90年代から右肩下がりのミシン業界で生まれたヒット商品。男性も手にしやすい「TOKYO OTOKOミシン」の開発秘話

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#ミシン #DIY #開発ストーリー

2023年6月15日 10時00分株式会社アックスヤマザキ

株式会社アックスヤマザキは1946年創業の家庭用ミシン専門メーカーです。私たちは、ミシンを通じて、社会課題を解決し世の中のお役に立てるモノづくりコトづくりをすることで「もう一度一家に一台」を目指しています。

当社は「自分のものは自分でつくりたい、もっとこだわりたい」という男の夢を叶えるミシン「TOKYO　OTOKOミシン」を2022年11月4日に発売しました。

デニム12枚重ね、レザーやアウトドア素材も縫えるハイパワー『 TOKYO OTOKOミシン発売！』2022年11月4日予定で新発売

PR TIMES

発売決定時のプレスリリース

本ストーリーでは当社代表取締役の山崎一史が「TOKYO　OTOKOミシン」の開発を振り返ってお伝えします。

株式会社アックスヤマザキ代表取締役　山崎一史

1978年大阪府生まれ。家庭用ミシンメーカー株式会社アックスヤマザキの三代⽬。

近畿大学商経学部商学科卒業。機械工具卸会社に勤めた後、2005年に家業へ入社。

2013年、グロービス経営大学院大学で経営学修士（MBA）を取得。

2015年、赤字に陥った状況で代表取締役に就任し、翌年黒字にV字回復。

2020年には大阪商工会議所主催の「大阪活力グランプリ」で特別賞に選ばれる。

海外向け家庭用ミシンの製造・販売をスタート

戦後間もない頃の大阪で創業者・山崎卯一郎の個人事業としてスタートした当社は、海外向け家庭用ミシンの製造・販売に注力することで、創業期の事業基盤を確立しました。高品質な当社の商品は海外で好評を博し、1968年・1970年の二度にわたり、通商産業大臣より輸出貢献企業として表彰されました。

1980年代後半、当社に大きな転機が訪れました。日本でもミシンの需要が高まり続けていたため、国内市場へターゲットをシフト。工場を新設するなど生産力も強化し、「一家に一台、ミシン」の時代を支えました。

「ミシンの小型化」に成功するも、「業績は右肩下がり」の毎日

1993年には社名を「アックスヤマザキ」に変更。ミシンの小型化に成功してヒット商品を開発し、OEMを主に国内の家庭に手軽なミシンを普及させ「一家に一台」に大きく貢献しました。しかし1990年代後半からミシン市場は縮小傾向に。打開策を模索する時代が続き、業界全体が改革の必要に迫られていました。当社では、プロダクトデザインを重視して商品開発を行い、グッドデザイン賞を4回、認定受賞しましたが、市場の縮小に歯止めはかかりませんでした。

私が家業を継ぐために入社した時期は、まさに市場が右肩下がりの状態でした。ミシン一家で育った私は、自社だけでなく、ミシン業界自体をなんとかしたいという気持ちを強く持っていました。そこで、どうしたらミシンを使いたいと思っていただけるか、原点に戻って、お客様が求めているものは何かを徹底的に考えました。

山崎範夫の電子ミシン

もう一度「ミシンで一家に一台」を目指す理由

当社は、ミシンを通じて社会課題を解決し、世の中のお役に立てるモノづくり、コトづくりをしていきたいと考えています。そして、もう一度、ミシンで「一家に一台」を目指しています。

こうして最初に考えたのが、子供用のミシンを創ること。子供の頃からおもちゃ感覚でミシンを楽しんで、好きになってもらいたいという思いから「毛糸ミシンHug」を誕生させました。そして次に取り組んだのが、子育て世代のママが簡単に使えるミシン。この「子育てにちょうどいいミシン」の発表時期がコロナによる外出自粛のはじまる直前で、ちょうど手作りマスクの需要とも重なって、予想を大幅に超える反響をいただきました。

「毛糸ミシンHug」

「子育てにちょうどいいミシン」

「男性向けミシン」を企画した理由

今まで家業のミシンメーカーの三代⽬としてミシンの製造・販売に携わってきましたが、ミシンやその関連品は女性目線のものが多く、どちらかというとミシンは女性が使うものという⾵潮があるように感じました。

⽚や男性からは、レザーや帆布生地などのハードでかっこいい素材を使って⾃分だけのオリジナルなものをつくりたいという声が年々増えており、またコロナ禍で⾃分の時間が増えたことをきっかけに、ミシンに興味を持つ⽅が急増しました。

それならば、今までのミシンとは全く違う、普段ミシンを使わないような男性も手にしやすい、使ってみたいと思ってもらえるミシンを作ることで、そんな声にお応えしたいと思ったのが、このミシン誕生の秘話です。

TOKYO OTOKOミシン

開発を進めるにあたり、コンセプトについては以前から寄せられていた声を元に、普通の家庭用で縫えない様な革やゴツイ帆布などを縫えるミシンにするということですぐに決まりましたが、強度や耐久性の観点から家庭用の範疇で厚地に対応できるミシンが本当に実現できるのか？が当初の課題でした。

課題を解決するために一から設計し直すか従来品を改良するのか？を決める際、一般的な厚地対応を謳う商品や職業用ミシン、厚物用工業用ミシン等の仕様を検証しているうちに、厚地に対応する為の要素が、

１．垂直半回転釜

２．ボックス送り

３．カム式天びん

４．ジグザグ針振り無しの直線縫い

と絞られました。弊社で従来から取り扱いの有るHA型であればこれらの要素に対応できると判断しHA型のミシンをベースに改良する事にしました。

開発を進めるにあたり様々な壁にぶつかりました。1つは、目標としたデニム12枚を開発当初に従来品の針板で縫うと変形してしまったため、熱処理で倍以上の硬度を持たせ、且つ太い糸と針を使用できるように針穴の径を５～１０％大きくすることで対応できるようにしました。

他にも試作品でレザーをモニターに使用してもらった際、縫い始めに鳥の巣という現象が発生。更に、押え金と革のすべりが悪いため、うまく送らず縫えない結果になってしまい開発中止か延期を考えないといけない状態になりましたが、縫い始めの糸を保持する縫い始め糸絡み防止器を考案。更にレザー縫いの際の送り対策として、スムーズ押えを標準セットにしてレザーでもしっかり送れるように対応しました。

コロナ禍で男性の趣味時間が増えたことでレザークラフトやアウトドア、DIYなどに使用する道具を自分で作りたいという層が急増したことなども影響を受け、発売開始後に先着100台限定で特典付き予約を開始したところ、3日間で完売。その後も受注に対して供給が追いつかず、最大4か月待ちになる程の反響を頂いております。