真のオンライン化でクルマに新たなエンタテインメントを　2019「サイバーナビ」誕生秘話

サイバーナビ

2020年7月29日 13時00分パイオニア株式会社

高速データ通信を活用し、オンデマンドで高画質・高音質なコンテンツを楽しめるカロッツェリア「サイバーナビ」を新発売

―常に常識を覆しドライブを革新する―。

パイオニア株式会社のフラッグシップモデルとして進化を遂げてきた「サイバーナビ」。2019年にフルモデルチェンジした当モデルは、従来の優れたナビ能力や高い基本性能などの強みはそのままに、市販カーナビゲーションとして初となる車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応することで、高速データ通信を活用したエンタテインメント機能を強化し、今までにないカーナビゲーションとして進化した。

常に先進的なスペックとデザイン、ナビ精度にこだわり続けた「サイバーナビ」が、今回新たにオンライン領域にフォーカスした狙いとは。

その誕生秘話や商品に込められた想い、開発の裏側に迫るべく、開発担当である橋本、山内に話を聞いた。

パイオニア株式会社モビリティプロダクトカンパニー

市販事業統括グループ商品企画部橋本岳樹（ハシモトタケキ）

2003年にパイオニアに入社。

学生時代にカーオーディオが好きになり、パイオニアへ入社。入社後11年間はエンジニアとしてカーオーディオ、カーナビゲーションの電気設計に従事。

その後2014年に企画に異動し、2016年より「サイバーナビ」を担当。

パイオニア株式会社モビリティプロダクトカンパニー

市販事業統括グループ商品企画部　山内博史（ヤマウチヒロフミ）

1999年にパイオニアに入社。入社後12年間、国内の市販カーエレクトロニクス製品の営業を担当し、その後国内のカーエレクトロニクス製品のマーケティング業務を経て、2018年から企画業務に携わっている。現在は商品企画部にて「サイバーナビ」、「楽ナビ」などカーナビゲーションの企画を担当。

オンライン化が進む生活の中で、カーライフにも革新を

― これまでの「サイバーナビ」にはない“オンラインコンテンツ”を盛り込むことになったきっかけは？

橋本：スマホでYouTube動画を見ることが人々の生活の一部となっているように、自宅、交通機関、飲食店など、さまざまな場所がネットワークに繋がっており、それを活用した過ごし方がもはや当たり前の世の中になっています。では、「クルマはどうか？」と聞かれると、コネクテッド化が進んではいるものの、どうしても他の生活シーンに比べると出来ることが限られるよね、という声が多い。我々自身も、クルマの世界のオンライン化を進めていかねばならないという課題認識は持っていましたが、大容量ネットワークを使いづらいという車内通信インフラの壁がありました。

山内：マーケティング担当時代にイベントにいらっしゃる一般のお客様やお取引先様、現場の営業担当者から、「カーナビってスマホと比べて何がすごいの？」という質問が多く寄せられていました。もはや人々の生活から切り離せないスマホに対する優位性を明らかにできないと、現代のお客様に商品に興味をもっていただき、買っていただくことが難しいため、その優位性やお客様のメリットを明確にする必要がありました。

橋本：年々クルマに求められるコンテンツが変わってくる中で、我々の開発するナビをどのように進化させるべきか。その課題に直面していたタイミングで、NTTドコモ様との協業の話をいただきました。市販ナビとして初めて車載向け新サービス「docomo in Car Connect」に対応し、サイバーナビのWi-Fiスポット化が実現することで、車内でできることを格段に広げられるきっかけになった。まさに渡りに船でしたね。通信を活用したさまざまな提案を行えるきっかけになったんです。

山内：マーケティング時代から今回のサイバーナビの開発に携わっていますが、ナビメーカーとしてのプライドと意地を集合させた商品になったと感じています。従来からナビゲーション性能にこだわっていたサイバーナビという商品に、ドコモ様との協業によって長年ネックであった「利用料を抑えた車内の通信環境」を整えることができた。それによって、単に車内がWi-Fi化するだけでなく、エンタテインメントに特化した新しいコンテンツを楽しめるうえ、いつでも新しい地図を使ってドライブできるという当社の強みを生かした非常に強い商品を作り上げられたと思っています。

多くの人に共有される価値を提供したい

― 今回の「サイバーナビ」の魅力とは？

橋本：ドコモ様をはじめ、多くの企業と協業することで実現した機能やコンテンツが今回の「サイバーナビ」の大きな目玉になっています。

自宅レコーダー内の映像・録画コンテンツをサイバーナビで遠隔再生できる「レコーダーアクセス」もその一つ。この機能を搭載するために、大手ブルーレイレコーダー各社に足を運んで何度も説明し、納得いただくことで実現に至りました。ここまで多くの企業と手を結ぶことは、これまでの当社の開発においてはあまり前例がなく、不安もありました。しかし、今回、各社の担当者の方と直にお話をさせていただく中で私が実感したのは、「世の中に共感される新しい価値提供」という目標に対しては、会社の枠を超えて皆さんがとても前向きになってくださる、ということです。もちろん実現にあたっては苦労もありましたが、実体験としてこのような経験をできたことは、自分の企画人生においてとても有意義なものだったと感じています。

山内：サイバーナビ＝先進機能が搭載された尖った商品、というイメージを持つ方も多いように、当社が培ってきたナビゲーションの性能や技術を集大成したフラッグシップモデルとして、その思想は今も昔も変わりません。しかし、今回の「サイバーナビ」は「ごく一部の人に愛される商品で終わりたくない」という開発者の強いこだわりの中で生まれた商品。体感いただいた方に必ず良い商品だと思っていただける自信があるからこそ、一人でも多くの人に手に取っていただきたいと強く感じています。

