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変化の中でも揺るがない「社会課題への視点」。アドベンチャーワールドが再構築するニュースのつくり方と伝え方|株式会社アワーズ

変化の中でも揺るがない「社会課題への視点」。アドベンチャーワールドが再構築するニュースのつくり方と伝え方|株式会社アワーズ

和歌山県白浜町に位置するアドベンチャーワールドは、たくさんの動物たちとのふれあいを楽しめるテーマパーク。長年同園のシンボルとして愛されてきたのが、ジャイアントパンダです。ところが、今年6月末に中国との契約満了に伴い返還が決定。以後は入園者数にも影響が出始めています。

こうした変化の中で、同園を運営する株式会社アワーズは新たな体験価値づくりに向けて挑戦を始めました。この逆境を乗り越えるために、同社の広報PRが取り組んでいることとは。

本記事では、同社広報課の新東貴行さんにインタビュー。現場の変化やニュースのつくり方、そして組織としての展望など、その舞台裏を伺いました。

株式会社アワーズ(和歌山県西牟婁郡):最新プレスリリースはこちら

株式会社アワーズ 経営企画室広報課マネージャー

新東 貴行(Shinto Takayuki)

2002年、和歌山県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」を運営する株式会社アワーズに入社。レストラン業務を経て、ペンギンやイルカの飼育・トレーナーとして約10年動物たちと向き合う。その後、広報課で12年間、パークの理念やいのちの物語を伝え続ける。現在は広報課・SDGs地域連携課のマネージャーとして、自治体や学校、地元事業者と共創の輪を広げている。2025年10月よりプレスリリースエバンジェリストとして活動。

経営の主軸「社会課題の解決」に基づいた情報発信

──本日はよろしくお願いします。さっそくですが、広報PRの組織や体制について教えていただけますでしょうか。

当社の広報PRは経営企画室に属し、経営直轄の機能として位置づけられています。経営企画室には、私がマネージャーを務める「広報課」が9名(産休2名を含む)、大阪を拠点に広告・宣伝を担当する「企画営業課」が14名(産休2名を含む)のふたつの部署による運営体制です。

広報PR活動は、もともと園内運営を担う業務課が兼務していましたが、12年前に「広報は園内運営の延長ではなく、経営と一体となり価値を創る機能として必要」という認識が社内で共有され、独立部署として新設されました。立ち上げ当初は私と上司の2名でスタートしましたが、SNS活用など業務の拡大に合わせて組織も大きくなっています。

また、広報課では数年前に新設された「SDGs地域連携課」を兼務しています。地域連携は広報PR活動とも密接に結びつく領域ですし、社内外への発信をより一貫した形で進められるようになったと感じていますね。

──新東さんは以前は別の部署でキャリアを積まれていたと伺いました。広報課への配属が決まったとき、どのように受け止められましたか。

その当時、私は業務課で園内運営のチームリーダーを務めていて、ゲストの皆さまにどう楽しんでいただくのかを考える仕事に、とてもやりがいを感じていました。また、正直言うと業務課の頃は取材対応など園の動物やゲストをお迎えすること以外に時間を取られることを煩わしく思っていたほどです。広報PRの重要性をそこまで感じられていなかったですね。

──そのように受け止められていた中で、熱心に広報PR活動に取り組めるようになったのはなぜでしょうか。

広報課に配属となり、広報業務のみに専念するように言われたことで、初めて「広報PR」に向き合うことになったんです。もともと、業務を進めるにしても納得しないと注力できないタイプということもあるのですが、「広報PR」について勉強しましたね。学びを深めるうちに、経営と直結するマーケティング視点を持つ仕事であり、価値を伝えていくためには欠かせない役割だと認識しました。

──これまでのお仕事を振り返ってみて、広報の仕事に対する思いはどのように変化してきたのでしょうか。

私は入社してから、レストラン勤務からスタートし、ペンギンの飼育を5年、イルカのトレーナーを5年経験してきました。イルカのトレーナーになりたくて入社していたので、その時点で夢は叶っていたと思います。大型連休には4,000名のゲストの前でパフォーマンスを行い、たくさんの笑顔をつくっている感覚がありました。

