大阪銘菓「おこし」の老舗として、創業220年の歴史を誇る、株式会社あみだ池大黒。長年愛されてきた看板商品「岩おこし」と「粟おこし」に加え、現代風にアレンジしたひと口サイズの『pon pon coco』などが人気です。また、2019年には「大阪土産の新定番」を目指し、『大阪花ラング』を発売。大阪・関西万博に合わせて限定パッケージも展開しています。
本記事では、管理部 人事・広報課の新行希望さんにインタビュー。広報PRの体制や商品の魅力を伝えるために大切にしていること、テレビ制作会社での経験を活かしたメディアとの関係づくりなどについて、たっぷりとお話を伺いました。
株式会社あみだ池大黒(大阪府大阪市):最新プレスリリースはこちら

株式会社あみだ池大黒 管理部 人事・広報課 主任
法政大学社会学部メディア社会学科を卒業後、MBSグループの番組制作会社に新卒入社。情報番組や住宅番組のディレクターとして、企画立案から撮影・編集までを一貫して担当する。2023年にあみだ池大黒へ中途入社し、現職。人事・広報課に配属。テレビ取材対応やプレスリリース作成を中心に、新卒採用業務にも携わっている。
大阪土産の新定番を目指し、広報PRを強化
──本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、あみだ池大黒さんの広報PRの体制について教えてください。
当社の広報PR業務は、管理部の人事・広報課が担当しています。現在は課長を含めた8人体制で、そのうち広報PR業務を中心に担当しているのは、私と新卒2年目の社員の2名です。
部署名の通り、新卒採用や労務といった人事業務も担っているため、広報専任ではないメンバーも多いのですが、大きな取材やロケがある際には、課全体で連携して対応しています。実は、2年ほど前までは人事と広報PRの業務を各メンバーが兼任していましたが、広報PR活動をより強化していくために体制が見直されました。
現在は、私たち2名でプレスリリースの作成をはじめ、Webメディアやテレビ取材への対応、広告まわりの調整、出店している百貨店主催のメディア向けお披露目会への参加など、幅広く対応しています。
──「人事・広報課」ということですが、採用にもつながる広報PR活動も意識されているのでしょうか。
採用を意識した広報という点では、今後取り組める余地が大きいと感じています。現在は、新卒採用にエントリーしている学生の皆さんには、当社への信頼感や関心を高めるきっかけになればと思い、お受けした取材や放送された番組などの情報は積極的にお伝えしています。
広報PRの最終的な目的は、当社の商品をより多くの方に知っていただき、ご購入いただくことです。それと同時に、メディアを通じて当社に興味を持ち、好きになっていただくことも大切だと思います。そういった意味では、広報PRの取り組みが採用にも自然とつながっている部分はありますし、企業としての信頼度を高めるという観点でも、大きな役割を果たしていると感じています。
──先ほど、広報PR強化のために体制を見直したと話されていましたが、何かきっかけがあったのでしょうか。
やはり、大阪・関西万博の存在は大きかったと思います。万博に関連したプレスリリース配信にも力を入れるようになり、この大きなイベントを契機に、自社の広報PR活動をさらに盛り上げていこうという狙いがありました。
現在、私たちが掲げている大きな目標のひとつが、『大阪花ラング』を「大阪土産の新定番」として多くの方に認知していただくこと。「大阪といえばこれ」とすぐに思い浮かぶようなお土産がまだ少ない中で、当社の商品がそのポジションを担えたらと考えているんです。地元のお客さまが出かける際に選んでいただける商品であると同時に、大阪を訪れる方が「お土産に」と手に取ってくださる存在を目指しています。
大阪・関西万博はその両方のお客さまが一堂に集まる絶好の機会です。広報としては、2025年の万博開催時にはすでに『大阪花ラング』を知っていただいている状態を目指して活動してきました。

