株式会社マンダムは2022年11月30日、人と人との絆を深める自社初のギフトサービスとして、マンダムオリジナルギフト「EMOTIONS by mandom」という取り組みを開始した。

「EMOTIONS by mandom」は、既存商品のヘアスタイリング剤「ギャツビー ムービングラバー」とボディペーパー「ギャツビー ボディペーパー」にオリジナルの画像とメッセージを入れて贈れるというサービスで、人と人との絆や繋がりにフォーカスした商品になっている。

本サービスは、マンダムが2017年に理念として掲げた「人間系」企業を体現した取り組みのひとつ。コロナの感染拡大により人と人との絆が希薄になりつつある状況のなか、日々のちょっとした感謝を伝えるきっかけづくりを後押しできれば、という想いが込められている。

本サービスの開発から実施までを担当したマーケティング戦略部の中島と中野に、アイデアを形にするまでの道のりと苦労を聞いた。

（開発を担当したマーケティング戦略部の中島氏（左）と中野氏（右））

人と人との繋がりにフォーカスした企画を提案

そもそも「EMOTIONS by mandom」は、2019年から一年に一度、社内のマーケティング部門で開催されている「INNOVATION AWARD（イノベーションアワード）」という社内コンペから生まれた。INNOVATION AWARDでは、人々のウェルネス実現やウェルネスに関する課題を解決するためのアイデアを社内で募り、その独創性や実現性などを競い合う。役職や年数にかかわらず誰でも応募できるため、社員たちの熱量は非常に高い。いろんな年代からアイデアが出され、入社1年目、2年目の社員による起案も多いという。

「EMOTIONS by mandom」はこのINNOVATION AWARDで選出されたアイデアが原型だ。人と人との繋がりを意識したちょっと特別なギフト、というコンセプトが、企業理念に合致しているという理由で選出され、実際に商品企画という運びになった。

マンダムが掲げる理念「人間系」企業とは何か。テクノロジーがどれだけ進歩しても最終的に求められるのは人の「心」であり、人間がどう判断するのかがよりどころとなる。「美しい」「嬉しい」「ワクワク」など人間ならではの感情を大切に考え、人が喜ぶ姿を想像しながら、心を揺さぶるような新しい価値を創造するのがマンダムの役割である、という考え方だ。

本企画は「ちょっとした贈り物として化粧品を贈り合う習慣を、マンダムとしてもつくっていきたい。特別なギフトという位置づけに留まらず、化粧品もちょっとした雑貨や食品のように気軽に贈り合えて、人と人の関係性を深めるものとしてお役立ちできないか」という起案者の想いから誕生したそうだ。

2021年9月に理念「人間系」企業を体現するためVI（ビジュアル・アイデンティティ）を刷新し、また同時に「BE ANYTHING, BE EVERYTHING.」（なりたい自分に、全部なろう。）というコーポレートスローガンを策定した。「EMOTIONS by mandom」はこれらを背負った、全社的に新しくて挑戦的な取り組みではあったが、二人の若手担当者はそのことに過度なプレッシャーは感じなかったという。むしろ、会社として前向きに取り組んでいきたいという社内の雰囲気のなかで、二人は企画実現のためにいきいきと動き出した。

人の気持ちもちゃんと届けられる商品を作りたかった

自分の伝えたい気持ちを化粧品に託し、ちょっとしたプレゼントとして贈るこの企画案は、起案時点では大まかな方向性しか決まっていなかった。そのため、まずは具体的なサービス内容を決めていく必要があった。人の幸せや喜びを思い描き、人に役立つ価値をつくるという、「人間系」企業としての姿勢にふさわしい内容を盛り込まねばならなかったのだ。

その点について、実際に商品開発を担当した中島は「人がプレゼントを選び、特別な想いも添えて渡すという贈り物シーンは、人が人を想う貴重な営みですよね。『ギフトの起点となる、人に喜んでもらいたいという贈り手の気持ち』をしっかり後押しできるかを意識しながらサービスを形にしていくことが大切だと考えました」と話す。