ただ、パーク全体では1日約2万人が来場されることもあり、「もっと多くの方を笑顔にできるのではないか」という気持ちが強くなっていきました。そこで、園内運営の部署への異動を希望したんです。異動が叶い、より多くのゲストにかかわれるようになりました。思い返すと、これまでよりも多くの笑顔をつくっている手応えのようなものを感じていたと思います。

──そのような中での広報課への異動だったわけですね。

広報課への異動が決まったときは、重要性も理解できていなかったですし、戸惑いがあったのも事実です。しかし、役割を学び、情報を発信する中で、自分が届けられる笑顔の数が広がっていく実感が生まれました。現在、当社のInstagramは約60万人、そのほかのSNSも合わせると200万人以上のフォロワーがいます。私たちが情報を発信することで、300万人近い方に笑顔を届けられる可能性があると、今はこの仕事に対して強いやりがいを感じています。入社24年になりますが、今が一番幸せでやりがいを感じていますね。

──代表が新設された部署とのことでしたが、情報発信の方針はどのように設定されているのでしょうか。

私たちは「『だれもがキラボシ』な世界を創る」という企業使命を掲げているのですが、情報発信についてもこれが指針となります。例えば、ジャイアントパンダのような人気動物だけに注目が集まるのではなく、小さな動物もそれぞれが輝く命を持っているという考え方に基づいたものです。誰とも比較せず、一つひとつの命が光る世界をつくる。この思いをパークの運営に、そして広報課でも大切にしています。

また、「社会課題や環境課題の解決につながる視点を必ず盛り込む」ということも重視していることのひとつです。「社会課題に向き合う企業でなければ存在意義はない」という考えのもと、情報発信においてもその点を意識して取り組んでいます。

例えば、今年10月に配信した「シロオリックスの赤ちゃん誕生」のプレスリリースもそのひとつです。シロオリックスは自然界ではすでに絶滅し、飼育下でのみ繁殖が続けられている動物なのですが、世界中の施設が連携しながら絶滅を防ぐ取り組みを進めています。「赤ちゃんが生まれた」という事実だけでなく、絶滅危惧種の保全や国際連携の意義まで伝える。そうすることでニュースとしても価値ある情報になると考えています。絶滅の背景には、生息地の縮小や乱獲など人間の行動が大きく影響しているため、情報発信の際にも社会や環境へのメッセージがきちんと届くよう意識しているんです。

参考:アドベンチャーワールド「10月2日(木)シロオリックスの赤ちゃんが15年ぶりに誕生しました!」(2025年10月20日 14時18分発表)

現場との連携でニュース性を見いだし「攻めの広報」へ

──商品開発や飼育スタッフなど他部署との連携はどのように行われていますか。

商品開発については、開発の初期段階から情報をもらい、どんな話題づくりができるのかを一緒に考えていきたいと思いつつ、まだそこまで連携が確立されていないのが実際のところです。一方で、現場の飼育スタッフからは情報が上がってくるようになりました。「妊娠していて出産予定はいつごろだと思う」「赤ちゃんが生まれたよ」といった声が随時届くようになり、どこがニュースとしてのポイントになるのか、世の中にどう届ければ関心を持っていただけるのかを広報課で整理しています。

その後、経営企画室のトップとポイントをすり合わせ、「プレスリリースとして出す価値がある」という判断が下りたタイミングで原稿作成に。緊急性の高いニュースは2日ほどで仕上げることもありますが、通常は企画段階から配信まで1週間ほどかけて丁寧に作成しています。

