イベントをオールインワンでプロデュースする株式会社CREAが話題のカフェASAKARA GOOD STOREと協業し、コーヒーを通じて過疎化が進む地域の魅力を再構築するプロジェクトを始動。

「つながる」という事が共通の理念であり、それぞれが経営者として活動する兄弟が、その魅力を活かしきれていない地方の町に、知識と経験で人をつなげ地域の課題解決に貢献する事を目指しています。

株式会社CREAの設立経緯とビジョン

個人事業からのはじまり

株式会社CREAは2020年4月、コロナ禍による緊急事態宣言が発令され、国内の多くの街から人が消えた頃に設立しました。代表取締役の川﨑正仁は、法人化前は個人事業主として企業や行政主催のイベントに企画から携わるイベントプランナーとして活動しており、おもにステージ演出や舞台監督としての経験を活かしたイベントづくりを得意としていました。１０代の頃から舞台美術に携わる仕事に就き、多くの視線が集まるライブの現場で表現者を裏方として支えることに喜びと責任感を感じながらステージをフィールドとして働いてまいりました。

コロナ禍での危機感からの会社設立

いつもの様にイベントの開催に向け、本番で使用する映像を撮影するために降り立った長崎空港で、主催者であるメーカーの担当者よりイベント中止の電話が入りました。

「これはまずい」。

ここまでに費やしたコストと時間、予定していた収支の計画、立ち上がったばかりの新規プロジェクト。いろんな事の見通しが一気に立たなくなり、追い打ちを掛ける様にオリンピックをはじめ国内の多くのイベントが延期・中止を余儀なくされました。

「いまできる事、しなければならない事」を冷静に考え、イベント業界にとって苦難の時を乗り越えるため、また事業を強化するためにも法人化をする事になりました。

CREAのビジョン

株式会社CREAはイベントプロデュース企業として、これまでに得た経験や知識と人的ネットワークを繋ぎ合わせ新しい価値を創造する事を理念としています。イベントはメディアとしての手段であり、伝えたい情報や共感したい想い、達成したい目的や解決したい課題をより独創的なアイデアで効果的に実現することが可能です。そのためにも常に情報の感度を磨き、過去の事例も多角的な視点から検証する事で私たちにしか出来ないオリジナリティを生み出し続けます。

業態や店舗のコンセプト起案から開発着手までの経緯

将来について語り合った兄弟でのキャンプ

コロナ禍がもたらしたキャンプブームですが、川﨑正仁と弟の正太は共通の趣味として以前から2人でバイクツーリングで京都、奈良、和歌山方面へのキャンプによく出掛け、将来の共同出店について語り合っていました。

正太はSNSやメディアでも多く紹介される大阪市中央区のカフェ「ASAKARA GOOD STORE」や、ベーカリー「brocantique THE BAKERY」、フードトラック「ANOTHER TABLE」を運営するアナザーテーブル合同会社の代表として、日々の生活に欠かせない食卓を彩るための”コト”を提案する事業を展開しています。

笠置キャンプ場

ある日、いつもの様に2人でキャンプに出かけた京都府最南部の、自然豊かな木津川の畔にある笠置キャンプ場。大阪や奈良からのアクセスもよく、河川敷を利用した全面フリーサイトで年間10万人以上が訪れる関西随一の有名キャンプ場です。地元笠置町の観光協会が管理運営しており、受付のスタッフも気さくなご高齢の方が多いせいか、親しみ深く開放的な雰囲気が人気となっていますが、その裏側に潜んでいる様々な課題を目にしました。

全国で２番目に人口の少ない町、笠置町の課題

笠置町は古くは太平記の舞台にもなり、木津川を囲む豊かな自然と共に歴史遺産が多く遺され、高度成長期以前には上質な温泉や景勝地の笠置山を中心にとして日帰り行楽客にも親しまれたが、戦後以降の国税調査で人口増加を示したことは一度もなく、少子高齢化が凄まじく進む限界自治体になっています。町の中は人影がほとんどなく、閉鎖された旅館や商店が立ち並び、老朽化した空き家が多く市政も財源に苦しみ解決の糸口さえ見出せていません。

また、年間10万人以上が訪れるキャンプ場が町内に存在するにも関わらず、来訪者と町民の関係性は希薄で、キャンパーは食材などの買い物を他の地域で済ませて来場するため町内にで消費することはなく、唯一利用されていた町の温泉施設も財政難により閉鎖となったため、地域外から来る利用者はお金を落とさずゴミだけを落としていく構図になっています。

豊かな自然と多くの課題。コーヒーとイベントで価値を生み出せるのではないか

私たち兄弟は笠置キャンプ場が持つ他のアウトドア施設にはない集客力と、笠置町を中心とした周辺地域の観光資源を重ね合わせた時にとてつもない価値が生まれるのではないかと感じました。そして、人をつなぐ新鮮で健康的なコーヒーと、人をつなぐイベントの企画を提案すれば、きっといろんな課題を解決するお手伝いが出来るのではと考えました。

いろんな方の”扉”となる様なカフェ

地域の課題に対して外から声を向けても、地域の方に届く事はあまり多くありません。私たちは笠置町内に人をつなぐお店を構え、中からしっかりと声をあげて地域の方々と共に課題に向き合う取り組みを始めたいと考えました。

お店のコンセプトとしては、人をつなぐアイテムとして健康的で新鮮なコーヒーを提供し、アウトドアで来訪する人、サイクリングで来訪する人、観光で来訪する人、地域の人、そのほか笠置町をいろんな目的で訪れる多くのの人にとっての”扉”となる事を目指す事に決めました。

