【調査レポート/若手900名回答】リーダーシップの発揮経験がある若手社員ほど、壁にぶつかっても前向きに捉える傾向あり
社会人2~4年目社員の意識調査(リーダーシップ発揮経験と直面する壁)
背景
コロナ禍をきっかけにデジタル化や働き方改革が急速に促進され、ビジネスパーソンに求められるスキルが大きく変わってきています。当社で実施した調査*1によると、10年前一般社員に期待されていたことは、上司や先輩の指示に従い、定型業務を正確かつ素早くこなすことでした。しかし、現在は、非定型やプロジェクト型の業務において、チームで成果を上げることや、自ら現場で判断し行動することも期待されるようになりました。このような大きな変革の渦中において、若手社員はどのような知識やスキルを身につけたらよいのでしょうか。
2022年秋に当社が人事担当者へ、入社2~4年目の若手社員の課題を質問したところ*2、ビジネスマナーなどの基礎的なビジネススキルをおさえ、「主体性・積極性」への課題をあげる声が最も多く挙がる結果となりました。このことから、若手社員にも主体的に自ら動き、職場やチームの目標を達成するために貢献すること、すなわち「リーダーシップ力*3」が求められていることがわかります。
そこで今回、当社ではリーダーシップを発揮した経験のあり、なしが、若手社員が直面する壁やその捉え方にどのような違いをもたらしているのかを調査しました。
*1組織・チームの在り方の変化に関する意識調査
https://www.all-different.co.jp/download/all/news_20220208.pdf
*2「人事の課題」実態調査(社員の育成編)
https://www.all-different.co.jp/download/all/news_20230126.pdf
*3リーダーシップ:職場やチームの目標を達成するために他のメンバーに及ぼす影響力
調査結果の概要
リーダーシップの発揮経験が「ある」若手社員は、「ない」若手社員よりも全項目で壁を実感する割合が高い
仕事の難しさの壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『成長機会』と捉え、「ない」若手社員は『不安』と捉える
仕事の量の壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』と感じ、「ない」若手社員は『大変』と感じる
仕事の飽きの壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』と感じ、「ない」若手社員は『我慢・不満・辞めたい』と感じる
上司との人間関係で苦労した壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』と感じる割合が最大となり、「ない」若手社員より20.8ポイント高い結果に
後輩との人間関係で苦労した壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』『不安』と感じる割合が、「ない」若手社員は『不満』と感じる割合が最大に
まとめ・考察
調査結果の詳細
1.リーダーシップの発揮経験が「ある」若手社員は、「ない」若手社員 よりも全項目で壁を実感する割合が高い
今回の調査結果では、社会人2~4年目の若手社員が、社会に出てからリーダーシップを発揮した経験と、仕事や上司、キャリアや自分の成長などで直面する困難な壁が、どのように関係しているか調査・分析しました。
まずは、社会人になりリーダーシップを発揮した経験が『ある』若手社員(以下、「リーダーシップ発揮経験あり社員」と記載)がどのような壁を感じているか見ていきましょう。
リーダーシップ発揮経験あり社員の最も高い壁となった項目は「仕事を進める上で仕事が難しい・求められる役割が高すぎると感じることがある」で、66.4%となりました。次に「仕事の量が多いと感じることがある」が64.1%、「自分の知識・スキルに不安を感じることがある」が61.4%と続きました。「後輩との人間関係への苦労」と「仕事が簡単・求められる役割が低い」という壁以外は、半数以上が壁に直面していることがわかりました。(図1)
次に、社会人になりリーダーシップを発揮した経験が「ない」若手社員(以下、「リーダーシップ発揮経験なし社員」と記載)の結果をみると、全体的に(図1)のリーダーシップ発揮経験あり社員よりも壁に直面している割合が低いことがわかります。その中でも最も高い壁は「自分の知識・スキルに不安を感じることがある」が39.0%となりました。(図2)
2.仕事の難しさの壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『成長機会』と捉え、「ない」若手社員は『不安』と捉える
ここからは、若手社員がそれぞれの「壁」をどのように捉えたのか、リーダーシップ発揮経験のあり、なしでその傾向の違いを分析していきます。
まず初めに『仕事が難しい・求められる役割が高い』という壁の捉え方を見ていきましょう。結果、リーダーシップ発揮経験あり社員は「成長の機会と感じた」と回答する割合が27.7%と最も高いことがわかりました。一方、リーダーシップ発揮経験なし社員は「不安に感じた」と回答する割合が39.7%と最も高くなりました。
リーダーシップ発揮経験あり、なしの差を比較すると、リーダーシップ発揮経験あり社員は、なし社員に比べ、「この経験を楽しもうと感じた」が14.4ポイント高くなりました。一方、リーダーシップ発揮経験なし社員は、あり社員に比べ「不安に感じた」が14.0ポイント、「会社を辞めたくなった」は11.9ポイント高くなりました。 (図3)
