育休コミュニティ「MIRAIS」（代表 栗林真由美、以下MIRAIS）では、産育休者が復職の不安を解消することを目的に、自身の強みや価値観を言語化した自分だけのキャッチコピー”セルフラベル”を発掘するワークショップを開催しています。

　8期（2022年4～9月期）では、MIRAIS内外向けにワークショップを開催し、合計56名を動員しました。

MIRAISオリジナル公式プロジェクト『セルフラベル発掘ワークショップ』は、発足した2018年からの4年間で600名以上が参加しています。今回は、セルフラベルワークショップが何をきっかけに生まれたのか、なぜこれほどまで多くの人を魅了しているのか、発起人メンバーであるMIRAIS卒業生による誕生の裏側と、伝統ワークショップを引き継ぎ、一般の方向けのワークショップ開催に挑戦したMIRAIS現役メンバーの想いをお届けします。

「セルフラベル発掘ワークショップ」とは？

「他者から見た自分の強みや魅力は一人で考えていても分からない」というMIRAISメンバーの声から誕生し、開発されたMIRAISオリジナルワークショップです。

　ペアワークやグループワークを通じて、Gallup社「クリフトンストレングス（旧ストレングスファインダー）」の資質と「過去の経験」「自分の理想」を深掘りし、自分の長所や大切にしている価値観のキーワードを洗い出します。

　自分の強みや大切にしている価値観を見える化・言語化することで、最終的に自分専用のキャッチコピー「セルフラベル」を作成。人生の「お守り」となり得るキャッチコピーを携えて、今後のアクションにつなげることが目標です。

　運営は全て育休中であるMIRAISメンバーが担当しています。半年毎にメンバーを募集するMIRAIS。8期目となる今回は、使用するワークシートを改良し、より自分とじっくり向き合えるプログラムに刷新しました。

☆詳しいワークショップ内容は、下記のMIRAIS公式HP活動レポートを参照

「セルフラベル発掘！ワークショップイベント」を開催しました！ | 育休コミュニティ「MIRAIS」 (ikukyu-mirais.com)

セルフラベル誕生秘話 ～ワーク開発者の思い～

セルフラベルは、MIRAIS1期生4名の女性が作り上げたオリジナルワークです。その誕生の裏にはどのようなきっかけや想いがあったのでしょうか。

育休を“主体性を取り戻せる時間にしたい”と思ったんです

ーセルフラベル発掘ワークショップ開発のきっかけは？

「第1子の育休から復職したとき、時間的制約もあって周囲と自分を比べたり、目の前のことに振り回されて、タスクをこなすだけになっていたり…正直3年くらい自分を見失っていました。」

そう話すのは、セルフラベル開発者の一人。

そんなとき、第2子の育休中に出逢ったのが「MIRAIS」。

　MIRAISに入ると最初に作るのが「育休テーマ」なのですが、自分軸なく育休に入ったばかりということもあり、無個性のテーマ設定になってしまって。“何かを変えたい”想いはあるものの、“何に変えたい”という方向性が全然深められていないなと。

　そんなあるとき、“〇〇ちゃんママ”ではなく、“私”として会話をしているときに、「あ、もっとこの人の未来を知りたいな。」とふと感じたことがあって。だから、対話型のワークショップをすれば、誰かからもっと知りたいと思ってもらえる「育休テーマ」ができるのではないかと思いました。

　さらに、MIRAIS内で毎月開催している読書会で、『転職の思考法』（著者：北野唯我さん）の課題図書を取り上げたとき、自分の強みや特徴を表す「ラベル」が話題になりました。「自分のラベルって何だろう？どうやって見つけるんだろう？」と悶々とした疑問がわき上がってきて。

　3年くらい自分を見失っていた私は、「育休テーマ」に留まらない「遠い人生の目標」を見つけたいと考えていました。育休中だからこそ、仕事の枠に捉われない人生の指針となるラベルができるのではと思ったんです。そして、仲間に声をかけ、巻き込み、「誰もが自分らしいセルフラベルを見つけることができるワークを設計しよう！」と有志メンバーで開発を始めました。

こうして4人のメンバーが集まり、自分たちだけのワーク開発が始まったのです。

“自分がどうありたい”ではなく、“客観的にどう見えるか”

ー4人で試行錯誤しながら作成したワーク。どんなものに仕上がったのですか？

3つの自己理解ワークを作りました。

①Gallup社「クリフトンストレングス（旧ストレングスファインダー）」の自己理解

②ヒーローインタビュー（経験の振り返り）

③WORK-LIFE VISION（未来の自分の理想やありたい姿を描く）の可視化

　4人が作ったワークの特徴は、ペアワークやグループワークでの対話を通して行うこと。じっくり時間をかけて対話をすることで、自分では掴みきれていない強みや大切にしている価値観などに気づけるような仕組みになっています。

　よく知らない人とペアを組むこともメリットが大きいです。自分のことを全てシェアできないからこそ、抽出されて言語化された要素が、自分にとって本当に大事なものなはずだから。深く知らない相手だと気を遣ったりもしますが、その場で感じたことをそのまま伝えて、お互いフィードバックし合うことが大切なんです。直観の賞味期限は短いんですよ。

