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5W1Hの「Why=社会的意義」でステークホルダーの行動につなげる!元地方紙デスクの情報発信術|加星宙麿

5W1Hの「Why=社会的意義」でステークホルダーの行動につなげる!元地方紙デスクの情報発信術|加星宙麿

大阪の地元紙で長年記者として活動し、現在は企業のプレスリリース作成も行っている加星宙麿氏に執筆いただきました。

株式会社プラススターHR 代表取締役

加星 宙麿(Kaboshi Okimaro)

大阪市立大学大学院修士課程修了後、大阪の地元紙で18年半記者。行政、経済など10の記者クラブで計約6800本の記事を執筆。キャップ、デスクを歴任。新聞形式のプレスリリースの型「新プレ」を考案し、普及に向け起業。中小から国内の業界最大手まで直近1年間で約100本のリリースを制作。人材育成では社会人だけでなく子ども向けリリース作成講座も手掛け、大阪・関西万博で発表。全国紙やネットメディアで執筆、撮影も担当。2025年よりPR TIMES公認プレスリリースエバンジェリストとしても活動。

なぜ今、「伝える力」が中小企業にとって必須なのか

日本では少子高齢化が進み、国内の市場規模や企業の採用活動に深刻な影響を与えています。大企業はもちろんですが、国内の企業総数の99.7%(※1)を占める中小企業にとっても、「選ばれるための情報発信」が欠かせない状況です。

「何をどう伝えるか」が問われる中、必要な情報は商品・サービスの機能面だけではありません。それらがどのような社会をもたらすのか、「社会的意義」の説明が購入の動機になる時代になっています。さらには、商品・サービスだけでなく、労働環境といった公共性の高い情報が、ステークホルダー(利害関係者)の行動に影響を及ぼしています。

こうした社会的・公共的価値を発信する際に役立つのが、プレスリリースです。自社の社会的意義を伝える「公共性の高いコミュニケーションツール」としてどのように活用すべきか。その「意義」と「手順」を紹介します。

※1 中小企業庁:中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します

「価値ある活動」を社会に“伝えられていない”中小企業

私は18年半、大阪の地方紙で記者として働き、中小企業の皆さまから日々情報をいただいていました。そこで十分に活かされていないと感じたのが、「価値ある活動をしていても、その価値が十分に伝わってこない」ケースがある点でした。

新聞における価値判断

新聞の責務は「公共的、文化的使命を果たすこと」(※2)と掲げられています。そのため、地方紙記者としての情報の価値は「社会にとってどう役立つのか」が主要な判断基準の一つ。深掘りすればそれがあるのに、情報として出せていない状況でした。

例えば、ドア周りの金具メーカーを取材した際、商品自体の希少性は高くありませんでした。しかし、「ものづくり文化の継承」に向けて雇用した若手の意見を取り入れているという話が出たため、その内容を中心に記事化したといったケースです。

「技術の継承や発展に向けて人材を育成している」という情報は、「公共性が高い=情報の価値が高い」という判断です。この判断基準が、メディアだけでなくステークホルダーに広がっています。

※2 一般社団法人日本新聞協会:新聞倫理綱領

「社会的意義・公共的価値」を求める利害関係者

現在、消費者や投資家、求職者といったステークホルダーは、「社会的意義」や「公共的価値」に関する情報を重視するとされています。代表的なのは、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献ですが、他にもさまざまな視点で調査されています。

消費者庁は、「事業者は積極的に自社が本業を通じてどのような社会を目指したいのかを示し、消費者から共感を得ることが必要」と指摘。「共感を得ることで、本業での成功、顧客満足度の向上と目指す社会の実現の両立が可能」と位置付けています。

「消費者と共創・協働して社会価値を向上させる経営」を「消費者志向経営」と定義。この経営に取り組んでいる企業の商品・サービスを購入したいか尋ねた調査(※3)では、「購入したいと思う」「ある程度購入したいと思う」を合わせると65.4%に達していました。

また、電通PRコンサルティング・企業広報戦略研究所の調査では、個人投資家が企業を評価する際、「従業員の働きやすさ」を重視しているといったデータもあります(※4)。

社会的・公共的価値の発信が企業の業績に影響を与えるという趣旨のデータは枚挙にいとまがありません。企業が情報を発信する際、「自社の視点」だけでなく、「社会の視点」を持つ重要性が高まっています。

※3 消費者庁:令和7年度第3回消費生活意識調査結果について
※4 企業広報戦略研究所:非財務クロスバリューモデル」で調査|PR会社

情報発信の場として「プレスリリース」を活用する3つのポイント

こうした社会的・公共的価値を発信する場は、公式サイトの企業案内や、SNSの公式アカウントなどいくつもありますが、相性の良いのがプレスリリースです。大きく3つのポイントがあります。

ポイント1.信頼度の担保

1つ目は、プレスリリースの目的がそもそも報道向けの情報発信であることです。企業側は、公式情報として正確な情報発信に努めなければなりません。そのため、ステークホルダーにとっては、単なる「宣伝」よりも「信頼度の高い情報」として受け止められる性質があります。また、報道側は基本的に公共性の高い情報を求めているため、企業側との利害が一致します。

