株式会社新経営サービス人事戦略研究所は、主に中小企業を対象に、組織・人事業務の高度化に向けたコンサルティングを行っています。30年以上にわたり各社ごとの実情とニーズにあわせた課題解決を支援し、実績とノウハウを積み上げてきました。特に近年は、人事業務のIT化の重要性を早い段階で認識し、HRテックの開発・運用を行うIT企業との連携も行っています。

2022年11月にHRテックの概要と導入・運用方法を知識ゼロの方でも分かるように解説した入門書籍『中小企業のHRテック入門～わが社でもできる！導入から運用まで～』を刊行しました。さまざまな職種や規模の中小企業の現場に入ってHRテックの有効活用を支援してきた我々だからこそ書ける内容を数多く盛り込みました。このストーリーでは、本書を刊行するに至った背景と込めた想いをお伝えします。

急拡大するHRテック市場

「HRテック」とは、簡単に言うと「人事業務を支えるITサービス」のことです。「AIやクラウド」を使って人事業務を補完するサービスといった方がイメージしやすいでしょうか。近年のHRテックにはそうした最新のテクノロジーも多く用いられています。

「人事業務を支えるITサービス」というと少し漠然としているようにも思われますが、実際には人材の採用から入社後の配置、教育や人事評価といった人事管理全般、あるいは日々の労務管理にいたるまで、ほぼ全ての分野をITでサポートすることが可能であると理解していただいて構いません。

いま、企業の現場で急速にHRテックの導入が進んでいます。グローバル規模では言わずもがな、日本国内においても、10年前には100億円にも満たなかった市場規模が急拡大してきており、今後2026年度までに数千億円に到達するという見込みも出ています。

中小企業でも効果的に利用できるHRテック

HRテックを導入している企業のほとんどは大企業であり、大半の中小企業には関係ない話だと思われる方もいるかもしれません。しかし、実際には中小企業での利用もどんどん増えてきています。

近年のHRテック事業者の中には、大規模システムを構築する資金的余裕のない中小企業をターゲットに、機能を絞って簡易に利用できる、比較的安価なサービスの開発を戦略的に行うところも出てきています。

例えば、タイムカードをなくして出退勤を全てクラウド上で管理できる仕組みを導入し、リモートワークを実現する。これだけでも立派なHRテックの活用です。コロナ禍で急激にリモートワークが普及し、社員を遠隔で管理するシステムが急遽必要になった中小企業も多かったのではないでしょうか。

大企業が活用するような高度なAIシステムまでは必要なくとも、リモートワークでの勤怠管理は日々正確に行う必要がある中小企業にとって、ピンポイントで活用できるHRテックのサービスは非常に有用なのです。

アナログな人事は不要になるのか？

「どれだけHRテックが普及しても、結局、ITサービスでは判断したり割り切ったりできない部分であるアナログな人事を完全に排除することはできないだろう」と思われた方もいるでしょう。その感覚自体は全く正しいと思います。本書でも、HRテックの活用により“アナログな人事”を完全に排除していくことを推奨しているわけではありません。

もちろん本来、人事の不透明な部分は透明化していくべきですし、作業が非効率な部分は効率化していくべきですが、経営の現場ではそのように理屈で割り切れないことも数多くあります。中小企業では特にそうでしょう。

必ずしも、デジタルツールを用いて人事情報を扱えば最適解が出る、というような単純なものではなく、敢えてアナログに、不透明非効率な選択をすることで組織が円滑に回ることもあります。

HRテックの使命とは「アナログな人事をよりよく補完すること」にあります。その意味では、アナログな人事が不要になることはありませんし、仮にあるとしても、まだまだ未来のことではないでしょうか。

アナログ・デジタル両方の視点での実情に沿ったHRテック入門書

株式会社新経営サービス人事戦略研究所では、「デジタル」の理屈だけで企業人事が回らない現状を十分に理解した上で、アナログとデジタル両方の視点を取り入れ、各社ごとのニーズや実情に合わせた課題解決を支援してきました。

『中小企業のHRテック入門～わが社でもできる！導入から運用まで～』は、我々がこれまでに積み上げてきた知識とノウハウを最大限に活かし、HRテックについて実務レベルで分かりやすく解説した中小企業向けの入門書です。中小企業におけるHRテックの選定・導入・運用時によくあるトラブルや、それを予め回避する方法をふくめ、HRテックを使いこなすためのコツを提示しています。

本書は、下記のような３つのパターンを想定して執筆しました。

まず、中小企業の経営者、人事担当者、システム担当者の方が、HRテックを自社で選定、導入、運用しようとした際に、コツや押えるべき流れを参照いただくパターン。続いて、HRテック事業者（メーカー、ベンダー）ご自身が他社の傾向や自社のサービスを磨いていただく際に参照いただくパターン。最後に、人事に関心があるビジネスパーソンに、啓発書等として読んでいただくパターンです。

実際、普段はHRテックに触れられていない方も、読んでくださったようで、インターネット上の書評では、「初めての分野の本でしたが、とても読みやすく、新たな知識が得られ視野が広がったと思います。」、「人事業務の効率化の先に何を目指すのか、それは企業の経営方針とどう結びついているのか、の言語化と説明、推進と正しい評価は必須だと感じました。」といった感想が寄せられました。

今後はさらにHRテックが急速に進化し、従来の人事業務のあり方を劇的に変えていくことが予想されます。人事×ITの活用力が企業競争力に直結する時代に、中小企業のHRテック導入は必要不可欠です。そんななか、本書がHRテックを活用して成長を目指す企業の一助になれば幸いです。

【書籍概要】

■タイトル　これ１冊でわかる　中小企業のHRテック入門　～わが社でもできる！ 導入から運用まで～

■発売日　2022年11月24日（木）

■著　者　森中 謙介（もりなか けんすけ）、町田　耕一（まちだ こういち）

■定価　本体1760円（税込）

■単行本（ソフトカバー）172ページ

■ISBN-10　4866674199

■ISBN-13　978-4866674193

■発　行　あさ出版

【書籍の詳細】

https://www.amazon.co.jp/dp/4866674199