【JACOB&CO. STORIES】Vol.14:The World Is Yours ―― “世界はあなたのもの”に込められた想いとは――。
革新と芸術性を体現してきたジェイコブ&コーの歩みを、シリーズ形式でご紹介する「JACOB&CO. STORIES」。第14回では、ジェイコブ&コーというブランドの原点となった時計の物語に迫ります。

“The World Is Yours”──すべての始まりは、父から贈られた一本の時計
2025年、創業者ジェイコブ・アラボの60歳を祝して、チームメンバーから特別にカスタマイズされた一本の時計が贈られました。
そのモデルこそ、「ザ ワールド イズ ユアーズ 60 years JACOB」。
ケースバックには、ジェイコブと父ニソン・アラボのかつての写真が収められています。数あるジェイコブ&コーのコレクションの中でも、「ザ ワールド イズ ユアーズ」は創業者自身の人生と深く結びついた、特別な存在です。
なぜ、この時計がジェイコブにとってそれほど特別なのか。
その物語は、彼がまだ13歳だった頃までさかのぼります。


13歳のジェイコブが初めて見た、“その先の世界”

1978年、ジェイコブ・アラボは家族とともに、現在のウズベキスタンの首都タシュケントで暮らしていました。当時、この地は旧ソビエト連邦の一部でした。
現在のように、国境を越えて世界各地を自由に行き来できる時代ではありません。とりわけ少年だったジェイコブにとって、自分たちが暮らす場所の外に広がる世界は、簡単に自分の目で確かめられるものではありませんでした。
父ニソン・アラボが息子に願っていたのは、目の前にあるものだけを、世界のすべてだと思ってほしくないということでした。
自分たちが暮らす場所の外にも、広い世界がある。
国境の向こうには、まだ見たことのない場所があり、異なる時間が流れ、人生には多くの可能性がある。
そのことを息子に想像してほしい。
そんな想いを込めるように、父ニソンは13歳のジェイコブに一本の時計を贈りました。
Wakmann(ワックマン)製のデュアルタイムウォッチ。
世界地図を描いた文字盤には、異なる2つの地域の時刻を表示する2つのダイヤルが配されていました。
一方には、自分が暮らしている場所の時間。
そしてもう一方には、まだ見たことのない世界の時間。
少年ジェイコブにとって、それは単に時刻を知るための時計ではありませんでした。
自分がいる場所の外にも、確かに別の世界が存在している。
それを腕元で教えてくれる、小さな“世界への窓”だったのです。
その翌年、一家はアメリカへと移住します。
それまで時計を通して想像していた“その先の世界”へ、ジェイコブ自身が実際に踏み出すことになりました。
その後、ジェイコブはジュエリー制作の道へ進み、技術とビジネスを学びながら、自らの道を切り拓いていきます。
やがてニューヨークのダイヤモンド・ディストリクトに自身の店を構え、そこから世界的なジュエリー&ウォッチブランドへと成長する道のりが始まりました。
しかし、どれだけ世界が広がっても、少年時代に父から受け取った一本の時計と、そこに込められた想いが失われることはありませんでした。
数十年後、その想いはひとつのコレクションとして形になります。
その名は──
「The World Is Yours──世界はあなたのもの」。
父ニソンからジェイコブ、そしてベンジャミンへ――受け継がれる信念


約45年前、父ニソンが13歳のジェイコブに贈った一本の時計。
その記憶を現代のジェイコブ&コーとして形にするプロジェクトは、創業者ジェイコブ・アラボの息子であり、現在CEOを務めるベンジャミン・アラボを中心に進められました。
祖父ニソンから父ジェイコブへ。そして、ジェイコブからベンジャミンへ。
世代を超えて受け継がれたのは、一本の時計そのものだけではありません。
「自分が今いる場所の外には、もっと広い世界がある」という想いです。
ベンジャミンは、父ジェイコブが少年時代に受け取った時計の世界地図と2つのタイムゾーンという特徴を受け継ぎながら、現代のジェイコブ&コーの時計製造技術によって再解釈しました。
こうして2023年に誕生したのが、
「ザ ワールド イズ ユアーズ デュアルタイムゾーン」です。
これは、ヴィンテージウォッチを単に復刻した時計ではありません。
父から子へと受け継がれてきた記憶と想いを、現代のタイムピースとして新たに形にしたモデルなのです。
腕元に“地球”を宿す――「ザ ワールド イズ ユアーズ」の始まり


