人間とAIは、何を分担すべきか?そのために、人間はどうすればいいか?(組織行動科学®)
33.8万人・980社の分析から見えてきた、AI時代に企業へ残る「判断」という仕事
企業の82%で「判断経験」が減少。AIが担える仕事が広がる一方で、企業に残るのは、状況に応じて優先順位・リスク・価値を見極める「判断」です。
これから企業に必要なのは、AIに任せる仕事を増やすことだけではなく、人間に残る「判断」が育つ仕事構造を設計することです。
組織行動科学®を提供するリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑智康)は、「人間とAIは、何を分担すべきか?そのために、人間はどうすればいいか?」をテーマに、AI時代の仕事構造の変化と人材育成課題を整理した調査レポートを公開しました。

本分析は、当社が人的資本開発支援を行ってきた980社・33.8万人の業務経験データをもとに、2022年から2025年にかけて定点観測してきた知見を踏まえたものです。
これまで当社は2026年3月に、判断デザイン導入講習シリーズの開始、熟練者依存の構造分析、管理職向け講座、判断経験減少の分析、判断経験設計プログラム、管理職の役割変化、組織の判断構造設計、そしてその実装支援プログラムの提供開始までを段階的に公表してきました。
本レポートは、それらの到達点を踏まえつつ、AI時代における人間とAIの新しい分担原理を整理し、そのうえで人間がどう変わるべきか、企業は何を設計すべきかを提示するものです。
生成AIの普及で、企業の仕事はどう変わるのか
生成AIの普及により、企業では、文章作成、資料作成、情報整理、要約、前例検索、定型的な応答生成など、知識・手順・前例をもとに進められる仕事の自動化が急速に進んでいます。これは、従来であれば上司や先輩、あるいは研修で教えられてきた仕事の一部を、AIが担い始めていることを意味します。
一方で現場では、人口減少、市場縮小、顧客ニーズの多様化、案件ごとの条件差の拡大により、前例をそのまま適用できない仕事が増えています。顧客条件、案件条件、社内事情、納期、品質、採算、関係者の期待といった複数の要素を見ながら、何を優先し、どのリスクを取り、どの価値を守るかを決める必要があります。
つまり、AI時代に企業へ残る中核業務は、知識を覚える仕事でも、手順をなぞる仕事でもなく、状況に応じて対応を選ぶ「判断」だと考えられます。
しかし今、企業ではその「判断経験」が減っている
重要なのは、AI時代に必要になるはずの「判断」が、実際には企業の仕事の中で育ちにくくなっていることです。
当社の分析では、企業の82%で、仕事の中の判断経験が減少していることが確認されました。さらに、管理職の72%が部下の判断機会減少を実感しています。これは、AI時代に必要な能力と、企業内で実際に積まれている経験との間に、構造的なズレが生じていることを示しています。
この背景には、業務の標準化、マニュアル化、IT化、働き方改革の進展があります。これらは効率化や品質安定に大きく貢献してきた一方で、現場から自分で考えて決める余地を減らしてきた側面もあります。その結果、仕事は回るが、人は育ちにくいという状態が生まれています。
判断が必要な仕事であっても、判断対象が曖昧、判断条件が曖昧、任せる範囲が曖昧、振返りがない、という状態では、判断は上司や熟練者に集中します。そして若手や部下は「相談すること」に慣れ、判断経験が蓄積されません。
人間とAIの分担とは、作業分担ではなく「判断責任」の分担である
本レポートで整理したのは、人間とAIの分担は、単なる作業分担ではないということです。
AIは、知識検索、手順整理、前例提示、定型文生成、情報要約などを支援できます。しかし、現場で発生するすべての条件差、価値の衝突、優先順位の調整、例外対応、関係者間の利害調整、最終的な引受判断までは、自動的に決めることができません。
したがって、AIに任せるべきなのは、知識・手順・前例・定型処理です。一方、人間が担うべきなのは、優先順位判断、リスク判断、価値判断、例外対応、意味づけ、最終決定です。つまり、AIと人間の分担とは、「簡単な仕事/難しい仕事」の分担ではなく、正解に近づける処理をAIが担い、状況差を引き受ける判断を人間が担うという分担だと考えられます。
そのために、人間はどうすればいいのか
AI時代に人間が担うべきことを「判断」とだけ表現すると、抽象的に見えます。そこで本レポートでは、人間が判断を担うための前提として、次の4つが重要だと整理しました。
1.事実を確認する
判断の出発点は、印象や思い込みではなく、何が事実かを確認することです。AIは候補や前例を提示できますが、顧客の本音、現場の温度感、案件固有の制約、組織内の非明文化された条件までは自動的に確定できません。だからこそ人間には、判断の前提となる事実を拾い、確認し、整理する力が求められます。
2.構造で捉える
個別事象を場当たり的に処理するのではなく、何が判断対象か、どの条件が変数か、何を基準に選ぶのかを構造で捉えることが必要です。
当社が公開した調査レポートでは、「判断できる人材」が育つ企業には共通して、組織の判断構造が設計されていることが見えてきました。つまり、判断できるかどうかは、個人のセンスだけでなく、構造を持っているかどうかに左右されます。
3.判断理由を言語化する
AIと共働する時代には、「なぜその判断にしたのか」を言語化できなければ、判断は共有も、移転も、再現もできません。属人的にうまくやることではなく、判断理由を他者と共有可能な形にすることが、AI時代の人間側の重要な役割になります。これは、熟練者依存を解消し、判断を組織知へ変えるための前提でもあります。
4.振り返って更新する
判断は知識の暗記ではなく、経験 → 振返り → 修正 → 判断精度向上のプロセスを通じて形成されます。そのため人間に必要なのは、正解を覚えることではなく、自分の判断を振り返り、次に更新できることです。AIが広がるほど、人間には「答えを出す力」よりも、「答えを更新する力」がより重要になると考えられます。
企業は「AI導入」ではなく、「人間に残る判断の育成設計」を問われる
本レポートが特に重要だと考えるのは、ここから先です。
AI時代の人材育成を、個人の努力や管理職の指導力の問題だけで捉えるのでは不十分です。必要なのは、人間に残る判断が、仕事の中で発生し、任され、振り返られ、蓄積される構造を設計することです。
当社がこれまで公開してきた分析では、「判断できる人材」が育つ企業には、共通して組織の判断構造が設計されていることが示されています。ここでいう判断構造とは、単なるマニュアルではなく、
-
どの仕事で判断が必要か
-
何を基準に判断するか
-
どこまでを誰に任せるか
-
どの経験を積ませるか
-
どのように振返り、精度を高めるか
が整理されている状態を指します。
さらに今後は、ここにAI配置設計を加える必要があります。つまり企業は、
-
AIに任せる部分
-
人間が判断を持つ部分
-
管理職が判断経験を設計する部分
-
組織が判断を共有・再現する部分
を、仕事全体の中で再配置しなければなりません。
AIが入るほど、人間側の判断設計は軽くなるのではなく、むしろ重要になります。AI導入と判断育成は別問題ではなく、同じ仕事設計の問題として扱う必要があります。
今回のレポートが示す結論
AI時代に企業が問われるのは、「何をAIに任せるか」だけではありません。
本当に問われるのは、人間に残る判断を、誰に、どの仕事で、どの条件で、どう育てるかです。
AIは、知識・手順・前例処理を支える存在として、今後ますます重要になります。一方で人間には、事実を確認し、構造を捉え、判断理由を言語化し、振り返って更新することが求められます。そして企業には、その判断が育つ仕事構造を設計する責任があります。
AI導入時代に企業競争力を分けるのは、AIの性能だけではありません。人間に残る「判断」を、仕事の中で育て、共有し、再現できる構造を持っているかどうか。そこが、これからの組織の差になると考えられます。
調査レポート概要
レポートタイトル
人間とAIは、何を分担すべきか?そのために、人間はどうすればいいか? 33.8万人・980社の分析から見えてきた、AI時代に企業へ残る「判断」という仕事
分析対象:980社・33.8万人の業務経験データ
観測期間:2022年〜2025年定点観測
主な示唆:
-
AI時代に企業へ残る中核業務は「判断」である
-
企業の82%で判断経験が減少している
-
管理職の72%が部下の判断機会減少を実感している
-
人間に必要なのは、事実確認・構造把握・判断言語化・振返り更新である
-
企業に必要なのは、判断構造設計とAI配置設計である

