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

金融といっても住宅ローンや保険、投資信託など、金融にまつわる商品は多岐にわたり、個人で商品特性や手数料を理解した上で商品を選択することは現実問題として難しい側面があります。

余談にはなりますが、金融関連サービスは毎年増えており、話題に挙がったFintechサービスが毎年カオスマップの形でまとめられております。このカオスマップからも新しい金融サービスを把握することの難しさがお分かりになるかと思います。

出典：FinTech（フィンテック）を基礎から解説、押さえておくべき11分野とは フィンテックを構成するサービスを表すカオスマップ

また、代表の吉永が若者と関わる中で、資産形成に関する知識が少なかったり、そもそも資産形成への意欲が低いと感じており、自身の経験の中で資産形成の重要性を痛感していることから、若年層の資産形成に関する問題意識を持っておりました。

このことから、金融リテラシーの不足や商品選択が難しいという構造的な問題をテクノロジーの力で解決するサービスを提供できないかと思い、Fintech領域への参入検討を開始しました。

「金融サービス仲介業」とは

Fintech領域への参入を検討していた時期に、「金融商品の販売等に関する法律」が可決し、「金融サービス仲介業」が創設されました。この法改正では業態で縦割りとなっていた登録制度が一本化されることで、これまで実現が難しかった住宅ローンや保険、投資信託などの横断的な比較・提案が可能になります。

uP.は、この「金融サービスの提供に関する法律」が施行される2021年以降に創設される「金融サービス仲介業」への進出を念頭に、金融関連事業の第一弾として全国のローンを一括検索できるサービスの提供を開始しました。

最終的には金融サービス仲介業への参入を検討するに至りましたが、途中紆余曲折があり、いくつもの案を考えてはやめるということを繰り返しました。具体的にはブロックチェーンや仮想通貨（暗号資産）関連、個人向けのリファイナンスビジネスなども検討しましたが、やはり金融に関わるサービスを提供するには規制が厳しく、アイデアや技術力だけでは参入できない壁がたくさんあり、いくつもの案を見送りました。そうした中でタイミングよく前述した「金融商品の販売等に関する法律」が可決されたことにより、法改正を好機と捉え「金融サービス仲介業」の検討を進めることになりました。

カードローン/フリーローン分野での課題

当時は「金融サービスの提供に関する法律」の施行前だったこともあり、一気に金融商品を幅広く扱うのではなく、まずは特定分野をテクノロジーの力で課題解決できることはないかと注目したのが、カードローン/フリーローンの商品選びの問題です。

全国銀行協会(*1)の調査によると、借入先の金融機関を選ぶ理由として、安心感や信頼性、積極的な広告出稿の有無と回答する割合が高い傾向にあります。

(*1)全国銀行協会「銀行カードローンに関する消費者意識調査」

このことから、金利などの直接的なメリットよりも、ローン商品の情報が整理されておらず消費者にとってわかりづらいという不安要素が大きいことが、安心感や信頼性を重視したローン選びに結びついている原因の一つではないかと考え、オンラインでのローン選択における情報の探しやすさに関する調査を行ったところ、ある3つの課題が判明しました。

オンラインでのローン選択についての3つの課題

1. ローン商品の比較
2. ローン商品の金利差
3. ローン商品の情報収集手段

１.ローン商品の比較

調査対象である金融機関401社で、少なくとも2,160商品のカードローン/フリーローンを提供しています。これは1金融機関あたり5つのカードローン/フリーローンを提供していることになり、個人でローンをひとつひとつ調べることは時間や労力の点で現実的ではないと考えられます。

２.ローン商品の金利差

金利の上限値を10%以上に設定しているローンが過半数を占めている一方で、金利の上限値を9.9%以下に設定しているローンは510商品あります。中にはキャンペーンや特別な優待でなくとも金利0%での貸付を実施しているローン商品があり、借入先によっては最大で18％の金利差が生まれている状況です。

