不動産業務における「カスハラ(カスタマーハラスメント)」の実態をLIFULL HOME'Sが調査
3人に1人がカスハラを経験。「既に十分な対策が講じられている」会社は約1割に留まる
事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULL(ライフル)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊東祐司、東証プライム:2120)が運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」は、昨今社会問題化している「カスハラ(カスタマーハラスメント)」の実態について不動産業務従事者370名を対象に調査を行いました。
深刻化する「カスタマーハラスメント」。不動産業界ではどのような被害があるのか?対策はできているのか?
顧客からの暴言や不当な要求など「カスタマーハラスメント(以後、カスハラ)」と呼ばれる迷惑行為が増え、近年社会問題となっています。厚生労働省は2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」やリーフレット、周知・啓発ポスターを作成し(※1)、不動産業界においても国土交通省が2023年にマンション標準管理委託契約書を改訂し、カスハラ対応の規定等を追加しています(※2)。しかしながら契約・取引内容の複雑さや取引価格の大きさ、情報の非対称性などを背景に、カスハラは不動産取引においても依然として多く発生していると言われています。
そこで、不動産業務従事者370名を対象にアンケートを実施し、不動産業務におけるカスハラ被害の実態およびカスハラに対する会社の対策について調査しました。
※1:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しましたhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html
※2:国土交通省「マンション標準管理委託契約書を改訂しました」https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00064.html
調査結果サマリー
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カスハラ経験:直近の3年間でカスハラを経験したのは3人に1人。性年代別では30代以下の男性の被害が多い
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カスハラを受けるシーン:圧倒的に多いのが顔を合わせない「問合せ対応時」
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カスハラの内容:7割が「無理な要求」を経験
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企業の対策:「既に十分な対策が講じられている」会社は約1割。3割は対策の検討もされていない
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対策がされていない企業の従業員の4割が「自己判断」で対応。4人に1人は「我慢」
直近の3年間でカスハラを経験したのは3人に1人。性年代別では30代以下の男性の被害が多い結果に
週1日以上接客業務に携わっている不動産従事者に対し、直近3年間でのカスハラ被害経験を聞いたところ、「自身で受けたことがある」と回答したのは34.2%でした。パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」におけるサービス職の直近3年間のカスハラ被害の経験率は20.8%となっており、不動産従事者にとってカスハラはより身近な問題であることがうかがえます。
カスハラ被害経験を性年代別で分けると、「自身で受けたことがある」と回答した割合が最も高かったのは30代以下の男性(40.4%)、続いて40代の男性(37.0%)となり、全年代において女性よりも男性の被害割合が高くなりました。
一方で、「女性営業マンに対して強い口調で要求を通そうとすることがあった」「とにかく暴言が酷いお客様がいた。女性相手だととくに酷い。」「女性に対して理不尽な要求・高圧的な態度のお客様がいらっしゃいます。」など女性にのみカスハラをする人や女性に対してカスハラの度合いがひどくなる人がいることがうかがえるコメントも散見されました。
圧倒的にカスハラを受けやすいシーンは顔を合わせない「問合せ対応時」
直近3年間でカスハラを「体験したことがある」または「自身は受けたことがないが、他の従業員が受けているのを見た/聞いた」と回答した人に対し、カスハラを体験(見聞き)したシーンについて聞いたところ、最も多かったのは「問合せ対応時(電話やメール等)」で2位以降に倍以上の差をつけました。
問い合わせ対応は不動産購入における最初のステップです。まだ信頼関係がまだ築けていないことや顔を合わせていないことでカスハラも起こりやすくなるのだと推察されます。
カスハラの内容:7割が「無理な要求」を経験
直近3年間でカスハラを「体験したことがある」または「自身は受けたことがないが、他の従業員が受けているのを見た/聞いた」と回答した人に対し、カスハラの内容について聞いたところ、「無理な要求」(71.5%)と「高圧的な態度・発言(命令口調など)」(65.2%)が半数を超えました。
具体的なカスハラ被害からは、取引金額の大きさから無茶言っても良いと思われてしまうという不動産業界ならではの問題も垣間見えました。
<具体的なカスハラ被害>
