1955年(昭和30年)に創業し、創業65年を誇るニューダイヤ産業株式会社は、首都圏及び都内全域の私立・公立中学校や高校に、技術・家庭科関係の教材を販売する事業と、学校教育に必要なものをタイムリーに提供する学校教育の総合商社事業をメインとした老舗の企業である。

■事業承継にいたる経緯

創業者である永野理一郎は、闘病を続けていたが、2020年1月に再度病のため入院。後を継ぐ予定だった前代表も体調不良を続けてきており、売却も検討せざるを得ない状況であった。そんな中、創業者の娘婿である阿部洋介は、ニューダイヤ産業の事業承継を決断する。阿部自身、いくつものスタートアップや、事業承継のM＆Aを実行経験もあり、現在も起業して、東京ミッドタウン日比谷でパリに本店のあるフレンチ店のRestaurant TOYO Tokyoの代表もしている。

■事業承継後におこなったこと

事業承継が決まり、少しずつ課題やタスクの洗い出しをしていた中、2020年3月頃より、新型コロナウィルスによるパンデミックの影響が出始める。緊急事態宣言により、学校も休校となった。阿部は、社内のDX化を優先事項と考え、取り組みをスタートした。長い間更新が出来ていなかったホームページの開設、営業マンにはスマホを貸与し、日報のデジタル化や位置情報サービスの導入など、できる限りデジタル化を推進した。また、曖昧だった評価制度や、会社規定などについても改定を実施した。

多くの会社の事業承継やM＆Aを行ってきた経緯から、それぞれの会社にそれぞれの事情や経緯があるのを代表の阿部は見てきた。いずれのケースでも、とにかく最初の半年間が勝負。この間に会社が目に見える形で変わったという事が、社員に伝わる事。全てスピードをもって意思決定をして動かしつつ、それぞれの社員と徹底したコミュケーションを行い、考えを伝える。

創業者が長らく体調不良で会社にも関われなかったため、会社として日常的な小さな決断から、会社の方向性といった事まで含めて、意思決定をするという事が健全に作用しておらず、それぞれが自分の範疇の中でしか判断できない状況になっていた。とにかく不要な物や、積み重ねられた不要な在庫が沢山あった。また事務所も不要な物が沢山あり、大量の不要な過去の産物に囲まれて仕事をしていた。とにかく整理整頓をする事、要らない物は捨てる事、事務所を綺麗にする事を最初に取組んだ。最初の4か月間で、社員が自ら手を動かし不要な在庫を全部廃棄し、大がかりな事務所の改装をした。とにかく環境整備を進めた。

■自ら現場を体感する

緊急事態宣言が解除され、学校が再開したタイミングで、主要な学校を100校以上、阿部自らが営業マンと同行を実施。学校だけでなく、サプライヤーであるメーカー訪問も積極的に行った。

営業同行の目的は、まず現場を見ないと、アイデアや改善点が見えて来ない。そして何より、各営業マンと一日一緒に色々な話をする事、営業先とのやり取りの中で、どういったスタンスでそれぞれが働いているかが見えてくる事だ。

同行・訪問を続ける中で、誰もが通る義務教育であるが、社会によって支えられると感じる一方で、教育現場で起きている課題も同時に感じた。先生は社会にとっては非常に特殊な職場環境である。多くの教員は教育現場しか経験をされてない。多くの先生は本当に献身的に教育の場に身をささげるが、今後多様性が社会のテーマである中、現状の教育の中から多様な人材を輩出する十分な環境ではない。社会全体で、子供達の教育に関わる必要があると感じた。

このような改革を進める最中、2020年9月に創業者である永野理一郎が永眠。事業承継はまさにギリギリのタイミングであった。

■承継後に起こっている変化

事業承継後の、これらの取組により、一気に従業員を未来志向にマインドセットを変える事に成功した。5年後、10年後どんな社会になるか、どういったニーズになるか。それは、全ての仕事に通じ、日常業務から営業現場、本部スタッフにその意識を、事あるごとに徹底をさせた。とにかく会社として、多様性を実現し、色々な能力、バックグラウンドをもった人材がそれぞれの力を発揮する組織でないと、今後の会社経営は成り立たない。日頃の小さな判断の積み重ねを続け、これからも、その未来を切り開いていく。

■新たな取組み「ORANGE Lab」

人口が集約化している東京でさえ、5年後から急激に少子化が進む。学校教材の会社にとっては大きな脅威だ。一方でコロナを起点にオンライン化、デジタル化は教育現場でも一気に進む。コロナ禍は、生活様式を変えた。今まで当たり前に都心の大きなオフィスへ出社をする事、学校も当たり前では無くなった。大企業を中心に一気に進んだリモートワークは都心部の在り方を変えた。大きな場所に大勢を集める事が出来なくなった。そして、それは場所というところを作る事を再定義する事になった。

我々はこれからの未来に必要な「場所」を作ることを決断した。「ORANGE Lab」は、子供達のための場の提供、そして創業を支援できる場の提供を行い、「未来を創造する」機会を創出することを目的とした場所。子供達の、多様性に富んだ学びの場として、プログラミングや、モノづくりに関わるコンテンツを用意し、それをオンラインでも配信していく。一方で、教育や食・健康に携わる、インキュベーションを行う事で、若い創業を支援しつつ、その無限のアイデアで将来を具現化する。ORANGE Labから、小さな一歩を踏み出していく。

■企業情報

会社名 ： ニューダイヤ産業株式会社 ( https://newdia-sangyo.co.jp/ )

住所 ： 東京都文京区水道2丁目2番4号

代表取締役 ： 阿部 洋介

設立：1962年9月

事業内容 ： 学校教育教材の販売事業、学校教育の総合商社事業、WEB事業