物件さがしの難航と物価高騰による計画変更を乗り越えて

難航した物件さがしとコロナ禍でのキャンプ場閉鎖

空き家が多く商店街はシャッターが閉め切られている過疎地域のため、物件は比較的容易に見つかると甘く考えていましたが、賃貸はおろか売りに出されている物件は殆どなく物件探しは難航を極めました。地元商工会の起業セミナーにも参加しましたが、町を挙げて事業者を募っているものの、いざ開業となると店舗や事業所向けの建物がなく、移住を考える人にとっても住宅さえない現状に地域課題の根深さを感じました。

また、そんな状況が続いた中で追い打ちをかける様にコロナ禍が広がり、世間のキャンプブームとは逆行して笠置キャンプ場は長期間に渡っての閉鎖が続きました。

物件取得とリノベーション

町内で目ぼしい物件を見つけてはインターホンを鳴らしたり、所有者に直接コンタクトを取り売却や賃貸の交渉を行いましたが状況は変わらず、焦りの色も出始めていた時に偶然現在の物件が不動産会社から売りに出されました。価格は周辺の地価や建物の状況から見てもかなり割高だったので購入は悩みましたが、待ったところで周辺の状況が変わるとも思えず立地としては申し分がなかったため、私たちはすぐに購入に向けた手続きを行い、古民家のリノベーションを得意とする工務店と共に店舗の設計プランに着手しました。築50年以上が経過した建物の魅力を活かし、残せるところは極力残しながら新たな感性で価値を加えるデザインコンセプトは、地域の課題解決そのものとマッチする考えとなり、プランとしては町の魅力を再構築し新たな価値を発信する拠点として最適なものとなりました。

物価高騰による思いもよらぬ計画変更

リノベーション工事が開始される直前に勃発した、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、木材や燃料の価格が急騰したほか、円安の影響により海外から輸入するエスプレッソマシンなどの機器が大きく値上がりし、トータルの工事費用が当初の見積もりから1.5倍に膨れ上がってしまいました。その結果、設計プランを大幅に見直す必要が発生し、くつろぎの場所として計画していた２階席や、女性専用のシャワーブース等、今回希望していた設備を見送らざるを得なくなりました。今回見送ったこれらの設備に関しては、諦めることなく近い将来に実現できるよう準備を進めております。

Doorsを起点にさらに笠置の活性化に貢献する企業へ

Doorsとしての出発

開発のコンセプトから店名は「Doors」に決定し、サービスは世界中から厳選したスペシャルティコーヒーを店内で丁寧に焙煎するこだわりのスタイルを掲げました。

また、隣接するキャンプ場の利用者向けに厳選したキャンプ用品の販売とレンタルも行い利便性を高めると共に、お客様同士の積極的なコミュニケーションを促進する場として機能することを目指しています。

こだわり抜いたコーヒー

Doorsで提供するコーヒーには、飲んでいただくシーン（時間）やシチュエーション（場面）に合わせ、５種類のシングルオリジンをオリジナルコーヒーとして店内で焙煎し作りました。

Doorsオリジナルコーヒー

• 【暁】-AKATSUKI- （グアテマラ パンポヒラ農園生産）
• 【清風】-SEIFU- （エチオピア チェルベサ村生産）
• 【稜線】-RYOSEN- （コロンビア ファン・マルティン農園）
• 【黄昏】 -TASOGARE- （ケニア ガタイシファクトリー）
• 【月夜】 -TSUKIYO- （コロンビア コーヒー生産者組合）

また、ブレンドコーヒーはシングルオリジンの中から独自の配合によりすっきりとした味わいで多くの方に好まれる様に作り上げました。

Doorsオリジナルブレンドコーヒー

• 【扉】 -TOBIRA- （グアテマラ・ケニア・エチオピア）

シングルオリジンコーヒーとは、生産国という大きな区別ではなく、農場や生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄としたコーヒーのことです。

似た様な形でワインや日本茶の生産に例えることができますが、同じフランス産ワインでもボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュとあるように、コーヒーも産地で区別することができます。

コーヒーの場合、同じブラジルという生産国だとしても、農場ごとに土壌環境や気温が異なります。生産者はその土地に合った品種をその土地にあった生産方法で作っているため、必然的にそれぞれの個性が出てくることになります。

Doors Coffee Roastery オープン

紆余曲折ありながら2023年4月12日に晴れてDoorsはオープンし、これまでに多くの方にご利用いただきました。なかでも、企画時にメインターゲットとして想定していたアウトドアユーザーと同じくらいに地域住民の方々にご来店いただき、Doorsのコーヒーに興味を持って頂けたことと、何よりDoorsそのものに好意を持って接して頂き、ご家族やご友人にDoorsの事をお話いただけた事に、思い掛けない喜びを得る事が出来ました。

また、大阪府や京都市内からDoorsを目的に初めて笠置町へ来られた方にも多く出会い、店内のカウンターでは地域の方と他県から来たキャンパーさんが意気投合し情報交換をしている様子を眺め、この場所で開業した意義を感じた瞬間に胸が熱くなりました。

コーヒーの追求と、イベントプロデュース会社としての力を活かしたこれからのDoorsの展望

美味しいコーヒーの追求をやめる事なく、この自然豊かな地域から提供する事の意味を問い続け、コーヒーがもたらす安らぎとコミュニケーションを育んで参ります。また、イベントプロデュース会社として地域の魅力を発信するプログラムの開発を計画しており、笠置キャンプ場の収容力を活かした大型イベントの実施や、笠置発のインバウンド向けツーリズムの開発を推進して参ります。

これからのDoorsにぜひご期待ください。