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技術革新、働き方の多様化、グローバル化など、企業を取り巻く環境が大きく変化する今、企業の人財育成の在り方が問われています。ジョブ型をベースとした働き方が進展する中で「事業成長と、従業員一人ひとりの成長をどのように実現するか」は、企業にとってますます重要な課題となるでしょう。 

私たち株式会社日立アカデミーは、日立グループの人財育成を担うCoE(※)として、「事業起点の人財育成」と「個人の成長意欲・興味関心に基づく学び」の加速をめざし、さまざまな人財育成施策を日立グループにて推進しています。

ここでは、2023年9月開催「HR Summit 2023 ONLINE」における当社講演の、ダイジェストレポートをご紹介します。(※Center of Excellence) 

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「日立におけるDX人財育成、リスキリングの取り組み～ DX人財育成のポイントと自律的な学びを促進する新たな挑戦 ～」(HR Summit 2023 ONLINE 講演)

ビジネス環境の変化に対応できる人財の確保、とりわけDX 人財の育成およびリスキリングは、多くの企業にとって喫緊の課題である。日立グループでは、コーポレート・ユニバーシティの株式会社 日立アカデミーが、その課題解決の重責を担っている。講演では事業戦略本部 担当本部長 松田欣浩が、日立のHR 部門と連携し取り組むDX 人財育成について、取り組みの概要やポイントなどを紹介した。

株式会社 日立アカデミー 事業戦略本部 担当本部長 松田欣浩

人財育成のCoEとしての日立アカデミーの位置付け

本講演では、

（1）人財育成のCoEとしての日立アカデミーの位置付け

（2）日立グループの考えるリスキリングとは

（3）今直面している課題に対応する「DX人財育成」

（4）学び続ける文化の醸成への挑戦

といった4つのアジェ ンダをもとに、「日立におけるDX人財育成、リスキリングの取り組み」をご紹介していきます。

日立アカデミーは、人財戦略の策定から研修の開発・実施、評価に至るまでを一貫して支援する、人財育成企業です。DX研修、IT研修、OT研修、ビジネススキル研修、経営研修などの幅広い分野にわたり、日立グループ内外に年間約1,300のコースを提供、のべ約14万人の方に定期開催の研修を受講いただいております。

また、当社が強みとするデジタル関連コースにおいては約130コース、年間のべ約3万人の方にご活用いただいております。 当社はお客さまをご支援するほか、日立グループにおいて人財育成のCoEとして、日立のHRと連携し日立の事業成長に貢献しています。 日立グループが進める、IT、OT（モノづくり・専門技術）、プロダクトを活用して顧客とともに社会課題を解決する “社会イノベーション事業”には、これらを統合できる人財の育成が不可欠です。そのため、それまで分野ごとに分 かれて存在していた日立グループの研修機関が持つ知見・経験を結集し、DX研修の体系を整備する必要があ りました。

そこで2019年、IT人財の育成を担う「日立インフォメーションアカデミー」と、ものづくりの強化を担う「日立総合技術研修所」、ビジネス研修と経営者育成を担う「日立総合経営研修所」の日立グループ3社が合併し設立されたのが、日立アカデミーです。

※Center of Excellence ／組織横断的な取り組みを進めるため、人財やノウ ハウを1つの拠点に集約したもの

「リスキリング」は経営マター

 続いて、「（2）リスキリング」です。リスキリングとは、新たな職業（職務）に就くために必要なスキル、あるいは今の職業（職務）で今後必要とされるスキルを獲得する（させる）取り組みです。

Googleにおける「リスキリング」の検索ヒット数を見ると、2020年末あたりから急速に件数が伸びています。デジタルテクノロジーの急速な発展、既存スキルの陳腐化、DXによる産業構造の転換により新たなスキルの獲得が求められています。また人生100年時代の到来、新卒一括採用からの転換、ジョブ型人財マネジメントへの転換など、働き方も変化しているなかで、リスキリングにより常に学び続け、変化・アップデートしていくことが個々人に対して求められている一方で、企業においても、人財獲得の難しさ、獲得コストの増大からリスキリングによる人材育成が今まで以上に重要となっています。

また、AIによってなくなる仕事と新たに生まれる仕事があるといわれています。自社でどの仕事がなくなり、どんな仕事が生まれるのかを知っているのは事業戦略を立てる企業側です。だからこそ、新たな職業に必要なスキルを人々に習得させる責任は企業にあります。リスキリングは経営マターであることを認識する必要があるのです。