橋本：そうですね。私の周りでも、社内外を含め、実際に使った人からの反響が非常に高い。「これまで使っていたナビと比べ物にならない」「もう他のナビに戻れない」、という声が多く、企画担当として非常に喜ばしく感じています。何より、実際に使用した人からの評価が高いことが嬉しいですね。

年々コモディティ化が進むカーナビの中で、サイバーナビは高価格帯の商品ですが、それでも魅力を感じて購入してくれた方々からの評価が高いという事実は、自分たちが目指した姿が間違っていなかったのだという、自信につながります。

山内：そうだよね。実際、購入いただいたお客様からも、レコーダーアクセスやストリーミングビデオ（YouTubeのブラウザ再生）など、エンタテインメントを突き詰めた目玉機能に対して高い評価をいただいているし、個人的にも使っていますが、家族からの評判も良いです。

また、発表会の場の盛り上がりも、例年以上だったと感じています。「今年のサイバー、こんなに変わったんだ！」「この機能は喜ばれるね」という声が多いなど、説明員としても非常に手応えがありました。

― 商品化に至るまで一番苦労したことは？

橋本：当初、多くの方に「本当に車内で安定したストリーミング再生環境を整えられるのか？」と心配されました。ドコモの回線を使うので大丈夫だろうとは思っていたものの、なにしろ今までにない機能なので、その根拠がない。だから、とりあえず実走しまくりました（笑）。東京⇔名古屋間の往復では、それぞれ東名道と中央道を使ってルートを変えたり、日帰りで金沢に行った際は、北陸自動車道と関越自動車道を使ったり。山中湖付近を一周したり、九州地方も走りましたね。少なくとも4～5000キロは走ったと思います。それで身をもって確認できたのは、やはりドコモの回線は本当に安定しているな、ということ。動画やナビゲーションを同時に起動していても、安定した環境で動作することを裏付けることができました。

山内：苦労したことは2つあります。1つ目はストリーミングビデオの調整。今回のサイバーナビは、もともと複合動作の多いカーナビと、ストリーミング動画を同時に画面上に表示、動作させるようにしています。実際にナビの地図画面を表示しながらYouTubeの動画を再生する、いわゆる2画面表示を実現するため、本体のパフォーマンスを考慮しながら、両者が正しく動作するようチューニングするのには非常に苦労しましたね。技術担当者には、本当に発売ぎりぎりまで調整してもらいました。

2つ目はデザイン。ハードウェアとソフトウェアの両面のデザインにおいて、先進性を追求しました。従来のナビゲーションのような大きなハードキー、カラフルなアイコンでわかりやすさを優先したデザインではなく、先進性やスマートさ、カッコよさにこだわったフルフラットなハードデザインと、シンプルな中にセンスが感じられるソフトデザインにしました。

正直、「ここまで挑戦したデザインにしていいのか？」と企画担当としても躊躇しましたが、デザインや技術、営業部門と納得がいくまで議論を重ね、「サイバーナビ」だからこそ挑戦し得る先進的なデザインということで、決定しました。その結果、魅力的なデザインが完成し、その年のグッドデザイン賞も受賞することができました。

― これまで以上に「ドライブを革新」したモデルとなった「サイバーナビ」。お二人が考えるこれからの「サイバーナビ」が目指す姿とは？

橋本：今回は企画・技術・営業サイドで本当によく議論して出来上がったモデルだと改めて感じています。当たり前のことかもしれないですが、実現したい機能やコンテンツへのハードルが非常に高い中、何をするべきか、どういう手法をとるべきか、そのためのソリューションを考える各プロセスにおいて、部門を超えて連携を取って完成した商品です。

では今後「サイバーナビ」は変わっていくのか、というとそうではなく、「カロッツェリアといえばサイバーナビ」といわれるように、当社にとっての象徴モデルだからこそ、従来から大事にしてきている「先進的」「尖った」という部分はこれからも守っていくべきだと思っています。

山内：これまでの「サイバーナビ」は、主にナビ機能で“サイバーナビらしさ“を演出することが多かったのですが、今回のモデルでは、より多くの人に魅力が伝わるようにオンラインのエンタテインメント機能に注力しました。でも、橋本君の言うように「時代の最先端を行くカーナビゲーション」という「サイバーナビ」のコンセプトは誕生以来変わっていません。エンタテインメント機能で先進性を突き詰めながらも、従来通りナビ性能や画質、音質は最高級のものに仕上がっている。ナビもオーディオも最高であるべきモデル、というサイバーナビの柱は今後も大切にしていきたいですね。

― 今後カロッツェリアブランドが目指していく方向は？

橋本：“目的地に迷わず早く到着する”“目的地に向かうまでの時間を楽しくする”という、これまでのカーナビに求められるものは、今回の「サイバーナビ」に惜しみなくつぎ込めたと感じています。しかし、まだカバーできていないクルマへのニーズは当然まだ存在するので、今後は従来のナビが立ち入れていないフィールドに進出し、お客さんの潜在的・顕在的ニーズを掘っていく必要があると思っています。

山内：確かに、今回の「サイバーナビ」は”今のニーズに応える”という意味では完成形といえるかもしれません。そこで作り上げた技術を、汎用モデルにも展開していければいいなと考えています。

製品開発に携わった者として、カーナビゲーションでここまで進化させられたモデルはないと自負しています。苦労も多かった反面、自信をもって良い商品だと言えるモデルなので、今後はその良さを一人でも多くのお客様に伝えられるように、商品の宣伝やプロモーション活動を展開していきたいですね。