AI時代、仕事は進む。では、人と組織に「判断経験」は残っているか―980社・33.8万人の既公表分析等を統合し、新たな知見を18ページで公表
「仕事の完了」と「判断経験の形成」は自動的に連動するとは限らない。AI活用、人材育成、管理職への判断集中、マニュアル、組織学習を「仕事の設計」から整理
組織行動科学®の研究・教育開発を行うリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑 智康)は2026年8月31日、これまでに公表してきた980社・33.8万人の業務経験データに関する分析、2026年8月に10社で実施した企業内リーダー研修における探索的観察、2026年6月21日から8月30日までに公開した26本の研究・実務成果を新たに統合し、AI活用、判断行動、仕事条件、人材育成、組織学習の関係を横断的に再整理しました。
その結果、「仕事が完了すること」と「人と組織に判断経験が形成されること」が分離し得るという構造を整理し、18ページの実践研究として公表します。
本リリースは、980社・33.8万人を対象とした新規調査結果を発表するものではありません。既公表の分析結果、直近の探索的観察、26本の研究・実務成果を今回新たに統合し、そこから整理した構造仮説と実務上の知見を公表するものです。
図解版・全18ページはこちらからダウンロードできます。
d68315-225-cb79732397a73dca81cc6e5ac8a7048d.pdf研究原稿全文はこちらからダウンロードできます。
※研究の背景、方法、結果、限界、研究上の留意事項を収録しています。
d68315-225-2fcf6ffd258fefff1aa9993793de3ecd.pdf本研究が扱うのは、AIの性能ではなく「AIを使う仕事の設計」です
生成AIによって、文章作成、要約、分析、比較、論点整理、選択肢や施策案の生成など、仕事における「How」は短時間で生み出しやすくなりました。
AIや上司から適切な答えを得れば、目の前の仕事を速く、一定の品質で終えることができます。
しかし、仕事が完了したことと、その仕事を担った本人に判断経験が形成されたことは、同じではありません。
本人が、何を事実として確認したのか、何を問いとして残したのか、どの条件や選択肢を比較したのか、なぜその案を選んだのか、実行後の結果から何を学んだのか。
これらを経験していなければ、成果物は残っても、次の類似場面で使える判断経験は残らない可能性があります。
本研究では、この状態を、「仕事完了と判断経験形成の分離」と呼びます。
これは、AIを使うことで必ず起きる現象ではありません。
AIを人の判断に代わる「最終回答」として使うのか、事実確認、仮説形成、比較、反証を支える「判断材料」として使うのか。さらに、人がどの事実を確かめ、何を基準に採否を決め、実行後に何を確認するのか。
その仕事の設計によって、人と組織に残る経験は変わります。
研究全体の問い
仕事が速く進む時代に、判断できる人と組織をどのように育てるのか

本研究の中心的な結論
仕事が終了したかどうかは、成果物や処理結果によって比較的把握しやすいものです。
一方、本人が次の類似場面で自ら判断できるようになったかは、成果物だけでは把握できません。
本研究は、AI活用の成果を仕事の速さや品質だけで捉えず、次の判断へ使える経験が形成されたかという第二の成果を確認する必要性を示します。

三つの研究・実践資料を、一つの構造として再整理
本研究は、原データを用いた新たな統計的再分析や、複数研究を統計的に統合するメタ分析ではありません。
公開済みの分析結果、企業研修における実践観察、教育開発、実務モデルに反復して現れた関係を整理し、AI時代の仕事と育成を捉え直すための統合的な構造仮説として提示するものです。
また、外部公開にあたり、次の四つを区別しています。
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業務経験データで確認された記述的傾向
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企業研修における探索的な実践観察
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既存研究を踏まえた統合的な解釈
-
本研究から導く実務上の提案
データから確認できる差と、その差が生じた原因は同じではありません。実務上の提案についても、比較実験によって効果を証明したものとして提示しているわけではありません。
本研究を構成する三つの資料

本研究が明らかにしたい四つの問い
本研究の出発点は、AIによって仕事が速く進むことを否定することではありません。
問うているのは、効率化によって省略してよい作業と、判断できる人や組織を育てるために残すべき過程を、どのように分けるかです。
特に、人の判断経験を形成してきたどの過程が省略されやすいのか、その省略が上司や熟練者への判断集中とどのように関係し得るのかを検討しました。

本研究における三つの定義
本研究における「判断」は、最後に案を選ぶ行為だけを指していません。
目的と現状を確認し、必要な事実を確かめ、条件や選択肢を比較し、守る条件に照らして、優先順位と次の行動を決める一連の仕事として定義しています。
「判断経験」は、その判断と実行後の結果を結び付け、次の仕事で使える判断基準へ更新することで形成されます。

