ビジネス書出版社としてスタートしたクロスメディアグループ。様々な分野で活躍の幅を広げるクリエイターによる著作も続々出版しています。「逃走中」「ヌメロン」など大ヒットコンテンツの企画者である髙瀬敦也さんによるの最新刊『企画 「いい企画」なんて存在しない』を2021年7月27日に出版しました。

Web、SNSがインフラ化し、誰もが情報発信できる現代は、1億総クリエイター時代とも言われます。ブロガー、YouTuber、インスタグラマーなど、様々な「つくる人」から熱狂的な支持を集め、今なお売れ続ける高瀬敦也さんのロングセラー書 『人がうごく コンテンツのつくり方』から3年。本書では、企画業を生業とする著者が、コンテンツの源ともなり、今、あらゆる企業・人が求めている「企画」をテーマに書き下ろします。

今回、そんな高瀬さんの本書を書くにいたった動機や、執筆中のエピソードだけではなく、幼少期からいまに至るまで、企画というものにどう向き合って歩んでこられたのか、高瀬さんの人となりにスポットライトを当てながらお話を伺います。

日本には「責任所在不明な企画」が多すぎる

ーー企画について考えるときに、最近の日本の社会の風潮や傾向性で、高瀬さんが問題視していることはどんなことでしょうか？

ヒットと言われる企画は次から次に生み出されている一方で、責任の所在が不明確な企画が多い気がします。誰が決めて誰が責任もってその企画を形にしているのか。色んな作品やものごとの一つ一つにおいて、「これは誰の手柄なのか」とか「誰の成果物なのか」というのが不明確なケースが多いです。それによって本当は称賛されるべき人がされていなかったり、批判されるべきことが伝わらなかったり。たとえ修正しようとしても誰と話せばいいのかわからなかったり。人を変えるにしても誰を変えれば良いのかわからない、というケースがよくあるように感じています。

ーー本書の中でも企画者が責任とプライドをもって企画することが大事だとお話されていますよね。

そうですね。さきほどの話は日本の社会構造とかシステムの話なので、本人の意思とは別に起こっていることも多いです。本人がそのつもりでも周りが許さないとか、良くも悪くも組織の力が動いてしまう。それなのに組織でそれを背負ったり背負わなかったり。企画を考えて世に出すときに一番大切な責任を誰が負うのか、分からないごちゃ混ぜ状態になっているのはよくないですよね。

ーーそういう社会の問題点も含め、企画というものを再定義する必要性を感じられたのですね。具体的にどういう流れでこの本をお書きになろうと思ったのでしょうか？

一番最初は編集担当の方が『メディアのつくり方』っていう本を、『人がうごくコンテンツのつくり方』の続編のような形で出そうって提案してくれたんです。「よし、書きましょう」となって打ち合わせしたのですが「メディアのつくり方」だとあまり話が盛り上がらなくて。でも「企画」についての話だと、盛り上がったんですよね。それがきっかけで「企画についての本にしよう」という流れになりました。やっぱり私も、いま改めて企画っていうものに対して再定義をすべきだという考えがどこかであったんだと思います。そうじゃないと盛り上がらないですよね。

企画する根源欲求は「人の反応を見ること」

ーー今回のこの執筆活動で特に意識しながら書いた点はありますか？

『人がうごくコンテンツのつくり方』を書いたときに、言葉の使い方や言い回しが「高瀬っぽい」っていう声を多くいただいて。それがポジティブな評価だったんですよね。読者からも編集の方からも、その「高瀬らしさ」が文面に出ることで私と話しているような感覚になるって言ってもらえて。だから私という人間がわかりやすい文体を今回も大事にしようと思いました。その「高瀬らしさ」とは何なのかはいまだに私自身、あまり分かっていないのですが（笑）。でも普段の会話とか、LINEで使うような語り口や言い回しで書いたつもりです。

ーー読者のターゲット層のイメージは頭の中にありましたか？

私は若い人に読んで欲しいと思っていました。わかりやすく言うと10代後半から30代前半。20代を中心に、SNSネイティブと呼ばれる人たちに読んで欲しいです。『人がうごくコンテンツのつくり方』がブロガーとかインスタグラマーとか若いライトノベルの作家とかユーチューバーを目指してる方などに反応が良かったので、今回もそういう方達に届けたい思いで書きました。

