【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(6)】KPIとヘルススコアの連動性がカスタマーサクセス成功の分岐点/ツール利用の情報管理体制でも効果に明暗

~バーチャレクスが毎年実施するカスタマーサクセス日本市場動向&実態調査、2025年版の第六弾結果公開~

 バーチャレクスグループのバーチャレクス・コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:丸山勇人、以下、バーチャレクス)は「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、この度2025年版第六弾の結果を取りまとめました。

■これまでの2025年調査結果

【第一弾】

「カスタマーサクセス、経営層の78.6%が「聞いたことがない」/取り組み企業の約8割ではAIの導入・活用進む」

【第二弾】

「AI活用」74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感/6割以上が「新規売上増加」で業績向上

【第三弾】

タッチモデルとサブスク戦略が切り拓くカスタマーサクセス効果/ツール活用が業績向上に与える大きな影響

【第四弾】

フェーズ分けで変わるカスタマーサクセスの成果/サクセスロードマップが新規獲得・継続売上を大幅に伸ばす

【第五弾】

カスタマーサクセス成功企業46%が「外部専門家活用」/早期課題認識と対策が効果創出につながる

■今回の分析テーマ

  • カスタマーサクセス取り組み項目の情報管理体制

  • ソフトウェア・外部リソース活用実態

  • 「利用しているヘルススコア」と「成果指標として定めているKPI」

  • カスタマーサクセスツール利用状況

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カスタマーサクセス取り組み項目の情報管理体制

 カスタマーサクセスに取り組んでいる人に、カスタマーサクセスに関する各取り組み項目情報管理体制について、「全社で一元管理」「部門、チームごとに管理」しているかを聞き、それぞれ効果体感別で比較しました。その結果、カスタマーサクセスの効果を実感している効果実感層(n=494)と、効果を感じていない/どちらとも言えない効果未実感層(n=345)の間で顕著な差が見られました。

まず、「全社で一元管理の上取り組んでいること」について、効果実感層における「顧客との接触状況/折衝履歴管理」47.6%未実感層では27.5%約20ポイントの差がでました。また、「顧客が達成したい期待内容の把握」「顧客満足度管理」など、顧客理解顧客成果につながる項目でも、効果実感層の方が高い取り組み率を示しています。また、顧客の離脱(取引停止)防止策の全社一元運用も、効果実感層と未実感層で10ポイント以上の開きが、さらに顧客満足度の数値化顧客データのアップセル/クロスセルへの活用など、データドリブンな取り組みも効果実感層が優位です。これらの結果から、全社的な顧客情報の一元管理と、顧客の期待・満足度・リスクの可視化が、カスタマーサクセス施策の成功を左右する重要な要因となっていることが推察されます。

図1:[2025年] 全社で一元管理の上取り組んでいること(カスタマーサクセスの効果を感じている)

 一方で効果未実感層では上位項目として「顧客との接触状況」「顧客リスト作成」など基本的な項目が挙げられるものの、全体的に全社一元管理の実施率20%前後にとどまり、効果実感層とのギャップが確認されました。

図2:[2025年] 全社で一元管理の上取り組んでいること(カスタマーサクセスの効果を感じていない/どちらとも言えない)

 次に、「部門/チームレベルで取り組んでいること」について聞いてみると、効果実感層の上位項目としては「顧客との接触状況管理」(47.2%)「顧客との取引状況管理」(39.7%)、および「顧客の要望に応えるための製品・サービス改善」(38.7%)などが挙げられます。これらは全社一元管理と同様に「顧客情報の可視化」「顧客満足度向上」へ直接寄与する項目であり、部門単位でも積極的に管理されていることがわかります。さらに、「顧客との関係性の数値化・見える化・データ化」(38.1%)にも注力しており、データ駆動型アプローチを積極的に採用していることが特徴として示されています。これらのデータから、効果実感層の上位項目でいずれも30~40%台の比率を示しており、部門/チーム単位で取り組む企業は、顧客接触状況や取引状況管理、製品・サービス改善といった重要項目に着手している結果、カスタマーサクセスの効果を一定程度実感していると言えます。

図3:[2025年] 部門/チームごとで取り組んでいること(カスタマーサクセスの効果を感じている)

 一方、効果未実感層では、同一項目における実施率が効果実感層に比べて概ね5~15ポイント低い状況となっています。

図4:[2025年] 部門/チームごとで取り組んでいること(カスタマーサクセスの効果を感じていない/どちらとも言えない)