基礎となる観察結果
既公表分析では、分析対象企業の82%で仕事の中の判断経験が減少し、58%で上司への確認頻度が増加し、64%で前例への依存度が上昇する傾向が確認されています。
ただし、これらは分析対象企業における記述的傾向です。日本企業全体への母集団推計や、生成AIの利用が直接の原因であることを示すものではありません。
また、10社の企業内リーダー研修では、参加者が自らの日常認識と広域データとの差に気づく場面が確認されました。一方、当日の発言と対話の範囲では、その差を生んだ背景や原因仮説を確かめる問いは、ほとんど表出しませんでした。
発言として表出しなかったことを、参加者が内面でも考えていなかったこととは同一視していません。

統合分析から導かれた七つの研究結果
本研究では、AIを使うか使わないかという二項対立ではなく、AIを仕事のどの段階で使い、人が何を確認し、どこで判断し、結果から何を学ぶのかを整理しました。
七つの研究結果は、次の流れでつながっています。
成果差の起点が仕事の上流へ移る
→ 仕事完了と判断経験形成が分離する
→ 問いが確認前に閉じる
→ 判断が上司や熟練者へ戻る
→ 判断を経験できる仕事条件が必要になる
→ 判断の関係を組織へ残す必要がある
→ AI活用を二つの成果で評価する
研究結果1
成果差の起点は、AI操作の前へ移る
AIがHowの生成を支援できるほど、人には、誰のどの状態を変えるのか、なぜそれが必要なのか、どの事実に基づくのかを定める仕事が残ります。
AI時代の成果差は、操作技術だけではなく、その前にある目的形成、事実確認、問題設定、価値発見へ移ります。

研究結果2
回答を得たことと、本人が判断したことは同じではない
AIや上司の回答を受け取った後に、前提と不足条件を確かめ、仕事の状況に照らして比較し、自ら採否を決める。
この過程を通じて、回答は本人の判断経験へ変わります。
成果物が残ったかだけでなく、次に自ら判断できるようになったかを分けて確認する必要があります。

研究結果3
もっともらしい答えが、問いを閉じる可能性
生成AIは、与えられた問題設定を前提として、整った原因説明や施策案を短時間で提示できます。
しかし、説明が整っていることは、その原因が現場で確認されたことを意味しません。
本研究では、もっともらしい説明や施策案を得たことで、事実確認や原因探索が完了したように感じ、問いが閉じる状態を、実務上の表現として「問いの早期閉鎖」と呼びます。

研究結果4
判断経験が残らなければ、判断は再び特定者へ戻る
本人が判断過程を経験しなければ、次の類似場面でもAI、上司、熟練者、前例へ答えを求める可能性があります。
その結果、仕事は進んでいるように見えても、難しい案件が管理職や熟練者へ集中し続ける循環が生じ得ます。
管理職の多忙化を見るときには、仕事量だけでなく、誰の判断経験がどの仕事で失われ、その判断が誰へ戻っているのかを確認する必要があります。

研究結果5
判断できるかどうかを、本人の意欲だけに帰さない
「もっと自分で考えてほしい」と求めるだけでは、判断できる人は増えません。
本人がどの時点で立ち止まり、何を基準に考え、どこまで自ら決めてよいかが不明確であれば、判断しようとしても判断できないためです。
必要なのは、仕事を細かく管理することではなく、本人が安全に判断し、その経験を次の仕事へ持ち越せる条件をつくることです。

研究結果6
組織知として残すのは「正解」だけではない
完成した成果物やマニュアルだけでは、なぜその方法を選んだのか、どの事実を確認したのか、何を守る条件としたのかが分からないことがあります。
組織に残すべきものは、過去の答えだけではありません。
問題、事実、判断基準、選択肢、選択理由、権限、期待した結果、実際の結果、適用範囲、再判断条件という関係を残すことで、条件が変わっても次の人が選び直せるようになります。

研究結果7
AI活用の成果を、業務効率だけで評価しない
AI活用の効果を、作業時間、品質、コスト、処理件数だけで評価すると、判断経験が残っていない状態を捉えられません。本研究は、
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目の前の仕事が速く、正確に、適切な品質で完了したか
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本人やチームが、次の類似場面で判断できるようになったか
という二つの成果を分けて評価することを提案します。
理想は、業務成果と判断経験形成成果が、ともに高い状態です。

AIの有無ではなく、AIを仕事のどこに置くか
AIは、問いを省略して施策生成を速めることも、問いを構造化して原因探索を支援することもできます。したがって、違いを生むのは、AIを使ったかどうかだけではありません。
AIを仕事のどの段階に置き、
人が何を確認し、どこで採否を決め、
実行後に何を学ぶか。
その設計によって、仕事の後に残るものが変わります。
二つの仕事の経路

