2年目、3年目、4年目の若手社員の約4割が今の会社で働き続けることに不安!不安を感じるとき、2年目は働き方が理想ではない、3年目はキャリアについて考える余裕がない、4年目は身近に目指すべき存在がいない
【若手社員の意識調査】社会人2年目~4年目の壁(上司とキャリア編)
背景
当社ではこれまで、新入社員の意識調査や入社1年目のギャップに関する調査など、1年目社員の調査を様々な視点で行ってきました。人材育成、採用などの業界においても1年目社員に関する調査は数多く実施されていますが、2~4年目の社員に関しては1年目ほどフォーカスが当たっていないのが現状です。一般的に“若手”と一括りにされることが多い年次ですが、各年次における意識は多種多様ではないでしょうか。若手が思うように育たない、新人研修やOJTなど時間やコストを投資したがすぐに辞めてしまう、これからというタイミングで転職してしまうなど、若手に関する悩みは多くの企業が抱えており、当社にも日々相談が来ています。その解決の糸口をみつけるために、若手を紐解き、2年目、3年目、4年目と各年次がそれぞれどのような価値観を持ち、悩みを抱えているのか、また共通点や違いは何かを明らかにすべく、各年次に対して調査を実施しました。
調査結果の概要
・「上司との人間関係における苦労、この会社で働き続けることへの不安」2年目が最も高く約4割が実感
・上司との関係で苦労した場面、全年次共通で「適切な指示を出してくれない」。2年目は「相談に乗ってくれない」、3年目は「年が離れている」、4年目は「意見が合わない」ときにおいて他年次より苦労を実感
・上司との関係で苦労した状況、2、3年目は「不安」に感じ、4年目は「不満」「会社を辞めたくなった」
・後輩との関係で苦労した場面、2年目は「教え方が分からない、うまく教えられない」、3年目、4年目は「意見が合わない」とき
・後輩との関係で苦労した状況、2年目は「期待に応えよう」と感じ、3年目は「不安」、4年目は「不満」を感じる
・今の会社で働き続けることに不安を抱く場面、2年目「働き方が理想ではない」、3年目「キャリアについて考える余裕がない」、4年目「身近に目指すべき存在がいない」
・今の会社で働き続けることに不安を抱く状況、全年次共通で「不安」に感じ、全年次の1/4が離職意向を選択
調査結果の詳細
1. 「上司との人間関係における苦労、この会社で働き続けることへの不安」2年目が最も高く約4割が実感
本調査では、社会人2年目、3年目、4年目の若手社員に対し、現在どのようなことに困難を感じているか、不安を感じているか、仕事や上司、キャリアや自身の成長など、16の項目(以下、『16の壁』と記載)について質問しました。その中でも、「上司との人間関係について、苦労したことがある」「後輩との人間関係について、苦労したことがある」「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じることがある」といった上司・後輩との人間関係の壁、自身の今後のキャリアが描けないというキャリア不安の壁について、結果を年次別に比較しました。
まずは、「上司との人間関係について、苦労したことがある」について年次別に見ると、社会人2年目が40.3%と最も高い割合となり、3年目が37.7%、4年目が38.7%となりました。
次に、「後輩との人間関係について、苦労したことがある」については、社会人2年目が22.7%と最も高い結果となり、3年目が21.7%、4年目が18.3%となりました。
そして、「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じることがある」については、社会人2年目が41.3%と最も高く、3年目、4年目が同率の40.7%となりました。
後輩との人間関係における苦労は、年次が上がるにつれて解消される結果となりましたが、上司との関係は3年目で多少解消されるものの4年目では再び上昇。キャリア不安については、2年目が最も高く、その後年次が上がってもほとんど解消されない結果となりました。(図1)
2. 上司との関係で苦労した場面、全年次共通で「適切な指示を出してくれない」。2年目は「相談に乗ってくれない」、3年目は「年が離れている」、4年目は「意見が合わない」ときにおいて他年次より苦労を実感