──新東さんが園内運営を担当されていたとき、「広報は煩わしいと感じていた」とおっしゃっていましたが、今各部署の方たちとの関係性はいかがですか。

とてもよくなったと思います。広報課に新しいメンバーが増え、日々のコミュニケーションを丁寧に重ねてくれたことで、少しずつ関係性が築かれました。SNS運用においても、以前は広報課が撮影に行くことが多かったのですが、今は飼育スタッフが撮影した写真や動画を共有してくれるんです。スタッフ自身も、自分が撮った映像に反響があると喜んでくれますし、どうすればもっとよくなるのかを考えてくれていますね。私たちにとっても非常にありがたい変化です。

──現場の方とよい関係が築かれ始めているのですね。連携される中で大切にしていることはありますか。

私たちが大切にしているのは、情報提供してくれた飼育スタッフに対して「どんな反響があったのか」を必ず共有することです。日々動物たちと身近で接していると価値に気づきにくいこともあります。私自身もそうだったと思います。反響の大きさにかかわらず「これって当たり前じゃないよ」「これってすごいことだよ」と伝えるように心がけています。自分たちの取り組みが世の中でどう受け取られているのかが伝わることで、提供する情報の価値を実感してもらいやすくなりますし、その積み重ねが信頼関係にもつながっているのではないでしょうか。

──実は「当たり前ではない情報」を伺う必要が出てくる場面もあると思います。どのようなコミュニケーションを意識されていますか。工夫されていることなどあれば教えてください。

まずは、これまでのプレスリリースを参考に「必要な基本情報」を明確に伝え、最初にそろえていただきます。そのうえで、ニュースとしてのポイントを見つけるために追加の質問をするようにしています。

「何年ぶりの誕生なのか」「国内の繁殖状況はどうか」「この種ならではの特徴や難しさは何か」など、ニュース性を引き出す視点から質問を投げかけるのがポイントです。そうした質問を重ねるうちに、自ら調べて新たな発見をするスタッフも増え、結果的に質の高い情報が集まるようになってきました。

──今、広報PR活動をするうえで課題に感じていることはありますか。

今年の6月まではジャイアントパンダがいたことで、ニュース性がそれほど強くなくても、イベントにパンダを絡めれば多くのお客さまに来ていただけていました。しかし、パンダがいなくなった今、ほかの動物で同じ反響を得ることの難しさを痛感しているのが正直なところです。

これまでと同じようなやり方だけでは十分に情報を届けられないと感じています。プレスリリースもそうなのですが、当社ならではの表現や理念を反映しつつ、一般的にメディアに受け入れられやすい表現や書き方といったセオリーも取り入れるなど、発信方法そのものを見直し始めました。

これまで当社は、出過ぎた自己主張を避け、理念を大切にしながら誠実に発信する姿勢を選んできました。そのため広報PRにおいても謙虚さが強く表れていたと思います。しかし、ジャイアントパンダが帰国し入園者数が減少している今、必要な場面ではしっかりと強みを示し、「攻めの広報」に転換することが求められていると感じています。

──会社にとって、大きな転換期となっているのですね。

そうですね。エンペラーペンギンのぬいぐるみに関する発表もこれまでとは異なり、SNSの反響をきちんと活用し「今しか見られない魅力」を伝えることにも力を入れています。

もちろん、エンペラーペンギンの希少性や自然界での状況も丁寧に説明し、「守るべき命である」というメッセージも欠かさず届けるようにしています。今は新しい表現やアプローチに挑戦する重要な時期だと感じていますね。

参考:9月30日生まれのエンペラーペンギンの赤ちゃん 公式SNS総インプレッション1億2千万超えを記録!ふわふわでかわいい“今だけ”の姿を公開中

“学び”と“気づき”を届ける「エデュテインメント」を目指す

──最後に、これから取り組んでいきたいことや思い描いていることを伺えますか。

アドベンチャーワールドは、今後新たな取り組みとして「エデュテインメント(Education × Entertainment)」に力を入れていこうと考えています。これは「エンターテインメント」と「エデュケーション」を組み合わせた言葉で、従来の「動物と触れ合って楽しい」で終わる動物園ではなく、楽しみながら自然や命に対する「気づき」を得られる場所にしていこうというものです。