ーー執筆の順番としては、章の順番ごとに書いていったのでしょうか？

概念的な話を先に書いて、後から具体的なノウハウの部分を足した感じです。抽象度が高めの話になりそうなテーマだったのですが、「企画」に関する本ではあったので、いわゆる「企画のテクニック」について期待して手に取る方も多いだろうから、しっかり言及したほうがいいなと。

ーー本書を書きながら逆に自分自身が助けられたことってありましたか？

「企画とは決めることである」っていうのが本のベースになったんですが、巻末に書いた私のこれからの将来の夢とか、いま進めているプロジェクトのこともそうですが、あえて結構書いてみたんですよ。自分を自分で追い込んでみたというか。自分の決めごととして、社会に宣誓したというか。それは自分の中の救いというよりかは、追い込みになりますが、将来的に「あのとき目標を書いて、自分を追い込んで良かったな」と思える可能性はあると思いますね。ネタとして書いた部分もありますけどね（笑）。でも書いたからにはやらなきゃいけないですから。

ーー本書に書いた内容などを考えると、プレッシャーに感じることはありましたか？

プレッシャーは特になかったです。強いて言うと、本を出したあとの講演依頼にプレッシャーを感じます（笑）。私はどちらかというと人前で話すのが好きなタイプではなくて。５人以上になると嫌なんですよ。緊張するし。前作のときに感じたんですが、本を書いて講演依頼をいただくのはもちろん有難い話だし、お受けするんですけど、人前で話すのが好きじゃないから講演の準備をするのがいつも憂鬱です（笑）。特に単独講演が苦手。トークショーならいいんですけどね。

ーーそうなんですね。でも本書を読むと高瀬さんがいかに人との繋がりを大事にしているかが伝わってきます。他人との「共通言語」を増やすためにインプットしたり、他人の感情を意識して企画をつくるなど、いつも受け取る人を大切にしているように思います。

基本的に寂しがり屋だし、人と喋るのは好きなんですけど、新しい人と話すのはいつも気を遣って疲れてしまうので、新しい知り合いは欲しくないんですよね。でも自分の状況を良い方向に変えるのは、いつも新しい人との出会いだっていうことも、もちろんちゃんと分かっています。だから新しい人と何かしたいと思う一方で、「しんどいな」とも思ってしまいます（笑）。

ーー高瀬さんはひとりひとりの人を丁寧に接したいと思っているからではないでしょうか？人を喜ばせたいという気持ちが人一倍大きい印象は受けましたが。

「喜ばせたい」だと響きは良いですが、私の場合、単純に人の反応をみたいと思う気持ちが大きいんだと思います。そういう意味で、承認欲求が強いんでしょうね。いわゆるインスタグラマーの方たちと考えていることは同じだと思います。

「内向的な人」こそ企画に向いている

ーー承認欲求が大きいと良い企画が生まれるのかもしれませんね。強いて言えば、どういう方が企画業に向いていると思いますか？

内向的な人、ですかね。あまり活発じゃないというか。内にこもるタイプというか。悶々とする人の方が、思考が複雑になるので。あまりにも幸福で充実してて、開けっ広げに自分の考えを吐露できるタイプの人って企画する必要がないというか。深く思考する必要がないですからね。羨ましいですけど。

ーーひとり時間が多くなったいま、以前に比べて良い企画はたくさん生まれているように感じますか？

私の場合は性格なので、常に妄想はするんですが、確かに以前よりは思想を深めやすい社会状況と言えるかもしれませんね。たとえば、哲学とかも北国とかの寒い国だと育ちやすいっていうじゃないですか。南国のリゾートっぽいところで新しい哲学って育ちにくい。そういうところでは必要がないんでしょうね。こういう状況だから生み出される思想や企画があるんじゃないでしょうか。

ーー普段の生活の中で高瀬さんの妄想が膨らみやすい場所ってありますか？

寝る前とか電車乗っているときとか、車を運転しているときとか、歩いているときとか。ひとり時間ですよね。人との雑談の間も、思考は深まりやすいですよね。思いついたものは何でもLINEにメモします。