そもそも贈り物という行為は、「人間系」企業という理念にしっかり合致する。そこで、理念とサービスがしっかり繋がるこのラインをブラさないよう意識し、商品の具体的な内容を少しずつ固めていった。

また、「EMOTIONS by mandom」は、「想いと喜びがつまった ちょっと特別なギフト」と銘打っているのだが、そう銘打ったことには時期的な理由もあった。企画が進行していた2020年という年は、新型コロナの感染拡大がどんどん加速していた時期。人と直接会って気持ちを伝える機会が激減していた。

中島はこの時期、何気ない、ちょっとした感謝の気持ちを相手に伝えることと、よい人間関係というのは深く繋がっていると、ひしひし感じていたという。

「おおげさなプレゼントをわたすまでではないけれど、自分の気持ちはちゃんと伝えたい。人と人の関係、そしてその間にある、『人が人を想う気持ち』を大切にしたい我々としては、こんな大変な時期だからこそ、マンダムの商品を通じてその気持ちを伝える後押しをしたいなと思ったんです」。だから「EMOTIONS by mandom」というサービスを通して、贈り手と貰い手の絆が深まり、笑顔になってほしいのだという。

担当者たちの奮闘の熱量が、やがて周囲を巻き込んでいった

（「ギャツビー ムービングラバー」（左）と「ギャツビー ボディペーパー」（右））

こうした経緯を経て見据えた先に生まれたのが、マンダムの人気ヘアスタイリング剤「ギャツビー ムービングラバー」とボディペーパー「ギャツビー ボディペーパー」のパッケージラベルに好きな写真とメッセージを入れ、贈り物として使ってもらうアイデアだった。

特にこだわったのは写真も入れられるようにすることだった。メッセージを入れられるギフトサービスなら他にもあるが、「EMOTIONS by mandom」では、「さらに思い出の写真や特別な写真も入れられるようにすることで、もっと贈り手が特別な想いを伝えられ、貰い手もその気持ちをより感じられるようになるんじゃないかと考えました」（中島）。色味の問題など、写真を入れるとなると、サービス設計のハードルがその分だけ上がってしまうのだが、貰う側だけでなくつくる側にもその制作過程をより楽しんでもらうため、写真も入れられるようにしたという。

（好きなメッセージと写真を入れた「ギャツビー ムービングラバー」）

既存商品のラベルに写真やメッセージを入れ、ギフトとして贈り届ける――すでに流通している商品に新たなアイデアを組み込むことになるので、一見、実現までのハードルは高くないように思える。しかし、普段と違う工程で既存商品をつくるということには、想像以上に多くの調整や決め事を必要とする。工場や関連各所に協力を依頼したり密に連携したりと、中島と中野は奔走した。

ビジネスモデルの構築などを主に担当した中野は、サービスをつくるにあたって社内のありとあらゆる部署と打ち合わせを繰り返しながら、多くの課題を解決していったことが印象的だったと話す。使用する画像の権利問題や個人情報の管理は法務や総務に確認し、品質や生産にまつわる懸念や希望は工場側と相談していった。重要なオペレーション周りのことは、社内EC部門や工場の担当者と打ち合わせを繰り返し、受注から商品発送までの、情報やモノの一連の流れを少しずつシステム化していった。

サービス実現に向けて奔走する二人の姿を見るうち、社内にもある変化が生まれてきた。「最初は一方的に業務をお願いすることが多かったんです。でも、徐々に相手の方から積極的に協力してもらえるようになっていきました」（中野）。特にEC部門の担当者とは、最終的に常に一緒に仕事をする形になっていったという。奮闘する若手社員二人の熱が周囲に伝わり、協力の熱量が高まっていった。