3.仕事の量の壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』と感じ、「ない」若手社員は『大変』と感じる
『仕事の量が多い』という壁では、リーダーシップ発揮経験あり社員は「期待に応えようと感じた」と回答した割合が最も高く、30.8%となりました。次に「成長の機会と感じた」が23.1%と続きました。一方、リーダーシップ発揮経験なし社員は、「大変と感じる」と回答した割合が34.0%と最も高くなり、リーダーシップ発揮経験あり社員との差が13.7ポイントとなりました。仕事の量に関しては、リーダーシップ発揮経験のあり、なしにより、捉え方に大きな差があることが明らかとなりました。(図4)
4.仕事の飽きの壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』と感じ、「ない」若手社員は『我慢・不満・辞めたい』と感じる
また、『仕事の飽き』の壁でもリーダーシップ発揮経験のあり、なしによって壁の捉え方に違いが見られました。リーダーシップ発揮経験あり社員は「期待に応えようと感じた」が26.0%と最も高くなり、リーダーシップ発揮経験なし社員に比べ、19.2ポイント高い結果になりました。一方、リーダーシップ発揮経験なし社員は「我慢した(26.5%)」「不満を抱いた(25.6%)」「会社を辞めたくなった(24.4%)」とネガティブな項目が上位を占める結果となりました。(図5)
5.上司との人間関係で苦労した壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』と感じる割合が最大となり、「ない」若手社員より20.8ポイント高い結果に
次に、『上司との人間関係』についての壁の捉え方について質問したところ、リーダーシップ発揮経験あり社員は「期待に応えようと感じた」と回答する割合が27.7%と、リーダーシップ発揮経験なし社員と比べて20.8ポイント高い結果となりました。一方、リーダーシップ発揮経験なし社員は「不満を抱いた(26.9%)」「我慢した(26.4%)」「会社を辞めたくなった(23.6%)」が上位を占めました。特に、「我慢した」は、リーダーシップ発揮経験なし社員があり社員よりも15.5ポイント高くなりました。(図6)
6.後輩との人間関係で苦労した壁、リーダーシップ発揮経験が「ある」若手社員は『期待に応えよう』『不安』と感じる割合が、「ない」若手社員は『不満』と感じる割合が最大に
最後に、『後輩との人間関係の苦労』の壁に直面した際の捉え方について質問しました。
リーダーシップ発揮経験あり社員は「期待に応えようと感じた」「不安に感じた」が25.0%と同率で最大となり、「負けたくない・乗り越えたいと感じた」が22.2%と続きました。一方、リーダーシップ発揮経験なし社員は、「不満を抱いた」が23.2%で最大となり、次いで「不安に感じた(20.7%)」「大変と感じた(19.5%)」「我慢した(17.1%)」となりました。(図7)
まとめ
今回の調査では、若手社員の「リーダーシップ発揮経験のあり、なし」と「仕事上で直面する壁の捉え方」との関係性を比較しました。結果、リーダーシップを発揮した経験のある若手社員は、発揮した経験がない若手社員に比べ、仕事上で様々な壁を感じる機会が多いことがわかりました。ただし、リーダーシップを発揮した経験のある若手社員は、たとえ壁に直面しても、比較的ポジティブに捉えることができている傾向も明らかとなりました。
その傾向が顕著に表れた壁は、主に『仕事の量』や『仕事の飽き』の壁でした。『仕事の量』の壁においては、リーダーシップ発揮経験のある若手社員は「期待に応えよう」「成長機会」と捉える割合が高くなり、その一方で発揮経験のない若手社員の多くは『大変』と捉えています。また、『仕事の飽き』の壁においては、リーダーシップ発揮経験のある若手社員は「期待に応えよう」の割合が高くなりましたが、リーダーシップを発揮した経験のない若手社員は「不満・我慢・会社を辞めたい」の割合が高くなりました。
さらに、職場の人間関係においてもリーダーシップ発揮経験のあり、なしによって捉え方に差があることが明らかになりました。『上司との関係性』において困難な状況になった際、リーダーシップ発揮経験のある若手社員は「期待に応えよう」と捉える割合が高い傾向にありましたが、リーダーシップ発揮経験のない若手社員は『不満を抱いた』『我慢した』だけでなく、『会社を辞めたい』にも回答が集まる結果となりました。
これらの結果より、リーダーシップを発揮した経験がある若手社員は、仕事に向き合う中で多くの壁を実感するものの、壁に直面しても、その壁を乗り越えることに挑戦しようと考えたり、負けない強い意志を持ったりと、自分自身の気持ちを前向きに持っていく力が身についていることが推察できます。一方、リーダーシップ発揮経験がない若手社員は、まだその力を養うことが出来ていない可能性が考えられます。
社会人は日々、様々な壁に直面し、それを乗り越えることで成長し、成果を創出していきます。本調査の結果からも、「リーダーシップを発揮する経験」が、困難な状況でも前向きに乗り越えようとする意識や姿勢の醸成につながっていることがわかりました。企業としては、早期に後輩指導やプロジェクトへの参画など、リーダーシップを発揮する機会に若手社員をアサインすることや、「あの人が挑戦しているのならば自分もやってみよう」とリーダーシップを発揮することが躊躇なくできるような環境の整備に取り組めるとよいでしょう。
ALL DIFFERENT株式会社