ただし、教育を前面に出しすぎると押し付けがましく感じられてしまうので、あくまでエンターテインメントに軸を置いています。楽しんでいるうちに、自然と心が動き、“学び”と“気づき”が生まれる。そんな体験を提供するエデュテインメントパークを目指しています。

私たちのイルカのパフォーマンスでは、大人のお客さまが涙することがあるんです。言葉は通じなくても、種を超えて心が通じ合う瞬間を感じ、「大切な人を大切にしよう」「明日からまた頑張ろう」といった感情の動きが起きている。これこそがエデュテインメントの本質だと思っていますね。この考え方をパークのツアーやアトラクション、ふれあい体験などのあらゆるプログラムに落とし込んでいく準備を進めています。

──広報課としては、どのようにその魅力を発信していこうとお考えですか。

取り組みの背景、意図を丁寧に言語化し、発信する情報に反映するのが私たち広報課の役割だと思っています。体験を通じてどのような“学び”と“気づき”が得られるのかをしっかり伝えていきたいですね。今はまだ、どう表現したらいいのか模索しているところなんです。

絶対に避けたいのは、言葉だけが先行してしまうこと。「エデュテインメントに注力します」と掲げたのであれば、パークの中で本当にその体験ができる状態をつくらなければ意味がありません。だからこそ、具体的な事例や体験を着実に増やし、発信内容とパークの実体験がしっかり一致するようにしていきたい。私たちは、どういう言葉やビジュアルで届けばしっかり伝わるのか準備していきたいと思います。

まとめ:試される広報PRの力。アドベンチャーワールドが挑む「新しい伝え方」

長年パークの象徴として愛されてきたジャイアントパンダの返還後、入園者数の減少と向き合うアドベンチャーワールド。同園を運営する株式会社アワーズは、「特定の動物に依存しない集客・体験づくり」によって乗り越えようとしています。広報PRもその中心にあり、ニュース性の磨き込みや現場との連携、SNSで得られる反響の扱い方まで、これまでの取り組みをひとつずつ再確認。発信の質を高める動きを進めています。

価値に気づきにくい一次情報に光を当て、ニュースとして成立する切り口を自らつくる。必要であれば従来の表現方法に踏み込み、メディアに届く言葉や見せ方を磨く。「どうすれば伝わるか」「どうすれば行動してもらえるか」を問い続け、社内外の視点を往復しながら情報の価値を最大化していく。その地道な積み重ねこそが、企業を支える広報PRの真価といえるでしょう。

後日、新東さんは広報の仕事についてこのようなコメントも寄せてくれました。

理念の中には、創り出すSmileが3つあり、「社員のSmile」「ゲストのSmile」「社会のSmile」の順に定義されています。広報の仕事もまさにこの流れを後押しする役割です。社内報の担当もしていましたが、単なる情報共有ではなく、まずは社内に目を向けて、現場で働くスタッフが感じているやりがいや、目指している場所、日々大切にしていることを丁寧にすくい上げて伝えられるようにしていました。そうしたインナーブランディングこそが、スタッフの成長や誇り、「社員のSmile」につながり、その先に「ゲストのSmile」を生み出し、結果として「社会のSmile」へと広がっていく。そのようなイメージを持てたことが、広報の役割を担ったときの心境の変化としては大きかったです。社内取材を重ねる中で、現場スタッフの想いの強さや温度感を自分自身が再発見することも多く、働くスタッフたちをよりリスペクトするようになりました。そして、彼らが創り出しているものは、ゲストや社会に「届ける価値がある」と自信をもって言えるように。広報PRは、社内外をつなぎながら、会社の存在意義を「Smile」として形にしていく仕事だと思えたことで、自然と熱が入るようになっていきました。

変化を恐れず、丁寧に、そして柔軟に挑戦し続けるアワーズの広報PR活動に、今後も注目です。

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この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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