ビジネスパーソンが「認識や理解のズレ」を感じる場面、第1位は「上司や部下とのやり取り」と69.5%が回答

社会人のコミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」実態調査(予防・対策のヒント編)

ALL DIFFERENT株式会社

株式会社ラーニングエージェンシー(本社 東京都千代田区、代表取締役社長 眞﨑大輔、以下「LA」)および人と組織の未来創りに関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所では、2023年2月1日~3月6日の期間で当社が提供する研修の受講者である614人のビジネスパーソンを対象に、コミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」に関するアンケート調査を実施しました。前回公表したレポート*1では、オンラインコミュニケーションにおける実態を中心にレポートしました。今回は「認識や理解のズレ」を予防・対策するためのヒントとなる調査結果を公表いたします。

背景
新型コロナウィルス感染拡大をきっかけに、テレワークや時差通勤による勤務形態の多様化、専門性を高めるジョブ型雇用の導入、打合せや商談におけるオンライン会議ツールの導入、契約書や請求書などの紙媒体の電子化など、私たちの働き方や業務内容は大きく変わりました。特に、テレワークの普及により、通勤時間が短縮されワークライフバランスがとりやすくなったなどのメリットがある一方、コミュニケーションや部下育成に関する難易度の高まりといったデメリットを感じている方もいるでしょう。日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボの「働き方改革に関する動向・意識調査」*2でも、テレワークの普及により、生産性が高まる人と低くなる人が二極化してきていることが指摘されています。そこで、今回の調査ではコミュニケーションにおける社内の「認識や理解のズレ」に関する実態を明らかにするため、ビジネスパーソン614名にアンケート調査を行いました。

調査結果の概要
・コミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」、発生頻度は月1、2回が最多で41.5%
・約7割のビジネスパーソンが「上司または部下とのやり取り」の場面で認識や理解のズレを実感
・認識や理解のズレにより、「再度同じ説明をする/求められることになり困った」と回答する人が半数以上
・8割以上のビジネスパーソンが「認識や理解のズレ」を発生させないために「お互いの認識確認が重要」と回答。受け取る側に理解力を求める割合は3割に
・情報を伝える側の工夫に「相手が理解しやすい言葉の使用や資料の作成」、情報を受け取る側の工夫に「再度自分の言葉で復唱」と、どちらも6割が回答。スキルアップへの取り組みは少ない結果に
・伝える側・受け取る側の工夫は業界により違いあり。製造業では約8割が伝える際に「相手が理解しやすい言葉・資料を使用する」と回答し、他業種より10ポイント高い結果に。卸・小売業と情報通信業では、受け取る際に「自分の言葉で復唱する」と6割が回答


調査結果の詳細
1.コミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」、発生頻度は月1、2回が最多で41.5%
本調査では614名のビジネスパーソンに、コミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」に関する実態調査を行いました。前回公表した調査結果*1では、88.1%のビジネスパーソンが日頃のコミュニケーションにおいて「認識や理解のズレ」が発生していると回答したことが明らかとなりましたが、いま、職場では一体どれくらいの頻度で発生しているのでしょうか。

発生頻度を質問したところ、「月に1,2回」と回答した割合が41.5%で最多、次いで「週1回程」と回答した割合が30.0%となりました。一方、「ほぼ毎日」と回答した割合も6%おり、「わからない」と回答した割合は7.2%となりました。(図1)


2.約7割のビジネスパーソンが「上司または部下とのやり取り」の場面で認識や理解のズレが発生していると回答
次にコミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」がどのような場面で発生しているか質問しました。結果、69.5%が「上司または部下と日々の仕事のやり取りをしているとき」と回答しました。次に「会議などでお互いの情報共有や意見交換をしているとき」が48.2%となりました。

一方、「顧客からの要件、要望などをヒアリングしているとき」は26.2%、「契約書や注文書など、ビジネス文書の作成や取引先とのやり取りをしているとき」は10.1%となりました。(図2)


3.認識や理解のズレにより、「再度同じ説明をする/求められることになり困った」と回答する人が半数以上
前回公表した調査結果*1からも、ほとんどのビジネスパーソンが「認識や理解のズレ」により仕事で困ったことがあると回答する結果となりましたが、具体的にどのような内容で困っているのか質問してみました。

結果、54.1%が「再度同じ説明をしてもらうことになった/再度同じ説明を求められた」と回答しました。次に「思わぬところでタスクの抜け漏れが生じた」が43.6%、「イメージとは異なる成果物を作ってしまった/イメージとは異なる成果物が出てきた」が34.5%となりました。(図3)


