【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(8)】トップマネジメントから見るカスタマーサクセス/効果体感約6割、投資意向や取り組み強化にも前向き
~バーチャレクスが毎年実施するカスタマーサクセス日本市場動向&実態調査、2025年版の第八弾結果公開~
バーチャレクスグループのバーチャレクス・コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:丸山勇人、以下、バーチャレクス)は「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、この度2025年版第八弾の結果を取りまとめました。

■今回の分析テーマ
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取り組み企業の経営層から見るカスタマーサクセス
◆ カスタマーサクセス領域における経営層の投資意向
◆ 経営層が直面するカスタマーサクセスの課題
◆ 経営層のカスタマーサクセス取り組み意向
◆ 経営層における効果実感の評価
取り組み企業の経営層から見るカスタマーサクセス
今回は、カスタマーサクセス取り組み企業の取締役以上の経営層(n=121)を対象に、「経営層から見たカスタマーサクセス」の実態を検証します。投資意向や現在抱えている課題、取り組みの方向性、実感している成果に加え、ビジネスモデルや企業規模による違いにも着目し、カスタマーサクセスが企業経営に与える影響を多角的に分析します。さらに、経営層が今後の成長戦略としてどのようにカスタマーサクセスを位置づけ、どのような課題を感じているのかを明らかにしていきます。
カスタマーサクセス領域における経営層の投資意向
まず、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業の経営層に、今後のカスタマーサクセスにおける予算投資意向を尋ねたところ、約4割の企業が「予算を増額する」と回答しました。「大幅に増額する」が19.8%、「やや増額する」も19.8%となり、積極的な投資姿勢を示す企業が一定数存在しています。一方、最も多かったのは「現状維持」24.8%で、現状の体制を維持しながらカスタマーサクセスを継続する企業も少なくありません。
また、「やや減額する」(15.7%)、「大幅に削減する」(5.8%)と回答した企業もあり、コスト見直しの動きも一定数見られます。また、「専用の予算を設けていない」とする企業は3.3%と少数派ですが、カスタマーサクセスの体制が未確立な企業がまだ存在していることも示唆されます。

さらに、サブスクリプション型商材取り扱い有無で比較すると、サブスク企業の方が、カスタマーサクセス投資に前向きな姿勢を示していることが明らかになりました。サブスク企業では約半数が予算を増額予定と回答しているのに対し、非サブスク企業では増額予定の割合が低く、慎重な姿勢が見られました。
サブスク企業にとって、カスタマーサクセスは継続的な収益を支える重要な要素である一方、非サブスク企業ではその必要性が明確になっていないことが背景にあると考えられます。「大幅に増額する予定」はわずか3.0%で、「やや増額する予定」も18.2%にとどまります。さらに、「やや減額する予定」も同率の18.2%となり、投資拡大と縮小の割合が拮抗しています。「現状維持」が27.3%と最も多く、安定路線を選ぶ企業が多いことがわかります。
さらに、予算削減(やや削減+大幅削減)の割合は、サブスク企業が20.5%、非サブスク企業が24.3%と、非サブスク企業の方がやや高く、投資に慎重な姿勢がうかがえます。「カスタマーサクセス専用予算を設けていない」企業も、サブスク企業では2.3%、非サブスク企業では6.1%と差が見られました。

続いて従業員規模ごとに見ると、まず従業員数が99人以下の小規模企業では「大幅に増額する予定」(15.9%)と「やや増額する予定」(18.2%)が合わせて約3割強となり、一定の投資意欲はあるものの、「現状維持」(20.5%)や「そもそも専用予算を設けていない」(9.1%)など、多様な姿勢が混在しているのが特徴です。
100人~999人の中規模企業では、「やや増額」(25.7%)と「大幅に増額」(17.1%)を合わせると4割を超え、小規模企業より積極的ですが、「やや減額」(20.0%)も多く、投資が二極化している様子がうかがえます。
一方、1,000人~4,999人の大企業では「現状維持」(44.4%)が最も多く、増額を控えつつもカスタマーサクセスへの取り組みを続けようとする慎重な姿勢が目立ちます。
これに対し、5,000人~9,999人の超大企業は「大幅に増額する予定」(41.7%)が突出して高く、投資を積極的に拡大しようとする企業が多いことがわかります。

最後に、カスタマーサクセスへの取り組み期間別で見ていきます。取り組み開始から1年未満の企業では、「大幅増額」「やや増額」がそれぞれ19.0%と、約4割が予算を増やす一方、「やや減額」や「大幅削減」も一定数見られ、方向性が定まっていない状況がうかがえます。
1年以上2年未満の企業は、過半数が増額を計画しており、「未定」や「専用予算なし」の回答がゼロと、投資方針が明確に定まっている点が特徴的です。
2年以上4年未満の企業では、「やや増額」と「現状維持」が同率で最も多く、堅実な姿勢がうかがえる一方、「大幅に増額する」の割合は1割程度にとどまっています。
一方、4年以上継続している企業では「大幅に増額する」が32.4%と高いものの、同時に「現状維持」や「減額」も一定数存在し、投資拡大と見直しの両面がうかがえます。
このように、取り組み期間が短い段階では成果や課題が不透明なため投資判断が分かれやすく、1~2年ほど経過すると方向性が固まり始め、さらに4年以上の長期運用企業になると、大きく投資を拡大する層と効率を重視して予算を抑える層に分かれる傾向があります。総じて、取り組み期間が進むにつれ、投資判断の明確化や拡大の可能性が高まる一方で、成熟段階ではROIの観点から再検討を行う企業も少なくないことが推察されます。