実務では、AI活用・育成・相談・マニュアルを分断しない
AI利用ルール、人材育成、管理職への相談、マニュアル改善は、別々の制度として扱われがちです。
しかし、実際の仕事では、これらは連続しています。
AIにどこまで補助させるのか。本人にどの判断を経験させるのか。どの条件で管理職へ相談するのか。その結果をどのように手順や判断基準へ戻すのか。
四つを一つの仕事設計としてつなぐことが必要です。
実務への四つの含意

本研究から導かれる「判断デザイン」
本研究における判断デザインとは、「AIを含む仕事の中で、事実確認、問い、比較、選択、実行、結果確認、判断基準の更新が、本人、チーム、組織へ残るように仕事条件を設計すること」です。
判断デザインは、AIを使わず、すべてを人が考える仕事へ戻すものではありません。
また、時間をかけ、苦労するほど人が育つという考え方でもありません。
目指すのは、AIによって省略してよい作業と、人と組織に残すべき判断過程を分けることです。
判断デザインの定義と四つの実装範囲

本研究の意義と限界
本研究の意義は、「仕事が終わったか」と「人が育ったか」を分けて捉え、判断できない状態を本人の思考力や意欲だけでなく、仕事の条件から捉え直したことにあります。
また、AI活用、人材育成、マニュアル、組織学習を、個別施策ではなく一つの連続した仕事設計として整理しました。
一方、本研究は完成した因果証明ではありません。
980社・33.8万人の分析は記述的な観察であり、AI利用など個別要因の因果効果を分離していません。10社の企業内リーダー研修も、発言と対話を対象とした探索的な観察です。
26本の統合分析は、同一組織が開発・公開した成果を対象としており、提案した実務モデルについて、比較群を設けた効果検証は行っていません。
今後は、判断経験設計の導入前後比較、上司への再確認件数、手戻り、判断理由の質、類似場面への転移などを継続的に検証する必要があります。
本研究の三つの意義と主な限界

結論
AI時代の本質的な組織課題は、仕事が終わらないことだけではありません。
仕事が終わる過程で、人と組織に判断経験が残らないことです。
AIは、仕事を速く進めます。
しかし、仕事が速く進むことと、判断できる人が育つこと、判断できる組織になることは同じではありません。
AI時代の人材育成と組織開発で問うべきなのは、「AIに何を任せるか」だけではありません。
AIを使う仕事の中で、人にどの判断を残すのか。
その判断経験を、本人、チーム、仕事の進め方へどう残すのか。
です。
最終結論

本研究結果を最も凝縮して表す一文
仕事を速く終わらせるだけではなく、
仕事が終わった後に、
人と組織が次を判断できるようにする。
研究概要

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項目 |
内容 |
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研究名称 |
AI時代、仕事は進む。では、人と組織に「判断経験」は残っているか |
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研究種別 |
探索的・統合的実践研究 |
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基礎資料1 |
2022年から2025年までの980社・33.8万人の業務経験データに関する分析 |
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基礎資料2 |
2026年8月に10社で実施した企業内リーダー研修における探索的観察 |
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基礎資料3 |
2026年6月21日から8月30日までに公開したNo.199〜No.224の26本 |
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主な統合領域 |
AI活用、判断行動、仕事条件、人材育成、組織学習 |
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公開資料 |
全18ページ |
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発行 |
リクエスト株式会社 判断デザインラボラトリー |
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発行日 |
2026年8月31日 |
研究上の留意事項
本資料は、既公表分析、企業研修における探索的観察、研究・教育開発、実務モデルを統合した実践研究です。
分析対象企業における記述的傾向と、統合分析から導いた構造仮説・実務提案を示すものであり、次のことを主張するものではありません。
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AIを使うと、必ず人の判断力が低下する
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仕事を効率化せず、すべてを人に考えさせるべきである
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すべての判断を現場担当者へ任せるべきである
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980社・33.8万人の結果を日本企業全体へそのまま一般化できる
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提案した実務モデルの効果が既に因果的に証明されている
AIは、問いを省略するためにも、問いを深めるためにも使用できます。結果は、課題の性質、利用方法、人とAIの役割分担、確認方法、仕事条件によって変わります。
商標について
「判断デザイン」「判断経験設計」「判断構造設計Pro」は、リクエスト株式会社が商標登録出願中です。

組織行動科学®について
組織行動科学®は、組織で働く人の思考と行動が「なぜ起こり、なぜ続くのか」を、事業環境、歴史、経験から解明し、より善く再現するための手段です。
リクエスト株式会社は、980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、組織で働く成人の研究と教育開発を行っています。


会社概要
会社名:リクエスト株式会社
代表者:代表取締役 甲畑 智康
所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
事業概要:リクエスト株式会社は、「より善くを目的に」を掲げ、980社・33.8万人の働く人のデータに基づく「組織行動科学®」を基盤に、組織で働く成人の研究と教育開発を行っています。
公式サイト:https://requestgroup.jp/
会社概要:https://requestgroup.jp/corporateprofile

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