スマートドライブは創業以来、モビリティデータという”ビッグデータ”と向き合って事業を展開してきました。こうした知見や経験を活かし、最近では業種業界を越えた多方面とのパートナー連携が加速しています。

スマートドライブが様々な連携を進める理由は何なのか。取締役の元垣内に聞きました。

ビッグデータとの向き合い方

昨今、”ビッグデータ”にはかつてないほどの注目が集まってますが、データにはどのように向き合うべきだと考えていますか？

まずサービス開発や事業開発などの観点で言いますと、最初から時間をかけて壮大に作り始めるというよりも、段階的に取り組み、その都度結果に向き合いながら軌道修正して進化させていく、ということが必要だと感じています。

目指すゴールは壮大でいいのですが、土台の段階から完全性を求めすぎてしまうと、本質的なサービス作りや価値作りに至る前に疲れてしまう、準備に時間がかかり過ぎてしまい本末転倒になってしまう、というのはよくあることです。

ですので、「ビッグデータを集めてから何かする」「正確に、網羅的に、詳細にデータを集めてから活用しよう」とするのではなく、もっと初期の段階、例えば「まずはデータが取れています」というような、”スモールデータ”でも価値が出せるところを設定して進めていくべきだと思います。

また実際にスマートドライブでは、Web上のデータだけではなくリアルな環境でのデータを扱っているので、当然正確性や網羅性には限界があります。それでもサービスが破綻しないように、価値が出るような領域を見定めながら、マイルストーンをつくり、進めていくべきではないでしょうか。最終ゴールから逆算し、段階的に次のステップに進むためのハードルに対して仮説を立て、きちんと乗り越えられたのかという検証を行っていくべきだと考えています。

統計学の有名な言葉に「Garbage in,garbage out.」という言葉があります。目的なく集めたデータは、たとえそれがビッグデータになったとして有効には扱えない、良い結果は生まれないんですね。ですので、将来からの逆算で越えるべきハードルを設定し、段階的に進めていく。そういう向き合い方をすべきでしょう。

新しいことを始めようと思ったときは、「出来るところからやっていく」というほうが取組みやすいのでしょうか？

そうですね。ただ、出来ることだけをやっていくと迷子になってしまうので、将来からの逆算をすることが大切です。そして、いきなり将来のことをやろうとしても大変なので、そこに向かっていく中で乗り越えないければいけない壁を設定し、段階的に進めていくのがいいかと思っています。

パートナー連携で目指すもの

最近では「パートナー企業との連携」事例が増えています。どのような連携の形が多いのでしょうか？

モビリティやMaaSに関わる新規サービスや事業開発、既存のモビリティデータやセンサーデータを軸にしたDXの推進など、いわゆる「山の登り方」を連携して一緒に進めていけないか？という話を頂くことが多いです。そこに対して、単なるツールベンダーではなく、ノウハウや進め方自体を提供できるということろがスマートドライブの強みであると思います。

連携していく中で、スマートドライブはどういう存在でありたいと思っているのでしょうか？

私たちは自社でデバイスの開発や調達、解析をしていますし、実際のサービス開発からシステムの運用、そしてマーケティング・営業・CSも自社で行っています。ですのでパートナー企業様にとって、共に汗をかける存在、お客様の悩みや課題に寄り添って、一緒に山を登れる存在になれると思っています。

途中の足回りというか下準備のところに我々のアセットを使っていただき、パートナー企業様には、最終的な価値づくりに集中してもらえるような、そんな存在になれるといいなと思っています。

少し幅を広げて「社会課題に対して」スマートドライブはどのように関わっていくのでしょうか？

基本的に社会課題も企業の課題も同じだと考えています。社会において新しい価値を作っていくときも、初めから壮大にやっていくというよりは、段階的に接点を持ち、その後だんだんブラッシュアップしながら、ソリッドなサービスに仕上げていくとか、社会の課題を本質的に解決できる基盤として使っていくというような、そんな社会課題との関わり方があるかなと思っています。

例えば『クラウド車両管理システム SmartDrive Fleet』のような法人向け車両管理システムを使って交通事故を減らしたいというケースがあったとします。皆さんゼロから何らかをつくってフリートマネジメントをしたいというよりは、その先のお客様の課題を解決していきたいと思われているはずです。そういった最終的な問題を解決したり新しい価値を作っていくうえでの土台として、弊社のサービスをつかってもらえるような存在に価値があると思っています。

他にも『Mobility DWH』で言えば、これは暗中模索に機能を作りこむ前に、移動のデータと様々な他のデータを組み合わせながら仮説検証とか効果検証をスピーディにやれる仕組みです。つまり、アカウントを作るだけで、我々が普段つかっている基盤をそのまま提供しますというやり方で、まさにスマートドライブのアセットをオープンにして使ってもらうというものです。

