芸術は、社会の中で何を可能にしているのか? ― 歴史と人々の経験から、その働きと可能性を問う図解10枚を公開

「好き」「専門評価」「市場価格」を混同せず、生活の中での意味と継承の条件を考える。公開資料のレビューから、五つの仮説と検証の視点を整理

組織行動科学®︎

980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、組織行動科学®の研究・教育開発を行うリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑 智康)は、図解資料「芸術は、社会の中で何を可能にしているのか?」全10枚を公開しました。本資料は、芸術の歴史・研究・実践に関する公開資料を参照し、その働きと、今後確かめるべき仮説を整理したものです。

当社は、人の思考と行動が「なぜ起こり、なぜ続くのか」を、経験や周囲の環境との関係から研究しています。行動だけでなく、人が何に気づき、何を大切にし、どのように判断するのかにも目を向けています。

今回、芸術に着目したのも、その研究上の問いからです。作品をつくる、味わう、自分の経験を表現する。そうした営みが、その人にどのような意味を持ち、見方や問いにどう関わるのか。また、どのような場所や道具、他者との関わりが、その実践を支えているのかを検討します。

中心に置くのは、「芸術は役に立つか?」という一括した評価ではなく、「誰にとって、どのような場面で、何を可能にしているのか?」という問いです。

仕事や能力向上への効果だけで捉えず、つくり、味わうこと自体の意味や、成果を求められずに表現できる自由も大切にしています。

10枚の図解は、価値の違いから、歴史、人々の経験、仮説と検証、今後の可能性へと、問いをつなぐ構成です。芸術に関心のある方に加え、教育、人材育成、地域活動などに関わる方が、自分の経験や身近な実践と照らして考える入口として活用できるようにまとめました。

「好き」と「高く評価される」は、同じことか?

例えば、自分は心を動かされない作品でも、他の人には大切な意味があるかもしれません。反対に、自分にとってかけがえのない作品が、市場で高く売れるとは限りません。

 

まず分けたいのは、価値の上下ではなく、何を、誰の立場から見ているかです。五つの観点は、その違いを考えるために本資料で整理したものです。

UNESCOの2005年条約も、文化的な活動・財・サービスを商業的価値だけで扱わないという原則を示しています。ただし、それは個々の活動の効果や、あらゆる支出の妥当性を保証するものではありません。

芸術は、これまで何を担ってきたのか 

価値の見方を分けたうえで、次に、芸術が何を担ってきたかをたどります。新しいものを生み出すことだけでなく、記憶や技術を受け継ぐこと、暮らしの中で楽しむことにも目を向けます。

 例えば、ルネサンスの素描には、完成した考えを写すだけでなく、紙の上で構想を探る働きがありました。「つくりながら考える」ことにも、歴史的な先例があります。

図は主な働きをまとめたものであり、網羅的な分類や発展段階ではありません。また、教育・健康などの記述は、すべての実践に同じ効果があることを示すものではありません。

 見ることと、続けること。望む関わり方は人によって違う 

作品をじっくり味わいたい人も、自分でつくりたい人もいます。活動を考える際には、主催者が何を提供したかに加え、本人がどのように関わりたいのかを見る必要があります。

文化に接する機会と、自ら表現し、活動の決定に関わる機会を区別する視点は、UNESCOの1976年勧告にも示されています。

図の番号と矢印は、全員が進むべき順序や、関わり方の優劣を示すものではありません。鑑賞だけで得られる充実も大切にし、継続を望む人には、その条件があるかを確かめます。

 作品の価格からは、何が分かり、何が分からないのか 

人々が感じる意味を考えた次に、市場での評価との関係を整理します。米財務省の2022年調査は、作品価格には質だけでなく、所有履歴や展示歴なども関係すると説明しています。

価格、専門的な評価、人々の生活にとっての意味を、どれか一つで代用しないことが重要です。作品の売買と、次の制作・教育を支える費用も、分けて考えます。

取引の透明性も、別に確かめるべき問いです。FATFは不正利用のリスクを報告する一方、市場参加者の大多数は違法行為と関係がないと明示しています。高価格だけで不正を推定することはできません。

 社会の目的に貢献するだけでよいのか 

芸術が既にある目的にどれだけ貢献するかを問うだけでは、その目的自体を見直す余地が狭くなります。何を成果として数え、何を見落としているのかも、問いの対象にします。

例えば、メンテナンス・アートは、清掃や維持の仕事に目を向けてきました。本資料では、この実践を、社会を支える営みの評価を考え直す手がかりとして読み解いています。

営みの価値が表現されたことと、労働条件や制度が改善したことは、同じではありません。実際に何が変わったかは、別途確かめる必要があります。

 ここまでの整理から、何を確かめるべきか 

歴史や研究を参照するだけで、現在の活動の状態が分かるわけではありません。そこで、活動の目的と実際の経験、継続の条件、制作による変化などを、五つの仮説に整理しました。