経営層が直面するカスタマーサクセスの課題
投資意向が分かれる一方で、カスタマーサクセスに取り組む企業の経営層がどのような課題を抱えているのかを分析しました。「特にない」と回答した企業が62.8%を占め、多くの企業が一定の運用体制を確立し、カスタマーサクセスを推進できていることを示しています。一方で、約4割の経営層は何らかの課題を抱えており、その克服がさらなる拡充のカギとなることが明らかになりました。
主な課題として、「経営層/上層部の理解が得られない」(13.2%)が上位に挙がりました。カスタマーサクセスを推進する立場である経営層自身がこの課題を指摘している点は興味深く、企業内での意思決定や組織的なサポート体制の整備に課題があることが示唆されます。この結果から、カスタマーサクセスに積極的に関与している経営層の中でも、組織全体での理解が十分に浸透していないケースや、実行段階において意思決定の足並みが揃わないケースがあることが推察されます。特に、経営戦略の中での位置づけや、投資判断を支えるデータの不足が、導入拡大を妨げる要因となっている可能性があります。
また、「やっていることが正解なのか分からない」(6.6%)、「進め方や相談する人がいない」(5.0%)など、具体的な戦略や施策の妥当性に対する不安も挙げられました。さらに、「効果測定の仕方が分からない」(4.1%)、「ROIが測りにくい」(4.1%)など、取り組みの成果を明確に評価できない点が、経営層の意思決定を難しくしている可能性があります。
ツールやシステム面の課題も見られ、「どのツールを選べばよいのかわからない」(3.3%)、「データ連携に問題がある」(3.3%)といった回答が寄せられました。適切なツールの選定や業務システムとの統合が進んでいない企業が一定数存在することがわかります。

経営層のカスタマーサクセス取り組み意向
続いて、カスタマーサクセスの今後の取り組みについての意向を尋ねてみたところ、80.2%が「今後さらに強化したい」と回答しました。一方で、「どちらとも言えない」が12.4%、「強化したいと思わない」が7.4%となっており、大半の企業がカスタマーサクセスの拡充を重視していることがうかがえます。
この結果からは、顧客との長期的な関係構築や顧客満足度の向上を目指す企業が増え、カスタマーサクセスへの投資や体制整備に積極的であることがうかがえます。また、「どちらとも言えない」と回答した企業も一定数存在しており、投資効果の検証や社内リソースの確保など、今後の取り組み強化に向けた準備段階にある企業も少なくありません。総じて、カスタマーサクセスに取り組む企業の多くが、その重要性を認識しながらさらなる強化を目指している状況が明らかになりました。

続いてこの結果をサブスクリプション型商材取り扱い有無別で見ていきます。以下の二つのグラフを比較すると、サブスク企業の経営層は「強化していきたいと思う」と回答している人が84.1% と非常に高く、非サブスク企業の69.7%と比べて約15ポイント上回っていることがわかります。一方、「どちらとも言えない」の割合はサブスク企業が9.1%に対し、非サブスク企業では21.2%と高めです
これらの差異は、経営層がビジネスモデルによってカスタマーサクセスの重要性を捉え方が変わることを示しています。特にサブスク企業では、継続的な契約やアップセルを通じて売上が長期にわたって安定するため、経営判断として顧客維持やロイヤルティ向上に力を注ぐ必要性が高いと考えられます。その結果、カスタマーサクセスへの取り組みを経営戦略の主要項目として強化する意向が強まる傾向が見られます。
一方、非サブスク企業では、継続課金型の収益構造ではないことから、顧客維持が直接的に収益へ反映されにくい場合もあり、経営層としての投資優先度を判断しかねている企業が一定数存在する可能性があります。総じて、サブスクリプション型企業の経営層ほど、カスタマーサクセスを経営戦略の中核として認識し、強化を進めようとしていることが明らかになりました。


経営層における効果実感の評価
最後に、「これまでのカスタマーサクセス取り組み効果を実感していますか?」と尋ねたところ、58.7%が「効果を感じている」と回答しており、経営戦略の一環としてカスタマーサクセスの価値が認識されつつあることが分かります。一方、28.9%が「どちらとも言えない」、12.4%が「効果を感じていない」と答えており、すべての企業が十分な成果を把握できているわけではありません。経営陣は、顧客との関係強化や売上向上の実感を背景に、カスタマーサクセスへの更なる投資と体制強化を進めたいと考えていますが、効果測定の具体的な指標が整っていない企業も存在するため、一部では取り組みの成果が明確に見えにくいという現状があります。特に、導入初期や取り組み体制が未整備な場合、投資判断が難しくなる傾向があり、経営陣としては、今後、目標や評価基準の明確化、さらには社内リソースの強化を図ることで、カスタマーサクセスのメリットをより一層実感できる体制の構築が求められると考えています。