ーー先ほど内向的な人は企画が生み出しやすいっておっしゃっていましたが、多動な人の場合はどうなのでしょうか？

企画者ってアイデアマンじゃなくて、行動者ですから、多動な人はそういった意味ではすぐ企画を形にできて良いと思います。PDCAで言えばDCDCでいいくらいかもしれません。

ーー頭では思い浮かんでいるのに、「受け入れられなかったらどうしよう」とか失敗を恐れれてしまう人たちの背中を押すために、どんな声をかけたいですか？

「企画はそもそも受け入れられない」ということじゃないでしょうか。受け入れられたらラッキーくらいで。だからこそ数が必要なんですよ。

ーーそれはお若い頃からそういうスタンスだったんですか？

そうですね。それはテレビ局員の若手時代、企画書を出しているときによく感じていました。もちろん出すときは「これ絶対いける！」と思って出すんですけど。「会社にとってもこれは絶対に必要だ」とも思って出しても、考えていることが全然って言っていいほど理解してもらえなかった。そんなのは当たり前だし、私のコミュニケーション能力の問題でもあったんですが。自分が理解してもらいたいことが理解してもらえなくても、それでもいいんだ、と思うことが大事で。受け入れられないのが当たり前で、それでいちいちショック受けていてもしょうがないんですよね。

ーー企画をつくって受け入れてもらえなくても「その時が必ずくる」と信じてストックされてたんですよね。

自分がやってきたことって、本当にそれだけですよ。数を出して、粘り強く続けること。それに尽きると思います。

ーー企画ってキリがないほど深まるし、広がりますが、「ここで完成！」というのはどうやって判断するのでしょうか？

労力を問わないのであれば、自分の中で一番精度が高いって思えるまでつめるのはもちろん大事ですよ。ただ、数とはトレードオフなので「どこまでいったら相手におおよそ伝わるのか」とか、「どこまでやれば企画が成功する可能性が変わらなくなるか」っていうのは考える必要がありますよね。80％の完成度のクオリティーって20％くらいの力でできちゃうじゃないですか。髪型でも服装でも、普段なんとなくそれっぽくするにはフルパワーの２割くらいの力でできますよね。100％にするにはこだわりにするにはそれなりの時間とエネルギーが必要になるわけで。そこまでやる必要があるのかどうか、その頑張りが伝わりやすいシチュエーションなのか、伝わる相手なのかによって力の入れ具合を変えますよね。それと同じです。毎日とか毎回、多産しようと思えばそれは不可能です。女性がフルパワーメイクを毎朝できないのと一緒です。週一ならできるけど毎日はできない。数を多くしたいのなら、フルパワーを出さない方がいいですよね。本書にも書きましたが、いかに楽するかを考えるのはとても大事なことです。

自意識過剰気味の少年が企画者に

ーー高瀬さんご自身についてお聞きしますが、どんな幼少期を過ごされたのでしょうか？

小さい頃は、自分がつくったもの、例えば工作とか、ちょっとしたいたずらとかで、他人の反応を得るのが好きな子供だったと思います。他人が自分をどう見ているか、常に気にしていました。嫌われたくないし、変に思われたくなかったし、目立ちたくもなかった。だからなるべく中庸なところにいるようにしました。目立つグループと目立たないグループがいたらその中間にいるようなタイプでした。感受性は人一倍強くて、ただの勘違いだとしても、とにかく他人の目は気にしていました。だから誰も気にしてないのに、電車とかバスでも人の目を意識したり、自意識過剰でしたね。

ーーそういう繊細さが良い企画には必要なんでしょうね。学生時代に成功した企画はありましたか？

中学生だった頃、スポーツ新聞を読むのが好きだったんですが、毎日スポーツ新聞買う人ってあんまりいなかったから、読んだ後に、毎日記事を切り取って黒板の横に貼っておいたんです。それが自然に皆にとって毎朝の楽しみになっていましたし、会話のきっかけになっていきました。先生にも怒られなかったですね。いまふと思いましたが、それは良い企画だったと言えるかもしれないですね。

