日本で暮らす外国人が病院で直面する「言葉の壁」。医療現場で必要とされる「やさしい日本語」とは―?

#やさしい日本語  #医療  #大学

2020年6月16日 16時30分 学校法人 順天堂


日本で暮らす外国人はおよそ283万人(2019年6月末現在)。そのうち、日本語を使えると回答する外国人は8割を超えると言われています。「外国人とのコミュニケーションは英語で」――多くの人がそう思いがちかもしれませんが、実際にこのような場面で効果を発揮するのが「やさしい日本語」です。

現在、国内の行政窓口や観光業界では活用が進んでいますが、医療関係者の認知はまだ高くなく、「言葉の壁」は依然として外国人が病院を受診する際の大きな障壁となっています。そして、この医療現場における「言葉の壁」を医療者の側から越えるべく「やさしい日本語」の普及を目指しているのが、順天堂大学医学部医学教育研究室の武田裕子教授です。



「やさしい日本語」とは?

「やさしい日本語」は、難しい言葉を言い換えるなど、日本語に不慣れな外国人にもわかりやすい日本語のことを言います。阪神淡路大震災をきっかけに広く普及しました。


「相手の表情を見ながら、短い文章で、ゆっくり話すこと」がポイントとなる「やさしい日本語」。

そのため、日本語を母語としない外国人だけでなく、高齢者や障がいのある方、子どもたちなど、様々な人にとってわかりやすい言葉と言えるでしょう。医療機関を受診するときには、不安や緊張が伴うもの。日本語に不慣れな外国人であれば、なおさら「言葉の壁」も大きく感じるはずです。そのような医療現場だからこそ、今、「やさしい日本語」の普及が求められています。


「やさしい日本語」を使える医療者が増えるように

武田教授は以前より、外国につながりを持つ子どもたちへの学習支援活動をおこなう埼玉県三芳町のNPO法人「街のひろば」と協力し、医療相談を実施してきました。そこでの活動を通して、日本語を母語としない保護者から寄せられたのは、病院を受診するときに「病状などを正しく伝えるのが難しい」「医師や看護師の使う用語がわからない」といった声。

言葉の面で大きな困難を抱えている現状があることを知った武田教授は、医療者がわかりやすい言葉で話す必要性を痛感しました。それから、医療者向けの「やさしい日本語」ワークショップを企画するなど、医療現場での活用を目指して普及活動を続けてきた武田教授。2019年1月には『医療×「やさしい日本語」研究会』(https://easy-japanese.info/)を立ち上げ、医療現場で活用することの必要性を訴えてきました。もちろん、「やさしい日本語」は万能ではなく、深刻な病気の説明や病名の告知、手術の説明など専門用語を使って医学的な内容を説明する場面では、医療通訳者が欠かせません。それでも、医療通訳者が通訳をしたり、また、翻訳アプリを利用するときには、主語が明確で結論も把握しやすい「やさしい日本語」は、正確に翻訳されやすいというメリットがあるのです。


<関連リンク>

◆日本で暮らす外国人のための医療関係者向け「やさしい日本語」ワークショップを開催

https://www.juntendo.ac.jp/co-core/education/yasashii-nihongo.html


◆外国につながりを持つ家族への健康相談会を実施しました

https://www.juntendo.ac.jp/news/20180703-01.html



新型コロナ禍の検査現場で医療者が広く活用できるように― 動画教材を無料公開

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴い、2020年4月17日に東京都外国人新型コロナ生活相談センターが開設されました。『医療×「やさしい日本語」研究会』の設立メンバーであるNPO法人 CINGAの新居みどりさんが同センターの立ち上げに関わり、外国人の相談事業を中心になって進めています。武田教授は新居さんから、新型コロナウイルスの検査が必要と保健所に指示された外国人が、いざ検査を受けようとしたら通訳者の同伴が必要といわれてとても困ったと聞きました。その場は、電話を介した通訳を行ったそうです。


『検査で医療者が使う表現は典型的なものばかり。「やさしい日本語」に置き換えることで理解できるケースも多いはず』

――そう考えた武田教授は、新居さんをはじめ『医療×「やさしい日本語」研究会』のメンバーである日本語の専門家やヘルス・コミュニケーションの専門家と協力して、動画教材の作成に着手。順天堂医院の医師や看護師の協力を得て、検査場面で実際に使われる表現をまとめました。完成した動画『医療で用いる「やさしい日本語」-新型コロナウイルス検査編-』(https://www.youtube.com/watch?v=nwne978lJBc&feature=emb_logo)は、医療者に広く活用してもらえるように無料で公開しています。


<関連リンク>

◆医療で用いる「やさしい日本語」。「新型コロナウイルス検査編」動画を公開。

https://www.juntendo.ac.jp/co-core/consultation/yasashii-nihongo2020.html


「やさしい日本語」は誰にとっても“やさしい”もの。医療現場でのさらなる普及を目指して。

「やさしい日本語」の表現には、決まった言葉、正解はありません。むしろ「知識」よりも、「相手を理解したいと思ったり、相手の反応を見ながら言い方を工夫したりする“思いやり”が問われる」と武田教授は話します。

また、「やさしい日本語」の恩恵を受けるのは、外国人の方だけではありません。高齢者や障がいのある方、子どもをはじめ、手術後や体調不良で集中力が低下している入院患者さんなどにも助けになります。


「やさしい日本語」は、誰にとっても“やさしい”もの。

武田教授は今後も「医療×『やさしい日本語』研究会」活動や学生教育を通して、医療現場での「やさしい日本語」の普及を進めていきます。


【順天堂大学】

順天堂大学ホームページ:https://www.juntendo.ac.jp/

特設サイト「CO-CORE」:https://www.juntendo.ac.jp/co-core/