株式会社レスキューナウは、危機管理情報サービスの専門企業です。事業の中核である危機管理サービス事業では、災害・危機発生時に迅速的確な対応を支援するクラウドサービスを主軸に、事前の備えの対応手順策定アドバイスや訓練実施、防災備蓄品の相談受付・提案・販売まで、事業継続対応をトータルでサポートする事業を展開しています。

2023年7月、レスキューナウは危機管理サービスにおいて全く新しいコンセプトに基づくオールインワンサービス「imatome（イマトメ）」をリリースしました。

このストーリーでは、代表取締役 朝倉 一昌が、企業が災害などの危機対応時に直面してきた課題解決のためimatomeを着想するに至った経緯、そして開発からリリースにあたり関係者がサービスに込めた想いやこだわりをお伝えします。

株式会社レスキューナウ 代表取締役　朝倉　一昌

必要な時に、必要な人へ、必要な情報を届けるために

レスキューナウのはじまりは2000年4月。当時急速に浸透が進んできたインターネットを活用して、必要な時に、必要な人へ、必要な情報を届けることによって、災害による被害を防止、軽減することを目指して創業しました。

しかし、創業後に直面したのは、災害時に私たちが目にしている様々な情報は、それぞれ異なる方法・タイミング・基準・粒度・頻度など、いわばほとんど仕様が統一されずに発信・流通されていて、私たちが目指すインターネットを含む情報技術を通じた高度な利活用に必要な基盤そのものが整っていないという現実でした。

そこで私たちは、24時間365日有人体制で危機管理情報を監視・収集し、それらを一元的にシステムで処理できるようデータ加工を行うため「レスキューナウ危機管理情報センター」を立ち上げ、自らその基盤運営を行うことから取り組みました。現在では、国内2か所で冗長性を持った運営体制を持つまでに発展しています。

情報支援から業務効率化支援のアプローチへ

その後、独自に取得した危機管理情報を起点に安否確認が行える安否確認サービスを開始しました。私たちが日本で最初にそれをサービス化したときは、地震情報をもとに危機管理情報センターで手動で対象者を抽出して行うというものでした。それでもお客様からみれば自動起動になっており、当時は画期的なサービス仕様であったと思います。その後、その仕様をシステムに実装して所謂地震情報などによる安否確認の自動起動として広く浸透していきました。

また、危機管理情報と自社拠点をデジタル地図上に重ねて、災害状況や影響範囲を可視化するマッピングサービスを開始したことによって、どこで災害が発生したのか、その災害の影響範囲にある自社拠点はどこなのかを瞬時に把握できるようにしました。

このように「刻々と変化する多様な情報」を提供するという情報支援的アプローチから、その情報をもとにユーザーが災害時に行う作業や判断の迅速化や負荷軽減、効率化といった業務支援的アプローチへと、私たちに求められる領域がより広く、深くなっていきました。

しかし、多くのユーザーの課題を解決する中で、私たちが提供しているのは災害危機対応のうちのある課題を部分的に解消する「点」の取り組みでした。

よりユーザーの課題を解決するにはどうしたらいいのか、社内で議論を深め、「企業の一連の災害危機対応過程をワンストップで支援する『線』のサービスを創り出す必要がある」という結論に至ったのです。

リスタートを強いられるも、「誰のために、何を解決したいのか」という原点に立ち戻る

2020年10月、「法人の災害危機対応全体をワンストップで支援する『線』のサービスを創り出す」ことを目指して、安否確認サービスやマッピングサービスなどの既存のサービスを統合したワンストップサービスを新たに開発するプロジェクトをスタートしました。

当初サービス内容を検討したときのメモ

既存のサービスの統合を目指す大きなプロジェクトであったため新たに参画するメンバーも増えていき、危機管理領域の現状と課題、既存サービスの特長などへの理解度がそれぞれ異なっていました。そこで認識を合わせていくためにメンバーの強い思いなども聞きながら多くの議論を重ねていきました。

