地域企業の人事課題解決を総合的に支援したい。金沢に特化した人事ネットワーク「金沢の人事部」誕生の裏側

プロジェクトの裏側

2023年9月29日 12時00分株式会社ガクトラボ

株式会社ガクトラボは2011年の創業以来、地域密着型で「学生・若者」と「地域・企業」双方の挑戦をコーディネートし続けています。

2022年、地域企業の課題解決・魅力向上を目的として、金沢市に特化した人事ネットワーク「金沢の人事部」を立ち上げました。このネットワークでは、企業、専門家、自治体、教育機関等が組織の枠を超えてつながり共に考えることで、人事に関する解決策や成果を生み出すことを目指しています。

【経済産業省採択事業】LINEで会員登録！地域企業の人事課題を地域の力で解決する人事ネットワーク「金沢の人事部」発足

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ここでは、2016年の着想から、2022年に経済産業省事業として採択され立ち上げに至るまでの過程や、活動に込めた想いを紹介します。

地域企業が肩を組んで人事課題を解決することを目指す「金沢の人事部」

「金沢の人事部」は、金沢市における地域企業の課題解決・魅力向上を目的として、2022年10月に発足した人事ネットワークです。

金沢の人事部のモチーフ画像には、「様々な立場の人たちが持つ知恵や経験（＝ピース）を組み合わせることで、解決策やこれまでにないアイディア（＝電球・明かり）を生み出す」という意味が込められています。企業や人事担当者が孤立することなく、専門家、自治体、教育機関などがそれぞれの持てるリソースを持ち寄り組み合わせる。そうすることで、人事課題を解決へと導き、企業そして地域がより明るい未来へと発展していくことが、私たちの活動のミッションです。

地域企業が肩をくむために

私たちが目指すのは、地域企業が肩をくんで課題解決を目指すこと。「手を取り合う」でなく「肩を組む」を目指しているのは、信頼し合える仲間となり一丸となって解決に向けて取り組んでいきたいという思いからです。本事業では、企業同士が肩を組み、地域のリソースを活用できるような、様々なしかけをしています。自治体と連携した補助金・助成金情報の発信、企業同士で切磋拓磨して取り組めるような採用活動の場づくりや伴走支援、「若手」「人事担当者」などの横の繋がりを活かして学び合う研修や交流会の企画、地域の機関同士での対談などです。

2023年度は、経営者や跡継ぎ候補同士が相互のつながりを生かし創発的に学び合うプロジェクト「金沢戦略人事の会」も立ち上げています。

課題を客観的に捉え、攻めの人事ノウハウを提供する社外人事部の重要性

株式会社ガクトラボは、2011年の創業時から、地域に根ざして「学生・若者」と「地域・企業」双方へのコーディネートや伴走支援を続けています。

その中で、多くの地元企業が同様の課題を抱えていることや、解決するために何をしたら良いのか手探り状態であることが分かりました。

「学生との接点づくりはどうやってする？」「社員の育成や定着に課題があるがどこから手をつけたら良いか分からない」「身近に相談できる人事仲間がいない」などの困りごとを聞く中で、課題を客観的な視点で捉え、攻めの人事ノウハウを提供し、中長期的に伴走する社外人事部の重要性を認識した私たち。そこで、2016年に企業向けの「採用活躍支援事業」を立ち上げ、個社ごとに伴走支援を行っていきました。

コロナ禍を、企業同士や地域機関の連携とネットワーク拡大で乗り越える

企業と人材のマッチング支援、1on1面談の代行など、社外人事部の意義を感じながら活動を行い、しばらく経った頃。

2020年に、新型コロナウイルス感染症が襲来しました。採用活動のオンライン化、働き方の多様化への対応など、これまでの常識が通用しない厳しい状況に置かれた企業の担当者が頭を悩ませているのを、私たちは目の当たりにします。そんな企業が孤立せずこの状況に向き合うには、個社毎への伴走支援だけでなく、企業同士や地域機関の協力・連携が不可欠なことに気が付きました。更に、視野を広げ人材の流動性を考えると、金沢だけではなく舞台を拡げ、北陸地域というエリア感でネットワークを拡大することで厳しい状況を乗り越えようと決意しました。

下記グラフからも、北陸における労働人口が減少していること、今後も減少が予想されることが分かり、このままでは人材確保の問題はより深刻化すると言えます。

（資料）総務省「国政調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口（2018年推計）」より株式会社日本政策投資銀行作成

そして同年、オンライン化の風潮を捉え、北陸の企業を対象としたオンラインでの合同説明会「マドゴシ」や、オンライン人事コミュニティ「HRラボほくりく」のサービスをリリース。

＜オンライン合同説明会　マドゴシ参加企業の感想＞

大手ナビサイトのイベントでは着席が数名程度。マドゴシフェアでは20名以上の学生と交流することができました。その後、初めて実施したインターンシップでも2日程がフルで埋まりました。