2年の歳月をかけて完成した『大阪花ラング』
──「大阪土産の新定番」を目指して開発された『大阪花ラング』について、教えていただけますか。
『大阪花ラング』は、花の形をした見た目にも可愛らしく、食べておいしいラングドシャです。特徴は、「サクサク食感の生地」と「ふわふわクリーム」。さらに、大阪産を含めた3種のはちみつを贅沢に使用した味わいもポイントです。
私たちは江戸時代から大阪のお土産菓子をつくり続けてきた会社です。「これぞ大阪!」といえるようなお土産が少ないという声を聞くたびに、悔しさのようなものを感じてきました。大阪の定番土産を自分たちの手で作りたい、そんな思いから『大阪花ラング』の開発が始まっています。
── 完成までに2年ほどかかったとおっしゃっていましたよね。
お土産は、大切な誰かを想って選ぶことが多いからこそ、「贈る気持ち」がしっかり伝わる特別感のあるかたちを目指しました。そこで着目したのが、「立体的な花の形」です。ですが、花びらが繊細すぎてすぐに割れてしまうなど、試作段階ではとても苦労したと聞いています。さらに、常温保存できる仕様にするためには、クリームの溶けやすさという課題もあり、試作と改良を繰り返しながら、2年の歳月をかけて完成した商品なんです。
また、『大阪花ラング』の花びらの数にもストーリーがあるんです。当社の代表商品である「岩おこし」「粟おこし」は、江戸時代から販売している伝統菓子ですが、そのパッケージには5枚の花びらからなる「梅鉢紋」があしらわれています。これは学問の神様・菅原道真公の家紋で、かつて道真公が九州へ向かう途中、大阪・高津の港で船待ちをしていた際、地元の老婆が差し入れた粟おこしを大変喜ばれ、自身の家紋入りの小袖を贈ったという逸話に由来しているそうなんです。
私たちはもともと「おこし」の会社として創業しているので、「おこし=梅鉢紋=5枚の花びら」というつながりを、新しいお菓子にも受け継ぎたい。そんな思いを込めて、『大阪花ラング』にも5枚の花びらを取り入れています。
──さまざまな想いが込められているんですね。「大阪マラソン」のオフィシャルサポーターとして給食に提供されていたニュースも拝見しました。ランナーの方の反応はいかがでしたか。
あみだ池大黒が生まれた大阪に貢献したい、大阪を一緒に盛り上げていきたいという思いから、「大阪マラソン」のオフィシャルサポーターをさせていただいています。今年は前回より多い13,000個の『大阪花ラング』を、22.6km地点の給食として提供しました。
マラソン後、新大阪駅の売り場で「もう一度食べたかったんだよね」と言って『大阪花ラング』をお買い求めいただいた方がいらしたり、新卒採用の試験を受けに来た学生さんが「大阪マラソンに出て花ラングを食べました」と教えてくれた方もいたり、さまざまな反響を耳にすることができてうれしかったです。

参考:あみだ池大黒が「大阪マラソン2025」のオフィシャルサポーターに!給食に「大阪花ラング」13,000個を提供
試食は必須。先入観にとらわれず「正しく伝わる」を大切に
──新行さんが、広報PR担当として商品の魅力を伝える際にこだわっているポイントはありますか。
もっとも重視しているのは、「その表現が本当に正しいかどうか」ということでしょうか。プレスリリースを作成する際には、原材料に何を使っているのか開発担当者に話を聞くのですが、その知識があると勝手に文章を想像してしまいがちです。やはり、実際に自分で食べてみることは大前提で、特に、何の知識もなくまっさらな状態の人に食べてもらってヒアリングするのが一番的確な感想を得られると思います。
例えば、『pon pon coco』の期間限定商品「あんバター味」は、「あんバター味=甘塩っぱい」という一般的なキーワードを当初想定していました。しかし、試作品を人事・広報課内だけでなく、全く事前情報のない経理課の人たちに実際に食べてみてもらったところ、あんこの香りと甘みのインパクトが大きく、「甘塩っぱさ」より印象的だという話になったんです。また、流行りである「あんバター味」をおこしである『pon pon coco』で楽しんでいただく意味をどのように表現するのか悩みましたね。最終的に、表現が実際の味とズレていないか最終確認を行い、以下に決定しました。
- バターに関する言及:口に入れると、ふわっと芳醇なバターの香りとコクが広がり、小倉餡の美味しさを引き立たせています
- おこしに関する言及:噛むたびに大納言小豆の濃厚な味わいが増す、おこしならではの美味しさをお楽しみいただけます

