今の時代、小学生がなりたい職業ナンバーワンはYouTuber。自分の得意なことを誰もが世界に発信し、情熱は価値を生み、多様なジャンルでクリエイターが稼げる”クリエイターエコノミー”時代が到来した。これからますますクリエイティブな思考や価値観は社会に必要とされ、個人のクリエイターだけでなくビジネスモデルや企業経営にもインストールされていくだろう。そんな時代を予言するかのように、8年前にヨーロッパで立ちあがったのがTHU（正式名称Trojan Horse was Unicorn / トロイの木馬はユニコーンだった）。年に一度のイベントを軸に、サテライトのオンラインイベントや世界の都市で開催されるローカルギャザリング、昨年のコロナ禍ではソニーとタッグを組んでコンペティション「Sony Talent League by THU」を開催。クリエイターが”安心”して才能を発揮できる環境づくりに貢献している。

「安心感」が可能性を飛躍させる。クリエイターのセーフゾーンとしてのTHU

THUの活動のコアとなるのが、年に一度一週間かけてヨーロッパで開催されるメインイベント。他のどのクリエティブイベントとも違うのがその雰囲気だ。参加者はリラックスし、有名無名関係なく世代を超えて交流している。

メインイベントで繰り広げられるのは、リクルーティングセッションや講演、ワークショップやメンターシップなど。朝から多岐にわたるプログラムは、クリエイターのために考え抜かれた”多様で理想的なトピック”ばかり。そして夜になるとオアシス（みんなの憩いの場所）では深い時間までアートバトルやゲームバトル、音楽セッションにカラオケ大会とお楽しみイベントが開催され、一週間に渡る濃厚な体験がデザインされている。イベントでは参加者はトライブ、講演者はナイト（騎士）と呼びあい強固なコミュニティが形成されている。

「THUでは誰も独りぼっちにはしない。このイベントの中心にあるのは”人間”なんだ。世界のどこから来ようと、有名無名関係なく、平等に互いを尊敬しあって声を聞きあう。これがTHUの魔法なんだ」THUのファウンダーであるアンドレ・ルイスはこう語る。長い旅から家に帰ってきたような圧倒的な安心感がTHUにはある。まるでクリエイターにとってのユートピアのような場所が実在する。

”クリエイターエコシステム”の培養液 THU

なぜ、THUのような場所が求められているのか？そして圧倒的なリピート率をはじき出す理由は何なのか？

「創作活動はもちろんのこと、あらゆるビジネスもクリエイティブであるべき」とはTHU Japanのプロデューサー塩田周三（ポリゴン・ピクチュアズCEO）。「今の時代、商品にしてもサービスにしてもクオリティは上がり、AIの台頭でさらにあらゆるものが機能的にはGood Enough（十分良い）が当たり前になってきました。そんな時代で人を突き動かすものは何かというと、心に響くかどうかではないでしょうか。アートやエンターテイメントは直接的にお腹がいっぱいになるものではないし、生活必需品ではないですが、人々と深くエンゲージメントしてきた歴史と蓄積があります。時には巨額のお金が動くこともありますね。それらの源がクリエイターなのです」。2021年３月、イギリスのデジタルアーティスト、Beepleが毎日描き続けた5000日分のNFTアートは75億円で落札された。

ただし作り手にとってモノづくりとは、ある意味自分の一部を切り取って世の中にさらけ出すという行為であり、そこには人間として恐怖や不安感を伴うもの。「大小はあれどもクリエイターは日々不安と戦いながら創作活動をしています。THUのイベントでは、そういった不安を語り合ったり、批評されるのを恐れることなく作品見せあえるという稀有な場所。THUのコアにあるこの”安心感”は、クリエイターを萎縮させることなく才能を開花させ、可能性を飛躍させる要因となっています」（塩田プロデューサー）。

THU誕生秘話：CG学校の運営から着想

THU発足のきっかけについては、ファウンダーのアンドレ・ルイスが当時経営していたポルトガルのCGスクールが抱える課題がヒントになった。在籍する学生の中には優秀な人材がいれども、就職先がないという問題を抱えていた。一方で企業は優秀な人材との出会いを求めていた。学生と業界のマッチングできる仕組みを作れないかと考えたルイスは、「ならばイベントを開いて企業を呼んでしまおう」と一念発起。自校の枠を超え同じ悩みを抱える学生と企業ために、THUを発足させる。この試みは現在、約65カ国からクリエイターが参加するイベントへと拡大している。

THUを日本で開催する意味 THU Japan 2022にむけて

THUの大きな夢が日本での開催。昨年、THUは2020年5月の日本開催に向け入念な準備を進めていたが、世界をコロナの猛威が襲う。コロナ禍であってもクリエイティブの火を絶やさぬよう「Sony Talent League by THU」を実施したものの、THU Japanの開催については延期を余儀なくされた。

そして、2021年6月現在、石川県加賀市と2022年のTHU Japan開催に向けて協議がすすんでいる。「今では日本のクリエイティブは世界が憧れる存在へと飛躍してきました。日本はハードウェアや伝統文化のみならず、物語の宝庫でもあり、豊かで洗練されたクリエイティブが根付いています。マンガひとつを取ってみても、様々な世代に向けた多様なコンテンツがありますね。THUが道先案内人となり日本と世界をつなぐ役となり、THUコミュニティーに新しい視点やインスピレーションをもたらすことを期待しています。また、日本人のクリエイターにとっては、多くの国のクリエイターらとコミュニケーションをすることによって、広い視野で相対的に自分たちのポジショニングを把握できるでしょう。国内外のトライブ（参加者）のクリエイター人生に可能性と刺激をもたらすことを希望します」（塩田プロデューサー）

THU公式サイト：https://www.trojan-unicorn.com/

Instagram: @thu_japan

THU YouTubeチャンネル：

https://www.youtube.com/channel/UC3tC6Ai-v_BpqsMR8zqa07g

アーティストが自らのスケッチブックについて語る「スケッチブックシリーズ」が人気（日本語訳付）

THU Main Event 2021 : https://www.trojan-unicorn.com/main-event

THU Main Event 2021チケット発売中：

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