「商品をいちばん気持ちのいい状態で届けたい！」寝具業界に風穴をあける、群馬県・高崎市の丸三綿業の職人が挑んだ画期的技術！

開発の裏側

2021年7月8日 14時43分丸三綿業株式会社

丸三綿業は、1938年創業の群馬県・高崎市の寝具工場です。

2018年に、株式会社ディーブレスが事業継承し、寝具の一貫生産から自社商品の企画・通販まで行う会社になりました。

「Treatment Washed®」は、手間や効率、生産性さらに、寝具業界の常識にとらわれずに「商品をいちばん気持ちのいい状態で届ける」を実現するために開発された技術です。株式会社ディーブレスで企画開発を行ってきた責任者の増田吉史と、丸三綿業勤続2０年のベテラン技術者の柿田博志が中心となってプロジェクトを進めました。

side MASUDA

商品をいちばん気持ちのいい状態で届ける、

当たり前のことができていない寝具業界に疑問を感じていました。

アパレル業界には「洗い晒しのシャツ」や「ワンウォッシュ加工したデニム」等の洗ってより素材を心地よくした商品があるのに、寝具にはない。寝具だって、シャツやデニムと同じで、洗って使い込んでいくことで新品よりもふわっとやわらかく風合いも気持ちいいはずなのに。「なぜ？」ずっとその想いがありました。

ある時、自社の人気ブランド「03BASIC」の洗える掛けふとんシリーズの商品の開発会議で、柿田が洗濯テストをしたコットンの掛けふとんを抱えてきました。

柿田「特に問題なく洗えるので、OKだと思います。」

増田「いや…問題はそこじゃない！！」

柿田「え！？」

増田「この洗濯テストしたふとん…いつもより気持ちいい！！」

柿田に聞くと、自宅の洗濯機が壊れて洗濯テストができず、工場の洗濯機と乾燥機を使ったということが分かりました。やっぱり一度プロが洗った方が、気持ちよく使える。

商品をいちばん気持ちいい状態で売るのが、本来の姿ではないのか？

side KAKITA

特許技術と職人の目利きの両方でやっと実現。

ただの洗い加工ではありません。職人魂が光る渾身の技術です。

最初、増田から「ワンウォッシュ加工みたいな技術を」と言われたときは「あぁ～気持ちは分かるけど…」としか返事できませんでした。特にコットンなどの天然繊維は新品より洗ってからが本領発揮！のようなところがありますから。

でも、効率が悪すぎる。アパレル商品と違って、寝具はサイズも大きいし重い。だからこのような加工は、寝具業界で「無いもの」とされてきたんです。

無理かも…と思いつつ、熟練の職人に相談すると「よし、まかせろ！こんにゃくで中わたを加工していた時代（※）からの職人の意地をみせてやる！」

※昔はコットンなどを柔らかくするために、こんにゃくが使われていた。←本当です！

まず丸三綿業の特許技術「Treatment®」の溶剤を使って、工場の洗濯機で洗ってみると仕上がりはまずまず。だけど丸三綿業の職人が洗ったとはいえないレベル。そこで、現在では設置している工場が少ない「オーバーマイヤー染色機」を使いました。

水流によって「Treatment®」を浸透させるから、摩擦が起こりにくく、しっかり洗えてなめらかに洗い上がります。ただ溶剤の浸透時間が前後5分ずれだけで、仕上がりがキシキシと硬くなってしまうため、職人の目利きの技術を高める必要があり、「これだ！」という仕上がりになるまで時間がかかりました。

乾燥は工場仕様の乾燥機で十分と踏んでいたのですが…甘かった。グルグルと製品を回す乾燥機では、素材に摩擦がかかるため、若干ですが中わたが動いてしまったり表面が毛羽立ったりと、納得いく仕上がりになりませんでした。

増田「あれ、ピザ窯みたいな乾燥機。あれで1枚づつ乾燥してみて！」

柿田「え！1枚づつですか？」

増田「顔や首に当たる、ふとんの端っここそ大事だ。端っこの美味しさこそ、ピザにとって大事な要素だ。1枚づつ丁寧に仕上げてくれ！」

増田のいうピザ窯からインスピレーションをうけて「ピザ焼き乾燥システム」を開発することに。約120～130度の専用巨大乾燥機で、非常にゆっくりと両面をふっくら乾燥させます。季節や素材によって熱風の温度や乾燥時間が微妙に変化してしまうので、ピザ職人さながらの職人技が必要とされます。最終的に、加工前より約100g軽くなるレベルの強乾燥が実現しました（シングルロングサイズの薄掛ふとんの場合)。