2023年、コレクションの第1作として「ザ ワールド イズ ユアーズ デュアルタイムゾーン」が発表されました。
18Kローズゴールド製ケースの中には、立体的に表現されたゴールドの大陸と、ブルーPVD仕上げによる鮮やかな海が広がります。
文字盤そのものが緩やかなドームを描き、その上を覆うサファイアクリスタルは、さらに大きな曲面を形成。
平面的な世界地図ではなく、まるで腕元に小さな地球が浮かんでいるかのような立体感を生み出しています。
しかし、この時計における“世界”というテーマは、デザインだけにとどまりません。
原点となったWakmannの時計と同様に、2つの独立したタイムゾーン表示を搭載。
異なる2地点の時刻を同時に表示することで、「自分が今いる場所」と「その外に広がる世界」を、ひとつの時計の中で表現しています。
父ニソンが少年ジェイコブに贈ったデュアルタイム。
その機能そのものが、45年の時を経ても受け継がれているのです。
中央には、羅針図(コンパスローズ)をモチーフとしたスモールセコンドを配置。
世界地図の中心で絶えず回転するその姿は、世界の中で自らの進む方向を見つけるという、このコレクションの物語とも重なります。
世界地図、2つのタイムゾーン、そしてコンパスローズ。
デザインと機構の双方で、“世界”というテーマが貫かれています。
“世界”を一本の時計に ── 細部まで貫かれたデザインコード


「ザ ワールド イズ ユアーズ」の世界観は、文字盤の世界地図だけで完結するものではありません。
通常モデルでは、表側に西半球を立体的に描き、ケースバックには東半球が刻まれています。
時計の表と裏を合わせることで、ひとつの地球が完成する。
これが、コレクション全体を貫く重要なデザインコードのひとつです。
さらに、文字盤そのものがドーム状に設計されているため、その上を覆うサファイアクリスタルも美しい曲面を描きます。
二つの曲面を重ねることで、単なる平面的な世界地図ではなく、地球そのものを思わせる立体的な造形をつくり出しています。
そして、その立体文字盤に沿うように、12時位置と6時位置に配された2つの時刻表示の針も12度傾斜して取り付けられています。
平面上に機構を配置するのではなく、立体的な世界観の中で時計としての機能を成立させる。
そこには、見た目だけでは分からない精密な設計が隠されています。
中央にはコンパスローズ。
表側には西半球、裏側には東半球。
さらに、ケースバックに刻まれたブランドロゴは、創業者ジェイコブ・アラボの故郷であるウズベキスタンの位置に配されています。
世界を描いた時計の中に、ジェイコブ自身が生まれた場所まで刻み込む。
「ザ ワールド イズ ユアーズ」が単なるワールドマップウォッチではないことを物語る、象徴的なディテールです。
同じ“世界”を、異なる表情で


2023年に誕生した「ザ ワールド イズ ユアーズ デュアルタイムゾーン」は、その後もさまざまな素材やカラー、ディテールへと表現の幅を広げています。
2025年には新たに、金色の大陸に漆黒の海を湛えたブラック×ゴールドモデル と、銀色の大陸に青海が映えるブルー×ステンレスモデルが登場しました。特筆すべきは、2023年のブルー×ゴールドモデルを含め、いずれのモデルも大陸や海の質感、文字盤の表現がそれぞれ異なっている点です。
同一シリーズの中でディテールを変え、一つひとつに異なる表情を与える――この徹底したこだわりこそ、ジェイコブ&コーというブランドの真髄といえるでしょう。
ブラック×ゴールドモデルは、“黒金”という王道のカラーコードを纏いながら、より アーバンで洗練さ れた印象を放ちます。海はラッカーによって表現され、その漆黒の艶はまるで深夜の夜の海のように静かで神秘的。その深い闇の上に浮かぶ金色の大陸は、シリーズの中でも最も立体的に造形され、光の角度によって表情を変えます。ブラックとゴールドの強いコントラストが生み出す華やかさと重厚感 ― それはまさに、ジェイコブ&コーが体現する“ラグジュアリーとアートの融合”を象徴しています。
一方、ブルー×ステンレススチールモデルは、シリーズの中でもっとも軽やかでモダンな印象を持ちます。ロジウム仕上げによって穏やかに光を反射するシルバーの大陸と、ブルーPVDが描き出す透き通るような海とのコントラストは、まるで雲がゆらめく青空を覗き込むような爽やかさを感じさせます。ステンレス素材ならではの堅牢性と日常性を備えながらも、仕上げの緻密さによって確かな高級感を保 ち、“旅する現代人”のための洗練されたタイムピースとして位置づけられています。
夜の地球へ──MAD Parisが描く、もうひとつの「世界」
さらに2025年、世界的なカスタマイズブランド「MAD Paris(マッドパリ)」とのコラボレーションモデル、「ザ ワールド イズ ユアーズ デュアルタイムゾーン マッドパリ」が登場しました。
ブラックDLCケースとブラックを基調とした文字盤によって、通常モデルとはまったく異なる“夜の地球”を表現。


