失敗したことのある人事制度 1位「目標管理制度」人事ポリシー※の有無によって、施策の成功率に差も。「人事制度・人事施策の実態調査2023」
※人事制度・施策の企画・運用における基準となる方針のこと。経営と人事の一貫性を高める役割を担う。
<調査結果のポイント>
・約7割の企業が人事制度・施策において企画・運用の基準となる方針「人事ポリシー(※)」を制定
人事ポリシーを制定している企業は、従業員数1,000人以上の企業では8割以上、従業員数99人以下の企業では約半数と、企業規模によってばらつきが出た。→Q.1参照
※人事制度・施策の企画・運用における基準となる方針のこと。経営と人事の一貫性を高める役割を担う。
・人事ポリシーの有無によって、現行の人事制度・人事施策の成否に差がある
現在運用している人事制度や人事施策の成否を聞いたところ、「上手くいっている(15.6%)」「どちらかというと上手くいっている(55.4%)」で、約7割の企業がポジティブに回答した。しかし、人事ポリシーが「ない」と答えた企業は「ある」と答えた企業に比べ、上手くいっている割合が約20ポイントも少ないという結果となった。また、役職者別では、一般社員、主任・チーフクラスでは約4割が「失敗している」「どちらかというと失敗している」と回答した一方で、課長や部長、経営者クラスでは2割前後にとどまった。→Q.2参照
・導入して失敗したと感じる人事制度・人事施策の1位は「目標管理制度」
そのほか「テレワーク」「フレックス制度」「育休利用促進」の回答が多く上がった。→Q.3参照
・人事制度・人事施策が失敗した影響の1位は「管理職の疲弊」
そのほか、「社員のエンゲージメントやモチベーションが下がった」「会社への不信感が強まった」「社員が疲弊した」などの回答が多く上がった。→Q.5参照
・失敗した人事制度・人事施策への事後対応は約4割の企業が「実施していない」
フリーコメントでは「開始前にもっと社内の声を聞くべきだった」という声が多く上がった。→Q.6参照
Q.1 人事ポリシー(人事制度・施策を企画・運用する際に、原則・基準となる方針や考え方)の有無
Q.2現在運用されている人事制度・人事施策の成否
Q.3 上手くいかなかった、もしくは失敗だった人事制度・人事施策(複数回答)
Q.4どのような点がうまくいかなかった、もしくは失敗だったのか
<フリーコメントより(企業規模/業種/役職)>※原文ママ
・副業を解禁したが、本業がおろそかになるケースが多発した。(~99人/ソフトウェア・通信/経営者)
・テレワークが不十分でコストを押し上げた。準備不足で、社長と一部の従業員の溝が、より深くなった。(100~299人/サービス/役員クラス)
・目標管理制度に理解はできても、自分の目標を立てる事自体のスキルがなかなか身につかず、また、目標の数値化にも馴染まない職種が多く、機能しなかった。360°評価は、無難に中位値をつけることが多く、こちらも機能しなかった。(~99人/その他/経営者)
・全社員との社長ランチを実施したが、多忙であり1か月で終了した。(1000人~/メーカー/部長クラス)
・コロナ禍でリモートワーク導入、副業解禁など、新たな制度を導入したが、各部署での連携や意思疎通、生産性、売上などに大きく影響してしまった。(~99人/サービス/役員クラス)
・メンバーシップ型とジョブ型雇用が混在していて、なかなか難しい。(1000人~/金融/主任・チーフクラス)
・MBOを導入したが、目標設定の難易度が部門ごとにばらばらで公正な価につながらなかった。(1000人~/サービス/部長クラス)
・社内公募制度を導入したが、応募が一部の部署に集中してしまい、結局それを解消できずに、一年で終わってしまった。(300~999人/サービス/部長クラス)
・表彰制度を継続して実施しているが、表彰される従業員の本音としては、通常業務を調整して表彰式や懇親会に出席する必要があり、必ずしも表彰されることが望まれている訳ではない。(1000人~/メーカー/課長クラス)
・能力があってもイエスマンが優先して昇進する。(300~999人/金融/役員クラス)
・従来型の役職制度を廃止したが、社員のモチベーション減退となってしまった(1000人~/インフラ/部長クラス)
・コロナで在宅になったが、コロナ明けてオフィス出社が再開した。結果、休憩室も人がいっぱいで席の争奪戦。リモートワークできるならそのまま継続したほうがいい。(1000人~/ソフトウェア・通信/一般社員クラス)
・コアタイムなしのフレックス制度を導入したら、一人7:30にくる人がいて、その時間に何をしているか疑問。(300~999人/ソフトウェア・通信/主任・チーフクラス)
Q.5失敗したことによる社内への影響(複数回答)
Q.6 上手くいかなかった人事制度・人事施策への事後対応(複数回答)
Q.7 よろしければ、事後対応を行うなかでの気づきや、もっとこうしておけばよかったというエピソードをひとつ教えてください。
<フリーコメントより(企業規模/業種/役職)>※原文ママ
・部分的に小さく始めて実証試験をしてから正式に採用すべきでした(1000人~/サービス/経営者)
・準備段階は、経営者を含めないチームで進めるべきだった。(100~299人/サービス/役員クラス)
・経営者としては、目標管理制度は経営目標達成のための不可欠なアイテムだと思っていたが、自社の業務や社員の持ち味などをもっと熟慮して、意見を聞きながら制度設計すべきだったと反省。(~99人/その他/経営者)
・もっと早く制度廃止を決断していれば、離職率が下がっていたと思う。(1000人~/メーカー/部長クラス)
・全ての社員が納得するものにはなかなかできないと感じるが、それでも幅広くヒアリングすることも必要だったと感じる。(~99人/メーカー/役員クラス)