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当社の業務範囲外で起こったご不満内容(引渡し後の管理会社とのやりとり、引越し屋さんの手際など)の責任を訴求され、当社の悪評を言いふらすなどと脅された。
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案内、商談など自分の都合の良い時間に合わせろ、夜間、定休日問わす高額な買い物なので客に合わせるのが当然だと主張されました。
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自分は足が悪いのだから車で家まで迎えに来て送るのが当たり前!それもお前らの仕事だろうがとの主張。無償でタクシーと同じ扱い。。。
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管理駐車場に違法駐車があり、借主に管理不行き届きと言われ、謝罪のために一席設けるよう要求された。断るとクチコミにネガティブな投稿をされた。
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早朝深夜問わず連絡、執拗な人格否定、あえて金融機関の電話で虚言を吐く、謝っても何度も謝罪を要求した上で『これでカスハラと言われるかもしれない事が恐怖』と布石をうちながら話してくる。
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建設工事を請負った際に、最終代金を支払わないために「わざと」施工箇所に文句をつけたり、近隣に聞こえるように「わざと」外で大きな声で施工について文句を言ったり。挙句の果てには毎夜「打ち合わせ」と称してファミレスに呼び出されて、夕飯代等を支払わされました。
「既に十分な対策が講じられている」会社は約1割。3割は対策の検討もされていない
会社として対策が講じられているかどうかについて聞いたところ、「既に十分な対策が講じられている」と回答したのは13.1%となりました。「対策は講じられていない」は過半数となり、さらにそのうちの33.4%は「検討もされていない」と回答しており、不動産会社の対応はまだまだ追いついていないのが現状のようです。
「会社として対策が講じられている」と回答した人に対し、具体的な内容を聞いたところ、「事例共有」(63.8%)のみが半数を超え、その後に「記録(録音・監視カメラの導入など)」(41.4%)、「相談(対応方法の指示やメンタルケア)窓口の設置」(29.3%)が続きました。
対策が講じられていない場合、4割が「自己判断」で対応。4人に1人は「我慢」
直近3年間でカスハラを「受けたことがある」かつ「会社として対策が講じられていない」と回答した人に対し、カスハラを受けた際の対応について聞いたところ、過半数近い43.8%が「自分の判断で対応をしている」と回答しました。さらに26.0%は「我慢をしている」としており、属人的な対応となってしまっている様子がうかがえました。
LIFULL HOME'S総研 中山登志朗(なかやまとしあき) 考察
高額商品を取り扱う不動産業特有の高圧的&無理な要求 疲弊する現場の実態が浮き彫りに
今回初めて不動産業界のカスハラ調査を実施しましたが、不動産業は売買&賃貸借の契約の前後に直接顧客と交渉し説明する場面が多く、具体例に列挙したような顧客からの高圧的でストレスフルな要求を受けるケースが数多く見受けられることが明らかになりました。
特に高額な不動産を購入するのだからこちらの言う通りにしろという無理&過度な要求が多く、アンケート結果では71.5%が無理な要求をされた経験があると回答しているように、まさに“お客様は神様”であるとの態度や物言いで担当者を困らせていることがわかりました。
もちろん多くの場合、これらの要求を断ることもできるのですが、断ると契約交渉を打ち切られたり、SNSに匿名でネガティブな投稿をされたりと“会社に迷惑をかけてしまうかも知れない”という心理的抑制が働き、断り切れずにある程度応じてしまうことも多々あって、事態の深刻さがよくわかる調査結果となりました。
また、不動産業は全般にカスハラを受ける可能性がある業務・場面が多いにもかかわらず、「会社側の対応が十分」との回答が僅か13.1%に留まっており、カスハラを受けた場合の対応も約半数の43.8%が「自分の判断で対応している」とのことで、対策は事実上ほとんど為されていないという実態も浮き彫りになりました。さらに26.0%の不動産業務従事者は「我慢している」とのことですから、まさに対策待ったなしの状況です。カスハラは、場合によっては強要罪、脅迫罪、恐喝罪、威力業務妨害罪などの構成要件に該当する行為になり得ることを、顧客も業務担当者も知っておく必要があり、これはポスター掲示だけでも抑止効果があると言われています。
ちなみに“お客様は神様”という言葉は、故・三波春夫さんが「舞台(客前)では神前で祈る時と同じく雑念を払い澄み切った心にならなければ完璧な芸を披露することはできない」とする心構えを語った言葉です。つまりお客様が神様なのではなく、神前に出る時のような心構えが自分の中に必要であるとの気持ちを説いた言葉ですから、客が(恰も神であるかのように)傍若無人に振舞うことを許す意味は微塵も含まれていないのです。
調査概要
期間:2024年6月20日 ~ 2024年6月27日
調査対象者:不動産業務従事者
調査方法:インターネット調査
有効回答数:383名
※小数点第二位を四捨五入しているため、合計が 100%にならない場合があります。
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