仮説とは、確かめるために置く仮の説明です。支持する事実だけでなく、「別の説明の方が合う」「この条件では成り立たない」と分かる事実も探します。

五つの仮説は本資料の検討課題であり、現状についての確定した診断ではありません。一つの事例を、芸術全体の評価に広げないことも重視しています。

 「よい経験だった」の先に、何が起きたのか 

「大切な経験だった」という本人の言葉には、それ自体の意味があります。ただし、そこから仕事や生活が変わったか、その変化が実践によるものかは、別の確認が必要です。

Project Zeroの研究解説も、美術の授業で扱う思考の習慣が、制作以外の場面にも使われるかどうかは、想定せずに確認すべきだとしています。

図中の「待つ経験」は、検証方法を考えるための設計例であり、実施済みの実験結果ではありません。また、楽しむことや技術を保つことが目的なら、変化の大きさだけで成否を判断しません。

 可能性を広げるために、どの条件を増やすのか 

可能性を確かめる視点を持ったうえで、今後の方向を考えます。新しい効用を加えるだけでなく、人々が望む形で、つくり、味わい、表現できる条件を増やすことにも目を向けます。

ここに示す五つは、確認済みの効果ではなく、先行実践を踏まえた提案です。能力向上や社会改善を目的としない制作・鑑賞の自由も、同じように大切にします。

役割を一つに決めず、働きと条件を確かめる 

本資料が提案するのは、芸術の役割に一つの正解を与えることではありません。誰に何が生じているかを確かめ、受け継ぐもの、見直すもの、試すものを具体的にすることです。

 表現の自由を守ることと、社会的な効果を掲げる活動の実態を検証すること。 

この二つを両立させる視点で、芸術の可能性を考えます。

芸術に接する機会を増やすことに加え、人々が自分の経験を形にし、現実の見方や関わり方をつくり直せる条件を増やす。
そして、そのような目的を持たずに、つくり、味わえる自由も残す。

それが、本資料の提案する方向です。

資料の位置づけと参照資料 

本資料は、2026年9月14日時点で確認した公開情報に基づく探索的レビューと仮説整理です。美術を中心に、舞踊、演劇、工芸、芸術教育、文化政策、健康、美術市場に関する資料を参照しています。

 

世界の芸術史や関連研究を網羅する系統的レビューではありません。実践の存在、研究で確認された結果、文化政策上の原則、本資料の考察・提案を区別しています。五つの仮説と今後の可能性は、検証によって修正・限定されることを含む提案です。

 

図解の基礎となる全文資料は『芸術は、社会の中で何を可能にしているのか―歴史と人々の経験から、その働きと可能性を問い直す』(全19ページ)です。検討過程、調査の範囲と限界、参照資料18件を収録しています。

資料ダウンロード 

内容と根拠を詳しく確認する|レビュー版(PDF・全19ページ)

 芸術の歴史的な役割、五つの仮説、検証の考え方、今後の可能性を文章で解説しています。調査の範囲と限界、18件の参照資料も収録しています。

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図で全体像をつかむ|図解版(PDF・全13ページ)

本リリースに掲載した図解10枚を収録しています。あわせて、会社情報、代表者の制作経験、判断の実務循環を紹介する補足3ページを掲載しています。

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組織行動科学®について 

組織行動科学®は、組織で働く人の思考と行動が「なぜ起こり、なぜ続くのか」を、事業環境、歴史、経験から明らかにし、より善く再現するための研究・実践体系です。

リクエスト株式会社は、980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、企業で働く成人の研究と教育開発を行っています。

リクエスト株式会社について 

リクエスト株式会社は、組織行動科学®を基盤に、企業で働く人の行動、判断、経験形成、組織学習に関する研究と実践支援を行っています。

代表取締役の甲畑智康は、2003年に東京藝術大学美術学部を卒業後、企業の人材育成・組織開発に20年以上携わってきました。芸術における創造の過程と、企業における判断形成の双方を背景に、AI時代の「判断デザイン」「判断経験設計」「判断構造設計Pro」の体系化を進めています。

会社名:リクエスト株式会社
代表者:代表取締役 甲畑 智康

所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
電話番号
090-4183-2525
代表者名
甲畑智康
上場
未上場
資本金
-
設立
2020年10月