メーカーにはできない、人の手と目を通すからこそ実現できる調色。1人のお客様の声から生まれた、コンクリート風に変身するDIY用塗料の開発ストーリー。

開発ストーリー

2023年7月8日 10時00分株式会社タカラ塗料

タカラ塗料は、昭和24年から続く大阪の塗料販売店です。主に一般消費者向けに車の塗装用、内外装用のDIY用塗料を提供しています。ホビー・アート用塗料の販売や、注文に応じた塗料の調色、オリジナル商品の開発にも力を注ぎ、独自の製品を販売しています。また、インターネット通販を通じて全国のお客様に製品をお届けしています。

当店の人気商品である「コンクリートエフェクトペイント」は、お客様の要望にお応えするために開発されました。タカラ塗料の調色技術を駆使し、一般のお客様でもプロ並みのリアルなコンクリート表現ができる特殊塗装を採用したオリジナル商品です。

このストーリーでは、製品開発に込めたこだわりと商品の魅力をお伝えします。

お客様のニーズから始まったコンクリートエフェクトペイント

私たちは「あなたのものづくりを応援します」というモットーのもと、75年にわたりDIY初心者から職人まで、幅広いお客様の塗料や塗装に関するお悩みを解決してきました。ただ塗料を右から左へ売ることをせず、毎日蓋を開けて混ぜ合わせている私たちは塗料のことを熟知しています。当店ではお客様との距離が近い分「こんな塗料が欲しい」というお声もたくさん頂戴します。無いなら作ってしまえ！ということで、他にはないオリジナル商品を多数開発し発売してきました。

コンクリートエフェクトペイントの開発においても、お客様からの「コンクリート色のペンキを作ってほしい」という注文を受けて始まりました。

この注文は、塗装業のお客様からのもので、コンクリート壁の穴を補修するためのペンキを求めて当店にご来店いただきました。しかしながらコンクリートというものは自然界にある様々な素材が混じりあってできたものなので、単一の色で表現することは不可能でした。それでもお客様の要望に応えるために、お借りしたコンクリート板から色要素を特定し、それを元に3種類の色を調色することで「コンクリートエフェクトペイント」の開発がスタートしたのです。

人の目と手にこだわってきたタカラ塗料。機械では再現できないからこそ、難しい調色も実現する。

このような注文は通常、メーカーなどでは断られることが多いでしょう。なぜなら、細かい色要素まで考慮してコンクリートの色に合わせるためには、機械による一般的な調色では限界があるからです。

しかし、タカラ塗料では塗料の色合わせ職人である調色師が常駐しています。人間の目と手による調色で、その再現性を実現しました。タカラ塗料の調色師は年間約4000色の塗料を調色しており、欠片ほどの小さな色見本チップから大きな機械部品の調色まで幅広い注文に応えてきました。その経験とノウハウを活かし、コンクリート板を持ち込まれた場合でも色要素を正確に再現することが可能だったのです。

調色の様子

ただ、この3色のペンキを刷毛やローラーで塗ってもリアルなコンクリートは表現できません。特殊塗装を施す必要がありました。

当店で以前から販売している「錆エイジングセット」の開発では、本物の錆を二つの要素に分けて色を合わせ、2色の塗料を使用して自然なサビを表現する独自のエイジング塗装法を開発しました。当時、エイジング塗装は限られた職人にしかできない技術でしたが、私たちは一般のお客様でも簡単にエイジング塗装できる手法を考案し、積極的にその手順を公開してきました。

錆エイジングセット

この経験が、コンクリートエフェクトペイントの開発においても役立ちました。塗装のプロではない一般のお客様が手軽に自然なムラ感とリアルなコンクリートを表現できるよう、「ビニール袋を使って模様をつける」という独自の特殊塗装法を生み出すことができたのです。

1人の声から始まった商品が、大きな反響へ。対話を通じて、商品の拡大と進化を続ける。

当初はホビー用として販売していたコンクリートエフェクトペイントですが、SNSを通じて多くのお客様から「大きな壁に塗りたい」という要望が寄せられました。

私たちはお客様のニーズに合わせた最適な塗料を提供し、ものづくりのお手伝いをすることを目指しています。急遽、大容量の商品を販売し、大面積への塗り方を新しく提案しました。現在では、コンクリートの柄を表現するだけでなく、曲面やマンションの内装、木造や店舗内装など、本物のコンクリートを施工するのが難しい場面でも活用されています。さらに、コーティング剤をトップコートとして使用することで床面にも利用でき、床のデザインにおいても幅広い可能性を提供しています。

現在、コンクリートエフェクトペイントの需要は増加の一途をたどっています。

特に、薄付コンクリートである海外製の左官材料の需要が高まるにつれ、それに似たモルタル調の濃い色みを求める声が多く寄せられました。そこで私たちは、新色としてより暗く濃い色みのコンクリートエフェクトペイント『シャドウ』の開発をはじめたのです。

塗るだけでコンクリート風になるDIY用塗料「コンクリートエフェクトペイント」にモダンシックな新色登場

PR TIMES

濃い色みの『シャドウ』はシックな雰囲気を演出できる一方、塗装方法の確立には試行錯誤が必要でした。従来の手順ではムラ感やコントラスト差を表現できず、奥行き感が不十分だったのです。

そこで、社内の壁や床を利用し、大きな面積を何度も塗り重ねながら塗装手順を改良。塗装経験の少ないスタッフにも参加してもらい、誰でも簡単にコンクリートを表現できる手順にこだわりました。希釈度の調整や塗装工程のアレンジを繰り返し、最終的に粘度の高い塗料を使い、一番暗い色を最初と最後に塗り重ねる手法をとることでリアルな奥行き感を実現しました。