株式会社ファイブミーターズは身長160cm前後の男性向けファッションブランド「calm160（ヨミ：カルムイチロクゼロ）」を運営する会社です。「calm160」は2021年6月に代表の稲田美紀が個人で立ち上げました。そこからちょうど2年後の2023年6月24日（土）、25日（日）の2日間、東京で初めての新作予約会兼販売会を開催いたします。これを機会に、ブランド立ち上げから現在までの創業ストーリーを稲田が振り返ります。

ブランド立ち上げのきっかけは、「小柄な夫に似合う洋服がない」

​​30代日本人男性の平均身長は171.5cm（※）。通常、アパレルブランドではターゲットとなる年代の平均身長に合わせたサイズ展開でお洋服を作っています。しかし、この平均身長から約10cmほど低い小柄な男性はというと、「XSサイズがあるブランドは限られていて欲しいものが選べない」「市販のものだと着丈や袖丈が合わない」「裾直しにお金と時間がかかる」など洋服の悩みを抱える人が多い現状があります。

※厚生労働省「国民健康・栄養調査 」（2019年）より

私の夫も小柄で、一緒にお買い物に行ってもぴったりと体にあうサイズの服に巡り会うことはほとんどありません。夫の服に関する面倒をなくし、いつでも自信が持てる服を着てもらいたい。そして夫の他にも同じような悩みを抱えている人はいるんじゃないか。そんな個人的な想いから「160cm前後の男性」に特化したブランドを立ち上げることになりました。こうした想いを抱え、なんとなく頭の中で構想を練りはじめたのは2021年1月頃のことでした。

商品が作れない！取引先に相手にされない！

160cm男性向けの服を作ろう、と一念発起したものの、これまでものづくりの経験は皆無だった私です。アパレル業界未経験からの新規参入となりました。縫製工場さんとのコネクションもなければ、服作りのいろはも知りません。最初はTシャツが作りたいということだけ決まっていたため、「Tシャツ　OEM」「Tシャツ　縫製」などのキーワードで検索し、Tシャツの制作をしていただけそうな会社に片っ端から問い合わせをしました。しかし、個人で少量生産、しかも服作りも売り方も知らない初心者からの発注を受けてくれる企業はありませんでした。運良く興味を持っていただきアポイントが取れても、商談の場で「コンセプトはおもしろいけど、うちは法人さんとしか取引できないんですよ」とお断りされることもあり、こうしたなんだか前に進まない感じが4ヶ月ほど続きました。

一方で、「夫と同じような悩みを抱えている人は他にもいるはず！」という気持ちだけはあったので、企画を立案した当初からSNSでの発信をしていました。先述のようなうまくいかないこともすべてさらけだしていました。そのなかで、あまりにも私がうまくプロジェクトを進められていないことで声をかけてくれたのが、現在「calm160」のパタンナーであり生産管理もしてくれているメンバーでした。最初の面会時は私がやりたいと思っている企画をプレゼンし、それに対して彼がフィードバック。そしてそもそもの服作りの工程や、誰に何を依頼すればよいのか、など初歩的なことも教えてもらいました。時間にして確か4時間くらい。今思うと、よく付き合ってくれたなと思いますが、その面会時の私の熱量や企画に共感してくれ、そのまま彼の協力のもと、160cmメンズの体型にあったTシャツとスラックスを制作し始めることができました。

calmTshirtのファーストサンプルができフィッティングをする様子

素人だからできた「裾直し不要のスラックス」

まずはTシャツを作りクラウドファンディングで販売したところ、目標売上金額の120%で達成。当初想定していたとおり、夫と同じように悩みを抱えている人がいることがわかったのです。そして購入してくれたユーザーさんに個別インタビューに協力してもらい、次にスラックスパンツを作ることにしました。なぜかというと、インタビューに協力してくれた方ほぼ全員が「パンツの裾上げが面倒」と回答。そこでTシャツの次は「裾直しをしなくていい」をコンセプトにしたスラックスパンツを作ることに決めました。

身長160cmの男性の体型に合わせた股下63cmという長さの、裾を切らなくてもよいスラックスパンツです。しかし、同じ身長でも股下のサイズは違いますし、合わせる靴によっては長すぎる場合も。「履いてみたらやっぱり長かった…」という思いを絶対にさせたくないという私自身の思いもあり、切らなくても自分で調整できるよう、裾の一部を付けたり外したりすることはできないかと考えました。

イメージしているものをイラストにして、端切れを買ってきて自分で作って仲間たちに相談しました。最初は頭の上に"ハテナ"が飛んでいたメンバーも、徐々に理解してくれ、いろいろなアイデアを出してくれました。また、1着作るのと量産するのではできるデザインが異なる場合もあるため、縫製工場さんにもアドバイスをもらいました。そこで辿り着いたのが現在のcalmスラックスで採用している、プラスチックのスナップボタンで裾が着脱できるものです。

アパレルに詳しい人であれば絶対やらないようなデザインです。きっと縫製工場さんもやったことがない縫製だったと思いますが、無事商品化でき、クラウドファンディングで販売したところ、なんと目標売上金額の200％を達成。洋服のデザイン知識がないからこそできた「裾直し不要のスラックス」は現在もcalm160の看板アイテムとなっています。

裾直し不要のスラックスの裾デザインでボツになったアイデア

calm Tapered Slacksの取り外せる裾の工夫

calm Tapered Slacks（calmスラックス）着用画像

商品が売れない日々。Web広告は身長でターゲティングできず・・

Tシャツ、スラックスをクラウドファンディングで販売し、累計売上金額としては70万円を超えるほどになったのですが、そこからが険しい道のりでした。自分でホームページを作って販売を開始したのですが、売れません。うまくホームページへ集客できていなかったのです。Web広告も試したのですが、そもそも身長でターゲティングすることができず、月に10万円以上をドブに捨てているような状態でした。また、アイテムはTシャツとスラックスの2つ。すぐに消耗するものではないため、これまで購入してくれたユーザーさんも追加で購入する、とはなりません。そこで何か打開策を考えねばということで「アイテムを増やす」「情報発信を始める」の2つをやってみることにしました。