 これらのデータから、効果実感層未実感層も、全社一元管理より部門/チーム管理多く採用されていることが確認されます。もちろん、全社一元管理では一定の効果が認められるものの、『全社レベルで統合することが必ずしも最善策である』という単純な図式には当てはまらないことが示唆されています。

 全社一元管理「社内情報共有の基盤」として有効であり、顧客情報の統合戦略的指標の管理に強みを発揮します。たとえば、「顧客との接触状況/折衝履歴管理」「顧客満足度の数値化」といった項目により、データに基づくプロアクティブな対応が可能となり、解約リスクの早期察知アップセル・クロスセル機会の最大化に寄与します。

 一方、部門レベルでの取り組みは、より現場に即した柔軟な対応や専門性が活かされやすく、結果として実施率効果の実感度高まるケースがあると考えられます。効果実感層部門管理では「顧客問い合わせ対応」(38.5%)「製品改善」(38.7%)の実施率が高く、現場の柔軟な対応が反映されていると言えます。しかし、部門管理で成果を上げるには、これまでの調査結果にも表れているように、タッチモデルフェーズ分け運用が欠かせません。効果未実感層では、各項目の実施率が部門/チーム管理率においては全社一元管理よりもやや高い傾向が認められるものの、未実感層では戦略的なタッチモデルやフェーズ分け運用などが十分に実施されていないことが明らかです。その結果、顧客情報が各部門に分散し、全体像の把握が困難になるため、顧客のニーズや課題を総合的に理解し、適切な対応を行うことが難しくなります。また、部門間の連携不足により、一貫したサービス提供が困難となり、顧客体験の質が低下する可能性も指摘されます。さらに、部門ごとのデータ管理では、全社的なデータ分析や活用が制限されるため、顧客の行動パターンや傾向を正確に把握し、プロアクティブな対応を行うことが難しくなるという課題も存在します。

 このような情報管理体制については、企業の規模や業態に合わせ、部門管理と全社管理を組み合わせたハイブリッドアプローチが効果的な場合もあるため、各企業の状況に応じた最適な管理方法を選択することが重要です。

ソフトウェア・外部リソース活用実態

 続いて、先ほどと同様にカスタマーサクセスに関する各取り組み項目において、ソフトウェアや外部専門家の活用状況を見ていきます。

 まず「ソフトウェア/テクノロジーを使って取り組んでいること」があるかを聞いてみると、効果実感層においては、顧客管理の高度な取り組みが顕著であり、これらのデータは、効果実感層の企業が、ソフトウェアやテクノロジーを駆使して、顧客の行動や満足度を数値化し、プロアクティブフォローアップを実施していることを示唆しています。

図5:[2025年] ソフトウェア/テクノロジーを使って取り組んでいること(カスタマーサクセスの効果を感じている)

 一方、効果未実感層では基本的な顧客管理活動が上位を占めていますが、全体的に効果実感層と比べて実施率が低い結果となっています。高度な分析や戦略的な取り組みの実施率は低く顧客データの統合管理プロアクティブな顧客対応の仕組みが十分に整備されていないことがうかがえます。

図6:[2025年] ソフトウェア/テクノロジーを使って取り組んでいること(カスタマーサクセスの効果を感じていない/どちらとも言えない)

 全体的に、効果を感じている層の方がほとんどの項目で高い実施率を示しており、特に「取引状況に応じた顧客セグメント化」や「顧客の離脱防止施策の構築および実践」などの戦略的な取り組み大きな差が見られます。これらの結果から、カスタマーサクセスの効果を高めるには、基本的な顧客管理だけでなく、データを活用した顧客セグメンテーション満足度の数値化、さらには離脱防止策の構築など、より戦略的高度な取り組みが重要であることがわかります。

 続いて外部専門家等に相談・委託している項目について尋ねたところ、効果実感層では「顧客からの意見収集」12.1%「自社が提供したサービスによる顧客利益の確認」「顧客が達成したい具体的な期待内容の把握」がそれぞれ約10%と、相対的に高い割合で実施されています。これにより、企業は外部の専門知識や支援を通じて、顧客のフィードバックを効果的に活用し、カスタマーサクセスの施策を強化していると考えられます。

図7:[2025年] 外部専門家・業者に相談/委託していること(カスタマーサクセスの効果を感じている)

 効果未実感層でも「顧客からの意見収集」最も高い割合となっており、客観的な顧客フィードバックの重要性と、その収集における外部専門家の価値が示されていると言えるでしょう。