現在、文字と写真を入れられるフレーム数は、「ギャツビー ムービングラバー」で2種類、「ギャツビー ボディペーパー」で25種類あり、多様なシーンで使えるフレームが用意されている。基本的にフレーム数を増やせば増やしただけ、担当者たちのやることが多くなっていくため、仕事のハードルはおのずと高くなる。しかし、中島はフレーム数を極力減らさないようにした。

「大変になりそうだなと、途中でわかってはいたんです。でも、ちょっとした気持ちを伝えたい、いろんな気持ちを伝えたいと思うシーンは、それこそ個人の数だけカタチがある。なので、そうした気持ちを乗せるフレームを絞ってしまい、結果的にわたすシーンや想いを限定してしまうのは違うと思ったんです」（中島）。

「ギャツビー ムービングラバー」と「ギャツビー ボディペーパー」では、それぞれ想定している主な贈答シーンが異なり、個人から団体まであらゆるシーンに対応できるようになっている。

たとえば、既存の「ギャツビー ムービングラバー」にはイラストとキャッチコピーが書かれたラベルがついているのだが、この「EMOTIONS by mandom」を利用すると既存商品と同じような“パロディ風”ラベルをつくることができ、主に個人のギフト利用を想定している。

一方「ギャツビー ボディペーパー」は部活動のチームメンバーに贈ったり、卒業イベントの記念品として作成したりといった、主に団体イベント、団体交流のギフトシーンで使ってもらうことを想定している。

文字の大きさやサイズ、写真の忠実な色味再現の調整にも時間を要した。実際にプリントすると文字が小さ過ぎて読めなかったり、実際に印刷してみたら美しくない色味になったりと、やってみてはじめてわかったことは多かった。しかも、すべてのフレームでその確認が必要だったのだ。

さらに、商品を“ちゃんとした状態”で届くよう、商品の梱包にも配慮が必要だった。「ギャツビー ムービングラバー」は、ラベルが商品蓋部分にそり立つよう貼られているのだが、このまま箱にしまうと、メッセージと写真がプリントされているラベルが折れてしまう。それでは贈り物として成り立たない。「折れたり汚れたりすることなく、ちゃんと購入者に届くことは当たり前のこと。でも、この当たり前をちゃんと実現できるように梱包資材や梱包方法を何度も試行錯誤しました」と、中野は話す。

企画立案からローンチまで、約2年ほどで「EMOTIONS by mandom」は完成した。マンダムとしては前例のない企画だったが、会社の想いをのせた大事なサービスである、という共通認識をチーム全員で共有して取り組めたからこそ実現できたと、二人は振り返る。

自分たちのこだわりは、ちゃんと利用者に届いていた

2022年11月のサービスローンチ後、「イメージと変わらない仕上がりになっていた」「好きな写真で作れるのが嬉しい」「丁寧で面白いサービスを提供してくれる企業だと感じた」「いつも使っている商品でお祝いとして渡せた」など、二人のもとにはさまざまな感想が届いている。自分たちのこだわった部分はちゃんと利用者に伝わっている。そう実感できた。

社内でも本サービスは好評だ。ある社員は実際にサイト上で商品を作ってみて「想像以上にワクワクした」と話す。「商品そのものはもちろん、自分で作って贈るまでのプロセス自体がちゃんと贈り物になっていて、人と人との繋がり、気持ちのやり取りをサポートできているなと思いました。まさに『人間系』企業を体現しているサービスだなと」。

今後、今より多くの人に利用してもらえるようになれば、サービス内容のさらなる拡大も検討していくという。今回若手二人が世に送り出した「EMOTIONS by mandom」は、人の気持ちを何よりも大事にしたいというマンダムの、そして二人の姿勢が表れているギフトサービスだ。「今後はまず、このサービスをもっと多くの人に知ってもらわないといけないですね」と中島は話した。

EMOTIONS by mandomの詳細はこちら：https://gift.mandom.co.jp/