豆事業部長　芳賀崇浩さん

2021年フジッコ入社。前職は、コーヒー製造会社勤務。地方での業務用営業に従事した後、業務用商品開発に配属。食材全般の開発、マーケティング部門を経て、台湾子会社でも活躍。主にブランドの統括、戦略・政策の立案、全社プロモーションの統括、海外事業・EC事業、調査・分析業務などを業務領域に取組みました。

■ダウントレンド傾向にある「煮豆市場」

はじめに、当社主力の「煮豆市場」の概観ですが、長期にわたってダウントレンドの傾向にあります。フジッコは、これまで豆のリーディングカンパニーとして豆市場そのものを牽引してきましたが、「煮豆市場」の縮小にシンクロして、豆事業全体がダウントレンドの渦中にあります。

「煮豆市場」縮小の本質的な原因は「現代人の多様化するライフスタイル・食スタイルの変化」にあると考えられます。それに対してフジッコでは、打ち手が「既存ユーザー、既存商品、既存アプローチ」に偏りがちとなり、長期的な展望をもって、「煮豆市場」を育成しきれてこなかったように感じていました。

「おまめさん🄬 丹波黒黒豆」

煮豆は、既存ユーザーが高齢者に偏ってきており、この世代に響く価値観である「箸休め」・「副副菜」としての位置付けだけでは、今後の更なる成長が難しいのではないかと感じています。

一方で、別のカテゴリーである「蒸し豆市場」に着目すると、その市場は、一時的に減少した時期はありましたが、大局的には伸張を続けております。

蒸し豆は、ほのかな甘みともっちりとした食感で、アレンジがしやすく、全ての世代のお客様の食生活に取り入れやすいといった特徴もあります。

しかしながら、「蒸し豆市場」は、商品の明確な育成方針が定まっておらず、長い間放置されているような状態にありました。

ほのかな甘みともっちりとした食感が人気の「蒸し大豆」

■『体がよろこぶEveryday Beans！』に込めた想い

このような情勢を打開したいという想いを込めて、この秋から『体がよろこぶEveryday Beans！』という活動を展開することにしました。『体がよろこぶEveryday Beans！』という言葉には、既存ユーザーだけではなく、もっと幅広く、全ての世代のお客様に対して、豆の価値を届けたいという私なりの覚悟を込めています。

『体がよろこぶEveryday Beans！』ロゴ

豆は、食物繊維、たんぱく質などの様々な栄養素を含む上、調理の手間なく様々なシーンに手軽に取り入れることができる“スーパー食材”です。

フジッコは豆のリーディングカンパニーとして、「おまめさん®」シリーズに代表される煮豆を40年以上に渡り、皆さまに提供してまいりました。ですから、夕食時などにおけるおかずの一品として限定的にお楽しみいただくだけではなく、今までになかった意外なシーンや組み合わせで、豆の楽しみ方を提案する技術やアイデアを持っているはずなんです。

これはフジッコというか、私自身の使命といってもいいと思うのですが、『体がよろこぶEveryday Beans！』という活動を通じ、もっともっと豆を活躍させて、お客様の更なる健康とおいしい体験を応援し、日本の伝統的な食文化に寄り添い、その継承にも取り組みたいと考えています。

新商品試食中の一コマ

■いかに「お客様のライフスタイル」に寄り添えるかどうか

ところで、先日とある社員から、この『体がよろこぶEveryday Beans！』というメッセージが「お客様への押し付けにならないか」と言われたんです。彼女は豆がちょっと苦手で、「体にいいよ、おいしいよ、だから毎日豆を食べよう」なんて言われたら、ちょっとしんどいと感じるらしい。

だから言いました。「われわれは、決してこのメッセージをお客様に無理強いするわけではないよ」って(笑)。

あくまでもお客様のライフスタイルに寄り添った楽しみ方を提案していきたいと考えているだけなんです。人は「慣性」によって行動する生き物ですから、なかなかこれまで培った個々のライフスタイルを変えることはできない。

ですから、この活動を通じて、お客様に「豆のある生活」というものをイメージしてもらえたらいいなと考えています。

とはいえ、いきなりお客様が「Everyday Beans！」というノリにはならないことは、もちろん承知しています。

ですが、私たちが『体がよろこぶEveryday Beans！』という活動を通じて、お客様にとってのベネフィットをお伝えし、お客様にとっての「おいしい体験」を提案し続けることで、「豆のある生活もありかもしれないな…」くらいにはできるんじゃないかと。

煮豆は、トーストや、コーヒーとのペアリングでさらにおいしく。

■「お口に合えば」という想いくらいが、ちょうどいい。

それから、ヨーグルトやパンに乗せるといった新たな食べ方の提案も行っているのですが、「せっかく完成されている味を、ペアリングと称していろいろなものに混ぜたりするのは邪道じゃないですか？」と、これまた、さきほど登場した社員に質問されたんです。

これはあくまで私の考え方ですが、コーヒーの会社でマーケティングをしていた時から、そもそも企業側が決めたおいしさの尺度をお客様に押し付けること自体が間違いではないかという考えをもっていました。

私たちの提案は「お口に合えば」くらいが、ちょうどいい。

コーヒーを例に取ると、企業側は「コーヒーは、このように飲んだらおいしい」という基準をもっています。だけど、コーヒーって、濃くしたり薄くしたり、ミルクや豆乳を入れたり、甘くしたりと、本来、おいしいと思う基準はお客様それぞれで、自由にアレンジを楽しむことができる趣向性が強い商品です。

商品そのものの味で勝負したいというのは、企業側のエゴであって、おいしいかどうか、その商品をどうアレンジして楽しむかを決めるのはお客様自身であるということを忘れてはならない。私はそう思います。

だから、様々なペアリングを提案することは、お客様に対する、おいしい体験と機会の創出を応援したいという想いから生まれた行動であって、決して邪道ではないんです。

話が少しそれましたが、まずはお客様に「フジッコがそこまでいうなら試してみようか」と、『体がよろこぶEveryday Beans！』という活動への第一歩を踏み出してもらえるよう、徹底的にお客様の生活や価値観を理解し、おいしい体験を提供していきたいと思います。

豆事業部として、お客様に、新たな体験価値を提供することも、重要な使命ですから。

『体がよろこぶEveryday Beans！』は、フジッコだからこそできるご提案

■お客様に「おいしい体験」を提供し続ける

『体がよろこぶEveryday Beans！』で、一番大事にしていきたいのは「おいしい体験」です。私自身がヘビーユーザーになったきっかけこそ、まさに「豆ってこんなにおいしかったのか」という「おいしい体験」そのものなんですよ。

これまで食品業界で長年勤め、おいしいものを日々探し続けていた私でさえ、「豆を食べる」という体験をしたことがなかった…。私のような潜在的ターゲットを顕在化させ、ヘビーユーザーに変えるための「おいしい体験」を、これからどしどし打ち出していきたいと思います。

フジッコに入社して、約１年。

今こそ、長期的な展望をもって、市場を育成する視点が必要だと感じています。これは今回お話しした、豆事業、フジッコに限ったことではありません。人口減少社会の到来に伴い、大量生産・大量消費時代を、根性で乗り越えてきた日本企業にありがちな短期的な売上を追求するというビジネスモデルに別れを告げる時が来たのではないでしょうか。

われわれの豆事業は、根本的な変化が求められるフェーズにあります。

フジッコが再び、豆のリーディングカンパニーと胸を張ることができるよう、『体がよろこぶEveryday Beans！』をお客様の生活に、確実に浸透させていきたいと思います。

（編集：フジッコ株式会社　コア事業本部（PR担当）　豊田　麻衣子）