ここからは、「認識や理解のズレ」を起こさないようにするための取り組み内容を質問しました。

4.8割以上のビジネスパーソンが「認識や理解のズレ」を発生させないために「お互いの認識確認が重要」と回答。一方、受け取る側に理解力を求める割合は3割に
まず、大切に思っていることを質問したところ、88.1%のビジネスパーソンが「お互いの認識があっているか確認しあうこと」が重要と回答する結果に。次に「情報を伝える側がもっとわかりやすい言葉を使うこと」が50.3%となりました。一方、「情報を受ける側がもっと理解力をつけること」は31.9%と少ない結果となりました。(図4)


5.コミュニケーションをとる際に工夫していること、伝える側は「相手が理解しやすい言葉の使用や資料の作成」が66.3%で最多。受け取る側は「再度自分の言葉で復唱」が59.1%で最多。一方、「スキルアップに取り組んでいる」という回答はどちら側でも低い結果に
次に、情報を伝える側・受け取る側としてどのような工夫をしているか質問しました。

情報を伝える側としては「相手が理解しやすいよう、なるべく簡単な言葉を使って伝えたり、資料を作ったりしている」と回答した割合が6割を超える66.3%となりました。次に「一気にまとめて話さず、短いまとまりで相手の理解を確認しながら伝えている(38.1%)」「PREP法(結論から話す話法)などを使い、相手が理解しやすいように伝えている(36.5%)」が続きました。

一方、「伝えるスキルを身につけるために研修に参加したり、個人的に学んだりしていること」は18.2%と低い結果となりました。(図5)


次に、情報を受ける側として工夫していることを質問したところ、「こちらの認識が正しいかどうか確認するために、聞いたことを再度自分の言葉で復唱している」と回答した割合が約6割の59.1%となりました。次に「話のポイントやおさえるべき点は何か、聞くようにしている」が53.1%、「認識がずれないように、なるべくすべての話のメモを取りながら聞いている」が46.3%となりました。

一方、「理解力や読解力を身につけるために研修に参加したり、個人的に学んだりしている」と回答した割合は16.1%となりました。情報を伝える側と同様に、スキルを磨くために、新たな知識を取り入れることは少ないことがわかりました。(図6)

 


6.伝える側・受け取る側の工夫は、業界により違いあり。製造業では約8割が伝える際に「相手が理解しやすい言葉・資料を使用する」と回答し、他業種より10ポイント高い結果に。卸・小売業と情報通信業では、受け取る際に「自分の言葉で復唱する」と6割も回答
伝える側・受け取る側の工夫には、業界別にも違いが見られました。回答数が多かった3業種(情報通信業・製造業・卸売業、小売業)と、その他業種とで分類し比較してみました。

伝える側としては、「相手が理解しやすいよう、なるべく簡単な言葉を使って伝えたり、資料を作ったりしている」と回答した割合が全業種で6割以上となり、最も高い結果となりました。その中でも製造業は、他業種より10ポイント以上高い結果となりました。また、情報通信業では「こちらの意図が正しく相手に伝わっているかどうか確認するために、相手に同じ話をしてもらう」の項目が他業種より高くなり、卸売業・小売業では「伝えるスキルを身につけるために研修に参加したり、個人的に学んでいる人」が高い割合となりました。(図7)


受け取る側としては、情報通信業や卸売業・小売業では「こちらの認識が正しいかどうか確認するために、聞いたことを再度自分の言葉で復唱している」が65%以上となったものの、製造業では半数以下の結果となりました。製造業では、「話のポイントやおさえるべき点は何か、聞くようにしている」と回答した割合が最も高く、他業種と比較しても高い割合となりました。卸売業、小売業では、「こちらの認識が正しいかどうか確認するために、聞いたことを再度自分の言葉で復唱している」「契約書などビジネス文書を読む際は、他のメンバーと認識がズレていないか都度確認している」と回答した割合が他業種より最も高くなりました。(図8)


まとめ
「依頼した内容と違う成果物が提出された」「部下の報告内容が理解できない」「きちんと伝えたはずだったが、正しく伝わっていなかった」など、誰もが一度は直面したことがある「認識や理解のズレ」。企業における生産性向上が強く求められる中、このような日常のミスコミュニケーションがどれほど影響を及ぼしているのかを明らかにすべく、実態調査を行いました。

今回の調査では、ビジネスの現場において情報を伝える側と受け取る側で発生する「認識や理解のズレ」、いわゆるミスコミュニケーションが発生する頻度や場面、コミュニケーション時の工夫している点など、認識や理解のズレを予防・対策するためのヒントとなる実態の調査結果を公表しています。

まずは、「認識や理解のズレ」の発生頻度を質問した結果、4割のビジネスパーソンが月1、2回「認識や理解のズレ」を実感していることが明らかとなりました。また、割合としては低いものの、「ほぼ毎日発生している」と回答した人も一定数見受けられました。発生頻度の多い場面としては報告・連絡・相談のやり取りが多い「上司または部下とのコミュニケーションの場面」で発生しているという回答が最も多く、その結果「再度同じ説明をすることになった」「抜け漏れが生じた」など、余計な人的・時間的コストを生じさせていることがわかりました。このような事態を解消するため、約9割に近いビジネスパーソンは「お互いの認識があっているか確認しあうことが重要」と回答し、ほとんどのビジネスパーソンが相互確認の重要性を認識している結果となりました。