ーワークで作成するセルフラベルは簡単に言うと「自分のキャッチコピー」なのでしょうか？

　最初の目的は「自分にキャッチコピーを付けること」でしたが、ワークショップを進めていくと、ビジョン（自分の理想の姿）っぽいラベル、ミッション（役割）っぽいラベル、バリュー（強み）っぽいラベルなど、人それぞれ全然違うものができあがります。セルフラベルはこうあるべきという正解はないのですが、"こうありたい"よりも"周りからどう見られたいか"を言語化できるように設計しました。

ーセルフラベルワークショップはMIRAISのオリジナルワークとして、毎期開催されていますが、どのように感じていますか？

　試行錯誤を繰り返しながら開発したワークですが、自由にチューニングしたり、カスタマイズして構わないと思っています。実際、期を経るごとに進化しています。「今」のMIRAISメンバーみんなで作り上げることに意味があるんです。これからもどんなふうに変わっていくのか楽しみ。ただ、ワークを簡略化するのだけはちょっと…時間をかけて自分と向き合うことが大切なのでね。笑

未来の自分に対して"大丈夫"という糧になった

ーセルフラベル作成が復職にも役立ったとか？

　自分の中のコンセプトが明確になって復職できたので、やりたいことの交渉がしやすくなりましたね。成り行きのキャリアではなく、偶発的に起こることに導かれている感じがします。プライミング効果(※1)、プランドハップンスタンス(※2)って言うんですかね。

※1 心理学におけるプライミング効果とは、あらかじめ受けた刺激（情報）によって、行動が無意識に影響されること。

※2 キャリアというものは偶然の要素によって左右されるものが多く、偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながるという考え方のこと。

ーこれからセルフラベルを作成してみたいと思う人へ一言

　元々、内省や自己開示は苦手なタイプでした。自己開示って相手になんの意味があるの？と。でも、このワークショップを通じて、お互い自己開示することで、知らない世界が見えたり、新しい発見があったり、相手にもメリットがあると気付きました。内に秘めているだけでは何も変わらないので、対話、アウトプットを繰り返すことで行動が変わります。私はこのワークショップを通して、自己肯定感が高まりました。

　ワーママはどうしても時間が不足しがちなので、時間在庫を上手に使わないといつの間にか時が経ってしまいます。ぜひ自分のラベルを携えて、フラグを立て、プライミング効果を発揮して欲しいと思います！

伝統あるワークショップ開催に対する8期生の思い

MIRAIS1期から続くオリジナルワークを引き継いだMIRAIS8期生は、どのような思いでプロジェクトに参加し、どんな点にこだわってワークショップを開催したのでしょうか。

8期の「セルフラベルプロジェクト」が発足したのは、2022年6月。集まったメンバーは7名。女性6名、男性1名です。

ーセルフラベルプロジェクトに入った理由は？

メンバーのAさん：

　もともとコーチングの勉強をしていて、仕事も人事に携わっていたので「自分の軸を見つけて生きていける人が増えたらいいな」と思っていました。友人がMIRAISでセルフラベルプロジェクトに参加しワークを開発していると聞いていたので、いつか自分もMIRAISに入ったら、セルフラベルに関わりたいなとぼんやり考えていました。

メンバーのBさん：

　私は内省とか自分の自己理解を深めることとかが昔から苦手で。会社だったらこんなプロジェクトがあっても絶対に手を挙げなかったと思うんです。でも育休中だしチャレンジしてみようと考え、思い切って参加しました。開発者の熱い思いに影響を受けたことも大きかったです。

ープロジェクトをどのように進めていったのですか？

　セルフラベルは4か月の短期プロジェクトだったため、限られた時間を有効に使うことが必要でした。前期からいろんなタスクの申し送りがあったんですけど、必要ないものはやらないと決めて、いらないものは思い切って捨てていきました。ぎゅっと大切なものだけを凝縮して進めていく感じです。メンバーそれぞれがやりたいことを担当して役割を決めて効率よく運営していくことを意識しました。

ー8期ではワークシートを刷新したそうですね。

　セルフラベル開発時にも大切にしていた「内省」に集中できるよう工夫しました。簡単に言うと、ワークシート上の必要ない情報を排除したんです。重複する表現やどこに何が書いてあるか分かりづらかった箇所を、簡潔に分かりやすくすることを意識しました。ワークシートを使って内省するときに、「今何を考えるのか」そこに集中できるようになったと思います。

新しいワークシートは、参加者にも好評でした。書きやすかったという声が多かったですね。

ーワークショップ当日の様子はどうでしたか？

　MIRAISのコミュニティ内と、一般の方を対象としたオンライン上のワークショップを2つ開催したのですが、どちらも無事に運営できました。7名のメンバーで力を合わせたからこそ短い期間でやり遂げることができたと思っています。