日立グループの「DX人財育成」の取り組み

ここでは、「（3）DX人財育成の取り組み」をご説明します。事業計画と人財育成は密接に関係しています。日立においては、デジタル事業を明確化したうえで必要な人財のケイパビリティ（能力、強み）と規模を特定し、採用、育成、M&Aによって強化しています。

独立行政法人情報処理推進機構（IPA）の資料によれば、日本では「DXを推進する人財像を設定し、社内に周知している企業」は18％に過ぎず、人財像を「設定していない」企業が40％にも達しています。

人財のスペックが明確でないと採用・育成も進みません。リスキリングを進める際も、必要な人財のスペックを明確化し、どんなスキルを強化すべきか決める必要があります。まずは、事業ポートフォリオの変化を確認し、ポートフォリオを実現するために必要な人財のスペック・規模の検討、必要な人財を採用・配置・育成でどう実現するかの検討、育成によってどのスキルを強化するかの設定と、進めていくことになります。事業戦略に基づいた人財戦略があることで、施策や育成プログラムを決めることができるのです。

とりわけ、DXの推進にあたっては、人財部門と現場とのイメージ合わせが欠かせません。経営層、IT部門、業務部門などの関係者が対話を通じて共通理解を形成し、施策に取り組むことが重要です。それは、自社が目指すDXがどのようなものなのかによって必要とされる人財育成も大きく変わるからです。現場の課題がわかるのは、現場の人間です。いくらデジタル技術を持ち合わせていても、どんな課題を解くのかが明確でないと何も進みません。

 現場とIT部門が歩み寄るためには、現場の人間とIT部門・デジタルの専門家が会話できるよう、DXについての共通理解・知識を身につけることが重要です。

日立におけるDX人財の育成では、「ベーシック」、「アドバンス」、「プロフェッショナル」と、その基礎となる「リテラシー」というレベルが設定され、レベルごとに日立アカデミーの研修を実施しているほか、「プロフェッショナル」レベルにおいては専門部署でのOJTによる育成プログラムも導入しています。

ここからは、「デジタルケイパビリティ研修体系」「垂直立ち上げ研修」「製造業のDX研修体系」「デジタルリテラシー研修」といった4つの観点で日立のDX人材育成の取り組みについてご紹介します。まず「デジタルケイパビリティ研修体系」ですが、日立では事業に必要なケイパビリティを独自に定義し、各ケイパビリティに対応した研修体系を整備しました。一方、経済産業省とIPAでは、DX推進スキル標準として5つの人財類型を示しており、これらに対応した育成メニューも用意しています。      

現場におけるDX推進人財には、データサイエンスのスキルは求められますが、データサイエンティストになる必要はありません。DXのケイパビリティを習得し、デジタル専門人財と連携できるDX対応力を身につけることになります。一方、デジタル専門人財の場合は、データサイエンティストとしての専門的なスキルが必要となります。

次は、「垂直立ち上げ研修」です。企業の課題として、実務レベルの人財が至急必要という場合もあります。かといって即戦力の採用は難しい。そこで、短期間でレベルを引き上げる「垂直立ち上げ研修」を開発しました。

短期間集中型データサイエンティスト育成実践講座の場合、さまざまな研修を個別に受講するのではなく、3ヵ月程度の短期間でそのジョブに必要な知識・スキルを学んでいきます。出席率、単元ごとのテスト、修了試験の結果により修了判定があるため、社員のモチベーションを維持しやすいことが特徴です。機械学習エンジニアリングの専門家が講師を担当し、サポート体制、随時質問・相談ができるコミュニティを整備しています。受講を完了すると、機械学習・ディープラーニングの実業務にアサイン可能なスキルを獲得できるのです

続いて、「製造業のDX研修体系」ですが、OT・プロダクト系事業体における技術者がDX推進に必要な知識・スキルを体系的に身につけるための研修を2022年度より展開しています。必要なリテラシーからエンジニアリングの高度化、オペレーションの高度化、プロダクトのコネクテッド化までの有用な知識とスキルを学べる製造業向けDXとして研修を体系化しています。