ーー学生時代から、そういう自然に会話や人の集まる場を創るのが得意だったんですね。

皆にさりげなく見せることで、何か反応をもらえるのが嬉しかったんです。「高瀬がいつも自腹で買ってるスポーツ新聞」に友達が集まって、話してるのを見たらそれだけで嬉しいじゃないですか。「おお、皆見てる見てる！」って。それだけです（笑）。自分が気づいてちょっとやってみたことが、他の誰かのリアクションに繋がれば嬉しいですよね。だから世のため人のためにやってるっていう意識があるわけじゃないんです。ただ反応が嬉しい。

ーー人のリアクションを知るのがお好きということですが、高瀬さんはゴシップには興味をもちますか？

ゴシップ、大好きですよ。ネット記事でみるのも全部ゴシップ記事ですし。人に興味があるんだと思います。だから人のリアクションが怖いし、反応を気にしてしまう。自意識過剰になってしまうのも全部人に興味があるから。その話で言うと、一般的に「あの人とっつきやすい」とか「あの先輩、上司良い人だな」って思われてる人って、意外と人に興味がなかったりするんです。人に興味がないから、適当でいれるんだと思います。だからその人も、その周りの人も楽なんですよ。

ーー深く入り込まれないと、こちらからも入り込まなくていいので、関係性は浅くなりますよね。

そういうことです。あまり干渉しない人は、褒めるのもけなすのも適当なんですよ。逆に人に興味のある人って、めちゃくちゃ粘着質だったり、ときには厳しかったり、良くも悪くも干渉度が強くなる傾向がありますよね。だからそんな人とハマれば有難いことも多いですし、深くて良い信頼関係が築けます。ハマらなかったらただのうっとおしい上司、とかパートナーになりますけどね（笑）。だから人に興味のある人って、良くも悪くも距離が近くなるので、万人にはウケが悪くなるんですよ。嫌われる度合いも高くなるし、好かれる人にはとことん好かれますけどね。人に関心のない人は密着度が低くなるので、めっちゃ嫌われることもなければ好かれることもないんです。これもトレードオフの関係ですよね。おおよそ皆に好かれてる人ほど、その人自身は他人に興味関心が無いんだろうな、と。付き合うのが楽だから好かれてるという印象があります。

ーーお話を伺っていると、高瀬さんご自身は他人に常に関心をもって接っしておられるのだと感じます。

私は完全に密接度が高いんですよ。それがあんまり人と付き合いたくない理由です。疲れちゃいますから（笑）。だから限られた仲間だけでいいというか。だから人にコミットするときには力を出さないようにしたり、私なりに調節しています。相手が望んでいない場合は特に、気を付けます。相手にとってToo muchになりかねないので。

企画で自分も社会も豊かに

ーー高瀬さんは本書の中で、「やらないと後悔するから、とにかくやる」とおっしゃっていましたが、今まで振り返ったときに後悔していることはありますか？

今のところ会社を辞めて、自分で決めたことを自分で責任をもってやっていこうって決めてからは後悔はほとんどないですね。過去というよりかは、これからの話になりますが、音楽が好きなので、年とってから後悔しないように、もっとちゃんと音楽とか絵とか芸術的な活動に取り組みたいなとは思っています。芸術に対する憧れは昔から強いので。作曲とかはちょこちょこやってたんですが、ちゃんと一から勉強してやりたいですね。語学も含めて、後悔する可能性があるなと思うことはやっていきたいです。

ーーそういう行動力がある人は何でもできる気がします。高瀬さんが尊敬する企画者はいますか？

人というよりかは作品単体ごとになりますが、ヒット企画は全部「これうまいなー」って思いますよ。「なんで俺はこの企画ができなかったんだろう」とか。「できそうなのになんで思いつかなかったんだろう」とか。自分がやらなかったことで、当たってる企画をみると、「これ自分もやればできたのにな」とか。低予算系の映画には特に嫉妬しますよね。気合で自腹切ってればできたわけですから。「くそー悔しいなあ」って（笑）。

ーー高瀬さんの企画者としての大儀をお聞きしてもよろしいですか？

「未来をつくる」っていうことだと思います。直接的にはつながらないこともありますが、例えば、気分を高めるだとか、ゴミが出ないようにする、とか。いずれにせよ未来志向というか。未来に対して希望をもてるような企画をしたいですよね。