図8:[2025年] 外部専門家・業者に相談/委託していること(カスタマーサクセスの効果を感じていない/どちらとも言えない)

 カスタマーサクセス効果を高めるためには、適切な外部リソースの活用が有効であり、特に顧客理解の深化データ活用の促進戦略的アプローチの構築において外部専門家の知見が有用であると推察されます。ただし、外部委託はあくまで補完的な役割であり、主要なカスタマーサクセス活動は内部で行われていることも重要な点です。

「利用しているヘルススコア」と「成果指標として定めているKPI」

 まずヘルススコアの活用において、効果実感層では、顧客の行動データを重視したヘルススコアの採用が多く見られます。特に、ログイン数やログイン率(51.8%)ユーザー数(48.8%)といった指標が最も多く利用されており、顧客の製品利用頻度や範囲の広がりを重視していることがわかります。 また、メール配信数(31.6%)登録データ数(30.8%)など、顧客のエンゲージメント深度を示す指標も積極的に活用されています。これらのデータは、顧客の継続的な利用状況をリアルタイムで把握し、早期に解約リスクを検知するのに有効です。また、ユーザーレビュー(22.3%)やコミュニティ参加(20.4%)など、顧客の能動的関与を示す定性的指標も活用され、行動データを補完することで顧客の状況をより深く理解するのに役立っています。

 一方、効果未実感層は、ヘルススコア活用自体が不十分である傾向が顕著です。「分からない/特に利用していない」という回答が27.2%と最多であり、ヘルススコアを体系的に設計できていない可能性が高いと考えられます。

 総じて、効果的なカスタマーサクセス戦略には、ログイン頻度やユーザー数などの行動データを基盤とし、必要に応じて定性的指標を組み合わせたヘルススコアの設計が重要であることが示唆されます。自社の顧客成功モデルに沿った行動指標の体系的な収集と統合が、カスタマーサクセスの効果向上には不可欠と言えるでしょう。

図9:[2025年] 利用しているヘルススコア(カスタマーサクセス効果体感別)

 次に、成果指標として定めているKPIについて見ていきます。効果実感層では顧客との長期的関係構築に直結する指標が上位を占めています。「アップセル率/数/額」(29.8%)も高く、既存顧客の収益拡大にフォーカスしていることがうかがえます。なお、「特に定めていない/KPIをまだ定めていない」5.3%と低く、明確な指標設定が行われている点が特徴的です。

 一方、未実感層では「特に定めていない/KPIをまだ定めていない」31.6%と最も多く、明確な指標を持たない企業が約3割超にのぼることが明らかとなりました。「顧客接触数」(22.0%)「継続率/数/額」(21.2%)が続くものの、効果実感層と比べてアップセル率/数/額など収益指標の活用が低い状況です。顧客維持解約防止系の指標(解約率/数/額、契約更新率/顧客維持率)も2割前後にとどまり、収益や顧客維持に直結する指標の設定が不十分なまま施策を進めている企業が多いことがうかがえます。このような指標設定の有無や明確度が、カスタマーサクセス施策の方向性やモチベーションを左右し、結果的に効果の差につながっていると考えられます。

図10:[2025年] 成果指標として定めているKPI(カスタマーサクセス効果体感別)

 効果体感層ヘルススコア(ログイン率、ユーザー数など)を活用し、それを基盤として継続率解約率などのKPIを設定しています。この連動性を持つ「データ駆動型アプローチ」が、顧客維持や収益向上につながっています。KPI設定顧客行動の可視化(ヘルススコア)を組み合わせることで、解約リスクを早期に発見し、最適なタイミングでのフォローアップやアップセル/クロスセルを実行できるようになります。一方、未実感層はこれらの基盤が整備されず、基本的な指標管理にとどまっています。企業規模やリソースに応じて段階的にヘルススコア導入・KPI設定を進めることで、カスタマーサクセスの成果向上が期待でき、さらに全社横断的なデータ共有と戦略的な意思決定プロセスが成功の鍵となるでしょう。