最後に、「デジタルリテラシー向上研修」についてです。全社員のリテラシー向上を図るデジタルリテラシーエクササイズを2020年度から展開し、のべ16万人が受講、グループ外のお客様5000人にもご利用いただきました。現場の方が、IT部門や専門家と会話できるようになるための共通理解・知識を習得することを目的とした研修です。

変化への対応や自身のアップデートに向けて重要なのは、「学び続ける」こと

最後は、「（4）学び続ける文化の醸成への挑戦」についてです。DXがもたらす産業構造の転換により、仕事・職務が変わる人も出てきます。これまでと同じ仕事・役割でも、データを活用するための能力などが求められるようになり、新型コロナ下ではリモート会議でのコミュニケーション能力が、生成AIの急速な発展によってAI活用スキルが必要となっています。こうした変化に対応するためには、学び続けることが重要です。

会社は仕事とそれに必要なスキルを明確にし、個人は自分のありたい姿を考え、上長と継続的にコミュニケーションを図りつつ、自分に合ったキャリア形成をしていく。それが日立の目指す「ジョブ型人財マネジメント」です。個人は自分のキャリアに責任を持つ必要があり、自分に足りないスキルの開発に取り組み、自身の成長のために常に学び続け、自分をアップデートしていくことが重要となります。

学びの種類に着目すると、研修以外にも、Webの記事や書籍などコンテンツはさまざまで、人から学ぶことも多く、情報収集など業務に関連した学びは日々起きています。多忙で学習のためのまとまった時間を取りづらいことを考えれば、学びを拡大させるためには、研修以外の学びにもっと目を向ける必要があると感じました。そこで2022年10月から提供を始めたのが「学習体験プラットフォーム（以下LXP／Learning Experience Platform）」です。

LXPは、学びを身近にし、自律的に学ぶこと、学びの習慣化、互いに学び合うことを目指し、学び放題コンテンツ、学習促進習慣化支援、利用状況レポートなどを提供しています。従来は、仕事から離れて学ぶ、ある程度時間をかけて学ぶというOFF-OJTの学びが中心で、この学習の管理にはLMS（ラーニングマネジメントシステム）が利用されています。それに対し、日々の学び、業務を通じた学びをサポートするのがLXPです。LMSに置き換わるものではなく、従来型のLMSによる学習に、LXPによる小さな単位の学びが追加されるというイメージです。

LXPには日立の標準ジョブが登録されています。ジョブを選択すると関連スキルが列挙されます。自身が強化したいスキルを登録すると、AIがコンテンツをリコメンドしてくれますので、それらを社員が学習する仕組みとなっています。学習はスマートデバイスでも可能で、コンテンツには3分程度の動画も多く、隙間時間で学習することができるのです。より効率的・効果的なスキル習得のため、一連のコンテンツを学ぶ順に整理した「パスウェイ」も提供しています。

ただ、プラットフォームを導入すれば学びが進むというものでもありません。学びを促進・習慣化するために「行動デザインに基づく活用促進」「学習コミュニティでの活用」「データ分析に基づく学習支援のパーソナライズ」といった３つの取り組みを行っています。

「行動デザインに基づく活用促進」では、LXPの活用が習慣化されるまでの状態を行動ステージとして定義し、ステージを進めるための施策を、日立の行動デザイン研究者と連携して実施しています。「学習コミュニティでの活用」ですが、こちらでは、データサイエンス部会など日立内の既存コミュニティとコラボし、LXPを活用したコミュニティ活性化施策を実施しています。

「データ分析に基づく学習支援のパーソナライズ」についてですが、LXPは現時点で3万7000人以上にご利用いただいています。蓄積された学習データを活用し、個人に対して学習の促進支援を行おうというチャレンジを、日立のAI・データ分析研究者と連携して進めています。

学びを提供するのは研修部門だけとは限りません。社内の知が蓄積され、それをみんなが利用し、さらに学びを進める。そうした知のプラットフォームをLXPは目指しています。他者とのコラボレーションによってイノベーションを起こしていくには、自身の専門性を高めつつ知識の幅を広げることも重要です。知識の幅を広げるために学びをもっと身近な存在にする。遊び感覚で気軽に学ぶということを実現していきたいと思います。

LXPの利用拡大によって個人が成長し、個人の知が組織の知となり、社員の成長が組織・会社の成長につながる。そういった学びを実現すべく、今後も一人ひとりの学習活動に寄り添い、チャレンジしていきたいと思います。

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株式会社 日立アカデミー

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