#開発秘話 #マスク #寄付ストーリー

　リンテクト・ジャパン株式会社（本社：埼⽟県川越市、代表取締役社⻑：前⽥ 啓佑）は、「新たな価値を創造し、人類と社会に貢献する」という想いを企業理念に掲げ、アイテム開発〜販売までを自社で一貫して担うECの生活雑貨店です。テクノロジーを最大限に活かした独自のワンストップ管理を実現させ、品質にも価格にも妥協しないものづくりをモットーに、これまで様々なデザイン家電やアパレルグッズなどを展開してきました。

　2020年、世界中がマスク不足に苦しんだコロナ禍で当社はBtoB向けマスクブランド『Cepico（セピコ）』を立ち上げ、高品質で低価格なマスクの販売に成功しました。当時、一体どんなきっかけで生産を決断し、販売するまでの苦労があったのか。代表である前田の言葉とともに、"コロナ禍でのマスク開発のリアル"をお伝えします。

出発点は「マスク不足で困っている」という知人経営者の声

　当社は家電やアパレル雑貨などのEC通販サイトを運営しているベンチャーメーカー。平均年齢29歳の若い組織でありながらデザインから販売に至るまで一貫しています。IT活用を強みにスピード感と高精度なモノづくりを行い、豊富な商品開発経験と多くの取引実績から国内EC通販モール市場で数々のトップシェア製品を生み出してきました。

　そんな中、2020年に新型コロナウイルスが流行し、世界中が恐怖や不安でパニック状態に。全国の小売店の店頭からそれまで「当たり前に売られていたマスク」が消えました。未知のウイルスに日本全体が不安に包まれる中、当時34歳だった代表の前田は会社として何ができるかを必死に考えていました。

――マスクバブルで日本中からマスクが消えたあの頃に、なぜマスク開発に踏み切ったのでしょうか？

前田：知人から「マスクが必要なのに、どうしてもマスクが手に入らなくて困っている。なんとかならないか？」という声をたくさん受けました。自社の生産力を信頼してくれての頼みは非常に嬉しかったですが、マスクの開発を決めるには迷いもありました。周囲の経営者の仲間達からは「一過性のものだし利益に対してもリスクが高すぎる」と引き止められる声ばかりで、当時は同業者もマスク生産に対しては躊躇していました。ですが、だからこそ困り事を解決する起業家精神で自分がやらないといけないという使命感に突き動かされました。こういう時はある程度の無知やバカでないと飛び込めないでしょう、という若手起業家のノリでチャレンジすることを決めました。（笑）

リンテクト･ジャパン株式会社　代表取締役　前田 啓佑

――これまで生産経験のない衛生用品をコロナ禍で実現することは大きなハードルがあったかと思いますが、それについてはどう考えていましたか。

前田：弊社は中国支社があり、現地での高品質なマスクを生産する環境を整える自信がありました。マスクを生産することを当時のメンバーに伝えたときは、驚きの声や不安が大きかったと思います。それでもマスク不足で困っている医療現場や介護施設などの現場の人たちの声が耳に入ってくると、メンバーも顔色が変わりマスク生産を実現するために必死で工場探しを始めました。

中国でもコロナ禍をきっかけにマスク生産工場が作られたので、優良な工場探しが大変だった。

1ミリも妥協したくなかった「高品質かつ低価格」の壁。

　マスク不足の危機的な状況は日に日に深刻さを増し、粗悪なマスクを超高値で販売する転売ヤーが大きな社会問題となりました。品質に問題のある製品が見つかった一部の企業は、回収作業に追われる事態となりました。

――生産時を振り返り、特に大変だった部分やこだわったポイントを教えてください。

前田：うちは品質と価格のどちらにも妥協しないモノづくりがモットーなので、マスクの生産においてもそこの両立は譲れませんでした。低価格で大量のマスクを生産することができたとしても、不良品を出してしまっては元も子もありません。そこで、日本の企業でも前例のなかったマスクの全量検品の実施に踏み切りました。中国政府公認の医療用マスク工場と業務提携し、 さらに日本の厳しい第三者検品を通過したものをメーカー直販の低価格で販売することにしたのです。