その過程で改めて「誰のために、何を解決したいのか」という原点に立ち戻ることができ、既存のサービスの統合をするのではなく「災害対応における課題は何か、それはどうしたら解決できるか」、本当にお客様の課題を解決するためのプロダクト作りを目指し、チームを少人数に再編成してリスタートすることを決断しました。

ここから営業部門とのディスカッション、サービスをご利用中のお客様、過去のウェビナーに参加していただいた方へのインタビューを繰り返し、「いま、お客様が必要だと思うもの」をあらためて追及していくことを始めます。

「誰のために」像の具体化は比較的迷いなく進めることができた一方で、「対象とする課題」像は多くの時間を要しました。課題を具体化しようとすればするほど、より狭い内容やテーマに絞られていきつつも、どれかに特別に集中することなく適度に分散してしまうため、それらをある程度引きの構図で見ようとする視点と、その中のどれかに絞って深堀して見ようとする視点のどちらにするか、チーム内でも意見が揺れ、全員が納得して言語化できるまでは困難な道のりでした。

プロダクトビジョンの言語化で大変だったのは、課題の粒度をどのようにしていくかということでした。

解決すべき課題をピンポイントにすると、解決するインパクトが小さくなり、かつユーザストーリーからみても全体的なボトルネックが他に移るだけに見えてしまう。

一方で、課題の粒度を粗くすると今度は抽象的になってしまう。・・ということを幾度となく繰り返しながら考えていました。

目指すべきものに近いところまで来ているという思いを持つ一方で、明確に言語化できていないという中途半端な状況が続いていましたが、とにかく根気強く考え、議論し続けることでしかその先に進めないと思う一心で取り組んでいました。

また、自分たちの経験に基づく「これまで課題と考えてきたもの」が本当にユーザーにとっての「いま現在の課題」なのか、という点も幾度となく議論し、悩み、考えました。時にはモックアップを作って再度インタビューをするなど、時間をかけて「対象とする課題」像を見出していきました。

プロジェクトチーム再編後の最初の大きなハードルとなりましたが、その過程がチームとしての共通の理解を形成することにも繋がったと思っています。インタビューにご協力いただいた皆様にはこの場をお借りしてあらためてお礼を申し上げます。

災害危機対応を迷わない対応に変えるために。直面する課題に向き合い、答えを見つける。

多くのインタビューを通じて、災害危機対応は「想定外の事態が起こり得る」という特徴的なシチュエーションに目を奪われがちであるものの、実際にやるべきは「自社が置かれている状況を把握し、その後の状況を想定して事業継続上必要な判断と対応をする」ことであり、それ自体は普段から行われているほかの業務領域と変わらないのではないか、という仮説を持ちました。

一方で最も大きな違いは、災害大国と言われる日本においても、それは毎日行われるものではなく圧倒的に実施頻度が少ないということ。

この違いによって、多くの会社ではどう取り組むのか、具体化していくことの難しさに直面している実情が見えてきました。

「費用対効果を示すことが難しい」

「充分な人員体制や仕組み、ツール導入の予算などの確保など社内での優先度が相対的に低い」

「人員体制や仕組み、ツールを用意できても、実際の対応時には不慣れ感は否めない」

「刻々と事態が進む中で、作業の困難性、作業負荷、時間的プレッシャーなどに晒される」

これらの声を踏まえ、私たちが目指すプロダクトの方向性を、「災害危機対応を迷わない対応に変える」と決めます。

個別の課題に絞って深く切り込んでアプローチしていくのではなく、全体を課題群として引いた視点で捉え、あえて大きな粒度の課題解決をテーマにしようと考えました。

担当者が不慣れであったとしても、経験値が少なかったとしても、人数が揃っていなくても、「事業継続上必要な判断と対応」に不可欠な「自社が置かれている状況の把握」を、不安や迷いなく速やかに行えるようにすること。それを達成すべきゴールとして設定しました。

その実現のために必要な要素は何か。というアプローチで課題を構成し得る要素を分解していき、最終的には「大きく『社外（社会）の状況』『スタッフの安否状況』『拠点・事業の状況』『要対応事項の状況』の4分野の最新状況が常に収集できること」、と同時に「それらが取りまとめられて全体状況として分かること」の両立こそがユーザーの課題の最大公約数に当たると考えました。