CLM(最高育成責任者)による考察
本調査から、若手社員がリーダーシップを発揮した経験が、仕事上の壁を前向きに捉え、乗り越える力を育む上で重要であることが明らかになりました。企業は、内定期間を含め可能な限り早い時期から、社員にリーダーシップの重要性を伝える機会や、リーダーシップを醸成できる場を提供し、成長を促す必要があります。 若手社員にリーダーシップ発揮経験を積ませるためには、若手社員が先輩や上司と協力しながら、主体的に目標を達成するような仕事を早期から継続的に作り出すことが重要です。この際に、先輩や上司らがサポートしながら、仕事の振り返りを行い、本人の強み弱みをフィードバックすることも大切になります。 社員がリーダーシップを発揮できる環境を早期に整えることは、本人の成長と企業の発展に大きく貢献することができるでしょう。 |
ALL DIFFERENT株式会社
組織開発コンサルティング本部 シニアマネジャー・開発室 室⾧
CLM(最高育成責任者)
根本 博之(ねもと・ひろゆき)
事業会社を経て、2010年にALL DIFFERENT株式会社(旧トーマツイノベーション株式会社/株式会社ラーニングエージェンシー)に入社。コンサルタント業務・講師業務を通じ、年間100~150社ほどの組織開発・人材育成を支援する傍ら、社内の育成責任者としても活動。大阪支社の立ち上げに参画し、営業リーダーとして年間目標達成に導いた後、本社にてコンテンツ開発業務に従事。中堅・大企業向けコンサルティング事業部門の責任者を歴任。日本経済新聞、NHKなどメディア出演多数。
調査概要
調査対象者 | 22~34 歳の社会人 2 年目~4 年目の就労者 |
調査時期 | 2023年8月2日~8月7日 |
調査方法 | 調査会社によるインターネット調査 |
サンプル数 | 900人(社会人2年目300人、3年目300人、4年目300人) |
属性 | <社会人2年目> ① 性別 男性 96名(32%) 女性 203名(67.7%) その他 1名(0.3%) ② 所属企業の従業員数規模 1-50名 64名(21.3%) 51-100名 32名(10.7%) 101-300名 58名(19.3%) 301-1000名 54名(18%) 1001-5000名 31名(10.3%) 5001名以上 27名(9%) わからない 34名(11.3%) <社会人3年目> ①性別 男性 106名(35.3%) 女性 189名(63%) その他 5名(1.7%) ②所属企業の従業員数規模 1-50名 63 名(21%) 51-100名 37名(12.3%) 101-300名 69名(23%) 301-1000名 33名(11%) 1001-5000名 42名(14%) 5001名以上 22名(7.3%) わからない 34名(11.3%) <社会人4年目> ①性別 男性 79名(26.3%) 女性 220名(73.3%) その他 1名(0.3%) ②所属企業の従業員数規模 1-50名 62名(20.7%) 51-100名 33名(11%) 101-300名 43名(14.3%) 301-1000名 45名(15%) 1001-5000名 41名(13.7%) 5001名以上 38名(12.7%) わからない 38名(12.7%) |
*本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「若手社員の意識調査(リーダーシップ経験と直面する壁)」】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
ラーニングイノベーション総合研究所について
人と組織の未来創りに関する様々な調査・研究活動を行っている当社研究機関。データに基づいた組織開発に関する解決策を提供。
ALL DIFFERENT株式会社について
組織開発・人材育成支援を手掛けるコンサルティング企業。
人材育成から、人事制度の構築、経営計画の策定、人材採用までの組織開発・人材育成の全領域を一貫して支援。《沿革》2006年 トーマツイノベーション株式会社として人材育成事業を開始し、業界初や特許取得のサービスを多数開発・提供
2019年 株式会社ラーニングエージェンシーとして、デロイトトーマツグループから独立
2024年 ALL DIFFERENT株式会社へ社名変更
・代表取締役社長 眞﨑 大輔
・本社所在地 〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町 ITOCiA(イトシア)オフィスタワー 15F(受付)・17F・18F
・支社 中部支社、関西支社
・人員数 288名(2024年1月1日時点)
・事業 組織開発支援・人材育成支援、各種コンテンツ開発・提供、ラーニングイノベーション総合研究所による各種調査研究の実施
・サービス 定額制集合研修「Biz CAMPUS Basic」/ライブオンライン研修「Biz CAMPUS Live」/ビジネススキル学習アプリ「Mobile Knowledge」/ビジネススキル診断テスト「Biz SCORE Basic」/IT技術習得支援サービス「IT CAMPUS」/管理職アセスメント「Discover HR」「Competency Survey for Managers」/人事制度構築支援サービス「Empower HR」/経営計画策定支援サービス「Empower COMPASS」/転職支援サービス「Biz JOURNEY」ほか
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