日本通運グループであるワンビシアーカイブズが提供する電子契約「WAN-Sign」はリリースして1年半。「WAN-Sign」の開発は、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社（前：GMOクラウド、　以下GMOグローバルサインHD）との運命的な出会いから始まりました。

なぜ企業の書類やデータなどの情報資産を管理するワンビシアーカイブズが電子契約サービスを始めたのか、その理由について、開発当時を振り返りながらお伝えいたします。

ワンビシアーカイブズについて

　私たちワンビシアーカイブズは、50年以上前から企業が持つ書類やデータなどの情報資産を確実にお預かりする、安心・安全に守るという情報資産管理事業を行っています。日本でまだ「情報」というものの価値が重要視される前から、当社の創業者は企業の書類の管理が不十分であることに問題意識を持ち、企業の書類を外部で安全にお預かりする情報資産管理事業を立ち上げました。従来はお預かりした書類を見たい場合には書類そのものをお届けしておりましたが、書類をFAXで送ってほしいという要望をいただくようになり、近年では画像データで見たいというニーズへと変わり、私たちがお預かりしている書類をスキャニングしオンデマンドで配信するサービスを始めるなど、情報を安心・安全に預かるだけではなく、お預かりしている情報を確実に、効率的にご利用いただけるソリューションを提供しています。

「脅威」と感じていた電子契約

　契約書は、私たちがお預かりしている書類の中でも大きなウェイトを占める書類の一つです。市場に電子契約が登場してから、あるお客様からお預かりする契約書の物量が減少しました。その理由をお客様から伺うと、電子契約を導入したため新規の書面契約書は減少しているということでした。私たちのビジネスにとって電子契約は「脅威」だと意識していました。

あるとき、ワンビシアーカイブズ営業開発部マーケティンググループ長の大川は、私たちのビジネスの「脅威」である電子契約を学ぶため、GMOグローバルサインHD主催の「電子契約と電子帳簿保存・e-文書法対策」を学ぶセミナーに参加しました。セミナーに登壇していたGMOグローバルサインHD金沢氏と大川は、その後何度となく接触することとなり、私たち自身が電子契約サービスに参入するきっかけとなりました。

契約書の全部を電子化することは難しい

大川は「ペーパーレスにしましょう」と大々的に謳うGMOグローバルサインHDを「脅威」と感じていましたが、GMOグローバルサインHD金沢氏より「契約書を100％電子化することは現実問題として難しい」という事実があることを知りました。

電子契約の導入は自社だけでなく相手方の運用にも影響されるため、相手先とのパワーバランスや業種・業態、受け手の環境により、電子契約を導入していたとしても電子契約ではなく書面で契約を締結する事象が起こります。そして過去分の書面の契約書は電子化されることなく、オフィスのキャビネット内や倉庫の段ボール箱に放置されることもあります。

GMOグローバルサインHDとしても、電子契約の導入を検討するお客様から、自社内にある契約書を収納したキャビネットを無くしたい、今の契約管理の過程を何とかしたいという声が多く、電子契約に限定したアプローチでは弱いと感じていました。

デジタルとアナログのハイブリッドサービスの必要性

　大川はGMOグローバルHD金沢氏との会話の中で「既存の電子契約導入では、本当の課題解決にはなっていない」と考えはじめました。働き方改革やペーパーレス、事務効率化のために電子契約を導入したとしても、過去の書面の契約書が残ってしまうことで、電子化した契約書と書面の契約書を二重に管理しなければならなくなり、管理する側の煩雑さが増す結果になってしまいます。

電子契約を導入することで書面の契約書がなくなってしまうので、書面の契約書があることを前提とする私たちのビジネスにとって電子契約を「脅威」と感じていましたが、電子契約を世の中に普及しやすくするためには、紙書類・物理的な倉庫と連動させることが必要なのだと気が付きました。どのように連動するかを模索する中で、私たちが持つ「書面契約管理技術」とGMOグローバルサインHDの「IT技術や知見」を合体させることを思いついたのです。

共同開発へと進む

　当初はお互いが代理店としてスモールスタートする検討を進めていました。ですが、書類が残ってしまう今の電子契約の市場を考えると、私たち自身が市場に参入してユーザーを増やしていった方がビジネスとして魅力あると感じるようになりました。

　他社との協業も検討しましたが、電子契約システムOEM供給が叶わず、あるいは「そもそも書面契約はこれから電子契約が進むから必要なくなるのでは？」という反応もありました。

GMOグローバルサインHDは、他社への電子契約システムOEM供給の実績があったという理由もありますが、何より本気で電子契約の市場を日本国内外に広めようとしていることを強く感じました。

例えばA社の電子契約システムを使っているお客様と、「GMO電子印鑑Agree」（※）を使っているお客様は、お互いに電子契約を導入しているから電子で締結しようとしても、それぞれが使っているサービスが違うので締結できないのです。各ベンダーそれぞれの考え方があるため独自の規格が乱立しており、これでは中々電子契約が日本に広がらないと感じていました。それを理解したうえでGMOグローバルサインHDは将来的に「GMO電子印鑑Agree」（※）を使っているユーザーと、「WAN-Sign」を使っているユーザーとの相互接続をしていこうと約束してくれました。これに「日本に電子契約の市場を作る、文化を作る」ことへの本気度を感じ、共同開発を目指したのです。