ここからは、前述した「上司との人間関係について、苦労したことがある」「後輩との人間関係について、苦労したことがある」「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じることがある」の3つの項目について、具体的にどのような場面か、またそれらの場面をどのように捉えたか、見ていきます。
まずは、「上司との人間関係について、苦労したことがある」と回答した人に、具体的にどのような場面で苦労したのか質問しました。結果、「適切な指示を出してくれない」が、各年次最も高い結果となりました(社会人2年目23.1%、社会人3年目24.8%、社会人4年目24.1%)。
2年目の2位には「厳しい/怖い(18.2%)」、3年目の2位には「意見が合わない」「厳しい/怖い」が同率で17.7%でした。4年目の2位には「意見が合わない(20.7%)」が入り、こちらは2年目と比べると5.0ポイントの差が出ました。
その他、年次で差がついた項目は、「適切なフィードバックをもらえない」「相談に乗ってくれない」は2年目が最も高く、特に「相談に乗ってくれない」については3,4年次と8ポイント程の差となりました。また、割合は低いですが、「年が離れている」については、3年目が最も高く、2年目とは6.4ポイントの差が出ました。(図2)
3. 上司との関係で苦労した状況、2、3年目は「不安」に感じ、4年目は「不満」「会社を辞めたくなった」
上司との人間関係について、様々な場面で苦労を感じていることがわかりましたが、その状況を各年次の社員はどのように捉えているのでしょうか。
社会人2年目、3年目は「不安に感じた」が最も高く、それぞれ30.6%、26.5%が回答。社会人4年目に関しては、「不満を抱いた」「会社を辞めたくなった」が23.3%の同率1位に。2、3年目の2位、3位にも「不満を抱いた」「会社を辞めたくなった」が入る結果となりました。
その他、年次で差がついた項目は、「期待に応えようと感じた」は2年目が最も高く、4年目よりも5.3ポイント高くなりました。「負けたくない・悔しいと感じた」は3年目が最も高く、4年目よりも5.5ポイント高い結果に。前述の「会社を辞めたくなった」については、4年目は2年目よりも5.9ポイント高く、年次ごとに差が出る結果となりました(図3)。
4. 後輩との関係で苦労した場面、2年目は「教え方が分からない、うまく教えられない」、3年目、4年目は「意見が合わない」とき
次に、「後輩との人間関係について、苦労したことがある」と回答した人に、具体的にどのような場面で苦労したのか質問しました。
社会人2年目は「教え方が分からない、うまく教えられない」が25.0%と最も高く、4年目よりも8.6ポイント高い結果となりました。3、4年目は「意見が合わない」が最も高く(29.2%、27.3%)、特に3年目は2年目よりも7.1ポイント高くなりました。
その他、年次で差がついた項目は、「関わる時間が取れない」は2年目が最も高く17.6%で、3年目よりも13ポイント高い結果に。「後輩の態度が悪い」は4年目が最も高く18.2%となり、2年目と15.3ポイントの差が出ました。また、割合は低いですが、「後輩の能力が低い」は3年目が最も高くなり、2年目と6.4ポイントの差が出ました。(図4)
5. 後輩との関係で苦労した状況、2年目は「期待に応えよう」と感じ、3年目は「不安」、4年目は「不満」を感じる
後輩との人間関係について、こちらも苦労した状況をどのように捉えたか各年次に質問しました。
社会人2年目で最も高い割合となったのは「期待に応えようと感じた(20.6%)」でした。3年目は「不安に感じた(27.7%)」、4年目は「不満を抱いた(29.1%)」と、各年次で違いが出る結果となりました。ちなみに、3年目の2位には「期待に応えようと感じた(21.5%)」、4年目の2位には「負けたくない・悔しいと感じた(16.4%)」が入りました。(図5)
6. 今の会社で働き続けることに不安を抱く場面、2年目「働き方が理想ではない」、3年目「キャリアについて考える余裕がない」、4年目「身近に目指すべき存在がいない」
続いて、「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じることがある」と回答した人に対して、どのような場面で不安を感じるか、質問しました。