ポイント2.読者層の広がり

2つ目は、プレスリリースの読者層がステークホルダーへと広がっている点です。プレスリリース配信サイト「PR TIMES」の閲覧数は月間約9,000万PV(2023年8月時点)。これは一部のニュースサイトと同等のレベルです(※5)。プレスリリースは、報道だけでなく、ステークホルダーが直接読むメディアへと発展してきています。

※5 参考:PR TIMES、売上高・営業利益ともに過去最高を更新、営業利益は上場10年で20倍に到達の見通し(2025年度第3四半期決算を発表)

ポイント3.アーカイブ機能

3つ目は、プレスリリースは基本、アーカイブ(記録集)化して公開する点です。ステークホルダーが企業について知りたい時、「信頼度の高い情報」としてプレスリリースの蓄積分を読めば、その分だけ社会的・公共的価値を伝えられる機会となります。いわば、「好意的なイメージをためる」場として機能するのです。

つまり、自社の社会的・公共的価値について、「読者との信頼関係が一定担保された中で、広く、長く伝えられる公式メディア」として活用できるのがプレスリリース。企業が発信するメディアの中では、「公共性の高い情報を発信するためのメディア」の役割を担えると考えています。

社会的・公共的価値を発信する2つの方法

プレスリリースを活用して社会的・公共的価値を発信する方法は、大きく2種類あります。

手段1.リードとタイトルに組み込む

1つ目は、普段の商品・サービスを発表するタイミングです。その際に、機能面だけでなく、社会的・公共的価値も前面に押し出します。

具体的には、プレスリリースの最初の段落「リード(導入部)」での提示です。プレスリリースでは、発表内容の大事なポイントを最初に要約して示します。原則「5W1H」を押さえる構成となるため、その中で「Why=背景/目的」を丁寧に明示します。

一般的には、1文目が「誰が(Who)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「何をする(した)(What)」の情報。2文目以降に「どのように(How)」といった手段を入れたりします。この2文目からリードが終わるまでに「なぜするのか(Why)」を打ち出します。

例えば、「壁の劣化状態を判断するAI測定器の開発」であれば「熟練者の人手不足の中、正確な検査を実現。安心・安全なまちづくりに貢献します」といった形です。

リードの時点で社会的・公共的価値を入れておくのは、読者数を増やすことにも効果があると考えています。商品・サービスの機能面のみの記載であれば、その機能に興味のある読者層しか読みません。

しかし、「人手不足対策」や「安心・安全なまちづくり」といったキーワードが盛り込まれていれば、その領域に関心のある層が読む可能性があるためです。

この趣旨を踏まえ、タイトルに社会的・公共的価値を入れるのも必須だと考えています。

また、タイトルやリードで関心を持った読者層をさらに引き込むためには、リードの次の段落で「Why=背景/目的」の詳細を示すのもポイントです。

手段2.取り組みそのものを打ち出す

2つ目は、社会的・公共的価値のある取り組みそのものをプレスリリースで発表する方法です。

私は、地方紙時代、10の記者クラブを担当し、約6800本の記事を手掛けました。その経験則として、概ね8つの分野で社会的・公共的価値を見出しやすいと考えています。

それが、以下の8つです。

  1. 商品・サービス
  2. 代表の個性
  3. 事業所の歴史
  4. 事業所の環境
  5. 社内制度
  6. 採用制度
  7. 社会貢献活動
  8. 従業員の特色

中でも「社内制度」は、女性や高齢者の活躍をはじめ、生産性を向上させる仕組みや離職率を下げる仕掛けなど、少子高齢化の日本では社会的・公共的価値の高い取り組みとして発信しやすい分野です。

事業の継続や成長を目指した「普段の営み」を社会的・公共的な視点で捉え直せば、意義のある発信へとつながります。

こうして仕上げたプレスリリースは、ホームページへの掲載はもちろん、ステークホルダーにも読んでもらえるように発信するのが大切です。

報道向けには、リリース配信サイトへの掲載や記者クラブでの配布などがあります。報道以外のステークホルダー向けには、メーリングリストやSNSを活用し、掲載しているURLを積極的に伝えています。

まとめ:「公共性の高いツール」でステークホルダーと「対話」する時代

先進国を中心にモノ・サービスが溢れる中、ステークホルダーは、機能面だけでなく、それらがもたらす社会的影響を重視する時代になりました。少子高齢化に歯止めがかからない日本では、他社との差別化を図るためにも、社会的・公共的価値を発信し続けるのが重要です。

その発信手段としてプレスリリースの活用方法をお伝えしました。プレスリリースの特徴の一つはアーカイブ機能。取り組んでいる企業と取り組んでいない企業との情報量の差は広がり続けます。ステークホルダーを対象に、「公共性の高い情報を扱うコミュニケーションツール」として取り入れ、持続可能な経営環境の構築に役立ててください。

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