　しかし、その背景にはいくつもの大きな壁があったということで、中国支社の社員のパン（逄）*にも当時の様子について聞きました。彼は元々日本の高級靴メーカー出身であり、自身も日本在住歴が長いため日本品質を熟知している心強いメンバーです。

*パン・ユーシュン（逄毓春）　2016年　入社

パン：日本から連絡を受けて、不織布を扱っている工場に連絡を急いで取ったのですが、サンプル品を確認するも納得のいくものが見つからず対応もあまり良いものではありませんでした。中国は国土も広いので工場同士の距離が非常に遠く、信頼できる工場を見つけるまで500km以上の道のりを5時間車で運転することも幾度とありました。

――人柄も含めて信頼できる工場を諦めず探し続ける姿勢に、本当に高品質なものを届けるんだという覚悟を感じますね。ここだけの話、予想外のハプニングなどもありましたか。

パン：衛生用品という性質上、特に環境整備に関しては想像以上に大変でしたね。中国ではコロナ禍をきっかけに多くのマスク工場が新たに建設されたこともあり、無菌状態を確実に保つことはそう簡単なことではなかったです。実は、自社工場を高額な値段で買収しようとする不穏な動きもあり、毎日その恐怖と戦っていましたね。それをなんとかして食い止めようと、工場の監督として生産現場に連日立ち会いました。

2022年の再販時には、中国で大規模な大洪水が発生。日本に送る梱包前の資材が水没してしまうというトラブルも発生した。

パン：安定的な生産のためには、不織布本体と耳紐ゴムを効率的に接着させる機械の入手も必須でした。複数の工場を渡り歩き、接着剤を使わずに超音波の振動だけで圧着する全自動の機械を4台導入しました。一度に耳紐４箇所を接着させることに成功し、圧着の際に耳紐のゴムが溶けて切れやすい課題も解消しました。また、市場では平たい形状の耳紐が主流ですが、長時間の着用でも耳が痛くなりにくい伸縮性の高い丸いゴム形状を採用することで着け心地の良さも追求しました。

日本と中国の全社員が一致団結し、ついに完成した初めてのマスク。

「本当にいいマスク」って何？

　ろ過できる粒子が小さく、ろ過率が高いほど性能が良いマスクと考えられます。しかし、性能の良さと価格は必ずしも比例するわけではありません。マスクの価格は、産地やブランドなどの影響を受けやすく、流通コストなども上乗せされた金額になるため、機能性が低く高額な粗悪品が流通するケースがあります。「本当にいいマスク」を実現するため、たとえコストをかけてでも高品質な商品生産にこだわりました。

こだわりポイント①：繊維間の隙間がほとんど生まれないメルトブロー不織布を採用

　不織布は様々な製造方法がありますが、繊維が細く繊維間の目が細かい超極細繊維のメルトブロー不織布という素材を導入しました。格子状に重ねたものや濾してできた不織布では、目に見えない粒子をカットすることが難しいので、繊維間の隙間がほとんど生まれないこのメルトブロー不織布が活躍しています。さらに、3層フィルター設計を採用することで、ミクロ粒子の侵入を抑制することができます。

こだわりポイント②：BFE［※1］＆PFE ［※2］99%カット

　品質基準についても徹底してこだわりを貫きました。空気中の微粒子やウイルス、細菌などが、マスクのフィルター部分を通してどれだけ「ろ過（捕集）」されたかの測定値であるBEF/PEFについて99%カットを実現させました。この実績は、0.0001センチメートルの疑似ウイルスを99％カットするという高品質を意味しています。

※1 BFE:「バクテリア（細菌）ろ過効率」のことで約3㎛の細菌を含む粒子がどれくらいろ過（捕集）できたのかを表す指標。花粉や咳・くしゃみに伴う水分を含んだウイルスの飛沫（ひまつ）などが対象となる。

※2 PFE:「微粒子ろ過効率」のことで、約0.1㎛（マイクロメートル）サイズの粒子をどれくらいろ過(捕集)できたのかを表す指標。インフルエンザウイルス、ウイルス単体（飛沫核）、結核菌ウイルスなどが対象となる。