・人事制度及び人事評価をシステマティックに行えるものか現在企画立案中。顔を合わせて業務することの大切さを痛感した。(~99人/サービス/役員クラス)
・コロナ禍でのテレワークがあったが、無理があったので、現在はほぼ無し。弊社でのテレワークはしないほうがよかった。(300~999人/メーカー/役員クラス)
・導入前と導入直後、定期的な運用フォローをすべきであった。(1000人~/メーカー/部長クラス)
・人事コンサルの提案に安易に乗らず、弊社の社風に見合う取り組みをすべきだった。(300~999人/その他/一般社員クラス)
<調査概要>
調査名:人事制度・人事施策の実態調査2023
対象者:経営者、人事業務に携わったことのある方
対象地域:全国
男女比:男性87.8%、女性12.2%
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年8月24日~8月27日
回答数:475名
<総評>
今回の調査で、約7割の企業で人事ポリシーが策定されているという結果が得られた。
また、自社の人事制度や人事施策に対する成否について、人事ポリシーのある企業では約7割の企業が上手くいっていると回答し、人事ポリシーがない企業と比べてポジティブな結果となっている。
これまでコンサルティングの現場や自身の著書、講演などで、人事ポリシーを定めることの重要性を説いてきた身としては、この結果が事実なのであれば、非常に嬉しく思う。しかし、これまで500社以上の人事に関わってきた経験から、体感として人事ポリシーを明確に策定している企業は1~2割。また、制度や施策が上手く回っている企業も同様の割合だったことを考えると、今回の調査結果は「できすぎ」感が否めない。
経営者や人事担当者が、自分たちはできていると錯覚し、安心しきってしまっている「ゆでガエル状態」になっているのではないかという懸念を拭えないのが正直なところである。
改めて、人事制度や施策の成功のカギは会社のビジョンと連動しているか、つまり一貫性である。その一貫性を保つためにも経営者や人事担当者の判断の拠り所となる人事ポリシーをしっかりと定めておくことが重要である。
特に人事の世界では、結果がでるまで数年単位のものが多い。そのため、新しい取り組みを始めたというニュースは取り上げられるが、失敗したというニュースはほとんど目にしない。そのため、つい流行りの制度や施策を真似してしまうことが多いが、一度立ち止まって、自社を客観的に見て欲しい。
その制度や施策は、本当に自社の理想を実現することに繋がるのか?会社の他の仕組みと矛盾が生じていないだろうか?少しでも明確に答えられない点があるなら、改めて自社の「人事ポリシー」について考え、整理して欲しい。
なぜなら人事の失敗は取返しがつかないからだ。離職率の上昇や、採用力の低下、ポジション配置のミス、過剰な人件費など・・・、経営や社員に何年もひきずるダメージを与える。その痛手は非常に長く大きく続くからこそ、人事はよくよく考えて行わなければならない。
今回の調査結果が、少しでも世の人事担当が自社を振り返るきっかけとなれば幸いである。
(フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長 西尾 太)
【プロフィール】
フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長 西尾 太(にしお ふとし)
人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長。
「人事の学校」主宰。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、
クリエーター・エージェンシー業務を行うクリーク・アンド・リバー社にて、人事・総務部長を歴任。これまで1万人超の採用・昇格面接、管理職研修、階層別研修、人事担当者教育を行う。成果を生みだす上で欠かせない行動として普遍的かつ汎用的に活用できるコンピテンシーモデル「Competency 45 models」を開発。社員の育成につながるキャリアステップ要件として多数の企業で展開されている。また、個人のパーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する適性検査「B-CAV test」を開発し、統計学に基づいた科学的なフィードバック体制を確立する。中でも「年収の多寡は影響力に比例する」という論は好評を博している。著書に「この1冊ですべてわかる 人事制度の基本」(日本実業出版)、「人事の超プロが明かす評価基準」(三笠書房)、「超ジョブ型人事革命」(日経BP)などがある。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。
<会社概要>
フォー・ノーツは、「会社の社員に対する考え方」を明らかにする人事ポリシー策定を起点に、あらゆる組織で普遍的・汎用的に活用できるコンピテンシーモデルを軸にした人事制度を構築するとともに、制度の運用までを伴走して支援。その他、教育研修や人事部づくりなど、人事の困りごとをトータルに支援します。
[社名] フォー・ノーツ株式会社
[代表者] 代表取締役社長 西尾 太(にしお ふとし)
[創立] 2008年4月
[所在地] 〒107-0052 東京都港区赤坂8-5-40 ペガサス青山310
[TEL] 03-6447-1321(代表)
[URL] https://www.fournotes.co.jp/
[事業内容]
●人事コンストラクションサービス
・人事コンサルティング
・人事制度構築/運用支援
・教育研修企画/開発/実施
●人事担当者育成
・人事の学校
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