※GMO電子印鑑Agree……GMOグローバルサインHDが提供する電子契約システム

ハンコ文化に寄り添うテクノロジー

GMOグローバルサインHDと組んだもう一つの理由は、「GMO電子印鑑Agree」が二つのハンコタイプを持っているということでした。電子契約はハンコに代わるものであり、両者がハンコを押すことが安心感を持つ要素になると考えるGMOグローバルサインHDは、認証局から各々に直接発行される電子証明書を使ったタイプと、電子サインを使ったタイプのメール認証の二つのハンコを用意しています。ほとんどの電子契約ベンダーは、電子証明書か電子メールのどちらか片方のハンコタイプなのです。

私たちも理解を深めるために電子契約を導入した際には、まずライトな書類である見積書をメール認証で始めました。見積書がうまくいったら、次は収入印紙のかかる基本契約で印紙代を削減しようと考えましたが、そうなった時に本来の業務を思い出し立ち止まります。

「あれ？自分の電子メールアドレスだけで締結していいのか？基本契約書に捺印する時は社長印を押していているのではなかったっけ？」

ハンコタイプがどちらか片方しかないと、このレベルの書類はこちらのシステムで、こちらのレベルの書類の時はこちらのシステムで、と別々の電子契約を使い分けなければならなくなります。

「GMO電子印鑑Agree」は、書類のレベルや会社・部門の考え方に合わせて、厳格に使いたいのであれば電子証明書、ライトに使いたいのであれば電子メールアドレスと、二つのハンコタイプを状況に応じて使い分けることが可能です。

このシステムは自社に対しても優しくて、かつ相手方に対しても優しいと思いました。電子契約を導入した自社は電子証明書でしっかり本人性を担保し、電子証明書を発行していない相手方は電子メールアドレスで締結するという、二つのハンコがハイブリッドできるため、相手先に負担を与えずに電子契約導入できるポイントだと思いました。

徹底された現場主義とお客様の３つのタイプ

　実際に販売を開始する前に、大川はワンビシアーカイブズの営業ネットワークを活用し、東京・名古屋・大阪・福岡のお客様を一社一社訪問して、電子契約に関する調査を行いました。その結果、電子契約を導入するまでに抱える課題感によって、お客様を３つのタイプに分類できることがわかりました。

　一つはベンダー【お任せ派】。「自分たちで電子契約をスムーズに導入できる」「自分たちで理解できているので、営業の説明など詳細なフォローは不要」「WEBで申し込んですぐ使う」というタイプであるため、各ベンダーに一任していただけます。

もう一つは【作り込み派】。「電子契約のシステム単体を導入しても導入効果が低い」「捺印の稟議ワークフローとつなげたい」「受発注システムや購買管理システムとつなげたい」等、お客様自身の環境や仕様に合わせてシステムを完全に作り込みたいというタイプです。

この二つのタイプに関しては私たちも想定していましたが、実は中間がありました。すべてを作り込む必要はないのですが、「電子契約の導入までが不安」「社内の規程・運用をどう変えるべき相談したい」「過去とこれからも発生するだろう書面契約との一元管理方法に対する悩みを相談したい」とする【相談派】層でした。【相談派】は決して作りこみが必要などではなく、営業担当者による手厚いフォローや、相談に乗ってくれるということを望んでいました。当時の電子契約ベンダーの多くが、営業担当者を広域で豊富に抱えているところは少なかったので、相談もWEB経由などに限定されていて安心感が欠けていると感じたお客様が多くいたという調査結果がありました。

この声を聴いたとき「これが今後、私たちがサービスを提供していくべき顧客層だ」と気付きました。私たちの「WAN-Sign」は【相談派】をターゲットとし、【お任せ派】【作り込み派】を取り込む「GMO電子印鑑Agree」と棲み分けて、互いの分野で電子契約を普及していくことで合意しました。

さらに磨かれるサービス

私たちは、契約書管理で【作り込み派】向けの様々なサービスを提供してきました。お客様に必要な項目・機能は、これまで提供してきた様々なサービスに蓄積されています。このノウハウを私たちの「WAN-Sign」に反映しました。私達が仮説として集約した契約管理項目・機能をお客様に検証いただいて、より良い電子契約を作り上げています。まだまだ足りない部分があるので、現在もお客様からのご要望を集めて、定期的に開発を続けています。

まとめ

これまで紙の書類を専門的に扱ってきた私たちと、インターネットITの業界を常にけん引してきたGMOグローバルサインHDが手を取り合い一つのサービスを作り上げました。その結果、私たちは「WAN-Sign」という今までアプローチが難しかった顧客層に私たちのサービスを提供できるソリューションを手に入れることができした。

今後、新しい市場である電子契約ビジネスを拡大していくことはもちろんのことですが、純粋にお客様の役に立てる、世の中を良くしていける、今までにない新しいものを生み出していくお手伝いができることを嬉しく思っています。私たちは「WAN-Sign」をご利用いただくことで、日本全国に電子契約を普及させるビジョンを、GMOグローバルサインHDとともに描いています。

■WAN-Signサービスページ

（https://www.wanbishi.co.jp/econtract/index.html）

■ワンビシアーカイブズについて

（https://www.wanbishi.co.jp/index.html）

1966年の設立以来、一貫して『企業の情報資産の安全確保と管理の効率化』を追求し、堅固なセキュリティ体制のもと、重要な情報資産の発生段階から活用、保管、抹消までのライフサイクル全てをカバーした総合的サービスを提供。現在日本通運グループ会社として、官公庁や金融機関・医療機関・製薬業界をはじめとした約4,000社のお客様にサービスを提供しています。