「豊島」。今では「直島」と並んで瀬戸内海に浮かぶアートの島として、国内外から多くの観光客が訪れる国内有数の観光地です。内海にゆったりと佇むその美しい姿は多くの人に安らぎを与え、訪れた人々に自然の大切さを教えてくれます。そんな豊かな島である「豊島」もかつては1970年代頃から工業化の波に揺れ、産業廃棄物の島として暗い過去を経験した時代もあったのです。

そんな時代に揺れた「豊島」で、ユビ電が超小型電動モビリティのレンタル事業を始めたのは2013年。充電認証システムの実証を行い、どのクルマがどれだけ充電したか把握する充電認証システムの構築を目指しました。

3年後の2016年には、電動スクーターを利用したパーソナルモビリティレンタルサービス「瀬戸内カレン」をスタート。充電に関わる設備やシステムの開発、拠点となるモビリティ拠点の運用、運行管理などユビ電のもつノウハウを活かして運用を行いました。

しかし、ここで一つの課題が浮かび上がります。自動車などの産廃に悩まされたこの島で、超小型電動モビリティを運行すれば、確かにモビリティの走行時の大気汚染は解決されるが、充電に使う電力はどうだろうか?と。

日本の系統電力は、当時（今でも）ほとんどが化石燃料を占め、末端（自動車）で燃焼しなくても、先端（発電所）で燃焼していることに違和感を覚えたのです。そこで、2016年にはグリーン電力証書を活用して、「瀬戸内カレン」で充電に使う電気は再生可能エネルギー100％として、環境負荷が低いエネルギーで運用しました。

走行時に大気汚染を起こさない電動モビリティは、環境負荷が低く優れた乗物です。私たちは、電気自動車の普及を阻害する大きな障壁である「充電環境」に取り組み続けていますが、折角、電気自動車に充電するにしても、化石燃料を使う環境負荷が高い電気で充電しても意味がないと考えたのです。

私たちのミッションは、いずれやってくる電動モビリティ社会には欠かせない充電システムの構築でしたが、この経験をとおして、再生可能エネルギーをどう事業に反映していくかが、新しい課題となったのです。

図らずも昨年12月、政府が2030年半ばまでに新車販売は電動車100%へと大きな政策を掲げたのを機に、ようやく日本社会も脱炭素社会へ転換する流れとなり、このタイミングで宮古島太陽光由来のグリーン電力証書の販売をスタートさせる事は、ビジネスとして重要なだけではなく、ユビ電が思い描く未来への大きな一歩へとつながります。

社会の変化はビジネスにも大きな影響を及ぼします。そこには必ず解決するべき課題があり、それを解決する答えを提供することは、またビジネスのきっかけとなり、そして、時流を捉えて継続していくことが大きな結果を生み出します。

確実に世の中の変化が到来していますが、「豊島」での経験を忘れることなく、これからのビジネスも進めていきます。クリーンな電気を自分で選んで、電気自動車に入れる、環境に優しい移動をする社会。私たちは、通信、電力、モビリティの融合領域をベースにした技術と着想で、世界の人々がきれいな空の下で生活できる世界を実現します。