ーー「企画する」とは「前を向くこと」なんでしょうね。高瀬さんは過去のことにいつまでもとらわれないタイプでしょうか。

いや、超うじうじするタイプなんですよ（笑）。だからこそそういう風に未来志向でいたいと思うんです。うじうじしない人はそもそも未来志向なんて思わないですから。ネガティブな人がポジティブになりたいがためにポジティブシンキングっていうものはあるんですよ。根っからポジティブな人には、ポジティブ思考なんて必要ないですからね。若かった自分に言ってあげたいのは「そこそこ楽しい中年生活になるから、うじうじしなくていいよ。そんなに未来を憂う必要はないよ」ってことですかね。若いころの自分が悲観的になって想像していたような未来よりかは悪くないので。「そんなにネガティブにならなくていいよ」って言ってあげたいです。自分の嫌いな部分に対して対処しようとしたから、今の自分があるのだと思います。もしそのままだったとしたら、ただの「根暗でネガティブな奴」で終わってたと思うので。

ーーこれまでたくさんの人を巻き込んで、たくさんの出会いを大切にされてきたと思いますが、巻き込まれるのはお好きですか？

好きか嫌いかで言うと好きじゃないかも。巻き込む方が断然好きですね。でも巻き込まれている時間が圧倒的に多い。人生の９割以上の時間は巻き込まれてるんじゃないでしょうか。基本断らないですしね。頼られて悪い気はしないじゃないですか。ある意味、承認欲求の延長なのかもしれません。

ーー企画が楽しいと思える人が増えたらどんな世の中になると思いますか？

単純に、ロジックとしては生産量が上がって豊かな国になると思います。良い企画が出ることは人が動くことです。人が動くというのが経済のベースですからね。良い企画で単純に経済的に豊かになると思いますね。

ーー企画って熱を生み出す大きな可能性を秘めてるんですね。

人のテンションという意味での熱量だと、昔よりは断然上がってるかと思います。昔に比べて好きなものにコミットする時間が圧倒的に多くなったので。自分のオタク的な趣味嗜好とか、自分を満たしてくれるサービスやコンテンツに触れられるから社会全体的には満足度は上がってると思います。本書は若い方をターゲットにしたと言いましたが、年配の方も含めてやる気を引き出したいと思って書いた本ですので「いまいちやる気が出ないな」っていう方なら年齢などに関わらず、誰にでも読んでいただきたいです。

とにかく自己責任で何かをする。それだけで人から信頼されるし、悪いようには決してならないと思います。何でもいいから、決めたことに全責任を背負って行動できる人が少しでも増えたらいいなと思います。

「決める」っていうことがまさにそうなんです。何か決めて、それをやり始めると、誰かが必ず寄ってくる。何かをし始めることによって、より魅力的な自分になってたり、より信頼される自分になってたり、より頼もしいと思ってもらえる自分になるわけです。だから、何かする前に「俺のこと信頼してくれる人っていない」とか、「私って頼ってもらえない」とか思ってしまいますが、それって当たり前なんですよ。何かし始めて、周りに認識してもらえるんですから。周りから見ると、私たちが何かし始めるだけで、自分たちは気づいていないかもしれないですが、違う自分になってるんです。

ーーとにかく何かし始めることが大事なんですね。それが周りに波紋のように広がっていくんですね。

そうです。だから未来のことを考える必要がないっていうのはそういうことなんだと思います。例えば、私も「３年後にこんなことできればいいな。いや、できるわけないか」って思うことは山ほどあります。でもこれって今の時点だからなんですよ。その3年後に起こってるだろうことを想像してるだけでは何も変わるわけがない。たった一歩踏み出すだけで、その時の自分からの社会評価にもなるし、人間の繋がりが生まれてくる。出会わなかっただろう人と出会っていたり、助けてくれる人に出会えたり。頭の中で考えているだけだと、永遠にその時点の自分のままなんですよね。永遠になりたい理想の「３年後の自分」には近づけないんです。何かすることによって自分のステージは上がっていくわけです。本書が、読者の皆さまにとって一歩踏み出せる力になれば、そんなに嬉しいことはないですよね。