企業のビジネスモデルや規模によって異なる判断基準
今回の分析では、カスタマーサクセス取り組み企業の経営層を対象に、投資意向と取り組み意向、そしてこれまでの取り組み効果について確認しました。全体として、多くの経営層がカスタマーサクセスの効果を体感、またその重要性を認識し、今後の体制強化や予算増額に前向きであることが明らかになりました。特にサブスクリプション型商材を扱う企業では、継続的な収益確保の観点から、カスタマーサクセス強化の意欲が非常に高く、多くの企業が予算を拡大する計画を立てています。一方、非サブスク企業は投資判断に慎重な傾向が見られ、判断に迷いがある企業も一定数存在します。また、従業員規模別の分析では、大企業ほど積極的な投資意向が示される一方、小規模企業では専用予算が整備されていないケースが目立ち、取り組みの成熟度に差があることが分かりました。さらに、カスタマーサクセスの取り組み期間別の結果では、開始直後の企業は成果検証の段階で投資意向が分かれる傾向にあるのに対し、一定期間取り組みを続けた企業では、戦略的に体制強化や予算の拡充を明確に打ち出しており、長期運用企業においては、大幅な増額とともに現状維持や投資効率の見直しも同時に進められていることが確認されました。これらの結果は、経営層がカスタマーサクセスを企業成長の重要戦略と捉え、事業展開や顧客関係強化に向けた取り組みを推進する上での重要な示唆を与えています。一方で、カスタマーサクセスを強化したいという意向があるにもかかわらず、「経営層/上層部の理解が得られない」「組織体制が不十分」といった内部の課題が導入拡大を阻む要因になっていることも明らかになりました。特に、成果の可視化やROIの測定に課題を感じる企業は多く、経営層としては、意思決定を支えるデータの整備や、短期間での成果指標の設定が求められます。
今後、カスタマーサクセスの投資を拡大し、組織的な推進力を高めるためには、経営層のリーダーシップのもと、組織全体の意識改革を進めるとともに、運用の仕組みや評価基準を明確にすることが不可欠です。カスタマーサクセスの導入・運用は、単なるオペレーションの強化ではなく、企業の成長戦略としての位置づけを確立することが鍵となるでしょう。
なお、今回の調査で得られたデータは膨大であるため、本調査の分析結果は複数回にわたって公開していきます。各回では、カスタマーサクセスの導入状況や成果、成功要因、今後の展望などをテーマごとに掘り下げ、日本企業におけるカスタマーサクセスの実態と動向を詳しく分析します。
【調査実施概要】
「2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法 :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025年2月21日~2025年2月26日
・対象地域 :全国
・対象者 :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138人
【これまでの2025年調査結果】
【第一弾】「カスタマーサクセス、経営層の78.6%が「聞いたことがない」/取り組み企業の約8割ではAIの導入・活用進む」
【第二弾】「AI活用」74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感/6割以上が「新規売上増加」で業績向上
【第三弾】タッチモデルとサブスク戦略が切り拓くカスタマーサクセス効果/ツール活用が業績向上に与える大きな影響
【第四弾】フェーズ分けで変わるカスタマーサクセスの成果/サクセスロードマップが新規獲得・継続売上を大幅に伸ばす
【第五弾】カスタマーサクセス成功企業46%が「外部専門家活用」/早期課題認識と対策が効果創出につながる
【第六弾】KPIとヘルススコアの連動性がカスタマーサクセス成功の分岐点/ツール利用の情報管理体制でも効果に明暗
【第七弾】AIの広範活用とテクノロジー投資で効果創出/効果体感企業の4割が「カスタマーサクセス概念社内浸透」推進
<参考>
バーチャレクス社翻訳カスタマーサクセス担当者のためのバイブル
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』
カスタマーサクセスの法則や用語を紹介
カスタマーサクセスで顧客接点の未来を創る by Virtualex Consulting
(すべて生成AIで制作したコンセプトムービー)
■ バーチャレクス・コンサルティング株式会社について
バーチャレクス・コンサルティングは創業来「企業と顧客の接点領域」にフォーカスしたビジネスを展開しており、「顧客の成功こそが自社成長の鍵である」というカスタマーサクセスの考え方にもとづき、"Succession with You" ― 一度きりの成功の「Success」ではなく、連続する成功という意味の「Succession」を、「for You」ではなく、伴走するという意味で「with You」していくことを企業として掲げています。現在では顧客企業のCRM領域のDX・デジタルシフトを、コンサルティング、テクノロジー、オペレーションのコアスキルを融合させ、ワンストップ伴走型でサービスを展開しています。
■ バーチャレクスグループについて
バーチャレクスグループは、各企業約1,000名以上の従業員が一体となり、金融・保険、IT・情報通信、通販・インターネットサービス、教育、官公庁・自治体など、幅広い業界のクライアント様に対して、それぞれの専門知識を活かしたサービスを提供しております。2016年6月には東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場)に上場しています。
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