結果、2年目で最も高い割合となったのは「働き方が理想ではない(29.0%)」、3年目で最も高い割合となったのは2年目同様に「働き方が理想ではない(27.9%)」そして、同率で「キャリアについて考える余裕がない(27.9%)」が入りました。特に「キャリアについて考える余裕がない」については、4年目と14.8ポイントの差がつきました。4年目が最も高い割合となったのは「身近に目指すべき存在がいない(30.3%)」となり、こちらは3年目と5.7ポイント差がつく結果となりました。
その他、年次で差がついた項目は、「キャリアについて相談する相手がいない」は2年目が最も高く(21.8%)、4年目と7.9ポイントの差、「自分が評価されていない」は4年目が最も高く(23.0%)、3年目と9.1ポイントの差が出ました。(図6)
7. 今の会社で働き続けることに不安を抱く状況、全年次共通で「不安」に感じ、全年次の1/4が離職意向を選択
様々な場面で今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じていることがわかりましたが、その状況を各年次はどのように捉えているでしょうか。
各年次最も高い割合となったのは「不安を感じた(2年目32.3%、3年目27.0%、4年目31.1%)」でした。続いて、2年目の2位には「不満を抱いた(26.6%)」、3位には「会社を辞めたくなった(25.0%)」、3年目の2位には「会社を辞めたくなった」「不満を抱いた」が同率25.4%、4年目の2位は「会社を辞めたくなった(25.4%)」という結果に。各年次の1/4が離職を検討する結果となり、働き続けることへ不安を抱く状況は、上司や後輩との人間関係よりも離職に影響していると推察されます。(図7)
まとめ
今回は、社会人2~4年目が直面する壁のうち、上司・後輩との人間関係の壁、自身の今後のキャリアが描けないというキャリア不安の壁について分析しました。
後輩との人間関係の壁は、年次が上がるとともに解消され、また、後輩との苦労する状況を、不安や不満を感じつつも「期待に応えたい」「負けたくない、悔しいと感じた」など、健全な感情とも言える捉え方をしている結果となりました。
上司との人間関係の壁については、2年目が最も高く、3年目は少し下がるものの、4年目には再び上昇という結果に。特に上司との関係で苦労する場面については、全年次が共通で「上司が適切な指示を出してくれないとき」となりました。第1回目の調査結果*1でもあったように、業務の指示を出す時は、まず仕事の目的・意義を丁寧に伝えることが重要です。さらに、その目的を達成するためのプロセスについても5W2Hを明確にして、適切な指示を出すことが求められるでしょう。特に4年目社員となると、意思疎通が図れているものとして指示が曖昧になりがちですが、4年目は上司との関係において離職意向が他年次よりも高く、注意が必要です。
また、キャリア不安に関する壁についても2年目が最も高い結果となりましたが、3、4年でも不安はほぼ解消されず、各年次の社員の約4割が「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じることがある」と回答しています。どのような場面で不安を感じるのかについては、2、3年目では「働き方が理想ではない」がTOPとなりました。近年の潮流として、テレワークやワーケーション、週休3日制など新しい働き方が生まれ、こうした働き方を導入している企業に注目が集まりがちなため、このようなごく一部の企業の取り組み事例を見聞きし、自由度の高い働き方が「理想」として見えてしまう部分もあるでしょう。仕事経験が浅い分、働き方などの日常の場面に意識がいくのは自然な流れではありますが、「理想の働き方に近づくためにはどうすればいいのか?→自分の仕事のやり方の生産性を上げる→そのためには何をすればいいのか?」と自分の知識・スキルの向上によって実現できることにも視点を向けさせ、スキルアップのサポートをしていくことが今のZ世代の上司の重要な役割でもあります。
4年目のTOPには「身近に目指すべき存在がいない」といった結果となりましたが、こちらは以前実施した調査結果*2が参考になるかもしれません。その調査では、管理職、リーダー層の半数以上が、ロールモデルとして「その人の一部分(良い面)だけをお手本」にしていると回答しています。つまり、全て完璧で「あの人のようになりたい」といった人を探すのではなく、いろいろな人の良い面をお手本にする、といった考え方を持つことが本人にとっても、会社にとっても重要となるでしょう。