全身calm160でコーディネートできるようにアイテムを増やす

どんなアイテムを増やせば良いのか、今回もユーザーさんや夫を含む身長160cm前後の男性のみなさんにヒアリングを行いました。そこでいくつかのご意見をいただいたのですが、多くの方から上がったのが「××のアイテムは自分の身長だと似合わないから買わない」という声でした。例えば「ロングコートは”着られてる感”が出て似合わないから買わない」「ワイドパンツは足が短く見えて似合わないから買わない」などです。「”似合わない”という思い込みを変えたい」そんな想いから、新作アイテムは買わないと決めているアイテムをあえて作ることにしました。また、全身calm160のアイテムで揃えられるよう、トップスもボトムスも、インナーもアウターも。一式制作することにしました。

新作で使う生地選びの様子

なかでもcalm Tapered Slacksとセットで着られるcalm No collar Jacketのサイズ調整には、正直苦労しました。ジャケットは袖丈、着丈の長さを短くすればいいというものではありません。大人の男性の体型に合わせて、肩幅やアームホール（袖ぐり)はある程度余裕を持たせなければ着心地が悪くなってしまいます。しかし丈とのバランスでシワが入りすぎてしまったり、形が悪くなってしまうなどなかなかうまくいきませんでした。通常2回程度の試作をして完成できるところ、4回もサンプルを制作し直し、なんとか理想とするサイズと形に辿り着きました。

calm No collar Jacketのトワルチェックの様子

インスタグラムによる発信を開始

新作アイテムの企画と同時に始めたのがインスタグラムでの発信です。これまでアカウントはあったものの、更新頻度は少なく、またcalm160のアイテムの紹介だけにとどまっていました。そこでcalm160の洋服の紹介だけでなく、160cm男性がもっとかっこよくなるためのファッションや身だしなみに関する情報を定期的に投稿していくようにしました。「買ってもらう」ことを目的にするのではなく、「ブランドを信頼してもらう」ことに注力したのです。これにより、100名ほどしかいなかったフォロワーも現在は500名を超え、ホームページへの流入や公式LIINEへの登録につながっています。

calm160のこれから

小柄男性の「買わないと決めているアイテムをあえて作る」ことを裏テーマに掲げ制作した今回の新作ですが、以下のラインアップで6月24日（土）、25日（日）の2日間、東京・祐天寺にて受注予約会を実施する予定です。

calm Tapered Slacksとセットアップで着られる新作のcalm No collar Jacket

＜新作アイテム一覧＞

calm No collar Jacket（ノーカラージャケット）

既存製品のcalm Tapered Slacksとセットで着ていただける、カジュアルだけどきれいめな、オフィスカジュアルに使えるジャケット。

calm Soutien collar Coat（ステンカラーコート）

160cm男性が避けがちなロングコートをあえて企画制作。小柄でもかっこよく、スタイリッシュに見えるデザインに仕上げました。

calm Wide Pants（ワイドパンツ）

チノ素材でセンタープレスの入ったきれいめワイドパンツ。オフィスカジュアルにも、普段使いにも着用いただけます。裾直ししなくても良いように、裾丈は身長160cm前後の男性のサイズに合わせています。

calm Sweat Top（スウェットトップ）

高級ブランドでも使われるような「吊り編み機」で作られた生地を使用。1時間に1メートルほどしか生産できない非効率さの分、空気を含みリラックスした状態で編まれた生地は特別な肌触りを実感いただけます。

calm Stand collar shirt（スタンドカラーシャツ）

オンオフ問わず着られる汎用性の高いスタンドカラーシャツです。160cm男性のサイズに合わせた袖丈、着丈はもちろんのこと、裾にはスタイルアップするデザインを施しています。

calm long Tshirt（ロングTシャツ）

既存アイテムのcalm Tshirtと同じオーガニックコットン生地を使った長袖のロングTシャツ。肌触りがよく、丈感も絶妙で、ジャケットを羽織っても背中からTシャツが見えすぎません。

calm Belt（カルムベルト）

いつもベルトをカットしなければならない細身な160cm男性のために開発されたベルト。ベルト幅も2.5cmと一般的なメンズベルトではないようなサイズにしており、160cm男性の身長の比率に合わせたベルト幅に設計しています。

また、同様のイベントを5月27〜28日の2日間で福岡にて実施したのですが、

「こんな自分にぴったりのブランドがあったんだ」

「ジャケットの袖丈がぴったりで嬉しすぎる！」

「またこういうイベントをやってほしい」

といったお声をいただきました。今回の受注予約会で初めてcalm160を知ったという方がほとんどで、少しでも多くの方にcalm160のブランドとコンセプトを知っていただけたのは大きな成果でした。

福岡のイベントの様子

calm160は、160cm男性が「俺、かっこいい！」と思う瞬間をたくさんつくるブランドでありたいと思っています。ジャストサイズのお洋服を着たときのユーザーさんの喜ぶ表情をもっともっと増やしていきます。そしていつか近い将来、160cm男性のお宅のクローゼットには必ず1着はcalm160のアイテムがある、そんなふうになれるようこれからも160cm男性に寄り添ったブランドであり続けるために、calm160ユーザーのお声に耳を傾けサービス開発に努めてまいります。

【calm160について】

HP：https://calm160.com/

instagram：https://www.instagram.com/calm_mensfashion.official/

Facebook：https://www.facebook.com/calm160