三栗の　那賀に向へる　曝井の　絶えず通はむ　そこに妻もが

※現代語訳：　三栗の実る那珂(川)へと注ぐ曝井の湧水のごとく、 絶えず通い続けよう、そこに愛する人がいるなら。

これは、日本最古の歌集である万葉集に詠まれた歌だ。奈良時代から既に、那賀（現在の茨城）は栗の産地だったらしく、栗がいかに日本人の生活に根ざしていたかがわかる。「三栗（みつぐり）の」という枕詞にあるように、栗とは一つの毬（いが）の中に三つの実がなるものが一般的だ。しかし時は流れ令和の今、そんな千年の常識を覆す栗が生まれている。

茨城が産んだ最高峰な栗"飯沼栗"を使用した希少性

その栗の名は、飯沼栗という。一つの毬の中に、一口では食べられないほどの大きな大きな栗をたった一つだけ実らせる。これを「一毬一果（いっきゅういっか）」という。日本有数の栗処・茨城でも最高峰の逸品だ。万羊羹はこの飯沼栗をごろごろと万（よろず）に使っている。

（飯沼栗）

万羊羹の特徴は、飯沼栗の大きさと甘さ。

万羊羹を作るために、飯沼栗の収穫直後2週間以上の熟成期間を経て栗本来の甘さを最大限に引き出している。栗の力強さに負けない北海道十勝産小豆、栗の甘さ、あんの食感をバランス良く馴染ませるために、製造後5日熟成。そうして出来上がった万羊羹は食感、甘み、香りのが整い至高の味となる。

風月堂の技術によって実現した贈答用の栗蒸し羊羹

 一般的な栗蒸し羊羹の賞味期限は約10日前後と短く、お客様からは贈答用としては利用しづらいとの声もあった。しかし1本1万円の栗蒸し羊羹「万羊羹」は大切な方になるべく賞味期限を気にせず召し上がって欲しい。そこで風月堂では試行錯誤を繰り返し、特殊な真空パックを活用することで、賞味期限を1ヶ月近くにまで延ばすことに成功した。

開発のプロセスを、代表の藤田はこう振り返る。

「飯沼栗の味を知った時、この美味しい栗を使ったお菓子を作りたいと率直に思いました。まず、飯沼栗の価値をもっと多くの人に知ってもらいたい。その為にはこの栗の味をしっかり感じてもらえる商品であることと、お客様がこの商品の価値を知った上で購入して頂ける状況をどう作り出すのか？　を一番意識しました」。

「どこにニーズがあるのだろうか？　と考え抜いた末、茨城の県産品を使用した贈答品に高価格帯のものが無く、飯沼栗のブランディングにも繋がり結果的に茨城の県産品の価値向上にも繋がると考えたのです。また、贈答品にふさわしい高品質、ストーリーが伝わる上質なデザインになるよう注力しました」。

賞味期限を伸ばす開発に成功したポイントはなんだったのか。

「味を損なわずに日持ちをさせるには今までとは違う何かをしないといけないと考え辿り着いたのが真空技術でした。真空殺菌することで賞味期限は３０日まで伸ばすことに成功。参考になったのは、私が学生の頃に習った真空調理の情報でした。外食産業では一般的だったので和菓子にも取り入れてみようと着目できたのが良かったです」。

世界的なパッケージデザイン賞であるPentawardsにてシルバー賞を受賞

1本1万円という業界内でも類を見ない商品として、2021年12月15日に販売を開始した「万羊羹 常陸」。昨年、世界的なパッケージデザイン賞であるPentawardsにてシルバー賞を受賞した。

Pentawardsとは

2007年から毎年実施されているパッケージデザインの世界的な権威である国際コンペティション。パッケージという媒体の重要性を考え、デザイン業界、マスコミに広めていくことを目的としている。

https://pentawards.com/live/en/page/hom 

藤田は受賞をこう振り返る。

「本当にただただ驚きです。茨城県でも銀賞単独受賞は初。当社みたいな小さな会社が日本の大企業と同じステージで受賞することが出来るなんて考えもしませんでした。万羊羹に箔をつけてあげたいという想いのみで応募し、Pentawardsの凄さ、難しさを全く知りませんでした。Pentawardsの凄さを理解したのは受賞決定後でした。実感したのは、ロンドンでのセレモニーに出席したタイミングでした」。

受賞は県内でも話題になった。顧客の反応はどうだったか。「変わったトロフィーを見てお客様が尋ねてくださるのですが、世界的なアワードということがお客様に伝わると皆さん一様にびっくりされていました。田舎の小さな和菓子屋がまさか世界的な賞を受賞するとは考えられないですからね。大企業と同じ舞台での受賞は地方の小さな和菓子屋としては本当に自信になります。」と藤田笑顔で述べた。

万羊羹で海外市場への展開を図る

販売当初から海外進出を考えていた「万羊羹 常陸」はPentawardsの受賞と時を同じくして、和菓子業界としては珍しい台湾のクラウドファンディング（zeczec）への挑戦も果たしている。結果は、目標金額を大きく超え、総額597,600香港ドルの調達に成功した。日本の和菓子商材としてはzeczec初（※2023年1月5日 zeczec調べ）の挑戦となり、台湾市場での反響は良好でいくつかの販売チャネルが名乗りを上げている。

https://www.zeczec.com/projects/manyokan

希少な飯沼栗を使用しており、年間の生産本数が限られる万羊羹。生産国である日本本国でもなかなかお目にかかれないこの商品を、友好関係の強い親日国に対し、ジャパニーズブランドの名目を掲げて販売していきたい。

販売サイト

https://www.fugetsudo.net/shop/products/list.php?category_id=16

■株式会社常陸風月堂

日本独自の歴史、伝統、文化から生まれた和菓子。

和菓子は古来より人と人を結び、移りゆく四季折々の想いを慈しみ育まれてきました。

そして、和菓子は五感の芸術とも言われ今も日本人の生活に根ざしています。

和菓子の魅力、それを囲む人々やその想い、歴史や文化に真摯に向き合い、日本の伝統、日本文化の素晴らしさを、お菓子を通して世界の人達の笑顔を未来へ繋いで笑顔の環を広げていくこと。

「笑顔と伝統を未来へ」

を信念とし、日々精進してまいります。