金利の上限値の分布

３.ローン商品の情報収集手段

サービスサイト上で確認できるローン情報の割合として「1.金利」「2.借り入れまでの所要時間」「3.在籍確認の有無」を調査したところ、確認できたローン商品は全体の3.70％(80/2,160中)でした。オンラインでのローン商品の全容把握には限界があると考えられます。

当社が任意で選んだ以下の3項目を確認できたローンの割合を示したもの

以上、消費者のローン選択における3つの課題に焦点を当ててみると、金融機関から2,000商品を超える多様なローン商品が提供されているものの、商品数の多さから消費者がひとつひとつ比較検討を行っていくことは現実的でないことが明らかになりました。

また、サービスサイトから借り入れに必要な情報を探すことが難しく、必要な情報が見つからない点もローン商品選びの課題として挙げられます。このようなローン商品の情報にアクセスしづらい状況が、信頼感や安心感を重視したローン選びに結びついている原因のひとつだと考えています。

uP.で解決すること

uP.では、全国の金融機関のカードローン/フリーローンの情報を集約し、借り入れ候補となるローン商品の条件を検索・比較できる機能をシンプルなUI/UXで提供することにより、ローンの新しい選び方を実現していきます。

uP.の3つの特徴

1. 少ないステップで最適な商品をレコメンド
2. uP.スコアで分かりやすく商品をチェック
3. 複数の商品をまとめて比較

１. 少ないステップで最適な商品をレコメンド

複雑な入力は必要とせず、かんたんな情報を入力して検索ボタンを押すだけで最適な商品をレコメンドします。シンプルでわかりやすいUI/UXでサービスをご利用いただけます。

２. uP.スコアで分かりやすく商品をチェック

独自のスコアリングシステム「uP.スコア」を利用して、わかりやすく商品をお選びいただけます。

３. 複数の商品をまとめて比較

金利、時間、特典など、それぞれ異なる特性の商品を多数掲載しています。利用者の目的に合った商品を見つけることができます。

今後の展望

現状はカードローン/フリーローン選びの問題解決を行っていますが、将来的には住宅ローンや投資信託といった複数の金融サービスを横断的に取り扱うことも検討しています。

以下グラフより、日本の投資傾向は米国や欧州と比べて圧倒的に「現預金」が多く、株式や投信といった投資型の金融商品の利用が少ないことが分かります。

出典：資金循環の日米欧比較

資産形成といっても資産を「増やす」ことだけでなく、資産を「形成」していく必要がある若年層が「借金を完済する」、「家族旅行の資金を貯める」、「教育資金を積み立てる」などの生涯におけるライフイベントを考慮して、目標を設定し、家計を見直したりしたり、目標に合った金融商品を選んだりする環境を整備することが資産形成に寄与するサービスとして重要な要素になると考えています。

出典：総務省「全国消費実態調査」

（注1）世帯は総世帯

（注2）資産残高は、通貨性預貯金・定期性預貯金・生命保険など有価証券の合計額

（注3）負債は、負債現在高（うち住宅･土地のための負債）

どの商品を選ぶかといった問題だけでなく、収支全体をサポートする家計改善の提案や、定期的な投資を自動化する、突発的に発生するイベントや計画変更にも対応できる、金融分野のパーソナルアシスタントのような存在になることを目指しています。

このようなユーザーの目的に合わせた提案を実現するためには、ユーザーのデータを集約することが不可欠です。直近、金融分野の大きな潮流の変化として、Bank as a Serviceが注目され、APIを外部の企業に提供することで金融機関以外の事業者も金融機関が提供するさまざまな機能やサービスを提供できるようになりました。今後はAPIを横断的に駆使し、ユーザーのデータを集約することが以前と比べて容易になると考えています。

uP.では、こうしたユーザーのデータを集約できる環境が整備されつつある利点と、これまで取り組んできたデータ解析、最適化技術などの先進的な技術を研究開発してきた知見を活かして、ユーザーのライフプランを支援できるように金融商品選びのサポートだけではない、家計の改善提案を行えるようなサービス開発を行って参ります。

ログリー株式会社

Fintech事業責任者

野中 義昭