初めまして、株式会社tayoの熊谷と申します。

tayo.jpというアカデミア向けの人材交流プラットフォームを作っております。

私は海洋微生物の研究で博士号を持っており、現在もJAMSTECという機関で深海微生物学を研究するかたわら会社をやっています。

我ながら変なキャリアだと思うので、この機会になんでそんなことになったのか、自分語りさせていただきたいと思います。

初期衝動

およそ27億年前に、シアノバクテリアという生物が誕生しました。

彼らは光合成によって当時の生物たちにとっての毒である「酸素」を大量に生産し、地球の大気の組成を大きく変えました。

しかし生物達は毒である酸素を逆に利用することで繁栄し、現在の生命に溢れた地球が作られました。

美しい自然は、自分勝手なイキモノが好き勝手にそれまでの環境を破壊した歴史の産物なのです。

利己的な破壊により全体の進歩のキッカケとなるといった点は、僕が好きだったダダイズムやパンクロックに通じました。

今よりもずっと協調性に乏しかった高校時代の僕は、27億年前に生まれた微小ながら偉大なパンクの先輩に心を奪われました。

初期衝動に忠実に、大学ではシアノバクテリアの研究を、大学院では海洋微生物の光利用に関する研究を行いました。

将来のことはあまり考えていませんでしたが、研究はすごく楽しかったし、研究者のコミュニティも好きでした。

大学院生時代に経験した「子供達に死んだ深海魚を触らせるアルバイト」の様子

博士就職

大学院ではそれなりの成果を挙げ、どうやら博士号も取れそうでした。

しかし、そのまま研究者になることに対してはあまりワクワクしませんでした。

その理由には、海洋生物学業界のじんわりした暗さがあります。

周りの研究室にはアカデミアに職がなく厳しい待遇で雇われているポスドクがうようよしており、飲み会ではみんな暗い顔で将来の話をしていました。

あまりに辛気臭い！

僕は生命情報学というプログラミングや統計をやる分野にも属していたのですが、そっちの人たちは比較的明るそうでした。

博士号取得後GAFAで荒稼ぎのような景気いい話もあり、分野間の格差をすごく感じていました。

この格差は結局民間企業で役に立つ学問分野かどうか、というところにあります。

しかし海洋生物学分野の先輩方もみんな本当に優秀で、なんでこんな仕事できる人たちが職に困るのだろう？と思っていました。

一つの理由に、大学教授の多くに民間経験がなく、アカデミア以外のキャリアパスを示せないことにあると思いました。

「学生の人生を預かる大学教授を目指すなら、民間経験もあったほうがいいだろう」

ということで、博士号取得後は1~2年の社会科見学といった気分で民間就活をしました。

留学先のハワイで近所のカードゲームショップで遊ぶ筆者

民間経験

エンジニアやりつつ効率的に社会人経験を積むには、ある程度事業の全体像を把握できるベンチャーの方がいいだろうと考え、株式会社フリークアウト(FO)というITベンチャーに機械学習エンジニアとして就職しました。

FOには起業文化があり、ベンチャースピリットが高い人が集まっていました。

新卒時の研修で「この中で将来起業したい人は？」という創業者からの質問があり、僕以外ほぼ全員手を挙げていたのを覚えています。

あくまで将来はアカデミアに戻ると考えていて起業にはそんなに興味がなかったのですが、そんな状況にいると勝手に起業に関する情報が伝わってきます。

僕が起業を意識し始めたのは、以下のような言葉を聞いた時です。

「スタートアップに一番大事なことは、業界のペインを見つけることだ」

「ITで農業に革命を起こそう！」などと言っても実際に農業分野で抱えている課題を知らないとどうにもならないとか、そんな話です。

この話聞いた時に思ったのは、「アカデミアってペインだらけだよな」ということでした。

もしかしたら、アカデミアのペインをめちゃくちゃ知ってるっていうのはすごいビジネスチャンスなんじゃないか？と思いました。

同僚がふざけて作った自分の似顔絵Tシャツを着ながら仕事をする筆者

再びアカデミアへ、そして起業

結局会社は1年ほどで辞め研究者としてアカデミアに戻る選択を取りました。社会科見学に満足したのです。

有人深海探査艇「しんかい6500」を有するJAMSTECは幼少期から憧れていた研究機関で、現在も本当に素晴らしい人たちに囲まれながら研究を謳歌しています。

一方、「アカデミアのペインを解決するためのwebサービス」のアイディアは着々と頭の中で仕上がってきておりました。

「サービス名を多様性から取ってtayoとし、シンボルには多様性のシンボルであるダーウィンフィンチを掲げよう！」というのは我ながらとてもcoolなアイディアだと思いました。

思いついたら作りたくなってしまうので、とりあえず趣味としてプロトタイプを作るところから始めました。

プロトタイプがざっくりできたタイミングで前職の創業者であるYusuke Sato氏とお話ししたところ、なんと200万円の寄付をいただけることになりました。

「あの天才起業家がお金を出してくれるなら、これはいいアイディアなのかも知れないぞ」と思い、追加で融資を受けちゃんとした体制で開発することにしました。

学会発表をする筆者

アカデミアと外部の垣根を壊したい

tayo.jpは大学院生募集のプラットフォームとして立ち上げました。

応援してくれる先生方のおかげで、実際にサービスを通した大学院への応募も行われるなど、狭い世界でのPMFの手応えのようなものを感じるようになりました。

そんな中でいろんな人と話すことも増え、アカデミアの最大のペインである「外部との垣根の高さ」は僕が実感していた以上に大きな問題のようでした。

昨今世の中を賑わせる、学術会議の問題なんかも根っこはそんなところにあるのではないかと思います。

この度の民間企業向け機能のリリースはそのための施策の一つですが、まだまだやれることはたくさんあると思っています。

初期衝動に忠実に、自分勝手なプロダクトでアカデミアと外部との垣根を破壊し、その更地の上にもっと美しい世界を築いていきたいと思っています。

生まれたばかりのまだまだ小さいサービスですが、応援していただけると幸いです。

■tayo.jpについて

日本初※の大学院生・研究者募集のプラットフォーム。

フォームに沿った入力方法で大学院・研究室の人材募集を簡易に行うことが可能。

掲載費は完全無料となっており、多くの研究者から支持を頂いております。

URL：https://tayo.jp/

Twitter：https://twitter.com/tayo_jp/

※2020年10月現在、民間企業が運営母体のサービスとして。

■今回のSTORY投稿に関するお知らせ

プレスリリース第一弾と背景を下記に掲載しております。

プレスリリース：

note：https://note.com/kmooog/n/n10d0ce148246

○各お問い合わせ先

アカデミア：https://info.tayo.jp/contact_academia

民間企業：https://info.tayo.jp/contact_private