これらの要素もそれぞれ単体としてはよく聞く課題ではありましたが、それら全体をスムーズに実施できるようにするためには、体制・手順・ツール・訓練の4要素が必要で、どの企業でも実現可能かという観点では難しい状況にありました。

どの企業でも災害危機対応は可能になる

レスキューナウでは、すべての情報について、配信する都度「いつ」「どこで」「何が」「どの程度」といった要素をタグとして付けることで情報一つひとつを制御できるようにしています。

この概念を応用して、「刻々と変化する4分野の情報収集」と「それらの取りまとめによる全体状況の把握」の両立を、ITサービスとして実現できると考えました。

それにより、体制・手順・ツール・訓練の4要素が揃わなくても、どの企業でも災害危機対応は可能になると結論付けたのです。

そうやってプロダクトの姿を具現化していくと、「既存サービスを統合してワンストップで利用できるようにする」ということと「いざというときも迷わずに危機/災害対応が行えるITサービスを提供する」ということは、似て非なるもので、そこに至るまでの過程はとても意味があったものと考えています。

このサービスの特長を表すものとして、今をまとめる＝imatomeと名付けました。

日本の災害対応を一歩前進させる新たな流れを生み出す

2022年12月、「災害危機対応を迷わない対応に変える」ITサービスとして、プロダクトの開発を加速していきます。普段日常的に使わないという特性からは目を逸らさず、代わりにツール操作の熟知を要せず、「集約されるデータを読み解かなくても理解できるUI」を目指すべきテーマに加え、新たにUX/UIデザイナーメンバーもチームに加わりました。

UX/UIデザイナーによって、当初は細かい情報がたくさん詰め込まれたものであったのが、グラフや図形を多用し半分以上の文字情報を削り、誰でも直感的に利用できるシンプルなものになっています。 3か月後の2023年2月末にはβ版ができ、翌3月に実施した社内ウェビナーで先行紹介しつつ、5月には東京ビッグサイトで開催されたオフィス防災EXPOでブース内での紹介を行いました。

そこでは、実際に災害危機対応を担われている多くの方々から、私たちが悩み、突き詰めてきたポイントに対して、思い描いていた通りの評価や期待のお言葉をいただくことができ、私たちが目指してきたことに間違いはなかったとの思いを強くすることができました。

※特許出願中

開発チームはその間も当初予定通り、7月のサービスリリースに向け鋭意開発を続け、2023年7月3日（月）、無事にサービスリリースを果たすことができました。

初回リリースの段階ではサービスの骨格となる機能に絞られていますが、今後は、初回リリースで実装を見送った様々な機能についても順次実装していく予定で、直近で進めているのは、地震だけでなく津波や気象特別警報など、あらゆる災害発生時に自動的に安否確認や拠点確認をできるようにすることです。

不測の事態にも慌てず、迷わず、しっかりとした対応ができる。imatomeを導入していれば安心して当たり前のようにそれが行える世界を目指していきたいです。プロダクトビジョンのさらなる実現に向け、ユーザーの皆様と一緒に様々な災害危機対応での実践と振り返りも行いながら、サービスを成長させていきたいと考えています。

そして私たちのチャレンジが、多くのユーザーの皆様とともに、日本の災害危機対応を一歩前進させる新たな流れを生み出せれば、どんなに素晴らしいことだろうかと思います。

【imatomeサービス紹介ページ】

https://www.rescuenow.co.jp/riskmanagement/imatome

【会社概要】

株式会社レスキューナウ

代表者：朝倉　一昌

本社所在地：〒141-0031東京都品川区西五反田7-20-9 KDX西五反田ビル1階

資本金：4億円

URL：https://www.rescuenow.co.jp/about

【お問い合わせ先】

●株式会社レスキューナウ　管理部 広報担当　

Tel:03-5759-6775（平日9時-18時 受付専用）

お問い合わせURL： https://www.rescuenow.co.jp/corporate/contacts

●株式会社レスキューナウ　営業部

Tel:03-5759-6064（平日9時-18時 受付専用）

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