印鑑を「使うもの」から「表現するもの」へ。脱ハンコの流れの中で、制作会社を立ち上げた理由

脱ハンコ

#脱ハンコ #デザイン印鑑 #創業エピソード

2021年3月26日 12時20分 Sirusi

脱ハンコの時代に、ハンコ制作会社を創立

2018年1月、政府は行政手続きにおける押印を「デジタル化の障壁」として見直しを進めることを「デジタル・ガバメント推進方針」で発表しました。その年の7月、私は印鑑をデザインする会社「株式会社Sirusi」を立ち上げました。

はじめまして。株式会社Sirusiの代表の盛佳男です。私は大手印鑑制作会社に15年勤務したのち、印鑑をデザイン、販売する会社を立ち上げました。ですが、脱ハンコの流れは加速する一方。

2020年11月には、河野太郎行政改革担当大臣が、行政手続きにおける認印の押印を全廃すると発表しました。こういった流れがくることは、創立時には想定できていました。それでも私は、印鑑デザイン会社を立ち上げる意義があると思ったのです。

"デザ印”の力で、印鑑を「使うもの」から「表現するもの」へ。

PR TIMES

印鑑なんてどこで買っても同じと思っている方に、印鑑に情熱をかける職人たちの思いを知っていただきたいと思い、この度パートナー企業様の協力を得て「1本のハンコができるまで」を紹介する記事を作成しました。

印鑑購入を検討するときに印鑑の役割を思い出してもらえたら嬉しいですし、フリーランスの方や個人事業主として活動されている方、経営者の方に、印鑑を押す意義を考えてもらうきっかけになれば嬉しいです。

長さ6cmの印鑑が生まれるまでの約1年の旅

印鑑がどのようにして作られているか、知っていますか？持ち手の部分が木からできている程度しか考えたことがない方がほとんどだと思います。

この記事を作成した理由は、重さ10～50g程度、長さ6cmほどの小さな1本の印鑑が出来上がるまでに、材料の木を伐採するところから考えると約1年、完成までに最低でも述べ27人以上の職人の手が加わることを知っていただきたかったからです。

苗木を植えるところから考えると、印材となる1本の木が育つまでには30～50年が必要です。ここまでの時間と職人の手をかけて作られる印鑑ですが、通常数百円〜数千円で販売されています。

こういった背景を長年印鑑の業界で働きながら見てきた私は、もっと1本1本に、使い手1人1人に寄り添った印鑑作りをしたいと考えるようになりました。脱ハンコの時代が来るとわかっていながら私が印鑑デザイン会社を始めた理由は、印鑑を「使うもの」から「表現するもの」に存在意義を変えたいと思ったからです。

印鑑の存在意義を変える挑戦

印鑑は結婚や住宅購入、契約など重要な決断に寄り添うものです。だからこそ、私は印鑑はただ名前を表すものではなく、「自分らしさを表現するシルシ」であるべきだと考えています。

真っ直ぐな気持ちで誠実に向き合い生きていきたい方には真っ直ぐな直線を使ったデザイン、ご縁を大切にしたい方には球体（円）をイメージしたデザインなど、使い手の理念をデザインで表現しています。

弊社では文字のデザインを「印グラフィー」と呼び、文字のデザインパターンを9種類用意しています。理念や生き方、表現したい自分に合った印グラフィーを選んでいただいたうえで、弊社のデザイナーが使い手だけの唯一のマークになるようひとつひとつデザインしていきます。

彫刻前にデザインを確認してもらい希望があれば修正も行います。そのため1つのデザインに1時間かかることもあり、これは印鑑制作においては非常に珍しいことです。時間がかかっても、使い手が一生使いたくなるようなデザイン性の高さ、表現にこだわっています。

今回の記事ではパートナー企業様に取材することで、私自身も今まで知らなかったこだわりや苦労が見えてきました。たとえば印鑑ケースに貼られている革にヨレがないのは、職人が1つ1つヨレやシワが入らないよう、手作業で行っているからです。機械が量産していると思っている方も多いのではないでしょうか？

ですが、印鑑や印鑑ケースには精密さが求められるため機械では対応できないこともあります。印材の形が均一になるよう、削りや研磨は職人が指先に集中し、一本一本のわずかな違いを感じ取り仕上げていきます。弊社では彫刻段階で機械を使いますが、木材の場合は最終的にはお客様のイメージに沿うよう手彫りで仕上げを行います。

【木製ハンコ材の加工製造風景】