カスタマーサクセスツール利用状況

 最後に、カスタマーサクセス業務でどのようなツールを利用しているかを見ていきます。効果実感層では、顧客情報管理オンボーディング管理ツールヘルススコア管理などを積極的に導入しており、ツールや仕組みの活用が効果の有無に直結している可能性が高いと考えられます。特に「顧客情報管理」の利用率は効果実感層約半数にのぼり、未実感層26.4%を大きく上回っています。また、「オンボーディング管理ツール」「ヘルススコア管理」「NPS計測」なども、効果実感層での導入率が未実感層に比べてほぼ倍の差が見られました。さらに、各種サポートツール(チャット10.5%、問い合わせ統合10.1%など)を複合的に利用する傾向が認められますが、未実感層ではいずれも数%台にとどまっています。加えて、「AIによる顧客対応支援」(実感層:10.3% vs. 未実感層:4.3%)「AIによるデータ分析・予測」(実感層:9.1% vs. 未実感層:2.6%)といった先進的なツールの利用率でも、効果実感層2~4倍程度高い結果となっています。AIを使った顧客行動予測や自動応答などを活用している企業は、顧客対応の効率化や解約防止策の強化につながると推測されます。

 一方未実感層では「特に利用していない」43.2%と突出しており、何らかのツールや仕組みを導入せず、属人的かつ断続的な運用になっているケースが多いと考えられます。

 これらの結果から、カスタマーサクセスで成果を上げるためには、顧客情報を一元管理し、オンボーディングから継続利用までの顧客状態をモニタリングする仕組み(ヘルススコア、NPS計測など)を導入し、必要に応じてAIや自動化ツールを活用していくことが重要であることが示されています。特に、顧客と多面的に接点を持ち、問い合わせ管理やチャットなどを連動させることで、タイムリーかつ適切なサポートが提供できる体制効果を感じている層で顕著に整備されていると考えられます。

図11:[2025年] 利用しているカスタマーサクセスツール(カスタマーサクセス効果体感別)

全社統合と現場運用の融合 ― KPI連動とツール活用が導くカスタマーサクセスの進化


 今回の分析では、カスタマーサクセス施策における顧客情報および顧客接点の管理体制に注目し、全社的に統一して管理する「全社一元管理」と、各部門/チームが独自に管理する「部門/チーム管理」とを比較検証した結果、どちらの手法にも一定の効果は認められるものの、特に効果実感層においては、現場の柔軟な対応や専門性を活かした部門/チーム管理がより効果的であることが明らかとなりました。さらに、継続率や解約率、契約更新率などのKPIと、ログイン率、ユーザー数、メール配信数といったヘルススコア指標連動性、加えて顧客情報管理、オンボーディング管理、NPS計測などのカスタマーサクセスツールの活用が、顧客維持やアップセル/クロスセルの促進に直結していることが示唆されます。企業は、自社の規模や業態に合わせ、全社的な情報共有と現場の柔軟な対応を両立させたハイブリッドな管理体制を構築することで、さらなるカスタマーサクセスの向上が期待されるでしょう。

 なお、今回の調査で得られたデータは膨大であるため、本調査の分析結果は複数回にわたって公開していきます。各回では、カスタマーサクセスの導入状況や成果、成功要因、今後の展望などをテーマごとに掘り下げ、日本企業におけるカスタマーサクセスの実態と動向を詳しく分析します。

第六弾調査結果詳細

本調査結果の詳細な分析結果全文はこちら

【調査実施概要】

「2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」

・調査方法  :インターネットアンケート

・調査実施期間:2025年2月21日~2025年2月26日

・対象地域  :全国

・対象者   :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138人

過去の調査結果はこちら

2019年~2024年の調査結果をご覧いただけます

<参考>

バーチャレクス社翻訳カスタマーサクセス担当者のためのバイブル

『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』

カスタマーサクセスの法則や用語を紹介

カスタマーサクセスのいろはがわかるサイト

カスタマーサクセスで顧客接点の未来を創る by Virtualex Consulting

(すべて生成AIで制作したコンセプトムービー)

■ バーチャレクス・コンサルティング株式会社について

バーチャレクス・コンサルティングは創業来「企業と顧客の接点領域」にフォーカスしたビジネスを展開しており、「顧客の成功こそが自社成長の鍵である」というカスタマーサクセスの考え方にもとづき、"Succession with You" ― 一度きりの成功の「Success」ではなく、連続する成功という意味の「Succession」を、「for You」ではなく、伴走するという意味で「with You」していくことを企業として掲げています。現在では顧客企業のCRM領域のDX・デジタルシフトを、コンサルティング、テクノロジー、オペレーションのコアスキルを融合させ、ワンストップ伴走型でサービスを展開しています。

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会社概要

URL
http://www.virtualex.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区虎ノ門4-3-13 ヒューリック神谷町ビル8F
電話番号
03-3578-5322
代表者名
丸山勇人
上場
東証グロース
資本金
2000万円
設立
2017年10月