このような「認識や理解のズレ」を発生させないために、伝える側・受け取る側のコミュニケーションにおいてどのような工夫をされているか質問したところ、伝える側としては「相手が理解しやすい言葉を使用したり、資料を作成すること」、受け取る側としては「自分の言葉で復唱すること」を工夫している人が多い結果となりました。お互いの認識齟齬をなくすために、伝える側・受け取る側としての立場を意識して取り組んでいる人が多いことがわかりました。一方で、「情報を伝える力」「情報を受け取る力」のスキル向上には意識が向いていないことも特徴としてあがりました。

近年、労働人口減少や働き方改革の浸透、急速なAI技術の発展など、様々な変化が起こり続けています。このような時代では、多くの企業が未解の領域への挑戦や新しい環境への適応が求められています。それ故、固定化されたメンバーで定常の業務を進める事が多かった従来の業務の進め方から、プロジェクト型で都度新しいメンバーと意思疎通をはかり、多くのステークホルダーと円滑に連携を取りながら業務を推進する形にシフトするものも増えてきました。ハイコンテクスト文化での「暗黙の了解」というコミュニケーションは通用しづらくなり、積極的な意見交換や意思疎通をしながら、一人一人が場面に適した正しいコミュニケーションをとっていくことが、今後は更に重要になっていくでしょう。そのため、認識齟齬が発生しないように、社員の「情報を伝える力」「情報を受け取る力」を高めていくことが必要不可欠です。

ビジネスにおけるコミュニケーションには適切な手法があり、トレーニングをすれば確実にスキルを高めることができます。例えば、若手社員の場合、仕事の依頼を受ける時に必要なポイントを聞けているか、また、報告・連絡・相談をする際、要点をまとめたうえで簡潔・明瞭に話せているか。管理職の場合、部下の成熟度合いによりティーチングとコーチングを使い分けることができているか、また相手が真意を話せるような聴き方ができているか、など。コミュニケーションスキルを高め、組織の生産性を高めるために、自社のコミュニケーションの現状を確認してみてはいかがでしょうか。

*1社会人のコミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」実態調査(オンラインコミュニケーション編)
https://www.learningagency.co.jp/topics/20230329

*2日経クロステック「テレワークによる生産性向上は道半ば、「上がった」割合が示す残念な結果」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01856/120100005/

調査対象者 当社が提供する研修の受講者
調査時期 2023年2月1日~3月6日
調査方法 Web・マークシート記入式でのアンケート調査
サンプル数 614人
属性 (1)業種
情報通信業 200人(32.6%)
製造業 87人(14.2%)
卸売業,小売業 61人(9.9%)
サービス業(他に分類されないもの) 47人(7.7%)
不動産業,物品賃貸業 31人(5.0%)
学術研究,専門・技術サービス業 28人(4.6%)
建設業 26人(4.2%)
運輸業,郵便業 23人(3.7%)
金融業,保険業 17人(2.8%)
医療,福祉 17人(2.8%)
電気,ガス,熱供給,水道業 14人(2.3%)
生活関連サービス業,娯楽業 14人(2.3%)
複合サービス事業 8人(1.3%)
教育,学習支援業 6人(1.0%)
宿泊業,飲食サービス業 5人(0.8%)
農業,林業 2人(0.3%)
公務 2人(0.3%)
その他 20人(3.3%)
わからない 6人(1.0%)

(2)企業規模
1~50人        75人(12.2%)、
51~100人     118人(19.2%)
101~300人         264人(43.0%)
301~1,000人      104人(16.9%)
1,001~5,000人      35人(5.7%)
5,001人~      13人(2.1%)
わからない      5人(0.8%)

*本調査を引用される際は【ラーニングエージェンシー 社会人のコミュニケーション実態調査】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます

 

株式会社ラーニングエージェンシー
当社は、設立以来、定額制集合研修「Biz CAMPUS Basic」、ライブオンライン研修「Biz CAMPUS Live」、ビジネススキル学習アプリ「Mobile Knowledge」、10万人以上が受検するビジネススキル診断テスト 「Biz SCORE Basic」など、人と組織の成長を支援する業界初*、特許取得のサービスを多数開発・提供しています。「LEARNING」の可能性を探求し続け、「人と組織の未来創り」を真にリードできる伴走者、ラーニングコアパートナー®として、お客様に長く貢献してまいります。
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ラーニングエージェンシーの研究機関であるラーニングイノベーション総合研究所(以下、LI総研)は、人と組織の未来創りに関する様々な調査・研究活動を行っています。LI総研はデータに基づいた最適な解決策もご提供し、お客様の組織開発をサポートしています。

代表取締役社長      眞﨑 大輔
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設立
2006年02月