“自信のマスク”、そこから連鎖した安心の輪。

　国を超えた試行錯誤の末、ようやく完成した高性能かつ低価格のCepicoマスク。

現在まで5,000社以上・2,000万枚以上の発注が寄せられ、初回の入庫在庫はわずか4日間で完売しました。マスクでの生産経験を活かし、現在は使い捨てエプロンや手袋、フェイスシールドなども展開し、命と健康に直結する医療従事者の方々をはじめとした衛生用品の需要に貢献しています。定期販売にも対応し、マスク不足が解消された現在もリピーターのお客様からご好評の声を多くいただいております。

　また、Cepicoマスクの収益の一部から、社会福祉事業者（介護・福祉施設など）の方々にマスクを寄付するプロジェクトを開始。品薄かつ高価なマスクの調達が厳しい事業者様に、高機能な製品を無料で届けることはまさに会社の理念である「新たな価値を創造し、人類と社会に貢献する」を体現する活動です。命と健康に直結するお仕事に携わっている事業者の方々の力になりたいという想いから始まりました。販売から1年後の2021年にはマスクの収益の一部から、世界の貧困地域の子どもたち3,600人分のワクチンを寄付することを実現させました。

介護・保育施設など200箇所に4万枚以上のマスクを寄付

――今回のCepicoマスクの開発を総じて、当時の一大決心とこれまでの軌跡をどう振り返りますか。

前田：「自信を持って販売できるものができたから、ハイリスクでもあの時アクセルを踏む勇気を持てたと思います。社員も一丸となって取り組んでくれて、チーム全体で勇気を持って動いた結果だと思います。正直、採算を取ることは期待していませんでしたが、予想以上の多くのご注文をいただき大きな信頼と実績の輪を生むことができました。人のためにと思って誠実にやっていれば、見返りを求めなくても必ず良い結果が返ってくるとそ

の時に確信しました。」

小売店ならではの“発想”を強みに、昨年リニューアルして再販売。

　2022年に、「Cepicoマスク」は充実したサイズ展開とゴミの少ないエコなパッケージにリニューアルされました。学校や保育園などの登校が再開し、マスクの着用を推奨される中、小さいサイズのマスクが大量に販売されていない現状に気づき、子供用のSSサイズや中高生から成人女性用のSサイズを新たに生産開始したのです。

新パーケージがマスク工場に届いたときも、人の目で一つ一つ不良がないか検品を行った。

　利便性も向上させるため、定番の紙箱ではなく、透明のフィルムで包装されたオリジナルのソフトパックに改良しました。ご愛用いただいているリピーターの企業様や団体様の使用シーンを想定し、介護現場や水回りにも置きやすい利便性の高さに加え、紙箱よりも価格が安いのが魅力のひとつです。収納スペースを省け、ゴミも減らせる、最近の物価高で一段とシェアが拡大している素材です。

　コンパクトかつ軽いので持ち運びしやすく、企業側は輸送コストを抑えられる点が利点です。ティッシュペーパーのように1枚づつ片手で取り出すことができる、ありそうでなかった新発想のパッケージに改良いたしました。また、毎日使うものなので、手に取る度に前向きな気持ちになれるよう温かみのあるパステルカラーにこだわりました。アパレルグッズなどを開発する私たちだからこそ生み出せた、自信の不織布マスクです。「日本をもっとおしゃれに」という会社のコンセプトを、画一化されたデザインの多かったマスクのパッケージで体現させました。

　"過去最高傑作マスク”の裏側には、いくつもの大きな壁が立ちはだかりましたが、どんなときも独自の技術力とメンバーの固い結束力でそれらを乗り越えました。これからもオリジナルのアパレル雑貨店の私たちだからこそできるモノづくりを通して、ひとつでも多くの幸せな体験を創り出し、次世代のモノづくり企業としてチーム一丸となり更なる活躍を目指します。

インタビュアー：関口　葉菜　2023年新卒入社

【Cepicoブランドページ】

https://cepico.jp/

【会社HP】

https://www.lintect.co.jp/

【公式オンラインショップ】

http://in-neutral.com/

<会社概要>

会社名：リンテクト・ジャパン株式会社

代表取締役：前田 啓佑

本社：埼玉県川越市鯨井新田1-7 明和ビル2階

主な事業内容：家電・インテリア・アパレル雑貨の企画製造小売、

OEM・ODM製品の企画製造販売