最大の特徴は、大陸上の都市の光を思わせるように施されたスーパールミノバ。
明るい場所ではオールブラックの精悍な表情を見せながら、暗所では光点が浮かび上がり、まるで宇宙から夜の地球を眺めているかのような姿へと変化します。
さらに、文字盤のデザインには航空計器から着想を得た要素が取り入れられ、中央のスモールセコンドも通常モデルとは異なる意匠へと変更されています。
「世界地図」と「デュアルタイム」というコレクションの核を残しながら、MAD Parisの感性によって、まったく異なる“世界”を描いたモデルです。
30秒トゥールビヨン──“世界”を複雑時計へ


そして2025年、「ザ ワールド イズ ユアーズ」は複雑時計としても新たな段階へ進みます。
登場したのが、
「ザ ワールド イズ ユアーズ デュアルタイムゾーン トゥールビヨン」です。
世界地図と2つの独立したタイムゾーンという基本コンセプトを受け継ぎながら、文字盤中央には30秒で1回転するセンタートゥールビヨンを搭載。
通常の60秒トゥールビヨンよりも速い回転によって、文字盤中央に絶え間ない動きを生み出します。
さらに、通常モデル以上に文字盤とサファイアクリスタルのカーブを強調することで、世界地図はより球体に近い造形へと進化。
腕元に“地球”を載せるというコレクションのデザインコンセプトが、より立体的に表現されています。
通常モデルの中央に置かれていたコンパスローズは、トゥールビヨンという複雑機構へ。
しかし、その意匠は失われていません。
回転するトゥールビヨンの中心にもコンパスローズのモチーフが受け継がれ、コレクションのアイデンティティを保っています。
ムーブメントには、自社製自動巻きキャリバーJCAA45を搭載。
オフセンターに配置されたマイクロローターによる自動巻き機構を採用し、約65時間のパワーリザーブを備えます。
世界地図という芸術的な造形。
異なる2地点を表示するデュアルタイム。
そして、30秒センタートゥールビヨンという複雑機構。
父ニソンから受け継いだ原点を守りながら、ジェイコブ&コーの時計製造技術によって、その世界をさらに広げたモデルです。


“The World Is Yours”──時を超えて受け継がれる想い
「ザ ワールド イズ ユアーズ」の物語は、13歳の少年に父が一本の時計を手渡したところから始まりました。
当時、タシュケントで暮らしていたジェイコブにとって、世界とはまだ遠い存在でした。
そんな息子に、父ニソンは世界地図と2つのタイムゾーンを持つ時計を贈りました。
目の前に見えている場所だけが、世界のすべてではない。
その先には、まだ見たことのない場所がある。
違う時間が流れる土地があり、まだ知らない可能性がある。
父が一本の時計に託したその想いは、数十年の時を経て、ジェイコブ自身のブランドから一本のタイムピースとして再び形になりました。
そして今、その物語はジェイコブから息子ベンジャミンへと受け継がれています。
“The World Is Yours──世界はあなたのもの。”
それは、単に世界を所有するという意味だけではありません。
目の前に見えている世界だけをすべてと思わず、その先にある可能性を信じ、自らの意志で世界へ踏み出していくこと。
父ニソンが息子ジェイコブに託したのは、そんなメッセージでもありました。
13歳のジェイコブが父から受け取った一本の時計は、やがて彼自身の人生を象徴するコレクションへと姿を変えました。
父から子へ。
そして、次の世代へ。
「The World Is Yours」という名に込められているのは、時計以上に長く受け継がれてきた、アラボ家の想いなのです。
【The Latest|新たな一歩】
ジェイコブ&コーは、絶えず進化を続けています。
ここでは、ジェイコブ&コーの最新の動きをお届けします。