　コミュニティ内外向けに合計56名を動員し、かなり大規模なイベントとなりました。

ーコミュニティ外の一般の方向けにもワークショップを開催する理由は何かあるのですか？

　MIRAISに参加しない層の人たちにも自分のセルフラベルを作ってもらい、自分らしく生きていって欲しいという希望を込めています。ぜひたくさんの方に参加してほしい、そんな「価値あるワーク」です。

　実は、今回のワークショップ開催にあたり、パパにも参加してもらいたいと広く周知したんです。今はまだママの比率が高いですが、性別問わず、年齢問わず、多くの人に広まって欲しいですね。

ーワークショップを終えた今の気持ちは？

参加者から、たくさんの嬉しい言葉を頂きました。

●人生の指針としての言葉ができた。ぼんやりしていた自分の姿がくっきり輪郭を持った感じがします！

●慌ただしい毎日だったけれど、じっくり自分と向き合って強みを再確認したり、新しい強みを意識したりすることができて、毎日が生きやすくなりました！

●自分について振り返れただけでなく、一緒にワークしたメンバーの想いや経験から生まれたラベルに感動しました！

　また、ワークショップ中、各チームを見て回ったときに、「〇〇ちゃんらしさが出ているね」「〇〇さんっぽいね」というフィードバックを受けている様子を聞いて、“自分らしさに気づけた瞬間”に立ち会えたのが嬉しかったです。

　じっくり対話して言語化することにこだわったため、自分では気づけていないポイントに気づくことができたという声も多く、今回のワークショップの目的が達成できたと実感しています。

　そして、チームの一員として、限られた時間で家事育児と併行してプロジェクトを進めた経験は、復職後にも活かせそうだと感じています。

セルフラベルを胸に、今後どう活かしていくのか

使い方は人それぞれで良い。8期メンバーのセルフラベルをご紹介

『見えない世界へ誘う、冒険者のキーパーソン』

自分と向き合って深掘りしていったら、自然と"こうなりたい"という未来のセルフラベルが完成しました。現在の自分はまだぼんやりしているけれど、大切にしたい価値観は未来の自分にあるんだと気づけたことが大きな収穫でした。

この未来のセルフラベルに見合う自分を目指して、今後の活動に落とし込んでいきたいと思っています。

『気遣いレーダー搭載!! 機転を聞かせたピボットカメレオン』

元々、内省や自己理解が苦手だったのですが、ワークショップを通じて、自分の強みを再認識できました。ラベルがあるとお互いコミュニケーションが取りやすくなるので、チームビルディングにも最適です。

対外的にアピールするためのラベルというよりは、自信を持って行動できるお守りとして、大切に持っておきたいと思います。

『心は子ども、頭脳は大人、変革者予備群向けの武器商人』

これまで自己を振り返ることを何度か行っているので新しい自分を発見したということはありませんでした。しかし、最終的に一文にまとめたことで、手触り感を持てるようになり、自分が何者かを簡潔に認識・説明できるようになりました。

一方、うまくまとまったキャッチコピーとは思いつつも、変革者予備群が指す範囲は広く、実際に私が影響を与えたい人は誰なのか？までは落とし込めていないので、残りの育休期間を通じて仮説・検証を行う予定です。

ラベルを意識することで重要な情報が目に入り、仲間が集まってくる状態にしたいと考えています。従って自己紹介やオンライン会議の背景など、対外的に見える形で利用していきます。

MIRAISが描くセルフラベルワークショップの未来とは

　2022年4月より育児・介護休業法が改正され、「育児休業を取得しやすい環境の整備」などが段階的に施行されましたが、産育休期間はまだまだ「キャリアのブランク」と捉えられ、育休後のキャリア形成に不安を抱える人が多い現状があります。産育休中のパパにも参加してもらいたいと思い、MIRAIS8期では、この改正育休法のタイミングに合わせて、男性に向けた告知も増やしたところ、3名の男性にも申込みいただきました。

　本ワークショップを通じ、自分だけの「強み」「価値観」を見つけることで、産育休をブランクではなく、復職後のステップアップの機会になっていれば幸いです。

　これからもMIRAISは、産育休者の視点と社会人経験を掛け合わせ、一人でも多くの人が有意義な育休を過ごせるように、さらにはすべての人がより豊かな人生を送れるように、活動を続けてまいります。今後もMIRAIS及びセルフラベルワークショップがどのような進化を遂げていくか、注目して頂けると幸いです。

＜育休コミュニティ「MIRAIS」について＞

団体名　： 育休コミュニティ MIRAIS

代表者　： 栗林 真由美

発　足　： 2018年8月

URL ：https://www.ikukyu-mirais.com/

2018年8月に代表　栗林真由美氏が「なんとなく過ごす育休」をなくしたいをミッションに立ち上げた産育休者のコミュニティ。オンラインを中心に、イベントや企業コラボレーションなどの活動を行い、未経験分野にチャレンジしたり、育休をともに過ごす仲間と交流したりと「有意義な育休を過ごす」場を提供してきました。これまでの参加者は延べ800名以上（2022年4月時点）。