*1ラーニングエージェンシー「若手社員の意識調査(社会人2年目~4年目の直面する壁TOP3編)」
https://www.learningagency.co.jp/topics/20221005
*2ラーニングエージェンシー(トーマツ イノベーション)×中原淳(2017)「働く男女のキャリア調査」
https://www.learningagency.co.jp/column_report/research/research_42_170623.html
*3ラーニングエージェンシー「若手社員の意識調査(社会人2年目~4年目の直面する壁ストレッチ業務編)」
https://www.learningagency.co.jp/topics/20221012
調査対象者 | 22~34歳の社会人2年目~4年目の就労者 |
調査時期 | 2022年7月22日~7月25日 |
調査方法 | 調査会社によるインターネット調査 |
サンプル数 | 900人 <社会人2年目>300名、 <社会人3年目>300名、 <社会人4年目>300名 |
属性 | <社会人2年目> (1)性別 ①男性:39.7%(119人) ②女性:60.3%(181人) (2)所属企業の従業員数規模 ①1人~50人:18.7%(56人) ②51人~100人:14.3%(43人) ③101人~300人:21.3%(64人) ④301人~1,000人:12.7%(38人) ⑤1,001人~5,000人:9.7%(29人) ⑥5,000人~:11.3%(34人) ⑦不明:12.0%(36人) <社会人3年目> (1)性別 ①男性:35.3%(106人) ②女性:64.7%(194人) (2)所属企業の従業員数規模 ①1人~50人:21.3%(64人) ②51人~100人:13.7%(41人) ③101人~300人:14.7%(44人) ④301人~1,000人:15.3%(46人) ⑤1,001人~5,000人:11.7%(35人) ⑥5,000人~:9.7%(29人) ⑦不明:13.7%(41人) <社会人4年目> (1)性別 ①男性:35.3%(106人) ②女性:64.7%(194人) (2)所属企業の従業員数規模 ①1人~50人:14.3%(43人) ②51人~100人:10.3%(31人) ③101人~300人:18.7%(56人) ④301人~1,000人:15.3%(46人) ⑤1,001人~5,000人:13.3%(40人) ⑥5,000人~:19.3%(58人) ⑦不明:8.7%(26人) |
*本調査を引用される際は【ラーニングエージェンシー「若手社員の意識調査(社会人2年目~4年目の直面する壁 上司とキャリア編)」】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
株式会社ラーニングエージェンシー 当社は設立以来、定額制集合研修 「Biz CAMPUS Basic」、ビジネススキル学習アプリ「Mobile Knowledge」、ビジネススキル診断テスト 「Biz SCORE Basic」など、人と組織の学びを支援する業界初*のサービスを開発・提供しています。「LEARNING」の可能性を探求し続け、「人と組織の未来創り」を真にリードできる伴走者、ラーニングコアパートナーとして、お客様に長く貢献してまいります。*Biz CAMPUS Basic、Mobile Knowledge(For Freshers)は東京商工リサーチ調べ、Biz SCORE Basicはシタシオンジャパン調べ ラーニングイノベーション総合研究所 ラーニングエージェンシーの研究機関であるラーニングイノベーション総合研究所(以下、LI総研)は、人と組織の未来創りに関する様々な調査・研究活動を行っています。LI総研はデータに基づいた最適な解決策もご提供し、お客様の組織開発をサポートしています。 代表取締役社長 眞﨑 大輔 事業内容 人材育成・教育研修 本社所在地 〒100-0006 東京都千代田区有楽町 2-7-1 有楽町 ITOCiA(イトシア)オフィスタワー18F URL www.learningagency.co.jp |
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