ジェイコブ&コー銀座ブティックにてトランクショーを開催
ジェイコブ&コーは、2025年11月9日から11日までの3日間、銀座ブティックにて特別なトランクショーを開催中です。
2025年の新作として世界初の4軸トゥールビヨンを搭載した「アストロノミア フォーアクシス トゥールビヨン」や、まるでダイヤモンドの氷山を思わせる「ミステリー トゥールビヨン」など、通常では見ることのできない希少なタイムピースが一堂に揃います。
本イベントは完全予約制にて実施されております。

◆JACOB&CO.銀座ブティック
〒104-0061
東京都中央区銀座6-7-9丸喜ビル1階
営業時間11:00〜20:00
Tel:03-6281-4777
Email:info@jacobandco.jp
◆JACOB&CO.について
1986年に設立。当初は高級ジュエリーを取り扱い、宝飾業界で高い地位を確立し、2002年に時計業界へ本格的に参入しました。世界中のセレブリティを中心に一世を風靡したファイブタイムゾーンウォッチから始まり、これまで不可能と言われてきた複雑機構「アストロノミア」、「ツインターボ」、「ブガッティ シロン」などの開発に成功し、時計業界に技術革新を起こし続けています。現在、ジェイコブは超高級車メーカー「ブガッティ」やサッカー界のスター選手「クリスティアーノ・ロナウド」などとパートナーシップ契約を結び、「不可能を可能に」というコンセプトのもと革新的な作品を生み出し続けています。スイス最高峰の時計製造技術と宝飾業界で培った高い芸術性とノウハウを兼ね備え、時計業界の最先端を行くブランドとして、世界中で多くのファンを魅了し続けています。
◆JACOB&CO. STORIESについて
2022年4月、JACOB&CO. JAPAN(代表取締役 福田魁)が設立されました。
今年、設立から3年目という節目を迎えるにあたり、改めてブランドの軌跡を深く掘り下げ、その本質に迫る連載企画「JACOB&CO. STORIES」を始動します。
本企画では、ブランドの創業から現在に至るまでの歴史、世界的なパートナーシップ、そして珠玉の現行コレクションを、全24回にわたってご紹介予定。
なお、本連載は毎月第2・第4月曜日に公開を予定しております。
ジェイコブ&コーの軌跡を、定期的にお届けしてまいります。
*Archive*
Vol.1:ブランドの原点──ジェイコブ・アラボ、ブランド誕生の物語
Vol.2:“ジュエラーの反逆”──スイスに拒まれた男が作った革命のタイムピース
Vol.3:新章開幕──ファイブタイムゾーンから“機械芸術”へ、Jacob & Co.革命の瞬間
Vol.4:ブランドの現在地──時計を超えて芸術へ、Jacob & Co.が描く革新の形
Vol.5:“唯一無二”の共鳴──時計の概念を超えて広がるJacob & Co.の世界観
Vol.6:世界のセレブが夢中になるジェイコブ&コーの真価──“本物”の証は腕元に宿る
Vol.7:JACOB&CO.のラグジュアリー革命──時計を超えた究極のライフスタイルとは
Vol.8:Epic Xの革新譚──ラグジュアリーの再定義、“X”が導く革新
Vol.9:“X”が象る魂と構造──スケルトン、ブリッジ、CR7が紡ぐエピックXの真髄
Vol.10:“X”が切り拓く美と革新──拡張し続けるエピックXの表現領域が導く、ラグジュアリーの新たな地平
Vol.11:アストロノミアという革命児──宇宙を凝縮した“心を奪う回転機構”。その先に待つものは──。
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