＜オンライン人事コミュニティ　HRラボほくりく登録企業の感想＞

普段の業務や単発研修では交流することがめったにない立場や役割の人と直接話ができます。人事責任者、経営者、フリーランスの方など様々な角度から人事について学べています。

地方の企業でも力を合わせ、変化に合わせて工夫していけば、採用・育成・定着に関する人事課題を解決に向かわせることができる。仲間と学び合い支え合うことができれば、企業や地域を持続的に発展させることができる。サービスを使った企業からの満足の声を聞く度に、私たちはそう確信しました。

これまで培ったノウハウやネットワークで、地域企業の人事機能を総合的に支援したい

株式会社ガクトラボの人事関連サービスについて、コロナ前からあったもの、コロナ禍で形を変えて発展させてきたもの、全く新しいものなど、様々なサービスが単体では機能しているもののバラバラでまとまっていない状態でした。企業担当者にとって、何をどのフェーズで使ったら良いかもっと分かりやすい状態にしたい。そして、これまで培ったノウハウや地域のネットワークを集結することで、地域企業の人事機能を総合的に支援したい。それがこれまで地域密着型で事業を展開してきた私たちの使命だと考え「金沢の人事部」の立ち上げに至りました。

立ち上げに追い風になったのが、2022年10月に令和4年度「中小企業経営支援等対策費補助金（若者人材確保プロジェクトの実証）」に採択されたことです。

採択を皮切りに、金沢市や金沢大学ENGINEプログラムが本事業の後援となり、これまでご一緒してきた顧客を中心に声をかけていったところ、開始から4ヶ月で20社の企業がこのネットワークに賛同し入会してくださいました。

賛同頂けたきっかけは様々です。これまで培ってきた関係性のおかげもあり早い段階で自治体や教育機関の賛同が得られたことで、ネットワークに対する信頼性がうまれたこと。交流会参加を通して、企業同士が協力し学び合う場があることの良さを肌で感じて頂けたこと。VUCAの時代と言われいつ何が起こるか不確実な中、地域企業で連携することで、課題を分かち合いながら個社単位ではなし得ない成果を出していけるという期待を持って頂けたこと。

「このままではいけない」という何かしらの危機感を持っていた企業が、困難なときも肩を組んで共に乗り越えようという呼びかけに共感し、今こそそのときという意志を持って入会してくれました。

自治体、教育機関、企業と、これまで培ってきたネットワークが次々と繋がり、私たちは間を取り次ぎこのネットワークを運営する立場として、気持ちが引き締まりました。

また、金沢の人事部事業を進めるにあたって、私たちの組織内部にとっても人材の巻き込みや流入が加速されてきました。地域全体で肩を組むという理念に共感する人が内外にじわじわと増えていくのは嬉しく、それぞれの力が発揮される場づくりに力を入れたいという想いも益々強くなっています。

人事ネットワークの意義を感じた交流会

立ち上げ後に、合計3回開催した「若手人事交流会」では、担当者同士で「採用」「社員の教育・育成」などのテーマについて悩みや事例を共有し合いました。自社事例を共有し、他社事例を知り、共にアイディアを考える中で、担当者同士の交流や学び合いの輪が広がりました。また、金沢市の担当者も参加し、人事担当者のリアルな声を市の施策に生かす場としても活用していました。コロナ禍ではイベントのオンライン開催へと舵を切っていましたが、オフラインで開催することで、わきあいあいとした雰囲気で安心して話せる場、仲間意識が芽生え関係性が深まる場となりました。

＜若手人事交流会参加者の感想＞

・かなり正直なお話をいろんな方とすることができ、普段1人で考えているよりもずっと有意義な時間を過ごせました。（人事担当者）

・行政の施策は独りよがりになりがち。地域企業で働く人事担当者の生の声が聞ける場があるというのは有難いですし、そういった声を新しい施策へ反映させていきたい。（金沢市担当者）

より、創発的な関わりが生まれる活動へ

普段から忙しい経営者や人事担当者。2022年度時点で金沢の人事部の会員数は数は20社でしたが、その中で「〇〇を一緒にやろう！」という自発的な関わり合いがうまれることはありませんでした。単発の交流会では、そのときには参加者同士でのつながりがうまれ、アイディアが生み出されるのですが、次につながる合同でのアクションが起こりにくいという課題がありました。

そこで2023年度は、単発でなく、半年という期間を通して経営戦略と連動した人材戦略を共同策定する「金沢戦略人事の会」を立ち上げました。金沢の主幹産業の1つである食文化を担う企業5社程度で、2023年8月のキックオフイベントを皮切りに、年度中6回の集まりを通して、自社の現状・目先の業務ばかりに捉われず中長期経営戦略と連動した人材戦略を策定・実施することを目指します。2月には共同で人材戦略に関する宣言書を策定予定です。