メディア視点を大切に「撮れる現場」をつくる
──新行さんは、テレビの制作会社のご出身だと伺いました。そのご経験が、広報PRの仕事に活かされていると感じることはありますか。
取材する側の気持ちがよくわかるので、準備はすごくがんばりますね。せっかく取材に来ていただいたのに「これは撮れません」というのは申し訳ないので、事前に打ち合わせした内容はもちろん、当日の急なリクエストにも対応できるよう、ありとあらゆる可能性を考えて準備をしています。
──社内調整をスムーズにするために、どのような工夫をされているのでしょうか。
可能な限り、構成台本を事前にいただいて「どんな取材になりそうなのか」を想像します。「こういうインサートカットを撮るだろうな」「製造工程を撮影するならポイントはこことここかな」など、メディア側が何を撮りたいのかをある程度想像し、生産管理の担当者に「この日に撮影が入るのでこの商品をつくっておいていただきたいです」と、まずは工場の製造スケジュールを確実に押さえているんです。
次に自分自身が工場に入り、直接現場の製造担当者に「具体的にどの工程を撮影するか」、そのために「どこまで準備してもらっておくか」を相談します。
例えば、『大阪花ラング』の魅力は「サクサク生地」と「ふわふわクリーム」です。製造工程を撮影するなら、きっと「ふわふわクリーム」は絶対に撮るだろうなと予想し、現場の担当者に「普段何時にクリームを作っていますか?」と確認。もし時間が合わない場合でも製造スケジュール全体をずらすことは難しいので、「15回クリームを練るうちの2回分のみを直前までストックしてもらえますか?」といった調整をしています。
現地まで足を運んで撮れない怖さがわかるからこそ、自分から動いて調整することは欠かせません。商品の見せ方など、会社として大切にしている部分はしっかりと守りつつ、テレビ側の求めている映像をどう提供できるかは日々試行錯誤を重ねています。
──地元テレビに出演する際には、成功談だけでなく失敗したことも積極的に話されているとおっしゃっていましたよね。
これはあくまで私の主観なのですが、「すべて成功しているエピソード」って、あまりおもしろくないなと思うんです。もちろん、会社としては商品の魅力を伝えて、売り上げにつなげることが目的ですが、視聴者の方にとっては完璧な成功ストーリーよりも失敗談があったほうが驚きがあったり、共感していただけたりするかな、と思っています。
私たちの場合も、「企業の成長ストーリー」という文脈で取り上げていただくことも多いのですが、過去にはおこしの売り上げが低迷するなど、大変な局面もありました。そういう浮き沈みも、積極的にお話しするようにしているんです。ただし、「沈んだ部分」をどのような言葉で表現するのかについては、マイナスな印象になりすぎないよう、メディア側と調整させていただきますが、そういう失敗談によって業績が上がったときのエピソードも光ると思っています。
──最後に、これから取り組んでいきたいことや、思い描いていることを伺えますか。
『大阪花ラング』を、大阪・関西万博後も「大阪土産の定番」として広く認知していただけるよう、引き続き情報発信を続けていきたいと考えています。
これまでありがたいことに、メディア側からお声がけいただくことが多かったのですが、老舗だからといって受け身でいるのではなく、こちらからも積極的にコミュニケーションを図り、自ら仕掛ける「攻めの広報」を目指していきたいと思います。

まとめ:あみだ池大黒に学ぶ、メディアの視点を持った広報PR
「大阪土産の新定番」を目指して挑戦を続ける、株式会社あみだ池大黒。広報PRの専任体制を整え、メディア対応や情報発信の質を高めながら、『大阪花ラング』や『pon pon coco』といった新しい商品を通じて、これまで接点のなかった層にもブランドの魅力を広げています。
今回お話を伺う中で特に印象的だったのは、「メディア側の視点」。テレビ制作の現場で培われた経験も活かし、「メディアが何を望んでいるのか」「どうすれば取材がスムーズに進むのか」といった細やかな心配りが、メディア側の安心感につながっているのは間違いありません。単に「自社の情報を発信してもらう」のではなく、共にコンテンツをつくるパートナーとして信頼を築いていく姿勢は、業界を問わず広報PRに携わる方にとって参考にしていただけるのではないでしょうか。
大阪・関西万博という大きな機会を追い風にしながら、自ら仕掛けていく「攻めの広報」を目指すあみだ池大黒の広報PRに、ますます注目が集まりそうです。
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