以前行った連携企業様へのインタビューでも、「スマートドライブのアドバイスやデザイン力、モビリティサービスをつくってきたノウハウが一番有難かった」というコメントを頂きました。技術的なところだけではなく、ノウハウのサポートも積極的に行う予定なのでしょうか？

もちろんです。技術的なところだけではなく、先ほどお伝えした通り”山の登り方”自体を一緒にやってもらえないかというお話が多いので、単なるツールベンダーではなくそのノウハウから進め方自体を提供していきますし、そこが強みです。

ちなみに「だいたい皆さんここで躓く」みたいなものを一つ挙げるとしたら何でしょうか？

１つ挙げるととしたら、「開発の進め方」でしょうか。我々はものづくりやハードウェアに強みを持つ企業様と共創事業をさせて頂く機会が多いのですが、そういった企業様では、一度世の中に出した後に少しずつアップデートしていくということは基本ではないため、文化としても、いわゆるウォーターフォール的な開発や進め方が当たり前になっていることが多くあります。つまり、「完成系じゃないのに出せないよ」みたいな考え方をされる方々が多いので、そこに対して「製品を市場に出しながら改善していきます」「現状レベルでリリースしても影響ない部分から、進めていきましょう」といった話を当たり前にしていくことです。これは、Web業界やマーケティング領域などで様々な施策をデータドリブンで回しながらプロジェクトを進めていた人たちがスマートドライブにいるからこそ、出来る手法だと思います。

「コネクト」で広がる世界

スマートドライブの提供価値は、ものづくり企業様と同じような土俵に乗れることに加えて、様々な業界業種で経験積んだ人が集まってきているところにもあると。

そうですね。会社のコーポレートビジョンにある「移動の進化を後押しする」という、我々一社だけでは絶対になしえないことを目指しています。ですので基本的な考え方として、様々な企業様や自治体様のアセットや技術とコラボレーションし、高みを一緒に目指していこうと考えています。

自社デバイスだけを売って儲けていればいいという発想ではないので、様々な機器や事業とより繋がりやすくする、その前提で事業も開発も進めています。その中で人材に関しても、何もない中で進めていくところが上手な人たちが集まっています。「会社のビジョン」と、それを「実現するための事業や技術的な基盤」、それを「実行する人」、この三位一体が付加価値ではないでしょうか。

その三位一体という考え方は創業当初から考えていたことなのでしょうか？

会社のビジョンについては、創業当初から変わっていませんし、他の２つについても似たような考え自体は昔からあったと思います。ですが、会社の歩みと共に自分たちで実感するようになったというのが近いと思います。

これまで、非独占的・横断的なパートナーシップからなるオープンなエコシステムの構築を目指して、それを実現するために様々なパートナー様と共創しながら、事業及び技術基盤をつくってきました。しかし、何もなかった厳しい時代には、〇〇だけのためとか、どこかとエクスクルーシビティを結んで、というオープン性とは逆行した話もあったと思います。しかし、それをやってしまうと目指しているところが実現できなくなるというので、頑なに代表の北川が信念を貫いたというのは大きいのではないでしょうか。北川の胆力の結果みたいなところはありますね。

また、人の部分に関しては、創業当初には想像していなかったぐらい優秀で経験のある多彩なメンバーが集まってきているので、「これは絶対にいけるぞ」という自信と期待が日に日に増してきています。

そこが根底にあるからこそ、パートナー連携によって高い山を目指しましょう、という話に繋がっているのですね。

そうですね。そうして生まれた連携実績がまた新たなパートナーを呼び、新たな機器と連携できる仕組みをつくっていく。連携されることで異質のものが入ってくるので、それでもきちんと解析ができてサービスが成立するような技術的工夫をしていくことで、結果的に技術的にも競合優位性が高まってくる。そうすると今後はまた新たな繋がりを積極的にできるようになる…このサイクルを目指しています。

サービスもパートナーもコネクトしていくということでしょうか？

現在考えているのは、まずはモノをコネクトしながらサービスをつくっていくですとか、既存事業のDX改善を進めていくみたいなところの、支援をしていくこと。そして、そういう事例がいくつか出来てきた後に、「この会社の〇〇事業とこの会社の△△事業をコラボレーションして、このデータ同士を繋いだら、さらに大きな価値が生まれるよね」ということができると、本当に素晴らしい世界だと思います。

まさに「コネクトする世界」ですね。データを繋いで大きな価値を社会に提供してきましょう！本日はありがとうございました。