私、高柳友子が専務理事を務める社会福祉法人日本介助犬協会は、介助犬の育成・普及活動を通して障害者の自立と社会参加支援を行なっています。介助犬とは、手足に障害のある方が不自由を感じる、落としたものを拾って渡す、手が届かないものを指示に従って持ってくる、冷蔵庫や引き出しを開けてものを持ってくる、段差や坂道などで車椅子を引っ張る、立ち上がりや起き上がりの補助をする、転倒などの緊急時に携帯電話や電話の子機を探して持ってくるなど、障害者のニーズに合わせた介助動作を行うよう訓練され、補助犬法に基づく認定試験に合格した犬のことをいいます。

　パートナーとなる障害者と共に合同訓練をし、犬の健康管理や社会参加をする際に介助犬の衛生管理や行動管理ができるようにしっかりと犬のことを学び、介助犬の管理責任者としての知識と技術をしっかりと身につけられたかどうかが、国が定める認定試験で試されます。認定後は正式な介助犬としてパートナーとともに、公共交通機関や公共施設のみでなく、飲食店やホテル、店舗、美術館、映画館、遊園地等々あらゆるところに同伴することが認められる存在となります。交通事故や突然発症した病気、進行性の疾患などで障害者になり、自立や社会参加も諦め、人生に前向きになれないまま引きこもってしまう若年障害者は少なくありません。介助犬は、自分のパートナーについて、障害者だ健常者だと判断しません。ただただ、褒めてー♪ 美味しいものくれるの？お散歩に行こう🐾 と前向きです。そのバリアフリーな心こそが、前向きになれずにいた人の心を開き、外に出てみたい、色々な人と繋がりたい、新たな挑戦をしてみたいという意欲をもたらす大きな力を与えてくれます。周囲の人たちの反応も大きく変わります。介助犬を見て笑顔になってから障害者に向けられた目は笑顔のままです。だから、見知らぬ人とも、「犬」好きの共通点から、会話が生まれ、自然と「何かお手伝いしましょうか？」という言葉も生まれます。犬がもたらす社会的潤滑油効果です。私たちはこれまでも日本で最も多い56組の介助犬ペアを送り出し、介助犬で「生きていてよかった」「この子といられて幸せ」という言葉を聞いてきました。残念ながらそのような素晴らしい介助犬が我が国には60ペアしかいません。私たちに求められるのは未だ介助犬のことを知らない障害者に知ってもらうための普及啓発活動です。

また、私たちの活動は個人・団体・企業からのご寄付で成り立っています。コロナ禍になるまでは普及活動のために年間300件以上のイベントや講演、セミナー等のために北海道から沖縄まで飛び回り、認知度を上げる努力をしてきました。街頭での募金活動も欠かせませんでした。しかしながら、コロナ禍で動きが取れなくなりました。多くの人と接するイベントや活動は全てキャンセルとなり、感染予防のために募金活動は控えることとしました。介助犬を要する障害者は全員基礎疾患があることから、体験会や相談会は実施できなくなり、継続指導や訪問調査もリモートでの実施を基本とせざるを得なくなりました。職員も感染拡大予防のために、テレワークを導入し、毎年開催している大規模な啓発イベント「介助犬フェスタ」もオンライン開催としました。

＜介助犬フェスタ2021の様子＞

しかしながら、障害者の皆さんからは、リモートの方が参加しやすい、とむしろ好評を頂いています。介助犬総合訓練センター～シンシアの丘～がある愛知県長久手市に行くには、家族や周囲の援助を得なくてはいけないから無理、と諦めていた方からも、「リモートなら家族全員で参加できます！」と喜んで頂きました。1−2ヶ月に一度開催している体験会、相談会も、これまでよりも参加者が増え、多くの職員と顔を見ながらのコミュニケーションが取れ、デモンストレーションを見ながら、自宅で見ていたからこそ、自分の家で介助犬がどんな風に助けてくれるかがイメージしやすかった、という声も頂きました。

＜オンライン講義の様子＞

＜オンライン講義の様子＞

　＜オンライン講義の様子＞

　全国でのイベントや講演会等が無くなったことで、募金やイベント講演費用として1800万円余りが減収となったが、どこからでも参加しやすくなり障害者の皆さんから喜んで頂けたことは何よりのメリットとなりました。「コロナで大変でしょう？頑張って」とご寄付を下さる方も多く、より多くの発信と全国の障害をお持ちの方とのコミュニケーションに活かすべく、機材を充実させ、発信力を身につけるべく職員も皆日々努力しています。困難の中にも、本当に励まされることが多い1年余となりました。

そんな中でも何よりも感謝すべきは犬という明るい前向きな存在と常に共にいられたことでした。犬たちは、コロナへの不安など微塵も感じることなく、むしろ今までよりもみんなと一緒にいられる時間が多い♪ と喜んでいるように感じています。