関連リリース一覧
当社では2026年3月、「AI時代に企業へ残る仕事は何か」「判断できる人材はなぜ育ちにくいのか」「企業は何を設計すべきか」という問いに対し、関連する調査レポート・講座・プログラムを段階的に公開してきました。
■ 判断デザイン導入講習シリーズの開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000171.000068315.html
■ 熟練者依存を解消する判断デザイン導入講習シリーズの公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000172.000068315.html
■ 「判断できる部下を増やす」管理職向け講座の公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000173.000068315.html
■ AI時代に企業に残る仕事は「判断」であることの提示
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000174.000068315.html
■ 企業の82%で判断経験が減少している背景分析の公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000175.000068315.html
■ 判断経験設計プロジェクトベースドラーニングの提供開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000068315.html
■ 企業の82%で、AI時代に必須の「判断経験」が減少していることを示す調査レポートの公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000068315.html
■ 管理職の役割変化と判断機会減少の実態分析の公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000178.000068315.html
■ 判断できる人材が育つ企業の共通条件として「組織の判断構造」を提示
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000179.000068315.html
■ 組織の判断構造設計プログラムの提供開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000180.000068315.html

会社概要
リクエスト株式会社
会社案内:https://requestgroup.jp/corporateprofile
代表取締役 甲畑智康:https://requestgroup.jp/profile
E-mail:request@requestgroup.jp
リクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑智康)は「より善くを目的に」を掲げ、33.8万人の働く人のデータに基づいた 組織行動科学® を基盤に、7つの研究機関が980社を支援している企業です。
組織行動科学®は組織で働く私達の思考と行動が「なぜ起こり」「なぜ続くのか」を事業環境と経験から解明し、より善く再現する手段です。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
